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「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」by SMART USEN
──ファッションと音楽は繋がっていると思いますか?
原 裕章(以下、原)
「もちろん繋がっていると思います。ただ、"聴いている音楽と自分のファッションが繋がっているか?"というと、それはちょっと違いますけれどね」
上野 晃(以下、上野)
「僕も繋がっていると思いますね。音楽に興味を持ち始めた幼少期は、ファッション誌なんかも読んでいなかった時代ですけれど、音楽雑誌に出ているアーティストの格好を見て良いなと思っていました。でも、それがファッションだとは認識せずに、影響を受けていたと思います。例えば、デビュー当時のローリング・ストーンズのメンバーの普段着とか、みんなトラッドで格好良かったんですよ。」
──ファッションを意識するより、音楽を意識した方が早かったのでしょうか?
原「音楽は兄の影響があって小学生から聴いていました。ファッションに興味を持ちはじめたのは中学生くらいの時。だから、音楽の方が早いです」
上野「僕も小学生の時で、毎週日曜日に世界の音楽チャートみたいな番組をやっていて、その頃、カーペンターズが売れていたのですが、一番最初に聴いた洋楽という意味ではカーペンターズですね。もちろんファッションなんて、その頃は全然気にしてもいませんでした。
よくクラシックが流れていた家なので、音楽は小さいころから身近にあったのですが、意識して聴くようになったのは小学生からです」
──一番最初に買ったレコードを覚えていますか?
原「これって、いわゆる飲み屋ネタでハジレコというやつなのですが、僕はネタを持ってますよ(笑)」
上野「何を買われたのですか?」
原「アラン・ドロンとダリダのデュエット曲"あまい囁き"です」
上野「すごいじゃないですか!」
原「小さい頃から映画が好きで、でも、お金も無いし、簡単に観には行けなくて、昔、テレビとかで試写会の募集をよくやっていたのですが、そこに応募して試写会には行っていたんですよね。でも、良いネタだったでしょ(笑)」
上野「いや、格好良くていいですね。僕は、太田裕美の"赤いハイヒール"の7インチシングルレコードでした」
原「いいですね。いま歌謡曲の7インチレコードを集めていて、南沙織を集めている途中なのですが、7インチを28枚出していて、あと3枚でコンプリートするんですよ。松田聖子とキャンディーズはコンプリートしました。だから、南沙織がマイブームです(笑)」
──コンプリートしたレコードは、ジャケットを並べるのが楽しいという感じですか?
原「いえ、7インチって探している時が一番楽しいんですよね(笑)」
──上野さんは音楽的に集めているものはありますか?
上野「特に何かを集めているということはないですね。音楽はサブスクで聴くことが多くて、例えば、こういう音楽バーみたいなお店(Sailin' Shoes)に飲みに行った時とかに、気になった曲をアプリの"Shazam"で調べて、新しい音楽を見つけています」
──どういうジャンルを聴かれてきたのですか?
上野「基本的には何でも好きなのですが、80年代半ばに、ブルーノートが盛り上がってジャズが復活した時はジャズばかり聴いていまして、"マウント・フジ・ジャズ・フェスティバル"にも何年か連続して行っていましたね。あとは、ボズ・スキャッグス。彼がアルバム"Middle Man(ミドル・マン)"を出した時に、レコード屋さんに買いに行ったら売り切れだったんですよ。それでスタッフの人が一つ前のアルバム"Down Two Then Left(ダウン・トゥー・ゼン・レフト)"を勧めてくれたのですが、それがすごく良くて、いまだに僕の中で彼のベストアルバムになっているというエピソードがあります。 テクノであれば、Y.M.O.(イエロー・マジック・オーケストラ)の後期は聴いていましたし、スタイル・カウンシルは、ラジオ局"FEN"で初めて聴いて、衝撃を受けましたよね。曲作りに影響を受けました。そういう感じなので、"この音楽"というのがなくて、ふわっと出てきたらパクっという感じの聴き方です」
──原さんは聴いている音楽は一貫しているように思えるのですが
原「僕も音楽は雑食的に何でも聴きますよ。ただヘビメタとプログレ以外ですが。逆にファッションは、高校の時からほぼ買うものが変わっていなくて、一貫しているんですけれどね。音楽だけは、洋楽から和物から、ブラックミュージックからすべて聴く。余談ですけれど、昔はレコードのジャケ買いみたいなことをよくしていたのですが、その後、タワーレコードが出来て試聴可能になって、試聴してから買うようになりました。そしていまは配信で聴いてから買う。それはなんだか良くない気がしていまして、そんな人間になってしまいましたよね(笑)」
──確かに、いまはジャケ買いが出来ないカルチャーですよね
原「確かめる術が出来てしまった。でも、"あえてそれをしないで買うか?"というと、もうそれでは買わない」
──配信やサブスクに対してはどういうお考えですか?
