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「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」by SMART USEN



──「セール時期の見直し」についての賛否をお聞かせください

「賛否というよりは、今はそこに重きを置いていないというのが僕らのスタンスになっています。本来、春夏物が終わってから始まるのがセール時期のあり方だと思うのですが、現状商業施設であれば6月中旬くらいからセールが始まって、だいたい1ヶ月半くらいセールが続く状態で、もちろん当初は会社としてもあまり良しとしていませんでしたし、開催時期が前倒しになりはじめた時には、流れを変えようという動きに賛同もしました。でも、その時期に"セールして欲しい"というお客様もいて、結果的にこの時期になっているという事実を受け入れています。たぶん、世の中の流れに反することは難しい。であれば、物の作り方や提案する時期、例えばセールに対してのプレセールなど、商品展開自体の考え方を変えました」

──つまり時期の見直しというスタンスではないということ?

「セール自体が施設ありきだと考えている部分があります。弊社内でも"BEARDSLEY(ビアズリー)"のようにセールを一切しないブランドもありますが、基本的にはセールはします。ただセールのやり方を変えている状態。今までのセールだと、短い期間で"すべての商品がセールです"みたいにお祭り的な在り方だったと思うのですが、いまはそのやり方をしても売れない状況ですよね」

──どのような方法でセールをされているのでしょうか?

「よく"52週MD"と言われていますが、現状、MDを細かく組んで毎週の投入計画を考えてやっているので、商業施設のセール時期には商品の半分程度は新しい物になっているというのが、弊社の流れになっています。つまり、ジャストで着られる鮮度の良い商品に加えて、今から3週間後、もしくは1ヶ月半後の商品が30~40%くらい、あとの10%くらいは秋や冬に着られるインポート商品を早く見せる、という感じですね。セール時期にセール品だけを買うお客様もかなり限定的になっていますし。ブランドサイトとしても、セール時期にはセールを売り込むのではなく、次のシーズンの新しい商品を紹介するという形に変化しています」

──セール商品の規模は半分以下ですか?

「在庫に関しては、何年も前から課題になっていたこともあり、コロナ以前には過剰在庫が見直されていた状態なんです。商品は、早期にアウトレットに移動させて販売する形で、循環がかなり早いんですよね。発注に関しても、MDが1人で入れる発注精度ではなく、2ヶ月くらい前からECの先行受注で予想を立てて発注を入れるとか、商品の動きを読みやすくしたので、それほど大きく外すことはなくなりましたしね。売れ筋に関してはデータベースが半分以上。その反面、新しい商品や面白い物を作る姿勢になりづらくなってきたので、そこは課題かな」

──提案型の商品も欲しいということですよね

「もちろん提案型の商品はバイヤーやMDが、データに基づかず、ある程度の数はやっています。そういった商品が当たる場合も多いですからね」

──ちなみに、商業施設側からセール時期の見直しの取り組みの話があれば?

「それはウェルカムです。商業施設さんからの年間計画のもとで、ブランド側でも細かく修正しながらやっている状況ですので、昔に比べたら在庫も半分以下くらいで過剰ではないですから。極論を言うと、その辺りはどうなっても正直構わないというのが本音です。お客様が欲しているのであればそれでいい。ECなんて1年中セールをやっているような部分もありますから。僕たちは、プロパーの意味を大切にしながら、"いかにお客様に響く形で伝えていくか"が重要だと考えています」

──適時適品適量を徹底してやってきた結果が出ているということですね

「お客様の方も昔みたいにセールに楽しみを求めていなくて、それほどそこに重きを置いていない状況ですよね。世の中的にセールのあり方が変わってきているように感じています」

──アパレル側の課題としてはサステイナブルの問題がありますが、御社として具体的に需要予測の精度を上げるためにされている施策はありますか?

「コンピューターでどのくらいの期間で"これくらい売れる"というデータが出るシステムは組み込んでいますが、それよりも前情報をどれだけ出せるかが重要だと考えています。前情報って、仕掛けも重要ですし、AIやコンピューターではできない部分かなと。その物をどれだけ魅力的に売る計画を立てられるか、お客様が買って喜べる肉付けもそこでできますしね。今はこういう残念な状況ではありますが、きちんと情報を伝えることが重要だと考えています。そういった意味では、ラインやショップアプリ、インスタグラムを駆使することで、直接お会いできないお客様にもコンタクトが取れる状況ですし、それもいい意味で"今"なのかなと思いますよね」

──商品の価値やストーリーの仕掛けということ?

