――1st フルアルバム『charme』が完成した感想から聞かせてください。

「頭にはずっとアルバムのことがありながら過ごしてきた1年だったので、まずは終わってよかったなっていう安心と、いいものができたなという気持ちがあります。自信作ができたと思っています!アルバムについて本格的に考え始めたのが春ぐらいだったので、それまでは無我夢中で一曲一曲を作って。タイアップ曲や既存曲だけで10曲あったので、点と点を繋げる作業が大変だったんですが、改めて、自分で曲を聴いてみたら、自分や自分以外の誰かとずっと戦っているなと感じました。なので、アルバムの新曲でリード曲でもある「暴動」は、心を動かすような瞬間をテーマに書きました」

――戦ってるというのは?

「何かが足りないという気持ちがずっとあるのかな。他人に対しては、例えば意見が違って対立したりすることもあるじゃないですか。自分が自分と戦う理由っていうのは……何かを探している、みたいな感覚に近いかなと思っています。特に新曲の「stardust」にそれが顕著に出てて。常に何か足りないなって思う部分ががあるし、ずっと満たされない感じがあるんですよね」

――その渇望感はいつくらいから感じるようになったんですか?

「中学校ぐらいから“私は何のために生まれてきたんだろう?”ってずっと考えていました。それまで自我がなかったというと大げさかもしれませんが、それ以前はただ生きていたというか、あんまり覚えてなくて。今、思い返すと面白いですね」

――何か明確なきっかけがあったんですか。

「きっかけじゃないかもしれませんが、私の家のテーブルが黒いガラスなんですね。そのときは夏だったんですが、反射して映った空がとても綺麗で。そこで、今を生きてる!生きてるとはこういうことなんだって思いました。ちょっと怖いですかね(笑)」

――あははは!いや、怖くないですよ。liaさんがテーブルを見つめている場面がはっきりと見えました。

「よかったです(笑)。どうしてかって聞かれると、自分でもよくわからないんですが、本当に生きてるんだなって思った瞬間から自我というか、はっきりと意思を持って音楽と向き合うようになりました」

――何のために生きてるのかという問いに対する答えは見つかったんですか。

「初めて自分がやりたいと思ったことが音楽だったので、それに人生をかける価値があるっていうのは常々思っています」

――「暴動」「stardust」「閃光バード」の3曲には、liaさんが人生をかけるべき音楽に出会った時の衝撃や衝動が描かれてるような気がしました。

「ああ!確かにそうかもしれないです。音楽にハマった一番最初の話をすると、“歌うことが好き”っていうところから入ったんですね。自分がいつ好きになったのか、その瞬間は覚えてなかったので、親に聞いてみたんですよ。幼少期にカラオケに連れて行ったら、楽しすぎて帰りたくないって泣いていたと言われました」

――そのことは覚えてない?

「全く覚えてなくて(笑)。自分より両親のほうがたくさん曲を知っているじゃないですか。私は知ってる曲が少ないから、そのことをすごく悔しがってたらしいです。自分で覚えてる記憶の中で、カラオケや歌うことがなぜ好きだったか?の問いに今答えるのであれば、歌うことが唯一、褒めてもらえることだったからだと思います。すごく楽しくて。ずっと歌ってたら、もっと上手くなりたいって思うようになった。最初のころの上手くなりたいって気持ちが、バンドをやっていくうちに、やがて人に届く歌を歌いたい気持ちになってきました」

――ソロではなくバンドだったのはなぜ?

「学生時代にバンドをやっていたというのも大きいんですが、やっぱりバンドが好きなんですよね。私はずっとひとつの大きい船に乗ってる感覚って言ってて」

――前回のインタビューで海賊王になるって宣言してましたからね(笑)。

「はい!海賊船に乗っている感じで強くなれる。メンバーは変われども、shallmというバンドを背負って歌うことで、すごいパワーをもらえる気がして。だから、バンドっていうフォーマットに意味があるのかなと思ってます」

――アーティストとして音楽を続けようと決意した瞬間のことは覚えてますか。

「進学して学校に行きながら音楽を続けるというのはあんまり考えてなくて、私はどちらかしかできないなって思っていたんです。音楽も進学もどちらの未来も想像はできたんですよね。あまり目立つタイプじゃなかったし、今までずっとそうしてきたように、普通に進学することもできた。でも、音楽に生きた方が納得できるというか、楽しいなって。「暴動」でも歌っているとおり<心穿つ違和感を逃すな>って思って音楽を選びました」

――なるほど。そこから<楯突いたルーキー/革命前夜><噛み付いたルーキー/革命前夜>と繋がるフレーズが、そのときのliaさんの初期衝動を思わせます。先ほど「心を動かすような瞬間」をテーマに書いたとおしゃってましたが?

