マリメッコは、フィンランドのデザインハウスで、ファッション、バッグ、小物からホームデコレーションまでを展開し、独自のスタイルが日本でも人気のブランドだ。
「マリメッコとしては、ディスプレイを非常に重視しています」と、マリメッコのVMD担当者。
「大前提として、リアル店舗はブランドイメージを最大限に表現し、お客様にマリメッコを体感いただける一番のツールだと思っている」とVMDの基本方針を語った。

「色の流れ」を意識したファブリックのディスプレイ。
表参道1Fでは新作HOMEアイテムを紹介。

コレクション自体の色柄が多い点もあり、アイテムの配置によっては統一感がなく混沌とした見え方になってしまう可能性が生じるそうだ。
「店内が色柄で飽和状態にならずに表現できるよう、コレクションの企画段階からディレクションされているんです。また、フィンランド本国から全世界に向かって、毎月ガイドラインが発信されていて、ディスプレイ方法には細かいルールが設けられています」と話す。
基本的には、それに基づいたディスプレイを守っているとの事。
さらに月々のガイドラインとは別に、アイテムの配置方法やTシャツの畳み方など、ひとつひとつのカテゴリーごと、アイテムごとに細かいルールが定められたベーシックガイドラインもあるという。

今回のテーブルセットは庭のあるテラス席での春のブランチをイメージ。
カウンターの後ろに象徴的なmロゴ、更にその横には最新のタペストリーがかけられている。

「これはグローバルに行っており、どこの国の店舗に行っても同じ見え方になっているんです。それをお店に合わせて適応させるのがVMDの仕事内容ですね」と、マリメッコにおけるVMDについて話す。
多彩な色を使用するブランドだけに、色の配置にはこだわっているそうだ。
また、テーブルセットやソファーセット、ベッドなどを配置する、インスピレーションエリアと呼ばれるエリアがある。
「店舗によって展開が違うのですが、お客様が買い物をしやすいよう、ひとつひとつのアイテムを使っているシーンを思い浮かべられるエリアを必ず設けています」。

フィッティングルームのカーテンはマリメッコの生地を使用。ライトはアルテックのゴールデンベル。
表参道2Fにはソファーセットで新作のクッションをディスプレイし、くつろぎながら買い物を楽しんでもらえる空間を設けている。

毎シーズン、ディスプレイのガイドラインに載っていない日本別注アイテムがあり、それはローカライズして展開しているそうだ。
「場合によっては本国に相談の上、ディスプレイすることもありますが、そちらも別注した段階で綺麗に見える形で考えられているんです」と、徹底した配置の企画があるという。

棚のディスプレイの一部にもシーンを伝えるインスピレーションスペースを設けている。
22年春夏シーズン以降の新生マリメッコではレザーバッグも注目のアイテム。

今季のアパレルに関しては、「シルエットにポイントがあります」と担当者。
クリエイティブディレクターにレベッカ・ベイが就任し、新生マリメッコとして、22年春夏シーズンから展開しはじめたタイミングだそう。
「長いこと親しまれてきた基本的なシルエットを原型に、フィット感やシルエットを進化させて、今季から、Aライン、ストレート、フィット&フレアの3種類のシルエットを打ち出しています」という。
「マリメッコといえば色柄」という概念から、より着やすさの重視、シルエットの良さを目指したコレクションになっているという。
また、アイコニックな柄同士を組み合わせた新シリーズも注目のポイントで、そちらも新ディレクターになったことで出てきたコレクションとのこと。

今季の3つのシルエットをウィンドーにて展開。マネキンでは「フィット&フレア」のルックを紹介。
ウィンドーでは最新ウエアとバッグをコーディネートで紹介。

店内の所々に配置されているのが植栽だ。
これは生きた植物を必ず配置するという本国からの指示。
2016年以降にオープンした店に関しては、すべて植栽が入っているという。
「細かい花の指示が来ますが、やはり日本で手に入らない植物もあるので、そこは指示された色や種類を揃えたりしてローカライズしています」と担当の方。
そういった季節ごとに生花を入れることが、自然の香りとしてのVMDに繋がっていると語る。

  • 22年春夏新作のフラワーポットには実際に植物を入れて展開することでイメージしやすいよう工夫している。
  • 花瓶に飾る花は月々のガイドラインで定められ、新作展開の度に入れ替えられている。
  • 棚の一番上のスペースもインスピレーションスペースとして大事な役割。

ちなみに、本国はライティングにも強いこだわりがあるそう。
「表参道に関しては、ショップオープンの際、本国からスタッフが来て、ライティングを調整しているんです」。
店内は、優しい光で、リラックスできる雰囲気になっている。

向かって右側の「ウニッコ ラッリ」柄は自然で美しいケシの花と建築的なストライプを組み合わせたプリント。マイヤ・イソラによるアイコニックな2つのプリントを魅力的に融合したフュージョンプリント。
表参道店地下1Fのベッド&バスコーナー。

「全店共通で本国のイメージを伝えるのがVMDとしての仕事なんです」と担当者。
しかし、このコロナ禍で、地方店になかなか足を運べない現状に課題を感じているそう。
「リモートで、ビデオを繋ぐなどの工夫を凝らしてはいますが、そこが課題ですね」。
「マリメッコは色や柄に溢れたポジティブさがブランドの魅力の一つだと思っていて、お客様が入店された時に喜びを感じていただけるような空間づくりを目指しています」と、自身のVMDという仕事について締め括った。

B1Fへと下りる階段の壁面には、写真家トニー・ヴァッカロが1960年代に撮影したマリメッコのアーカイブ写真が。1951年から続くマリメッコの歴史を物語る。
シーズン毎に変更されているシーズンポスター。

さまざまなアイテムの配色や自然光、ライティングなど、すべてのバランスがとれた気持ち良いスペースとなっているマリメッコ表参道店。
少しだけポジティブにしてくれるちょうど良い雰囲気が魅力となっている。

写真/野﨑慧嗣
取材/久保雅裕(くぼ まさひろ)
取材・文/カネコヒデシ

マリメッコ 表参道店

住所:東京都渋谷区神宮前4-25-18 アネックス1 エスポワール表参道
TEL:03-5785-2571
営業時間:11:00-19:30

久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremodeコントリビューティングエディター

ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

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カネコヒデシ

メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。そのほか、紙&ネットをふくめるさまざまな媒体での編集やライター、音楽を中心とするイベント企画、アパレルブランドのコンサルタント&アドバイザー、モノづくり、ラジオ番組製作&司会、イベントなどの司会、選曲、クラブやバー、カフェなどでのDJなどなど、活動は多岐にわたる。さまざまなメディアを使用した楽しいモノゴトを提案中。バーチャルとリアル、あらゆるメディアを縦横無尽に掛けめぐる仕掛人。

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