9月に同時リリースした2枚のアルバムには実は兄弟がいて、『MANSTER』が黒盤で、『MANTRAL』が白盤、そして来年3月に発表する『BLUE』は青盤だった……なんて言われても、まったく意味がわからなかった。
そもそも『MANSTER』と『MANTRAL』は、音楽的にも、ストーリー性を感じさせる内容的にも、合わせて28曲にもなるボリューム的にも、おそろしい挑戦作で。さらに2枚を引っさげて全国を廻る「Tour M」は、演劇と演奏をリンクさせながら北海大陸を統一した英雄M王の物語を紡いでいくという、実験的かつ斬新で、めちゃくちゃドキドキするライブだったのだ。
もうすこし余韻に浸らせてくれてもいいじゃんっていう想いとともに、過去の楽曲を再録したアルバムが3兄弟 !?首を捻ったまま年を越し、3月になり、ニューアルバム『BLUE』は届いた。お馴染みの曲たちがみずみずしく耳に飛び込んできた。選曲はちょっと意外、けどどの曲も楽しそうだった。音から伝わってくるワクワク感みたいなものは、『MANSTER』、『MANTRAL』と変わらないかも。何よりメンバーの誇らしげな顔が浮かんできてニヤニヤしてしまう。3月15日もイヤホンから注がれる『BLUE』に頬を緩ませながら東京ガーデンシアターへ向かった。
ステージに置かれたフロアスタンドが灯ると、サックスの大久保淳也、ギターDAIKI(BBHF)という最強サポートメンバーを従えたGalileo Galileiが登場。尾崎雄貴が今にも踊りだしそうな勢いで空瓶――のようなもの?――を叩き響かせるリズムに、客席から手拍子が湧き上がる。DAIKIの爪弾くリフに岩井郁人のギターがメロディを絡ませると、すこしずつ「スワン」が姿を現わした。<アヒルのまま アヒルのまま 裸足で君とからんだり 嘆いたりして いつまでも いつまでも 終わりを感じたくないな>って、あたかも親しい友人に話しかけるように温かく歌い出したあと、雄貴から思わず漏れた掛け声「Oh!」もトッピングして、『あおにもどる』の答えというか、新曲「あおにもどる」と対をなすこのライブのもうひとつのテーマソングというか……そんな大事な曲から「ロンリーボーイ」、「ジョナサン」、「バナナフィッシュの浜辺と黒い虹」と続くオープニングの4曲が『BLUE』の収録曲じゃなかったこと、それ以前にセットリストに『BLUE』の曲は半分以上入っていなかったことも含めて、Galileo Galileiだなあと思う。
ひねくれているっていう意味ではなくてね。年齢を重ね、経験を積み、技術とセンスを磨き上げ、結婚したり、子供が生まれたり、新たな視点を手に入れても、彼ら――特に雄貴――の中の黒は黒のままで、海から逃れることはできなくて。むしろそこをぎゅっと握って、ずっと向き合って音楽を作ってきたから、きっとすべての曲が『BLUE』の候補曲で。乱暴に言えば、どの曲を選んでもよかったってことなんじゃないかと思うのだ。
セットリストに関しては、のちのMCで雄貴が「『BLUE』みたいな再録アルバムをもう2枚出すとしたら?と考えて、これっきゃないでしょ!って組んだ」と種明かししていたけれど、実際に作ったらどうなっていたかわからない。だって彼らは揃ってアイディアマンな上に、人のひらめきを面白がる才能に長けているから。
次の曲のイントロが聴こえるたびに沸き起こる歓声。ひと際大きな拍手とどよめきで迎えられた「管制塔」では、最初からそこにいたかのような説得力を放つ大久保のサックス、別人級にタフネスとしなやかさを手に入れた岡崎真輝&尾崎和樹によるリズム、そして質感の異なる2本のギターが無限の可能性を轟かせる。岩井のギターには自分が脱退した後のGalileo Galileiをサポートし続けたDAIKIへのリスペクトを感じたし、その逆も然り。だからBBHFの「ホームラン」が始まった時はとても驚いたけど、同時に妙に納得もしてしまった。
岡崎が弓を使って描き出した「ブルース」のイントロ、会場中で楽しそうにスピンするすずめちゃんペンライト、和樹の一部がぶっ壊れたこと(PCトラブル)により生まれた臨時MCタイムと、そこで明かされた意外な本音「このすごい光景が見れて、テンションがぶち上がってます!」、リベンジ演奏された「嵐のあとで」の熱を帯びた美しさ。岩井のアコギと雄貴の歌声だけで手渡された「くそったれども」、全員で丁寧に歌い奏でる〈生きること〉の矢印みたいな「山賊と渡り鳥のうた」、イントロとアウトロの同期は同じなのにバンドのスキルアップで質の悪さが10倍増しの「カンフーボーイ」!「Blue River Side Alone」から「青い栞」へとなだれ込む耳福の既視感、再始動後に制作した「オフィーリア」や「汐」には今だから伝えられる温もりと残酷さがあった。