原「新しい音楽はサブスクで、一応知識として聴いていますが、なんか愛を感じないんですよね」
上野「それは僕も思っています」
原「ファッションもユーズドとか、セカンドハンドというカルチャーがありますが、そこには愛を感じるんですよ。だけど、サブスクには愛を感じない。"借り物でいいのか?"と考えてしまうんですよ。
基本的には"所有したい"という気持ちが強くて、共有みたいな考え方がないです」
上野「僕自身は音楽は手軽に聴けるので、サブスクで聴いています。CDやレコードを持っていても、ダウンロードやサブスクで音楽を持ち歩けるのであればそれでいいのかな。ただ、こういう場所でレコードで音楽を聴いたりすると、耳が退化したと感じますよね」
──アナログレコードが、いま流行っていますよね
原「アメリカとイギリスはCDの売り上げと逆転したと聞いています。そのお陰で、レア盤のリイシューも増えたので、高価なレコードが安く手に入る状況は喜ばしいですよね。あとは、"RECORD STORE DAY(レコードストアデイ)"というレコード屋さん全体のイベントもありますし。そこに良い歳して並んで、買いに行くわけですよ(笑)」
──色々な音楽を聴いてこられたと思いますが、どのジャンルが好きですか?
原「僕はビートルズから始まったのですが、日本人だろうが、外国人だろうが、根はロックでも何でもブラックミュージックをベースにしている音楽が好きですね。だから、(山下)達郎さんは好きですよ」
──いわゆるグルーヴのある音楽ですね
上野「僕は、KISSやベイ・シティ・ローラーズが出て来た頃は、実は吉田拓郎を聴いていました」
──フォークだったんですね
上野「中学生の時にディープ・パープルとか、ギターが上手な人たちが出てきたのですが、むしろ高中正義とかのフュージョンを聴いていまして、高校の時になってビートルズとローリング・ストーンズを掘り下げたという感じです。ストーンズは最初に聴いた時は、"下手なバンドだな"と思いましたが、歳を取るほどに"なんてすばらしいタイミングなんだろう"に変わって、いまだに聴いています。その辺から(エリック・)クラプトンやジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)、ジェフ・ベックを聴いたりと、ギター中心の音楽を聴くようになりました。
それとY.M.O.が解散した後、寺田倉庫で坂本龍一さんがはじめられたソロのピアノコンサートにはよく行っていました。Y.M.O.はそこから掘り下げて聴いたという感じなんです。
だから、オンタイムで聴いていたのは、スタイル・カウンシルくらいですかね」
原「スタイル・カウンシルは、洋楽が好きな人は必ず聴いていますよね。ジャケットといい、音楽性も格好良いですから」
上野「昔、ラフォーレ原宿の地下にHMVがあったのですが、その時にポール・ウェラーがお店にCDを買いに来てて、思わず、一緒に写真を撮らせてもらった思い出がありますよ」
──ライブで来日したアーティストが、よくレコード屋さんにいましたよね。日本が一番いろんなジャンルの音楽が買えるみたいですから
原「高いレコードと楽器は、すべて日本に集まってくると言われてますから」
──さて、お店のBGMについて、その意義はどのように考えていますか?
