──8月29日(金)、30日(土)、31日(日)の3日間に渡ってさいたまスーパーアリーナで開催される「Animelo Summer Live 2025 "ThanXX!"」。今回で開催20回目を迎えたアニサマですが、2005年の第1回から2006年、2007年、2008年、2009年、2010年、2011年、2014年、2018年、2019年と計10回の出演を誇るJAM Projectのみなさんに、アニサマの思い出や魅力を語っていただければと思います。
奥井雅美「第1回は代々木第一体育館で開催されたんですけど、出演者数もいまよりずっと少なくて、本当に手作り感覚のライブイベントでした。アニソンのフェス自体が当時は珍しかったから、業界内やファンの反応もまだ様子を見ている感じだったことを覚えています。第2回、第3回は日本武道館で、2008年の4回目からさいたまスーパーアリーナで開催されるようになったんですよね」
遠藤正明「武道館のアニサマ、懐かしいなー!あのお客さんとの距離の近さが、すごく良かったし好きだった」
影山ヒロノブ「2回目のアニサマでは、各アーティストが登場する時の曲を書いて、格闘技イベントの選手入場のコールで有名だった外国人MCの方に出演者のコールを頼んだんです。そしたら、水樹奈々さんの名前がコールされてるのに、ふくちゃん(福山芳樹)がステージに出ていくっていうハプニングが発生して(笑)」
福山芳樹「あんなにいたたまれないことはなかったね。"水樹奈々ー!"ってコールされてるのに、おかしいだろ!って(笑)」
影山「登場曲がラウドだったこともあるけど、武道館に集まったファンの歓声の大きさをなめてたんだよね。だから、出演者に出番を案内するスタッフがインカムしてなくて、会場の出音で判断してた。リハは歓声がないから、会場のスピーカーから聴こえてくる音で誰の名前がコールされているかきっかけを出せたんですよね。でも、本番では歓声にかき消されて、スタッフが出演者の名前を聞き間違えてしまった」
福山「それで、水樹奈々さんの名前がコールされてるのに、"すいません!福山さん、出番なので出てください!"って言われて(笑)」
奥井「当時は、こんなに長く続くイベントになるとは思ってなかったな」
きただにひろし「JAM Project最大のピンチも、アニサマだったよね。奥井さんが病欠した時」
奥井「私が高熱を出してしまって、当日の朝にドクターストップが掛かっちゃったんですよね。それで、私のパートの歌詞を紙に書いて、ステージの床に貼ってみんなが歌ってくれて」
影山「でも、そういう時に限ってスモークの演出があって、歌詞を書いた紙が見えないという(笑)」
きただに「そうそう!映像でアップになった時の男4人の困った顔(笑)」
福山「全員で銀色の衣装を着てパフォーマンスしたこともあったよね。あの時の俺、ラテン系みたいなヒゲを生やしていて。そのヒゲが、キンキラキンの衣装に本当に似合わなかった(笑)」
──そうした過去の映像が、U-NEXTでも見れるわけですね。
奥井「第1回は記録用の映像しか撮っていなくて、正式な映像は残っていないんですけどね。過去の映像が配信されることで、亡くなられたアニキ(水木一郎)だったり、和田光司さんやNoBさんの姿が見られることは、すごくいいなと思います。そうやって映像という形で残してもらえる私たちの職業って、いい職業だなってあらためて思いますね」

──貴重な映像の中から、いろんなものを感じられそうです。ではアニサマならではの魅力というと?
