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encoremode
2021.01.27

ビームス 設楽社長インタビュー「コロナ禍を経て、セール時期見直し問題について語る」連載・企業トップによるリレーメッセージ

新型コロナショックは、2020年のファッション小売業界に激震をもたらし、3~5月休業時の在庫のECへの振り向けとマークダウンによる販売、秋冬の生産調整、21年春夏の仕入れ抑制など、先行き不透明な小売市場の不安定感を反映した対応が求められた1年だった。さらに生産から店頭までのファッションサイクルの在り方について、世界的に著名なデザイナーやラグジュアリーメゾンなどからも、改めてサステイナブル、SDGsの課題のひとつとして、適正な生産と在庫の在り方を模索すべきとの提言も出され、業界全体の意識も高まっている。 こうした状況下で、以前から問題視さている「欲しい物が欲しい時に揃っていない」「本来のシーズンに合っていない」などの矛盾点をはらんだ「セール時期の見直し」についても、適時適品適量を理想とするMDの構築に向けて喫緊の課題となってきた。 『encoremode』では、年初からこのテーマで企業トップに意見を求め、リレーメッセージとして長期連載していくことにした。 トップバッターは、長年にわたり、ファッションとカルチャーの力でセレクトショップを牽引してきたビームスの設楽洋代表取締役社長に話を聞いた。

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──世界的なファッションサイクル見直しの流れが起こっていますが、特にセール時期の見直しについて、ご意見をお聞かせください

「見直しは当然と考えています。地球温暖化の今の日本の気候とセールの時期がまったく合っていないですし、それプラスで未来の事も考えていかないといけない。今年、ビームスのスローガンは”四つの良し”なのですが、それは昔からの”三方よし”という近江商人の言葉がありまして、”売り手に良し”、”買い手に良し”、そして”世間に良し”。それに加えてビームスは”未来に良し”という事で”四つの良し”です。つまり、SDGs(エス・ディー・ジーズ)をはじめ、未来の地球にとって、あるいは我々の子孫にとっての”良し”も考えていこうと。当然、その中にはセール時期の見直しや適正適量在庫など、具体的に考えていく事が含まれています。」

──時期については、いつ頃が最適だとお考えでしょうか?

「今年から春夏のセールを、春物を4月に、初夏を7月初旬、夏物を8月下旬といったように、季節の変わり目に行い、それぞれの開催期間を短くという形で考えています。今までですと、6月末から7月頭に春夏のセールをして、その後秋冬物が立ち上がる。すると、8月の暑い時期、海や旅行に行く時期に店にTシャツが1枚もない状況になって、”おかしいじゃん!”って(笑)。お客さまにとって、必要な時期に必要な物が揃っていないという状況はやはりおかしい。それにプロパーで売れる期間が年間で短いことも問題です。この問題は、業界全体が望んでいるのに、全然できていない状況が続いているんですよね。改善する為には、我々自身が少しずつ先行して、具体的に出来る方策をしていかなければならないと考えます。」

──館などのデベロッパーが6月末などにセール時期を設定しているところもあると思いますが、そことの関係はどのように改善していくお考えでしょう

「例えば、セールの期間を短くしたり、もしくは店内一部セールのような形で協力して、その後に自分たちが適正だと考える時期にセールをさせてもらうような提案は考えています。サステイナビリティーの機運が高まってきているので、このチャンスを逃すことなく、取り組んでいこうと考えています。」

──適時適品適量に取り組む施策があればお教え下さい

「今年は3つの方策を考えています。ひとつは、”資金と需要が集まれば作ります”といった、クラウドファンディングでのものづくり。昨年12月に、応援購入サイト”MAKUAKE(マクアケ)”と業務提携を発表しましたので、こういった取り組みも活用していきます。それとオンデマンドでの商品づくり。現状、プリンターの導入も考えていますが、Tシャツなどが1枚から作れるという受注生産のトライアル。 あとは3Dモデリングを使ったものづくりで、これも短サイクルでお客様のニーズに応えられるようにしようと。何ヶ月も前にどっと仕入れて、それを売り切っていく方式だけではないトライアルを始めて、余計な物を作らないシステム作りを考えていきたいです。」

──オリジナルアイテムの生産や仕入れに関しては早くに発注せざるをえないわけですが、その部分での精度を高める方法は考えていますか?

