モスバーガーによるアーティストやクリエーターのオーディション・プロジェクトとしてスタートした「MOS RECORDS」。なんとエントリーできるのはモスバーガーで働くキャストのみ。このユニークなスタンスとコンセプトについては、MOS RECORDS エグゼクティヴ・プロデューサーである太田恒有と、ネオクラシカルデュオ、Purple Flamingoのヴァイオリニスト――そしてもちろんモスバーガーの現役キャスト――として活動する松本シオンの対談「モスバーガーが育む夢、MOS RECORDSが叶える夢」に詳しい。

この対談で「料理人と音楽家ってどこか共通していて。料理人はお腹をすかせた人に美味しいご飯を食べてほしいし、音楽家は自分の音楽で元気になって癒やされてほしい。そんな原動力があると思う」と話していた松本。見事、第1回のオーディションで「MOS RECORDS NEXT」に選出されたPurple Flamingo。そんな彼女らの1st ONE-MAN LIVEが、8月8日、得難く、そしてこれ以上に相応しいロケーションはないであろうモスプレミアム千駄ヶ谷店で開催された。13種類のグルメバーガーと8種類のクラフトビールが楽しめる、まさに大人が嬉しいメニューが揃うモスプレミアムは現在、この千駄ヶ谷店と桜木町クロスゲート店のみ。この日はPurple Flamingoのメンバーチョイスとお店のおすすめバーガー3種がラインナップ。キッチンからいい匂いが漂い、演奏と一体になり五感が刺激される楽しい時間が共有された。

MOS RECORDS エグゼクティヴ・プロデューサーである太田氏のオープニングMCに続いて、Purple Flamingoのふたりが登場。第一部はクラシックの名曲をデュオのスタイルにアレンジして贈る。1曲目はホルスト「木星」。ふたつの楽器とは思えない勇壮さ。エンディングが決まると大きな拍手と歓声が上がる。

ここで楽曲の解説とともにPurple Flamingoの名前の由来をグレイ理沙(Vc)が紹介。なんでもオーディションでディープ・パープルの「Burn」を演奏したことと、演奏する姿からの命名なのだとか。続いてはMOS RECORDSのYouTubeにもアップしているモーツァルト「アイネクライネナハトムジーク」、クラシック好きはどんな曲で癒やしを得るのか?というテーマでミサ曲であるモーツァルト「アヴェヴェルムコルプス」の深遠な世界観を表現。実は非常に難曲で、緊張したと松本。曲の背景や選曲の想いを知れることも、リラックスしたライブの良さである。ふたりが「バロックとロックの接地点」と言うヴィヴァルディ「夏」のスリリングなやり取りには大歓声が起こり、第一部ラストは日本人にはなじみ深い「アルプス一万尺」の元歌(!?)であるヴュータン「ヤンキードゥードゥル」がカントリーにも似たアレンジとさまざまな奏法で繰り広げられた。

一体感とグルーヴで満たされた店内。休憩を挟んでの第二部は世界に誇る日本人作曲家作品をピックアップ。ちなみに全体の構成から練習、MCを詰めるために、打ち合わせに30時間以上要したとそう。その甲斐あって、ジブリ作品で知られる久石 譲のメドレーには冒頭から声が上がる。また、彼女ら自身によるライナーノーツ的な解説があることでより曲への興味を惹かれた武満 徹楽曲の披露。歌曲の歌詞を担当したのがかの谷川俊太郎であることなど、エピソードを挟んでの「MiToYa」と「うたうだけ」は日本人の琴線に触れるメロディに聴き入る人多数。久石、武満と巨匠が続いたあとはクラブジャズにも影響を与えた大野雄二「ルパン三世のテーマ」を熱くクールに決めてくれた。

第三部はPurple Flamingoの得意なクラシックと洋楽のクロスオーバー。エアロスミスの「Cryin」とパッヘルベルのカノンに共通するカノン進行でドラマチックなライブアレンジが完成していた。松本、グレイともにハードロックも大好きだそうで、続くKISSの「デトロイト・ロックシティ」、AC/DCの「Back in Black」も弦楽に見事にマッチしている。さらにグレイが敬愛するSIAのレパートリーから「Cheap Thrills」をピックアップ。現代のラテンポップを弦2本で楽しませてくれた。ラストは観客にも参加してもらってのヴィレッジ・ピープル「Y.M.C.A」。お馴染みのアクションを“M.O.S.P(モスプレミアム)”にアレンジする遊び心で、大いに盛り上げた。アンコールではグッとファンキーにブルーノ・マーズの「Uptown Funk」でクラップを巻き起こし、大満足のコンサートを締めくくったのだった。

終演後、熱演を見せてくれたふたりにライブの手応えを聞くと「反応がすぐ返ってくることによって自分たちもパワーをもらえるので、リハでは出なかった音や演奏が出せました」と松本シオン。「皆さんお酒とおいしい食事で、すごくリラックスした状態でしたし、皆さんと一緒に作り上げた演奏会になりました。堅苦しさのない雰囲気のなかで聴いていただけて最高の会場でしたね」とグレイ理沙。

充実のプログラムだったが、これでもまだやりたい曲がたくさんあるそう。モスバーガーでアルバイト中の松本は「MOSでバイトをしつつ、自分の夢が叶うかもしれないこのチャンスを糧にできると思うので、このオーディションやライブが発展していくといいなと思います」と、仲間にもエールを贈ってくれた。

食とアートで五感が満たされるレストランライブのなかでもカジュアルなムードでおのおののテーブルが盛り上がる。フレッシュなアーティストとこんなシチュエーションで出会える「MOS Premium LIVE」に今後も期待せずにいられない。MOS RECORDSのさまざまな取り組みにご注目あれ!

(おわり)

取材・文/石角友香
写真/平野哲郎
協力/モスプレミアム千駄ヶ谷店

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