「事前に伝えるための仕掛けですよね。弊社のブランドでも5万人のフォロワー数がいるブランドインスタグラマーが10人くらいいて、それだけでも50万人なわけですよ。今後、もちろんブランドによって対応も違うのですが、基本的には売り機会のロスがないようにお客様に事前情報をうまく届ける。踏み込まないといけない時には踏み込む、そういうスタンスですね。ただ、弊社は奇跡的に廃棄がないんですよ」

──それはすばらしいですね!

「うちの事業部(第七事業部)だけでも、今まで廃棄はゼロなんです。最終的にアウトレットですべて売れている状態でして、他のブランドも2年くらいですべて無くなっている状態なので、ほとんど廃棄はないと思います。 店舗でも売れていますし、Eコマースではブランドサイトごとに細かくセールをやったり、発注も控えているので、ほとんどアウトレットまでいかない状況でもあります。 アウトレットって、いまやアミューズメントパーク化しているので、お客様も"商品が安いから買う"みたいな場所とは思っていないですよね。リピーターも増えていますし、昨年もそこまで落ちなかったので」

──セールそのものの考え方がアパレル側も変わったという感じなんでしょうね

「昔はセールで売って売り場を新しくする、そういう発想が当たり前でしたし、むしろ"52週MDなんて嫌"と思っていましたが、いまはそれくらい細かい方が時流にも合っていますし、その都度仕掛けを変えていけるのでいいと思っています。こういう時代だからこそ利益も上げていきたい。利益が上がるということはプロパーで売れているということなので、プロパー消化率ファーストみたいな形にはなってきています。でも、52週MDって、現場感とミックスしてやっていかないとやっぱりうまくいかない。だから、そういうニュアンスの分かる人がMDをやらないといけないと思っています」

──今の市場の課題はありますか?

「今は見る物がみんな大体一緒になっていると感じています。私自身はセレンディピティという言葉が大事だと思っていますが、偶然出会う美しい物が、今のデジタル社会では情報の取り方も自分基準だから、自分が好きな物が集まるようになっているし、好きなもの同士でしか集まらないから、さらに見えにくくなってしまっているのかな。そうなってくると色々なものが面白くなくなってしまいますし、新しい物もなかなか提案しにくくなってしまうのでは、と感じています」

──それに対する解決法は?

「このコロナで良かったと思えるのは、その辺りの"見直しをしよう"となったことですね。商品開発も、今までは、ある程度、お客様目線とお客様のニーズで一歩先くらいの物をやっていましたが、"自分たちが可愛いと思っている物をどれだけ提案できるか"という部分に価値を作る方向に動きはじめていると感じています。売れる売れないとか、お気に入り率などのデータはあるのですが、それを使わずに、可愛いか可愛くないか、ときめくときめかないか、そこを大事にしないと、作る服も良い物ができない。ライフスタイルがどんどん変化していく中で、僕ら自身がそういう事をやっていかないとできなくなってしまうと思っているので、会議でも"可愛いか可愛くないかの話をしましょう"となりはじめています。会社的にもどうしてもデータ重視になってきている事実がありますから、その反面、本当に可愛いと思っているか、売れる売れないで話していないかということが重要かな」

──感覚的に変わったということですか?

「物に対しても変わってきたと感じています。SDGsに関しても、基本的には素材を提供するところのやり方がすでに変わっているから、勝手に変わってくるんですよね。僕ら小売店としては過剰在庫を持たないことだったり、環境に優しい物も必要ですが、結局のところ、どこまでどのバランスでやるかだと思っています」

──ありがとうございました



「商品開発会議では、データ重視でなく、可愛いか可愛くないか、ときめくときめかないか、そこを大事にしています」と山﨑氏。

取材当日は「ガリャルダガランテ」21-22年秋冬プレスプレビュー中で、山﨑氏に商品について細かく説明いただいた。



[section heading="山﨑 修"]

株式会社パル 常務執行役員 第七事業部長。
1971年生まれ。京都在住。
ガリャルダガランテ、ビアズリー、ドローイングナンバーズなどのプロデュース、ウィムガゼットのリブランディングなどを担当。

(おわり)

写真/遠藤純
取材/久保雅裕
取材・文/カネコヒデシ





久保雅裕(くぼ まさひろ)
(encoremodeコントリビューティングエディター)

久保雅裕(くぼ まさひろ) encoremodeコントリビューティングエディター・ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

カネコヒデシ
カネコヒデシ メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。そのほか、紙&ネットをふくめるさまざまな媒体での編集やライター、音楽を中心とするイベント企画、アパレルブランドのコンサルタント&アドバイザー、モノづくり、ラジオ番組製作&司会、イベントなどの司会、選曲、クラブやバー、カフェなどでのDJなどなど、活動は多岐にわたる。さまざまなメディアを使用した楽しいモノゴトを提案中。バーチャルとリアル、あらゆるメディアを縦横無尽に掛けめぐる仕掛人。







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