「これはリード曲を作ろうと思って、とても迷いながら本当にすごく時間をかけて――できかけの残骸みたいな曲もいっぱいあって――何回も書き直した曲なんですが、アルバムのタイトルが『charme』で、shallmの語源になった、“魔法をかける”や“魅了する”っていう意味なんですね。冷静な自分が魅了された瞬間というか、心が動く違和感を曲にしようっていうのはずっとあって。でも、どういう形にしようかはすごく迷いました」

――アルバムのタイトルはどうして『charme』にしたんですか。

「セルフタイトルにすごく憧れがあって。ファーストアルバムというのは特別で、セルフタイトルをつけられる絶好の機会じゃないですか。ここしかないと思っていたので、どうしてもつけたかったんです。でも、そこで、shallmじゃなく、元々バンド名の意味となった『charme』にしたら面白いんじゃないかなと思いました」

――バンド名を決めた由来も聞いていいですか。

「まず、響きのかっこいい言葉をずっと探していました。どういう名前にしようかなって考えてたときに、フランス語やドイツ語の「Charme」っていう言葉を見つけて、ピンときて。ただ、スペルを少し変えたいなと思ってシャルムのシャルを英語の「shall」に掛けて“聴いてくれた人を必ず魅了するバンドになりたい”っていう思いを込めました」

――たとえば、liaさんがずっと魅了され続けてるものは何かありますか。歌以外で。

「麦茶!私、麦茶に魅了されてます」

――麦茶……ですか !?

「あはははは!これにはエピソードがあって。私、バドミントン部だったことがあるんですけど、体育館がなかなか使えなくてずっと外回りばかりしてたんです。走りすぎて死ぬって時に飲んだ麦茶が美味すぎて。それからもう麦茶大好き!大きいボトルに母が作ってくれたやつです。それまでは別に普通だったし、お茶かー……って思っていたのですが、その瞬間に美味しすぎて。本当に命の水っていうくらい感動しました」

――それからぶれずにずっと魅了されてるんだ(笑)。

「私が世界で一番麦茶を好きなはずです。こんなに麦茶が好きな人、私、会ったことないんですもん!もし私以外に麦茶が一番って人が現れたら悔しいかも(笑)。どんなジュースがあっても、麦茶が一番で、最後の晩餐何食べたい?と聞かれても飲み物は麦茶にします」

――すみません、脱線しちゃいましたね(笑)。「暴動」の話題に戻ります。この歌の主人公は何と闘ってますか?

「冷静な自分と衝動的な自分との戦い。どう生きるかみたいな話ですね。結局、衝動的な自分が、見たことない感動を僕にくれって言っているので、やっぱりそうなんだな自分は……って曲です」

――それは音楽に対する気持ちですかね。

「そうですね。何にでも当てはめられることなんですけど。私は音楽で生きているので、音楽のことですね。自分にとっての音楽は決して手段ではなくて。純粋に元々、音が好きだった。歌うことも好きだし、ギターを弾くのも好きだし。手段で音楽を選んだのでなく、とにかく音楽が好きです。喋るのは苦手だけど、歌うことで何かを伝えることはできるので、ないと大変なことになります」

――どうして「暴動」というタイトルにしましたか。

「まだ生きて十数年ではありますが、絶対にこれがやりたい!と思えることが音楽の他になくて。これで食べていきたいとか、これを職業にしたいって強く思うこと自体がもう、私にとっては大事件だったし、大革命だったんですね。このタイトルはぱっと決まって、心の中の暴動っていう意味で「暴動」になりました」

――新曲3曲には共通して夢っていう言葉も出てきますが、歌詞にある<夢が見れないや>の夢はどんなイメージですかね。

「瞬間的な感動みたいなものがすごく好きで、ずっと感動していたいし、心を揺らしたいし、心が揺れる瞬間を見たいと常々思っていて。自分の心もそうだし、もしも、相手の心を揺らせたら、音楽をやっていた意味があったんじゃないかなって。私、懐かしむのが好きなんですけど、懐かしいという感情も心が揺れたときのことなので、やはりそういう瞬間がないと私は生きていけないのかなと思います。それが夢というか、私が見たい景色なのかもしれないです」

――では「stardust」はどんなところからできた曲でしたか?

「星屑って意味で、私は星や星座、宇宙のYouTubeを見るのが好きなんですよね。好きでよく見るんですけど、見ていると広すぎて、なんだか自分はちっぽけだなって思うんですよ。長い地球の歴史で見て、私が生きている時間はすごくちっぽけで、何の意味があるんだろうと。それを、落ちていくわけじゃなく、ポジティブに考えるときがあって。<刹那の幻>っていう歌詞があるのですが、幻みたいだけど、何かを残したい、存在を表明したい自分がいてずっと何かを探している」

――ここで歌ってる<夢見た星屑の彼方>はどんなイメージですか。

「宇宙の向こうには何があるのか、誰かに教えてほしい。星屑の彼方にいる、全てを知ってる人が自分に教えてくれないかっていう思いですね。星屑の彼方に行けたらなと思うときがあります。そういうのをずっと考えて、1人で面白いなって思いながら寝ます」

――あはははは!<こんな日々を救う歌を聞かせてくれ>というフレーズは?

