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encoremode
2021.03.10

シップス 原 副社長インタビュー 連載・企業トップによるリレーメッセージ「コロナ禍を経て、セール時期見直し問題について語る」 Vol.4

新型コロナショックは、2020年のファッション小売業界に激震をもたらし、3~5月休業時の在庫のECへの振り向けとマークダウンによる販売、秋冬の生産調整、21年春夏の仕入れ抑制など、先行き不透明な小売市場の不安定感を反映した対応が求められた1年だった。さらに生産から店頭までのファッションサイクルの在り方について、世界的に著名なデザイナーやラグジュアリーメゾンなどからも、改めてサステイナブル、SDGsの課題のひとつとして、適正な生産と在庫の在り方を模索すべきとの提言も出され、業界全体の意識も高まっている。 こうした状況下で、以前から問題視さている「欲しい物が欲しい時に揃っていない」「本来のシーズンに合っていない」などの矛盾点をはらんだ「セール時期の見直し」についても、適時適品適量を理想とするMDの構築に向けて喫緊の課題となってきた。 『encoremode』では、年初からこのテーマで企業トップに意見を求め、リレーメッセージとして長期連載していくことにした。 第4回は、シップスの原 裕章 代表取締役副社長。

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──「セール時期の見直し」について、賛否をお聞かせ下さい

「時期の見直しに関しては賛成です。需要と供給の時期が完全にずれてしまっている現状、というのが一番の理由です。もちろん気候変動などの問題もあると思いますが、セールそのものが消費者の中で特別ではなくなっている実感がありますよね。 恐らく80年代の中盤くらいから、セールというイベントが盛り上がりはじめて、もともとは出し手の都合で決めていた物事だったのですが、時代によって世の中が変化して、いまやアウトレットモールは常設であるし、ECでも通常でセール表示の物もある状態。当時は、その時にしか商品が安くならなかったから、セール自体に意味があったと思います。アウトレットの出現は大きいですよね。 さらにECの時代になって、いまやネットで似たような商品をいくらでも探せてしまいますし。世の中が根本的に変わったのに、業界のやり方だけが変わっていないのではないでしょうか。」

──セール時期は具体的にいつが良いと考えますか?

「理想としては、プロパー店舗ではセールをやらない。そのためにアウトレットやECのセールのサイトがあって、そちらに商品を移動させればいいわけで、もともと弊社では、基本的にプロパー販売の時期にプライスダウンした商品を一緒に置かず、アウトレットに回すようにしていましたので。当然、すぐにはできませんが先々には実現していきたいですよね。 それと、今回のコロナもあって、お店の役割も変わってきていると感じています。」

──どのように変化しているのでしょうか?

「いままでは、店舗ごとに予算を課して、その達成率で貢献度、成果を測っていましたが、ECが台頭してきて、OMO(Online Merges with Offline)的な部分が広がりはじめているんです。ですから、今後は店舗としての売上を作る事ももちろん大事ですが、よりブランディングのためのポジションになっていかないといけないのかなと。 例えば、スタッフによるコーディネイトのSNS投稿からECへと繋がる、そういう貢献も出はじめている状況もあります。昨年11月から店舗スタッフの接客でECに誘導した際でも、そこの店舗のレジで決済できるシステムを導入しました。レジを通せば、店舗でもECでも、どちらで売れてもいい訳です。それによって、大人のアイテムのお店で子供服がECで売れたり、地方店には置いていないインポートブランドも購入できたり、その店舗で扱っていないアイテムの販売が可能になり始めたんです。もちろん商業施設との共存共栄を考えた形ではありますが、そこに新しい広がりを感じています。」

──ショールーミングビジネス化していくという感じでしょうか?

「要素としては、ショールーミングビジネス的ですが、”100%なるのか?”というと、個人的にはならないのかなと。もちろん、弊社の中でそうなっていくようなブランドも、今後はあるかもしれませんが。 ファッションって、物自体もそうですし、買うとか、着る事によって気分が高揚する、そこに対する対価だと考えています。だから、物を買って、好きな店のショッピングバッグを持って、帰りにバッグを横に置きながらお茶して、と、そういう部分も含めてその価格が成立していると思っています。」

──現実的な部分として、具体的なセールの時期はいつが適切と考えていますか?

「春夏は7月末、秋冬は1月末ですね。ただ春が長いので、できれば4月末に小規模な春物のセールができたらいいかな。 問題なのは、冬物セールが12月末からだったり、夏物だと6月末から約1ヶ月間やってしまっている状況ですよね。期間が長すぎて、お客さんはいつ買っていいのかが分からなくなってしまっている状態だと感じていますし、我々としても同じブランドなので一物一価を通したいのに、二価、三価と存在している状態が続いている。セール時期が異なることでお店によって価格が違うのは、”どうなのかな?”という部分がありますよね。そういった意味でも、現状のセール状況はよろしくない。」

──商業施設に時期を合わせていると、なかなか難しいのでは?