「まずは、現在開発中なのですが、生産面でAIを使用したカスタマーマーケティング、中でも需要予測的な部分の技術を今後高めたいと考えています。そして、ロスを少なくするためのロジスティクスですね。3月から関東と同規模の大型ロジスティクス拠点を関西で稼働させ、西日本地区はそこで対応できる形を作ります。それにより災害など万が一のケースでの対応をはじめ、より早く商品を届けたり、Eコマースの受注増にも対応していきたいと考えています。それと現状、ある程度見えつつあるのは、うちは自社サイトのスタッフ投稿、いわゆるスタッフのスタイリングやレコメンデッドを経由したEコマース売り上げがなんと約70%もある。これは非常に大きい。もちろん、スタッフの中には流行りよりも早い人がいたり、マスに受ける人もいるわけで、それらのスタッフ投稿がどのようなお客さまに刺さるのか、ひとりひとり個別の繋がりをリサーチする事で、今後の需要予測が立てやすくなるかもしれない。せっかく人に紐づいて成り立っているので、それを形にしたいと考えています。本当の意味でのインフルエンサーマーケティングですよね。スタッフにはそれぞれのスター化と、それを紐づけるような1対1のビジネスが出来るようになって欲しいと言っています。」

──今後は技術の進歩はあったとしても人と人との繋がりの部分に力を入れていく、人に特化するビジネスの原点に戻すという事でしょうか?

「本来、セレクトショップというものは、オーナー自身が選んだ物を買い付けて、指を上げて「これ好きな人はこの指止まれ」という業種なんですよ。うちはモード系の人間と、コンサバ系の人間、そしてストリート系の人間、いろんな人間100人が指を上げているような状態で、コアな人間には5~10人、マスな人間には100~200人が集まるという感じです。それがSNSなどのプラットフォームで出来るようになったら、そのスタッフ自身のライフスタイルが憧れられて、インフルエンサー的な存在になっていくだろうと。今後うちの競合になるのは、他社のセレクトショップさんではなく、インフルエンサーであると社内では言っています。今個人でインスタなどのSNSを使って、自分の好きな物をファンに売っている人。それぞれの規模は小さいかもしれないけれど、そういう人が5万人、10万人と出てくると、その集団が我々を脅かす存在になるだろうと。」

──確かにインフルエンサーのレコメンドによるセレクトショップ化の傾向は始まっていると感じます

「だから、うちはプロダクション的な形になっていくと考えてまして、店舗はインフルエンサー化したスタッフたちに会える場所になっていくだろうと。おそらく無駄話以外のすべての事はインターネット上で出来てしまうわけで、それがオンラインで個人とそのスタッフが繋がっていれば、店頭でさらに深いコミュニケーションができるようになるわけですし。別件ですが、コロナ前から店舗を使ったB 2 Bのビジネスに力を入れていますが、それは店頭、つまり劇場を持っているからこそ、できることなんですね。そこに魅力を感じて異業種、地方自治体など、ファッション以外のさまざまな業種の方が、期待して声を掛けてくださっているんです。吉本興業さんが強いのは、劇場を持っていて、笑いに敏感なお客様がそこに集まる。だから、そこでデビューするのが早いわけですよ。ビームスは、旬に敏感なお客様がいらっしゃる劇場を抱えているということです。意外と知られていないかもしれませんが、B2Bビジネスもすでに実績があるので、専門の部署を作って、実業として取り組んでいます。 うちはカップ麺から宇宙まで、知られていない事もいっぱいやっていますから(笑)。」

──ありがとうございました



2021年のスローガンは『四つの良し』。自筆の色紙とともに。

未来に向けてのさまざまな方策に意欲的に取り組んでいきたいと、笑顔ながら強い意志を示した設楽氏。



設楽 洋

株式会社ビームス 代表取締役社長
1951年 東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、1975年 株式会社電通入社。
プロモーションディレクター・イベントプロデューサーとして数々のヒットを飛ばす。
1976年 「ビームス」設立に参加。1983年 電通退社。
自らをプロデューサーと位置付け、その独自のコンセプト作りによりファッションだけでなく、あらゆるジャンルのムーブメントを起こす仕掛人。
セレクトショップ、コラボレーションの先鞭をつけた。
個性の強いビームス軍団の舵取り役。

(おわり)

写真/野﨑慧嗣
取材・文/久保雅裕、カネコヒデシ





久保雅裕(くぼ まさひろ)
(encoremodeコントリビューティングエディター)

ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

カネコヒデシ
メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。そのほか、紙&ネットをふくめるさまざまな媒体での編集やライター、音楽を中心とするイベント企画、アパレルブランドのコンサルタント&アドバイザー、モノづくり、ラジオ番組製作&司会、イベントなどの司会、選曲、クラブやバー、カフェなどでのDJなどなど、活動は多岐にわたる。さまざまなメディアを使用した楽しいモノゴトを提案中。バーチャルとリアル、あらゆるメディアを縦横無尽に掛けめぐる仕掛人。





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