――メジャーデビューってバンドにとってどういう出来事なんでしょう?
浜口飛雄也「目標というか、やりたいことのひとつにドラマとか映画の主題歌を歌いたいっていう夢があって、そこへの第一歩というか、より一歩近づいたかなっていうのはありますね」
――ドラマや映画の主題歌を書きたい、歌いたいという気持ちはどういうところから来てるんですか?
浜口「やっぱり聴いてきた音楽というか、憧れてるアーティストさんがそういうことをしていて、追いつきたい、そこに行きたいなとはずっと思ってます」
――やはりドラマとか映画とともに記憶として残ることもプラスに作用しますよね。
清水琢聖「そうですね。僕、最近ドラマとか結構観てるんですけど、そういう作品の 一部に自分たちがなれたらめっちゃうれしいことなんだろうなあっていうのは思いますね」
―moon dropはラブソングだったり、愛についてずっと歌っていますが、もし違うお題を与えられたらどうしますか?
浜口「違うお題、難しいですね……違うお題が来たとしても、ラブソングっぽくなっちゃう気がしますね(笑)」
――まあ、オファーする側もいきなり違うテーマを投げてこない気はしますね。
浜口「絶対にラブソングしか歌わないって決めてるわけではなくて、書く曲書く曲、出来上がったらラブソングで、結果的に今もラブソングばっかり歌ってるっていう。今はそういう形なので、きっかけとか、もしそういうことがあればもしかしたらラブソング以外に手を出すのかなとは思います。そういうことがない限りはずっとラブソングを書いてるかもしれないです」
――浜口さんの感情の浮き沈みが恋愛に関してしかあまり発現しないそうで。
浜口「そうですね。ふだんすごいぼーっとしてるというかのんびりしてるんで、感情の浮き沈みとかは恋愛がいちばん大きいんじゃないかなとは思うんですけど。なんかあんまり人にそういう話をしなくて、人にっていうかメンバーにですかね。メンバーにはそんなに話さないけど、でもメンバーも何となく分かってくれていて、曲にして聴かせた時に“こんなことがあったのか……”と後々分かるみたいな」
――それを約9年ぐらい続けてきてるわけですね。
浜口「そうですね(笑)」
――面白いです。皆さんはこの状態を続けていることの面白さはどういうところにあるんですか?
清水「純粋にその飛雄也が書く曲がめっちゃ好きなんで」
――面白さっていうより曲が好き?
清水「そうですね。元々、ぼくらは別々のバンドをやってたんですけど、高校生の時に知り合って。当時 飛雄也がback numberのコピーと自分の曲を半々くらいでやってたんですけど、当時から曲と歌声がすごい良くて。それが誘うきっかけになったんですけど、そこはずっと変わらないですね」
――ほとんどの曲が浜口さんか、浜口さんと坂さんの共作で。実際に形にして行く時ってどんな感じなんですか?
浜口「いちばん多いパターンは僕がワンコーラスぐらい弾き語りで持って行って、その先の構成とか流れを知哉に相談して、“これがいいんじゃない?”っていうのを提案してもらって……そうですね、それで作っていくのが多いです」
――坂さんはバンドアレンジを考える?
坂 知哉「そうですね。展開とか構成とか。たまにコード進行とかを提案して、リズムとかイメージ伝えて、バンドの形にしていくみたいな感じですかね。サウンド的にはすごいもうロックど真ん中な曲がすごい多いですね」
――歌詞が乗った歌メロみたいなものがもう既にそういうイメージを持ってるってことなんですかね。
坂「あんまり意識したことなかったですね。ちょっと変わったことやろうとかもあんまり思わなかったというか、ギターをストロークで弾いて、8ビートでみたいなのがすごい似合うイメージはあります」
――確かに。歌メロを無理やり作ってる感じが全然ないですもん。
浜口「ありがとうございます」
――それはすごい強いなあって。moon dropのアルバムの構成って恋愛に関してもいろんなベクトルがあって。今回は2枚目のフルアルバムですけど、アルバムの中で結構早い時期にできた曲とかありますか?
