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encoremode
2021.08.13

ノーリーズ 山本陽子取締役 インタビュー 連載・企業トップによるリレーメッセージ「コロナ禍を経て、セール時期見直し問題」について語る Vol.8

新型コロナショックの影響から約1年半。日本のアパレル業界においては、改めてファッションサイクルの在り方、サステイナブルの課題に対して意識が高まったSDGs加速の年と呼んでも過言ではないだろう。 こうした状況下で、以前から問題視さている「セール時期の見直し」について、『encoremode』では企業トップに意見を求め、リレーメッセージとして長期連載中だ。 第8回は、ノーリーズの山本陽子取締役が登場。

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──「セール時期の見直し」についての賛否をお聞かせください

「セール時期が遅くなって正規価格で売れる期間が長くなるのは、良い事だとは思っています。ただ、以前はお客様がセールを待って、そこで購買という感じでしたが、いまはセールだから物が沢山売れるわけではないというのが現状。もちろんコロナ禍ということもありますが、実際、そういう時代でもなく、セールでなくとも物が大量に売れる時代でもない。正直なところ、現段階では遅くなっても早くなってもそれほど変わらないかな。 ノーリーズのお客様を考えた時に、どういう物を、どういう風に、必要としているお客様にどう届けるか、どう提供するか、の部分の方が重要なんですね。ただ、いまはECがあるので、そちらはどうしても早めのセール展開になってしまうという課題もあります」

──現在は、セールが終了して、秋物の立ち上がった時期でもまだ暑いという気候の問題もありますよね

「昔は7月くらいから秋物、冬物に近い商品を売っていた事もありました。でも今は、そういう商品を”トレンドセッターの方が先取りするか?”といえばそうでもない。いつの時代もそうですが、目が肥えている方は、量販店の商品を上手に利用しながら、良い商品はアウトレットで安く買える時期に買いますよね。 特にノーリーズのお客様に関して言えば、必要な時期に必要な商品を買う方が多いので、シーズンの先取りみたいな部分は、そこまで重要ではないのかなと。どちらかというと、そういうお客様のニーズに答えられるものが”しっかりあるのか?”という部分と、次のシーズンの物を”しっかり見せてあげられるか?”という部分。そこが重要だと考えます」

──その場合、適時適品適量というMD計画が重要になってくると思いますが、その辺りの取り組みについて教えてください

「お店のフェイスでいうと、お客様にとって必要な商品をとにかく切らさない。プラスで新鮮な商品を見せていくという事ですね」

──このコロナ禍で店頭やMDなども変化したと思いますが、いかがでしょうか?

「みなさんの働き方も変わりましたよね。ノーリーズは、もともと通勤着やセレモニーのようなオケージョン的な部分が強いブランドで、やはり、そこでの売り上げシェアも高かったこともあり、昨年は”どうなるのか?”と弱気になったり、葛藤がありました。洋服を買う行為は、人に会う時だったり、”こう見られたい”という思いが強い。ただ、コロナ禍という状況とはいえ、そういう目的のニーズにはお答えしたいですよね。それがうちにしかない商品であれば、セールを待たなくとも買っていただけますし。だから、そういうものを強くしていくことが改めて重要だと感じています」

──店頭の鮮度を高めるための施策はありますか?

「どうしてもベーシックに寄りがちなので、トレンドまではいかなくとも、キャッチ力のある、目を引くような商品は展開して、フェイスを新しく見せるMDをしつつも、それを引っ張ることなく、早めにアウトレットに送ることで、店頭の鮮度を高めるようにしています」

──売り筋と売れ筋で分けているんですね

「ニーズ品は基盤ですので、なるべく切らさないようなMDを考えています。もちろん、色を変更したり、春夏は半袖に変えたり。ただ、量がないと売り上げが立たないので、長期的に考えていますが、いまはECの先行予約もあるので、そこでの予約のつき方を見ながら追加したり。二極をうまくやれるようなMDの取り組みをしていますね」

──在庫に関してはどのようなお考えをお持ちですか?

