──2022年11月からデジタルシングルを3ヵ月連続リリースしているMonthly Winter Release“冬の大三角形”ですが、もともとこの構想ありきで制作を始めたのでしょうか?
柳田「いや、制作自体は8月ぐらいから始まってて、最初に着手したのが「夜間飛行」だったんですよ。どれを最初に作ったのかな?と思って、さっきDropboxを見たら、8月末ぐらいに「夜間飛行」のデモが入ってたんで。asmiさんとコラボができることが決まったのもそのだいぶ後で、じゃあ3曲出揃ったからどういうふうに出す?みたいな感じだったんです。“冬の大三角形”っていうタイトルも、僕が11月ぐらいにL.A.に行った時にマネージャーさんに話をしたんです」
──L.A.にはプライベートで?
柳田「はい。3泊5日の弾丸で。でも3泊5日じゃ足りなかったです。向こうのストリートミュージシャンのレベルが違いすぎて。日本だと、ここ最近はオケを流して人の曲をカバーしている人をよく見かけるんですけど、向こうはそうじゃなくて。40代ぐらいの女性が海沿いで一人でやってるんですよ、ほぼ素っ裸で。でもそれが上手いんですよ。サンタモニカのベニスビーチっていうところとか、歩くたびにそんな奴らがいっぱいいて。レベルが確実に一定のラインを超えてるんです。だから、この島国で一生過ごすのはもったいなさすぎると思いました。音楽をやるならなおさら、いろんな国に行って、いろんな楽器に触れて。別にライブを見に行く必要もねえなと思って。ストリートミュージシャンを見てるだけでも、一生面白いわっていう感じだったので、もっともっと食らいたいです」
──いい刺激になりましたね。では、“冬の大三角形”最後のラストを飾る「夜間飛行」について伺いたいと思いますが、この曲が生まれた背景を教えてください。
柳田「今回、カップスターの新プロジェクト“NEXT GENERATION NEXT CREATION”リードコラボレーションソングに選んでいただいたんです。そのリードソングのオーダーとして、カップスターにちなんで“3分ジャストの曲を作ってほしい”ということだったんですよ。それでいてカップスターや神サイにとってレガシーになるような曲で、ポジティブでエネルギーに満ち溢れている曲。さらにお互いにチャレンジもしたいということで、今まで神サイになかったような楽曲を、というところを模索するところから始めていきました」
──曲の構成が面白いし、聴き応えがあるので、3分ジャストと今言われてびっくりしています(笑)。
柳田「そうなんですよ。3分でよくここまで盛り盛りに構成を決められたなっていう。本当なら1サビにしろ、2サビにしろ、倍にしていいぐらいなんですけど、ずっと物足りないっていう感じをちょっと狙っていました。聴き終わった後に、もう一回聴きたいってなればいいなと。編曲も今回は僕がやりまして。3分っていう決まりがあるので、パズルをはめていくような感覚で構成を逆算して作っていって、そこにビートを乗っけていった感じです。マスタリングの日に、エンジニアさんに“今回めっちゃいい感じじゃん。誰がアレンジしたの?”って言われた時は、“誰がやったと思います?私ですよ!”って、ドヤり散らかしました(笑)」
──トラックがあがってきて、みなさんはどういうアプローチでレコーディングを進めましたか?