清水「「花」っていう曲が僕達が20歳くらいのときに作った曲で、このメジャーデビューのアルバムのタイミングで入れたいなっていうのはずっと話してて」
――この曲は珍しく抽象的な歌詞だなと。
浜口「うん、確かに。なんであの時、こんな歌詞書いたんだろうみたいなのは思いますね」
――生き残ってるっていうことは何か理由があるんですよね。
清水「ずっと大切にしてる曲だったんで、当時からアレンジも変えずにそのまま録って。メジャー一発目のタイミングには絶対に必要な曲だなって思ってました」
浜口「確かに、そのまま録れたのがすごい良かったですね」
――20歳の人が書いたと思うとなんかすごい大人っぽいですね。
浜口「今作る曲より大人っぽいっていう。何があったんでしょうか(笑)」
――若い時の方が背伸びするっていうのはあるかもしれない。
浜口「それは確かにあるかもしれないですね。変にいろいろ考えて迷子になったりとかしてたんですかね、分かんないですけど。でも面白い歌詞ですごいいいなと思いました。今聴き返して」
――それだけ長くメジャーデビューのタイミングで入れたいと思ってた曲だけに、演奏はきっと成長してるんですよね。
浜口「配信されて、ファンの方に聴いてもらって、SNSのつぶやきとかを見ていると、“すごいパワーアップしてる”みたいな声があったので、ちゃんと成長できてるんだなとは思います」
――そしてメジャーデビュー曲の「愛の縫目」はなかなかこう、字面だけで見ると哲学的な感じがするんですけど。
浜口「ははは!全然そんなことないです」
――バンドにとってはどういう曲ですか?
浜口「これは書こうと思ったきっかけが、前の恋人からその……二人が離れてちょっと経ったときに手紙が届いて、その手紙の最後に書いてあった言葉がきっかけでこの曲を書いたんですけど、なんかその手紙の最後に“いつか私のこと見返してね”っていう一文が書いてあって、で、時間が経ってからそんなこと言うのってズルいって思ったんですよ。その人がいなくたって自分の足で歩いていくよっていう、決意表明じゃないですけど、意思表示みたいな曲になりました」
――恋愛要素だけじゃないかもしれないですね。自分の成長っていうか。
浜口「はい」
――皆さんにとってはどういう曲ですか?
清水「最初弾き語り送られてきたときに、全然詞もメロディもあんまり飛雄也っぽくないなって思ってて。で、この曲がメジャーデビュー曲になるって聞いたときに、“この曲なんや……”って思ってたんですけど、飛雄也がこういうことがあってこういう曲を作って、だからメジャーの一発目のシングルにしたいって言われて、なんか腑に落ちたというか。このアルバムの核の曲なので、その詞が。今はこの曲が一発目で良かったなって思いますね」
――原さんはいかがですか。
原 一樹「さっきも言ってたんですけど、今までとちょっと違う曲調だったので、自分の解釈的にちょっとドラムをJ-POP寄りにしてみようかなと思って。で、ドラムのフィルインとかもそういうのを意識して作りましたね」
――グルーヴが成り立ってないと形にならないくらい、大きなミディアムバラードですね。大人っぽいというか
坂「この曲に対してはさっき琢聖が言った、飛雄也っぽくないなっていうのは僕も思ってて。“これがデビュー曲なのか !?”と思って飛雄也の気持ちを聞いて、今これで良かったっていうのも全く一緒で。その思いを知ってから、よりこの曲に愛着が湧いたみたいなところはあって。この間配信ライブで初めて演奏したんですけど、バラードだけど熱量もしっかりある感じで、今までにないライブの見せ方ができる曲になるのかなって思います」
清水「初めてやって思ったんですけど、なんかすごい独特な雰囲気を纏った曲だなって。次のツアーがすごい楽しみになりますね」
――それにしても浜口さんと付き合う人は大変ですよね。
浜口「ははは!」
――絶対、歌詞に書かれることになるから。
浜口「絶対に僕とは付き合いたくないなって思います。もし生まれ変わって女の子になったら」
――ははは!では皆さんが今回のアルバムの中で個人的にすごく気に入ってるとか達成感がある曲を教えてください。
浜口「僕は今も話してた「愛の縫目」です。メンバーが僕っぽくないって言ってくれるのもすごいプラスな意見だと思ってて。ぽくないっていうことは新しい一歩を踏み出せたのかなっていうのがあって。で、これからの気持ちとか全部乗せて、本当に力強い一歩を踏み出せる曲が書けたなと思っています。この先とかこれまでもそうなんですけど、moon dropにとって必要な曲になったなというのを実感していて。すごく大事な曲になりました」
清水「僕は「君とiらんど。」っていう曲ですね。飛雄也からデモが弾き語りの状態で送られてきて、その後バンドの細かなアレンジができたタイミングのデモを聴いてギターを考えるんですけど、いつもは“ああでもないこうでもない”って感じで色々考えたりするのに、この曲は頭に浮かんだギターのメロディがそのままパッとつけられたっていうか、すごいイメージがわかりやすかった。こういう曲って毎回なんですけど、ギターのメロディが降りてくるというか……」
――原さん、坂さんはいかがですか ?