「イメージとしてはステージに立ってる自分を見ている自分ですね。救う歌を自分から聞きたいなと思っています。サウンドは結構ソリッドで強めの爆発的な感じ。ギターロックって感じです」

――ギターめっちゃ速いですね。

「あれ、すごいですよね!リハでスタジオに入る時も、ギタリストはみなさんそこを練習していて。とても大変そうですが、かっこいいフレーズだなと思いながら見守ってます」

――もう1曲の「閃光バード」は?

「これは夏休みの曲を作りたいなと思って作った曲です。私が思う夏休みって、退屈だけど、綺麗で美しい。暑いから外に出たくないし、自分は家の中にいるタイプだったので、友達とも会わず、退屈だけど、学校で見る夏とは違う、静かな家の中から見る景色がすごい綺麗だなって思って。ただ、同時に檻みたいだなとも思ったりするっていうことを書きました」

――さっき中学生のときに自我が芽生えたという景色も夏休みでしたね。ここで描かれてる閃光の瞬間というのは?

「これは花火にしたいなとずっと思っていて。花火に憧れて、最後、自分が飛んで花火になるっていう話です」

――花火のことだったんだ?

「そうなんです。靴も履かないままっていう。少しバッドエンドだけど、綺麗な歌詞を書きたかったんです」

――閃光を浴びて、今度は自分が閃光になって、命を燃やしてくんだっていう曲かと思ってました。音楽を閃光に置き換えているのかな?と。

「自分でも潜在意識的に、憧れて命を燃やすという意識があるのかなって思いました。この主人公にもすごく共感できるし」

――この曲の中にあるそれは<夢のように><今も夢を信じた>の夢はどんなイメージですか。

「夢のように空を飛びたいって繋げてるので……空を飛びたいのかな。空を飛びたいです」

――空を飛ぶ夢を見たりします?

「私、よく同じ世界の夢を見るんですよ。そこでは、自由に飛べるんです。今いる世界とは全然違うところで、夢だってわかっている夢を見る。それがすごく楽しくて。関係ないんですが、自分にも空を飛びたい願望はあります。でも、この曲は完全にお話って感じで作りました」

――「閃光バード」はロックバラードですが、新曲3曲はアルバムの後半にまとめてますよね。

「ライブとはまた少し違うんですが、繋ぎ方はライブを意識しました。流れないように、一曲一曲をしっかり聴いてもらえるような曲順に。たとえば「閃光バード」をバラードの流れに入れてもよかったんですが、同じバラードの括りで聴こえちゃうかなと思いました。なので、すごく迷ったんですけどテンションが上がった後に、いったん下げて「stardust」に行くっていう曲順にしました」

――全13曲揃ってご自身にとってはどんな作品になりましたか。

「季節感も違うし、毛色も全部違った作品になったと思っています。RADWIMPSさんの『RADWIMPS 3~無人島に持っていき忘れた一枚~』というアルバムタイトルがすごくいいなと思っていて。どんな日でも、これさえあれば大丈夫、みたいな。『charme』も日常の中でいろんな気持ちに寄り添える曲が入っていると思うので、お気に入りを見つけてもらえたら嬉しいですね」

――メジャー1stデジタルシングル「センチメンタル☆ラッキーガール」から1年の歩みをまとめたアルバムともいえますが、今のshallmを象徴する1曲を挙げるなら?

「「G2G」は結構好きですね。そうなりたいっていう曲でもあるので、shallmらしいかなと思います」

――shallmの将来像というか、目指す姿は?

「<あどけない振りして突きつける/歌声には震えもなく>って歌詞があるんですが、強気じゃないですか。<君も同じ穴のムジナ?>と誰かを誘い込めるようなパワーもある。バンドって続いていくじゃないですか。誰かが憧れてバンドを始めて、その人がまた誰かに憧れられて、バンドを始める人が出てくる。その輪に入れたらすごく嬉しいなって思っています。自分はまだまだ全然なので、それが夢でもあり、やってきた意味があるなと思うことで、この曲はみんなに問いかけるように歌うことがあって。みんなを引きずり込めたらなって思いながら歌っています。「G2G」はGo To Goの略で、もう行かなくちゃみたいな意味。生き急いでる曲。だけど、やるんだっていう。熱があって、結構ライブでも盛り上がって好きです」

――3度目のワンマンが来年3月に決定してます。どんなライブになりそうですか。

「決起集会というタイトルは「暴動」から来ていて。今まで人にたくさんのものをいただいてここまでやってこれたんですが、今回はお返しがしたいなって思っています。皆さんの心にも暴動を起こしたいという希望があるので、今からすごく気合が入っています。ぜひ遊びにきてください!」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/野﨑慧嗣

shallm 3rd Live 決起集会LIVE INFO

2025年3月1日(土) Veats Shibuya

shallm『charme』DISC INFO

2024年10月9日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)/TYCT-69313/5,500円(税込)
ユニバーサルミュージック

shallm『charme』

2024年10月9日(水)発売
初回プレス通常盤(CD)/TYCT-69321/3,520円(税込)
ユニバーサルミュージック

関連リンク

一覧へ戻る