奥井「1年目のアニサマは「THE BRIDGE」というタイトルで開催していて、テーマは架け橋なんです。アニメやアニソンがだんだん海外でも認知され始めた頃で、政治とか人種を超えて好きなもので人々がつながる世界を実現したい、アニメやアニソンをその架け橋にしたいという思いが、そこには込められていました。今、それを意識している人はどのぐらいいるかわからないけど、アニサマに限らずアニソンフェスはファンがすごく温かい。好きなものでつながっている者同士、自分が知らないアーティストでも受け入れてくれる。そんな環境が素晴らしいし、魅力だなって思います」
影山「アニサマに出たアニキや(ささき)いさおさんなんかは、ふだんとは違うお客さんの層が盛り上がってくれたって、すごく喜んでいました」
奥井「過去に出演した氷川きよしさんや西川(貴教)さんも喜んでいたと思う。自分たちのライブと同じように盛り上がっていたから。ちなみに、あまり乗ってないお客さんを見つけると、遠藤さんはそのお客さんの目の前で歌う(笑)」
影山「圧をかけるんだ?」
遠藤「違う違う(笑)。目の前で歌うのは、あくまでイベントの面白さを伝えたいだけだから!」
──ステージ上のパフォーマンスだけではなく、お客さんも含めた会場全体の雰囲気も映像で感じ取ってもらえたら、アニサマならではの面白さをより深く堪能できそうです。
きただに「さいたまスーパーアリーナという会場自体、もう圧巻ですから。すごい人数のお客さん対アーティストというか」
──今年のアニサマのテーマソングは、奥井さんが作詞作曲を手がけた「ONENESS」です。
奥井「1回目と10回目にも使われている楽曲なんですが、1回目の「THE BRIDGE」には「ONENESS」という、もっと根底にあるようなテーマがあって。当時から世界では紛争があったし、ご飯も食べられない人たちがいる現実がありました。そんな現実を前に、"みんな幸せになるために生まれたのにな"って思いを込めて、音楽で直接的に何かはできないかもしれないけど、この曲を歌っている人たち、聴いてくれる人たちが音楽っていいなって思って、間接的にでも「ONENESS」という意識を持ってもらえたらいい。そういう気持ちで作った楽曲です。そんな「ONENESS」ですが、こんなに長く歌われる楽曲になるとは思っていませんでした。きっと、プロデューサーの方たちがアニサマの初心を忘れないためにも、「ONENESS」を節目節目でテーマソングにしてくださっている気がします。人って、意識しないと初心を忘れそうになりますから。当時より今の方が社会の状況は良くないかなと思いますし、今年はあらためてまた気持ちを込めて。ライブでは音源に参加していないアーティストの方も歌うと思いますし、その日しか聴けない、その日しか見られない「ONENESS」になると思います。ぜひ楽しみにしていてほしいです」

──JAM Projectとして、今年のアニサマにかける意気込みや見どころ、楽しみにしていることを教えてください。
福山「新体制になって初めて作った「SKILL」という曲を、必ず最後にやるはずなんですよ(笑)」
奥井「今年もやっちゃうかなー……みたいな(笑)」
福山「「SKILL」のコール&レスポンスはかなりむずかしいんですが、みんなしっかりできていて、よく予習してきているんだろうなって、いつも感心します。そういうコール&レスポンスがむずかしい曲でお客さんの声を聞くと勇気が出るし、こちらもうれしくなるんです。そういうお客さんとのやりとりが、今年も楽しみです!」
遠藤「20周年に呼んでくれた意味を、ちゃんと考えてパフォーマンスしたいと思います。この時代だからこそ、うちらがこの熱い歌を若い子たちに届ける意味があるんだろうなと思うし、しっかり盛り上げたいですね。その責任を、ちゃんと全うしたいと思います」
奥井「JAM Projectの役割、位置付けがやっぱりあると思うので、それをきっちり果たしながら、初めて私たちを見る方にも響くステージにしたいですね。JAM Projectは平均年齢60歳ぐらいのユニットなんですけど、こういう感じで楽しそうに変わらずに、大人になっても歌を歌っている姿を見てもらうことで、歳を取ることは悪くないな、自分も楽しく歳を取りたいなって思ってもらえるような、そういうライブができたらいいなと思っています」
きただに「会場の大きさに負けないように、この5人がかっこよく映えるようなパフォーマンスをしたいと思っています。カメラも意識して、ステージ上を走ったりするかもしれません!」
影山「僕はみんなに比べるともうちょっとラフに考えていて、きっと全出演者の中で最年長のユニットになるし、楽しんで歌えればいいかなと思っていますね」
──11月には、25周年記念ライブ「JAM Project 25th Anniversary Live FINAL COUNTDOWN」も控えています。
奥井「私は2003年に加入したので22年ぐらいなんですけど、こんなに長くいるとは思ってなかったです。自分がそれまでやっていた音楽性とも違って、音楽的に男性性の強いグループなので。でも、いっしょにいると楽しいんですよね。ステージもそうですけど、ふだんの時間も」
きただに「ふだんの俺らに対しては、まわりのスタッフがびっくりしてますよ」
影山「ふつう、25年もいっしょだったら楽屋バラバラだよって(笑)」
遠藤「すごいですよね(笑)。そもそも個性が強いボーカリストという人種がいっしょにユニットを組むことってないけど、それでもJAMが25年も続いたのは、やっぱりバランスが良かったんじゃないかな。この5人じゃないと続けてこれなかったと思う。あと、自分たちでは意識しているわけじゃないけど、やっぱり進化してきたのかなと。一番最初の俺たちは古き良きアニソンを歌ってたけど、奥井ちゃんとかが入ってきたことによって、ちょっとずつ変わっていった。それは、奥井ちゃんがアニソン界で新しいことをやっていたボーカリストだった影響があると思う。そこから、JAMの在り方を探していった」
福山「それぞれがソロで好きなことをやって、JAMではアニメやゲームに特化した歌で一致団結する。その中で個人個人を活かすスタイルが、これだけ長く続いている理由のひとつだとは思います」
影山「25年、あっという間に過ぎた感じがします。俺、この世界に入ったのが16歳の時なんですよ。今年の7月で、丸48年。その半分以上でJAMをやっていることになるけど、若い頃は叶わない夢だったことが、JAMではリアルな目標になって、初めて日本武道館に立てたし、ワールドツアーもできた。ひとりのシンガーではできないかもしれないこと――よりクリエイティブな環境に身を置いて活動する――それができるのはJAMだけだし、バンドじゃないけどバンドみたいなパワー、マジック、ソロだと生まれないサムシングがあるから25年続けているし、ファンもここまでついてきてくれてるんじゃないかなと思います」
──11月のライブに向けての思い、そしてJAM Projectとしてのその先の未来予想図は?