思い返せばフラッシュバックする光景は数え切れず。ただその真ん中には必ず、歌を歌う尾崎雄貴がいて。いや、あたり前の話なんだけども、音楽人生を分かち合う仲間に囲まれ、楽器を持たずに歌に徹することで、雄貴のヴォーカルは声ではなく全身の表現に進化。客席を見渡し、メンバーと目配せ、踊り、飛び跳ね、たまにドラムセットの和樹に向かってまるで指揮者のようなアクションで高らかに大好きな曲たちを響かせていた。
「青い血」、「星を落とす」、「Sea and The Darkness II(Totally Black)」とライブが進むごとに本日のクライマックスが更新されていく多幸感に包まれながら、本編のエンディング、新曲「あおにもどる」に辿り着いた。<気の抜けた古いサイダー>が「UFO」<サイダー飲んで>や「青い栞」<右手にサイダー>を経由して、彼らが敬愛するくるりの「さよならストレンジャー」<気の抜けたサイダー流し込む>に繋がっていくような、摩訶不思議な感覚。螺旋階段を一直線に駆け上がるメンバーと私たち。変わってるけど全然変わってない。もしかしたらオープニングで雄貴が叩いていたのはサイダーの瓶だったのかもしれない。
セットらしいセットはなく、ステージにプラスされたのは最初に書いたフロアスタンドと中央に敷かれたラグ、マイクスタンドに飾られた青いブーケ、102ケースの上で見守るラブちゃん+αくらい。もちろん曲ごとにガラリと景色を変えるライティングは抜群に美しかったし、ある時は学校のチャイム、ある時は雑踏、ある時は雷鳴、ある時は波音、ある時は海鳥の鳴き声……曲と曲を繋ぐインタールードによって、ひとつの物語の中に迷い込んだような心震える瞬間を何度も経験することができた。ただ、それでもいい演奏をするミュージシャンと、すばらしい音楽と、Galileo Galileiを愛するファン、これだけで完結する最っ高のライブだった。
アンコールラストの「稚内」。雄貴の手にはタンバリン、その両脇にメンバーがキュッと集まり、横並びで軽快に豪快ににこやかに演奏する様子はさながらマーチングバンドのようで……「音楽団になりたいっていうか。ダークな曲をやったと思ったら、ロックを演奏してみたり。Galileo Galileiがやって来る、みたいな」これはちょうど15年前、初インタビューでの雄貴の言葉。あぁ、確かにあおにもどっている。しかもGalileo Galileiの青は年を重ねるごとに純度を増し、とびきりのユーモアと愛と底知れぬ謎の威力を放ち続ける。Galileo Galileiの音楽はいつだって新しくてやさしくて切なくて、どうしようもなく胸が苦しい。聴いている間はどこへでも行けるし、何者にだってなれるし、自分はここにいていいのだと思える。一度ライブを体験したらもう観る前の自分には戻れない。次の体験=大阪、東京、福岡を巡る『TRITRAL TOUR』が11月に決定。その前にいくつかのフェスで会えるかも。てか、TRITRALってなんだろう?
(おわり)
取材・文/山本祥子
写真/Masato Yokoyama
Galileo Galilei "あおにもどる"@東京ガーデンシアター――2025年3月15日(土)SET LIST
1. スワン
2. ロンリーボーイ
3. Jonathan
4. バナナフィッシュの浜辺と黒い虹
5. 老人と海
6. サークルゲーム
7. 管制塔
8. ウェンズデイ
9. ブルース
10. kite
11. 山賊と渡り鳥のうた
12. 僕から君へ
13. ホームラン(BBHF)
14. 嵐のあとで
15. くそったれども(アコースティック)
16. ありがとう、ごめんね
17. カンフーボーイ
18. Blue River Side Alone
19. 青い栞
20. オフィーリア
21. 汐
22. 青い血
23. 星を落とす
24. Sea and The Darkness II(Totally Black)
25. あおにもどる
EN1. SPIN!
EN2. あそぼ
EN3. 恋の寿命
EN4. 稚内

Galileo GalileiLIVE INFO
■Galileo Galilei "TRITRAL TOUR"
11月23日(日)BIGCAT(大阪)
11月26日(水)Zepp DiverCity(TOKYO)
11月28日(金)DLUM LOGOS(福岡)
■HEADZ 2025 ~NEW HOT WAVE~
4月30日(日)日比谷野外大音楽堂
■サバシスター「Love letter tour」
4月5日(土)札幌 PENNY LANE24
4月6日(日)帯広 MEGA STONE
■青春ヶ丘俊光「~激烈!!対バンツアー2025~」
5月6日(火)Zepp Sapporo
■ライブナタリー “Base Ball Bear × Galileo Galilei” -2025-
8月1日(金)梅田CLUB QUATTRO
8月3日(日)Spotify O-EAST(東京)
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