原「僕は「ex.ボーイフレンド」ですね。歌詞にめっちゃ共感するというか、もうほんとにまんま、この歌詞にあることを僕も言われたことあるんです」
坂「俺もこの歌詞のこと、全部言われたことある(笑)」
浜口「なんかバンドマンの心を歌えたかなっていう気持ちはありますね」
――往々にして言われることなんですかね。
原「男子なら全員言われたこと……」
清水「俺は言われたことないけどな」
――その共感できる部分というのはアレンジや演奏に出ますか?
原「演奏には出ないですけど、ライブとかだとこれやったら当時言われたこととか思い出して感情入っちゃうんだろうなとかはありますね」
――ライブでは楽しい場面になってしまいそうです(笑)。坂さんはいかがですか?
坂「「kiiteruno?」って曲は作ったときのことをすごく覚えていて。この曲を作るときは結構難航していたんです。いちばん進まなかったぐらい。でも前のアルバムに入ってる「doubt girl」っていうちょっと激しめの曲があって、この曲がたぶん今まで作った中でいちばん激しいんです。僕自身激しいバンドが好きで、“ちょっとやってみようよ”みたいに言ったものの結構やり過ぎたかな?と思うぐらい(笑)」
――確かにちょっとびっくりしましたね。
坂「結構やりすぎかな?って当時思ったんですけど、でもやりすぎた方が分かりやすくて、出来上がったのを聴いて、いいアクセントになったのかなと思って。リフもたくさんあっていいなと思います」
――これもリアリティの塊ですね。
坂「“朝までには帰ります”って言ったことあるもんな(笑)」
浜口「あるよな(笑)」
――面倒くさいのに別れない曲って、一曲は入ってないとリアリティないかもしれないですね。
浜口「この歌詞は、もちろん実体験もあるんですけど、結構、他の人の恋愛話とか全部含んだ上で、恋人のこととか近しい人のこと、口では悪く言ってもどっかでつながっていたいみたいなところは心の奥底にあるんだなって。自分もそうですし、他の人の話を聞いても思って。みんながいろんなことに目をつぶったまま付き合ってるんだなって思ってこの歌詞になったんです」
清水「友達が飲みに行ったら飛雄也がいて、“俺歌詞書くからみんなの愚痴聞かせてほしい”みたいな(笑)」
浜口「ははは!」
清水「誰か言ってた気がするな」
――ネタにされてる(笑)。
清水「これ、あのときのやつやったんや?」
浜口「これかも。ほんとにまさにこの曲の歌詞を考えている時は飲みに行ったりして、愚痴が聞きたかった時期でしたね」
――改めてリサーチしたんですね(笑)。
浜口「“愚痴聞かせてよ”って言ってる時は多分もうすでに僕はベロベロであんまり覚えてないかもしれないんですけど(笑)」
――人の愚痴を聞いて安心したいっていうのもあるかもしれない。浜口さんがこれだけ恋愛について書くっていうのは関心がいちばん深いってのもあると思うんですけど、いい意味で人間関係に関して不安を隠してないということなのかなと思って。
浜口「そうですね。楽しいことだけじゃないのが恋愛の面白いところというか、絶対にどっちも訪れることなんで。そうですね。だからいっぱい曲書けるんだなあっていうのがあります」
――今は挙がらなかったんですけど、ラストの「アダムとイブ」、これはすごくラストにふさわしい曲なのかなと。
浜口「エンディング感。あとはクラップとかも入れたの初めてか。声出しとかも何も気にしなくていいようになったらみんなで歌えたらいいなと思って作りました」
――そしてこれはバンドとしてのキャッチフレーズかもしれないし、今回のアルバムタイトルに繋がってるのかもしれないんですけど、「嬉しくても悲しくても泣いてしまうのなら、僕の唄で君を泣かせたい」っていうマインドがタイトルに繋がってるんですか?