「商業施設側からすると、売り上げで賃料が発生するので、”そこの考え方が合致するか?”というと、現状は難しいと思います。それに、例えば地方店ですと、近隣の大型ショッピングモールのセールが始まるからやるみたいな感じで、そこにみんなが合わせざるを得ない状態なんですよね。 ただ、今回のこのコロナが後押しする形で、弊社も含めて各社さんともに考え方が変わってきているように感じています。以前は沢山作って、沢山売って、残ったらセールみたいな時代もありましたが、昨今は、もっと数を絞って、大事に売って、売り上げよりも利益、そういう方向にシフトしていく状況だと考えます。各社がセールに対して量を抱えなくて良い方向に向かえば、自ずとセールは縮小化していきますしね。だから、前例を作る意味で考えたら、今年は縮小させるチャンスだと思っています。」

──適時適品適量に関する御社の取り組みをお話し下さい

「まず、”需要予測はできない”というのが大前提です。ファッションの場合、気候の要素はかなり大きくて、秋物では値引きなどの施策なんかより、気温が3度下がるだけで全然違う。地震の予測ができないのと一緒で、予測できないのを前提にどうしていくか。それは、需要が生まれた時に”いかに早く動けるか”という部分だと思います。そもそもデジタルを投入するとしたら、予測AIではなくその部分ですよね。デジタルを使って、そこのリードタイムをいかに短くしていくかという部分には、今後力を入れていこうと思っています。 あとは、予算の細分化ですね。」

──では、まずはデジタルを使ったリードタイムの短縮について、どのような動きをされていますか?

「1年半前から3Dモデリングのシステムを導入して、現在、実際にスタートさせたところなんです。これによって色付けや柄などがデジタルで入力できるので、サンプルを作らずに画像の制作が可能になりました。 さらに”SHIPS any(シップス エニィ)”は、デジタルによる企画生産をスタートさせています。ただ、今季だけは平行してサンプルは作っていますが、秋にはサンプル無しでいけるかなという状況ですね。この3Dモデリングシステムを使用すると、いままでの型紙を引く、サンプル作る、修正する、セカンド、そしてサードのサンプルという、一連の流れがデジタルでできてしまう。だから、1ヶ月半くらい時間が短縮できて、短サイクルで物が作れるようになるんです。」

──このままいくと、3DモデリングのシステムがECの中心になっていくという感じでしょうか?

「そうですね。現状、EC化率は40%くらいまでいっているのですが、実はそのうちの20%が予約販売。サイト上にサンプル画像だけだけれど、予約で売れるんです。もちろん、これが100%までいくと無駄が一切なくなりますから、その部分を3Dモデリングと繋げていければと力を入れはじめている状況ですが、ただまだちょっとコストが高いんです。もっとコストが下がれば、そこを繋いで予約販売の部分が飛躍的に伸びるのではないかと考えています。」

──予算の細分化という部分については?

「昨年の秋、そして今年の春ともに、昨対70~80%の仕入れ予算にしていましたが、100%にまでにした方が良い可能性もある。そうなった時にいかに動けるのかという事で細分化させています。例えば、主要な品番の付属品などは確保しておき、追加ができれば素早く対応できる体制をとる。結局、素材がないと作れないですから、そこの確保も重要です。 いまコロナで本当に先が分からないので、一旦この予算で置いておいて、下げないといけないケースもあるだろうし、逆に上げないといけないケースも出てくるだろうと。そこは週でチェックしないと分からないので、例年以上に細かくチェックしています。」

──例えば、シップス エニィは、廃棄予定の野菜や食材を原料に生地を染めたFOOD TEXTILE(フードテキスタイル)などを展開していますが、御社のSDGsへの活動はどのような状況でしょうか?

「最後の処分の商品が出てきた場合、その完全リサイクルを目指して、一昨年くらいから活動をはじめています。 衣料に関しては、ケミカルリサイクルでポリエステルを再利用し製品化したり、それ以外は、パーツごとにリユースをおこなったり、リサイクルをしています。 あとは、我々のSDGsへの意識の部分だと思っていますので、スタッフに対して研修会をやろうと考えています。環境に関しては、結局その人が意識すれば変わっていく部分ですので。 それ以外の部分ですと、下田のライフセーバーをサポートしており、砂浜のゴミ拾いも26年目になりますが、その一貫で子供への海の安全教育なども行ったり。SDGsの17項目でいくと、実は色々な項目に少しずつ手を出している状況なんです。 今はひとつひとつが特別な事かもしれませんが、あと1年も経てば、それが当たり前の社会になってくるのかなと思います。」

──ありがとうございました



「世の中が根本的に変わったのに、業界のやり方だけが変わっていない現状なのでは?」とセールそのものの在り方に対して提起する原氏。



原 裕章

株式会社シップス 代表取締役副社長
1960年生まれ。大学1年時より渋谷ミウラ&サンズでアルバイトを始め、83年に有限会社ミウラ(現株式会社シップス)入社。
販売員から店長、営業部長、商品部長、人事部長、取締役を経て、16年より現職

(おわり)

写真/野﨑慧嗣
取材・文/久保雅裕、カネコヒデシ





久保雅裕(くぼ まさひろ)
(encoremodeコントリビューティングエディター)

ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

カネコヒデシ
メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。そのほか、紙&ネットをふくめるさまざまな媒体での編集やライター、音楽を中心とするイベント企画、アパレルブランドのコンサルタント&アドバイザー、モノづくり、ラジオ番組製作&司会、イベントなどの司会、選曲、クラブやバー、カフェなどでのDJなどなど、活動は多岐にわたる。さまざまなメディアを使用した楽しいモノゴトを提案中。バーチャルとリアル、あらゆるメディアを縦横無尽に掛けめぐる仕掛人。





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