奥井「とにかく健康に気をつけて活動していきたいと思います。昔の曲でも、キーを変えないで歌っていきたいと思っているので!」
遠藤「20周年の時に大きなツアーを組んでもらっていたんですが、コロナ禍でできなかったんです。11月のライブではその分もファンの方にお返しして、いっしょに25周年をお祝いしたい気持ちがあります。今後もソロではできないことをJAMで模索したいし、実際やれることはいっぱいあるんだろうし、ワクワクしながら活動したいですね。まだまだ見えていない景色もたくさんあるだろうから、それをファンのみなさんといっしょに見れたらうれしいなと思います」
福山「60歳を越えているミュージシャンで憧れている人はいっぱいいるんですけど、みんな過去の曲しかやらないんですよね。でも、JAMは1曲目を最新アルバムの曲にしたり、まだまだ現在進行形の可能性がある。だからこそ、新しいファンの人たちにも11月のライブを見てほしいし、あのライブが一番良かったねって、歴代のライブの中でも心に残るライブにしたい。それは今までもいつも思っていたことなんですけど、今回もそうしたいですね」
きただに「ドイツでもアメリカでもブラジルでも、そこに行けば必ずファンがいるんですね。どこに行っても"また必ず来て!"と言われるし、ドイツには今年のアニサマに来ると言っているファンもいました。そうやって日本以外の国でも愛されていることが本当にうれしいし、これからのJAM Projectは海外でもさらに爆発するんだろうなって、自分は思っています。今度リリースされるアニメ「ワンパンマン」第3期のテーマ曲が、そのきっかけになるんじゃないかな」
影山「「FINAL COUNTDOWN」というタイトルがついているので、解散するのかなって思われるかもしれないんですけど、そんなことないので(笑)。11月のライブで新しいスタートを切ってまだまだ続いていく……そういうハードルを自分たちに課したライブにしたいですね。めちゃめちゃ長く続いているグループで、年に1回ペースで活動しますって人たちもいますけど、俺たちはそうじゃない気がするんですよ。次の目標を決めて、それを超えていく姿をファンに見せて、この人たちってまだチャレンジしてんだなって、それがJAMの存在意義かなと思っているので。やっぱり、パフォーマンスって正直じゃないですか。キャリアを重ねると無理なことは無理になるけど、逆にできることも増えていくと思います。例えば、直球が武器のピッチャーが新しい変化球を覚えて、まだ先発で投げたいと思う。その感覚と、ちょっと似てるかもしれない。いずれにしても、自分の中の可能性を模索していくことが、やっぱり楽しいんですよね。なので、これからも新しいことにチャレンジしていくんだと思います」
(おわり)
取材・文/大久保和則

LIVE INFO
■Animelo Summer Live 2025 "ThanXX!"@さいたまスーパーアリーナ
2025年8月29日(金)i☆Ris、藍井エイル、オーイシマサヨシ、奥井雅美、小倉唯、KOTOKO、TRUE、西川貴教、氷川きよし+KIINA.、fripSide、MyGO!!!!!、三森すずこ、May'n、ReoNa、Roselia……and more!
30日(土)アイドルマスター ミリオンライブ! ミリオンスターズ、Ave Mujica、angela、Guilty Kiss、Saint Snow、GRANRODEO、ZAQ、JAM Project、スフィア、TrySail、FLOW、宮野真守、ミルキィホームズ、森口博子、Lia……and more!
31日(日)アイドルマスター SideM、蒼井翔太、ALI PROJECT、石田燿子、内田真礼、栗林みな実、鈴木このみ、SPYAIR、茅原実里、fhána、Poppin'Party、水樹奈々、米倉千尋、LiSA……and more!
■JAM Project 25th Anniversary Live FINAL COUNTDOWN
2025年11月15日(土)、16日(日)@大阪・東京建物 Brillia HALL 箕面(箕面市立文化芸能劇場)
2025年11月29日(土)、30日(日)@神奈川・横浜BUNTAI
「Animelo Summer Live」過去18年分、45公演を見放題配信中!――U-NEXTMEDIA INFO
JAM Project feat.BABYMETAL「Get No Satisfied !」DISC INFO
アニメ「ワンパンマン」第3期オープニング主題歌!
2025年11月12日(水)発売
LACM-24746/1,650円(税込)
バンダイナムコミュージックライブ
…… and more!
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