浜口「そうですね、これはライブ中に僕が言ってたた言葉らしくて」
――覚えてないんだ(笑)。
浜口「でも、思い返してみれば確かに言ったかもって思って(笑)。それを聞いてまあ確かにそうだなっていうのはあって。涙っていろんな意味があるなと思っていて。かっこいいライブを見た時とか、感動するライブを見たときとか、なんか悲しいことがあった時とか、どっちにしろ涙が出ちゃう人っているじゃないですか。自分の歌で涙が出るほど心を動かしたいなっていうのはあって。このキャッチフレーズになったんだと思います」
――アルバムタイトルにも紐づいているんですか?
浜口「このタイトルにしたのは傷跡みたいにずっと残るものが欲しくて。で、永遠ってなんなんやろ?あるんかな?とか考えた時に、なんかそれは事実だって思ったんですよ」
――事実?
浜口「はい。そこにあったことというか、起こったこと。だからここにいたとか、ここにあった事実をこのアルバムに残したいなと思って、このアルバムタイトルになったんです」
――永遠を与えるとかあげるとかっていうんじゃなくて、起こったことを記録する、と。
浜口「そうです」
――なるほど。どういう意味なんだろうと思ったので、腑に落ちました。そしてこのアルバムを携えて全国ツアーがありますね。
浜口「フルキャパのライブハウスでたくさんやれる機会も増えてきて。“こんなに人、入るんや!”って思い出しましたね」
――年が明けてからのライブで声出しOKになってますけど、見る側が声の出し方を忘れている感じです。
清水「僕らも元々そんな声出しを煽るようなバンドでもなかったので、声が出せるようになったからみんな出してねみたいなスタンスではなくて」
――そうなる前にコロナになったし。
浜口「そうですね。今、琢聖が言ったように、声を出してほしいというより、そのまま聴きたいならそれでいいんだよと思っています。みんなで歌えたらどんな感じになるのかとか気になったりはするんですけど、無理にやらなくてもいいのかなと思っています。そうなったときはどんな感じになるのか楽しみっていうぐらいですね、心持ちとしては」
――そもそもコロナ禍に入る前にまだライブハウスに行ったことがない人もいるかもしれないですね。
浜口「最近めっちゃ多いですね。SNSでも”初めてのライブがmoon dropで”みたいな声もあって。前やったワンマンライブもそのそういう人が結構いて。でも“初めてがmoon dropでよかったです”ってたくさん言ってもらえたので、すごいうれしかったですね。それがなんか繋がって、また僕らのライブにも来てほしいし、もっとライブハウスにのめり込んでほしいというか、対バンもこんなカッコいいバンドいっぱいいるよっていうのを知ってほしいなって思いますね」
(おわり)
取材・文/石角友香
LIVE INFOmoon drop 2nd Full Album「僕の唄で君に永遠を」Release Tour 2023「追憶ラブストーリー」
― TWOMAN LIVE ―
3月25日(土)鈴鹿ANSWER w/ WildPitch
3月31日(金)Bessie Hall(北海道) w/ カネヨリマサル
4月20日(木)CLUB RIVERST(新潟) w/ Ivy to Fraudulent Game
4月22日(土)enn 2nd(宮城) w/ アメノイロ。
4月29日(土)LIVEHOUSE CB(福岡) w/ Half time Old
4月30日(日)Live Space Reed(広島) w/ Half time Old
5月2日(火)高松DIME w/ ケプラ
― ONEMAN LIVE ―
4月8日(土)梅田CLUB QUATTRO
5月12日(金)渋谷Spotify O-EAST
5月28日(日)名古屋THE BOTTOM LINE
DISC INFOmoon drop『僕の唄で君に永遠を』
2023年1月25日(水)配信/3月22日(水)発売
VICTOR ONLINE STORE限定セット(CD+DVD)/VOSF-11865/7,700円(税込)
完全生産限定盤(CD+DVD)/VIZL-2171/5,500円(税込)
通常盤(CD)/VICL-65793/3,300円(税込)
Getting Better
…… and more!
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