「もともとコロナ前から在庫の持ち過ぎには危機感を感じていた事もあります。このコロナで店頭が休業した事で在庫をセーブできて、健全な形にはなったので逆に良かったと感じていますね。時代的にもそういう流れになっていますし、廃棄の問題も改善できていると思います」





──サステイナブルに関して、御社の取り組みを教えてください

「ショッパーって、コストも掛かりますし、実際に私もそうなのですが、紙袋をもらっても捨てるか、捨てられずに家に溜まる(笑)。いまだと”不織布の内袋だけでいい”というお客様もいらっしゃいますし、あとは、オリジナルのエコバッグをお買い上げいただいて、それをお持ちいただいたお客様にはエコポイントで還元したり。 店舗と倉庫の間における物流用パッキンに関しても、5年ほど前からオリジナルの箱に変更して、それを使っています」

──ブランドとしての今後の予定を教えてください

「実は、2021年はブランド設立40周年ということもあって、この40年間のヒット品番を洗い出して、商品を掘り下げています。昔に作っていたジャケットやトレンチコートなど、そういうベーシックな商品を見直して、銘品としてアップデートさせようと。もう一度、ベーシックに原点回帰ですよね。いまはポリエステルの生地でも良い物があるので、丸洗いも出来るけど、軽くて、型崩れしない、カジュアルでもオンのスタイルでも両方着れられる。秋も春もないシーズンレスで、年齢も関係なく、なおかつケアも楽な家で洗える、そういうアイテムを考えています。流行にあまり左右されず、でも鮮度がある商品。長く大事に着て頂けることが、サステイナブル的にも一番良いですよね」

──今後の課題は?

「ノーリーズというブランドはポピュラーなお客様に対して認知されていると思っていて、だから、”どれだけうちにしかないものを作れるか?”という部分が重要と考えます。もちろん、他社から買うODMのような物の作り方もありますが、弊社はパターンから生産までやって来た背景があるので、そこを自信を持ってしっかりやっていくことですね」

──企画生産機能をお持ちという点は大きいですよね

「もともと小売から始まっていますが、早い段階からオリジナルも自社でパターンをやっていたので、そこは強みだと改めて思っています。オリジナルのみで展開している上海の店舗が好調だったりもしますし、ノーリーズだけではなく”Rie Miller(リエミラー)”もチャレンジというか、しっかりやっていきたい。中から出てくるオリジナルで勝負しないと、いまは難しいですよね。そこは臨機応変に考えながら進めていきたいと考えています」

──他社との差別化が課題ということでしょうか?

「お客様に喜んでいただけるのが一番なので、ささやかなこだわりですね。あとは、EC中心ですが”grace grace(グラスグラス)”というサステイナブルブランドを立ち上げました。ユニセックスで、ジェンダーレスで、なるべくシーズンレス。サステイナブルのきっかけ作りとして始めたブランドで、カフェフレディで出たコーヒーのカスや、知人の農家で作っている廃棄の人参を使用した染料を使ったり。今年の春夏から始めたばかりで、まだまだ発展途上中ですが。私たちファッション、アパレルが”どのように社会貢献できるか”という部分ですよね。でも、そこから新卒の方が弊社に興味を持って入ってきたりしていますから。若い世代の人はそういう社会貢献の部分に興味を持たれている方も多く、意識が高いんですよ。そういった意味でも、今後は若い力がどんどん必要になってきますね。もちろん、ビジネスとしてはまだまだですが、うちにしか出来ない何かがあると思って続けていきたいと考えています」

──ありがとうございました



山本陽子

ノーリーズ 取締役
1986年 入社。ショップスタッフとして勤務。
1989年から NOLLEY’S オリジナル企画担当 企画リーダー、商品部部長を担当 商品全体の統括として若手の育成やオリジナルブランド開発なども手がけています。





(おわり)

写真/遠藤純
取材/久保雅裕
取材・文/カネコヒデシ





久保雅裕(くぼ まさひろ)
(encoremodeコントリビューティングエディター)

久保雅裕(くぼ まさひろ) encoremodeコントリビューティングエディター・ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

カネコヒデシ
カネコヒデシ メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。そのほか、紙&ネットをふくめるさまざまな媒体での編集やライター、音楽を中心とするイベント企画、アパレルブランドのコンサルタント&アドバイザー、モノづくり、ラジオ番組製作&司会、イベントなどの司会、選曲、クラブやバー、カフェなどでのDJなどなど、活動は多岐にわたる。さまざまなメディアを使用した楽しいモノゴトを提案中。バーチャルとリアル、あらゆるメディアを縦横無尽に掛けめぐる仕掛人。







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