原「人間の五感のうち、味覚以外の四感はすべてブランディングの一部だと考えています。だから、体験としてブランドが表せるようなことはやっていますよね。とはいえ、店に入った時に聴き込んでしまうような音楽はダメだし、あとはお店の雰囲気を邪魔しない音楽、そういう感じでBGMの選曲をDJの松浦俊夫さんにお願いしています。
昔は、新しいレコードが出たら、それをカセットテープに入れて流していましたが、あくまでBGMなので、邪魔しない音楽ですよね。朝昼晩、季節によって変えています」
上野「僕も原さんと一緒の考え方ですね。本当は、お店のスタッフが天気や人の入り具合、状況を見て、音楽を変えられたら良いのですが。BGMは大切ですが、"気分とどれだけ絡められるか?"という部分ですよね。例えば、簡単なワードで選曲が変えられたら良いのに、とは思います」
原「雰囲気にぴったりというのは難しいですから、明らかに違う音楽を排除していく方法が一番かな。BGMを全店舗統一にした理由のひとつは、その昔、お店でギャングスターラップが流れていた時があって、それは当時のスタッフが好きな音楽だったのですが、そういう部分はなかなか難しいですよね」
上野「そういう事ってありえますからね。BGMに関しては、確かに違うものを排除するだけで良いと思います。良い時は自然に聴こえてくるだけなので、"なんて良いんだろう"なんて音楽が流れている事は、それほどないかな」
原「僕はお店に入って良い曲が流れていたら、"Shazam"で調べます(笑)。やっぱり便利ですよね」
──この先、音楽の聴き方はどのようになっていくと思いますか?
上野「自分自身の聴き方は変わらないかなと思います。例えば、自分なりのストーンズのベストを作るのは、もうプレイリストなどで簡単に出来るじゃないですか。そういった感じで、昔の音楽でもいまのテクノロジーを使って自分なりに編集して聴いていますね。ライブは生き残っていくと思いますが、これだけ配信されていると、その気持ちが少し弱くなりはじめたかな。
このコロナ禍になってからは、自分が作った曲を家でアプリの"GarageBand"を使って、メモ的に音を残すことを1年くらい前からやっています。原さんもプレイヤーなのでお分かりになると思いますが、やはり自分でプレイするということが気持ち良いんですよ。だから、そういうことは続けたいですね」
原「ライブも一期一会で、瞬間瞬間で違うんですよ。だから、なくならないし、大事だと思います」
上野「人のスキルというか、パフォーマンスがすごく大事になってくる時代になるのかな。質を求められるし、何かしら感動というか、そういうものが必要になってきていますよね。このコロナで色んな物事が整理されて、大切な部分をしっかりと磨くという部分で言えば、分かりやすかった1年間だったと思います。それはどの業界にも言える事ですが。決して、元々が逆を向いていたわけではなく、そっちの方向を見ていたものが、このコロナ禍でそこへ進む速度が10倍くらいの速さで進んだという感じなんでしょうね」
──最後にこれからの季節に聴きたい音楽を教えてください
原「やはりビーチ・ボーイズ系のサーフサウンドですかね」
上野「僕の場合、何でもボサノバになってしまうんですよね(笑)。アントニオ・カルロス・ジョビンとか。お題の中で選曲するのは面白いですよね」
原「昔は、付き合う彼女に自分の好きな音楽を選曲したテープを作って渡したり。それって男の定番でしたよね(笑)」
上野「インデックスをすごく凝って作ってました(笑)」
原「今はデジタルなので、簡単にワンクリックで出来ますからね」
上野「曲順も簡単に変えられるし。昔は一苦労でしたよね」
原「もう一回録り直しです(笑)」
──ありがとうございました
(おわり)
[section heading="原 裕章"]
株式会社シップス 代表取締役副社長
1960年生まれ。大学1年時より渋谷ミウラ&サンズでアルバイトを始め、83年に有限会社ミウラ(現株式会社シップス)入社。
販売員から店長、営業部長、商品部長、人事部長、取締役を経て、16年より現職
[section heading="上野 晃"]
株式会社トゥモローランド 店舗開発部 部長
1964年生まれ。1988年トゥモローランド入社。ライフスタイルブランド「ギャルリー・ヴィー」の営業、販促物の制作。93年よりトゥモローランドの販売促進を担当。その後、2000年より現職
[section heading="会場"]
Sailin' Shoes(セイリン・シューズ)
洋邦のロック~ポップス音楽通が集まる、知る人ぞ知る隠れ家的ミュージックバー。店名はロックバンド、リトル・フィートのアルバム名から付けられている。
住所:東京都渋谷区恵比寿西2丁目8-6 ウエスト2ビル B1
電話番号:03-3464-2433
写真/野﨑慧嗣
ナビゲーター・取材・文/カネコヒデシ