吉田「基本的にシングルコイルのギターで録っていて。間奏のディレイのフレーズとかは、柳田さんのを。いいアイデアだなと思いました。ああいうディレイの感じを、間奏のこのパートで持ってくるんだ !?みたいな新鮮さ……神サイに今までなかったなっていうことをすごく感じて、ライブでもいい意味でいろいろ遊べそうだなと思いました。どんどん崩してもいいし、いろいろアレンジなんかもできそうだし、幅が広がる感じの曲になったなと思います」
黒川「この曲はドラムは全部打ち込みなんですよ。柳田からライブアレンジはちょっと派手にしてほしいと言われてて」
柳田「そう!ライブではめっちゃ変えたいから、先に考えといてって(笑)」
黒川「結構空白が多くて遊び方がめちゃめちゃあるから、逆に難しい。でもいい方に考えればなんでもできるので、試されてる感じですよね。だから一番ハマるやつはなんだろう?といろいろと考えているところです」
桐木「僕は、まず歌詞がめっちゃいいなと思って。音としては、ベースのプレイがどうこうというより、最近は音楽の聴き方をちょっと変えたんですよ。一歩引いてみて、木を見るんじゃなく、森を見るというか、大局的に見るというか。この楽器がこう入ってるからこうなっているとか、一つ一つの意味をちゃんと考えるようになりました。それをきっかけにひとつの作品に対して、もっと理解が深まったっていう感じがあります」
──歌詞はAM4:00と時間が限定されています。4時って、夜と朝のちょうど狭間の時間帯ですよね。
柳田「夜中に頑張ってるやつが好きなんですよ。勝手にグルーヴを感じてしまいます。制作する時はやっぱり、太陽が燦々と照ってる時より、夜中のあの静けさがゴールデンタイムというか、めっちゃ集中できるんですよ。夜中ずっと制作していて、ベランダでタバコを吸いながら街中を眺めていて思ったことが、この歌詞のすべてです。後半の展開が変わる<君一人だけに>のところはライブで歌ったり演奏している姿をめっちゃ思い描きながら。神サイはまだまだ駆け出しだなっていうことを、活動していて顕著に感じるので、そういう意味でもロックスターになりたいなという思いを書いてます」
──“冬の大三角形”の星と、Rockstarの“スター”がはまっているなと。
柳田「ミュージシャンと天体の星って、めっちゃ共通する部分があって。今キラキラ輝いて見えている星も、実はとうの昔に爆発して消滅してて、その光が遅れてやってきて、それを僕らが今見ている。ミュージシャンも人間なんで、いつかは解散したり脱退したり、寿命を全うして亡くなったり、その人自身の存在はなくなってしまうけど、音楽は一生残り続ける。そういうところが共通していると思っていて、確かにこのRockstarが“冬の大三角形”の一番最後に出てくるっていうのは、ちょっとエモいかもしれないですね」
──“冬の大三角形”第一弾の「キラキラ」は、青春時代の誰もが共感できるワードがたくさん出てきますね。
柳田「この曲をリリースした後に、いろんな感想がメッセージで送られてくるんですけど、こういう青春を送れてない人もやっぱりいて。ずっと一人だった人とか、コロナ禍で修学旅行も全部なくなってしまったとか。そういう人にとっての青春を一つ作ってあげたいっていう思いもあったんです。たとえばそれが僕らのライブであったり、楽曲であったり。青春は大人になっても作れるし、自分らも40代とか50代になった時に、思い返せばこの20代のバンドをやってた頃が一番の青春だったなと思うかもしれないし。コロナ禍だから若い子は旅行禁止みたいな政治家の発言があったじゃないですか。コロナ禍で散々若い子たちの青春が奪われているのに、まだ追い討ちをかけるのか、と。どうかしてるぜって。だから僕らみたいなミュージシャンが、そういうところを作ってあげるしかないのかなって、すごく思いましたね」
吉田「自分らの曲を個人リハ以外で聴くことってあんまりないんですけど、「キラキラ」はふだんも聴くんですよ。朝起きて聴いたりすると、なんかすごい元気をもらう、エネルギッシュな曲ですね。この前ライブで初披露したんですけど、その後もなんか俺すごい元気で(笑)、家帰っても全然寝れなかった」
──テンションが上がり過ぎたんですかね(笑)。
吉田「東北は2デイズ公演だったんですけど、東京帰ってきてもマネージャーさんと柳田が、機材車の周りを走り回ってるぐらい元気だったんですよ(笑)。俺もなんかそんな感じで、すごいエネルギーをもらえる曲だなって、そういうパワーを持った曲はいいなって思います。それがリスナーの人に伝わると一番いいと思うし、それも俺らの役目だなっていうことをよく考えます」
──桐木さんはいかがですか?
桐木「今は別に青春してるっていう感じはないんですけど、たぶん10年後とかに振り返ってみると、あれが青春だったんだなって思うだろうなと。この前、母校の大学に4人で行ったんですよ。そしたら授業中にめちゃくちゃかったるそうにしてる子がいて、俺もそうだったなって思って(笑)。今は授業も楽しくないけど、後でこの時代を振り返ると、これも楽しかったって思えるんだろうなと。俺がたどってきた人生、もうすでに青春してたんだなって気付けました」
──当事者はなかなか今自分がキラキラしてるかどうか気付けないですもんね。黒川さんはいかがですか?
黒川「この曲はライブで2回やったんですけど、全力疾走っていう感じなんですよ。800メートル走をペースも考えずに初っ端から全力で行く、みたいな。ライブではドラムの繋ぎから入るんですけど、そこから全開で行くので、この曲だけで汗でびしょびしょになっちゃって(笑)。それぐらい本気で行かないと、この曲は叩けないので、観ている人にもそれが伝わればいいなと思います」
柳田「仙台と郡山で初披露したんですけど、BPMも185で速いし、ロックだし、だからパフォーマンスが行き過ぎちゃって、その後マネージャーさんに“ちょっとやり過ぎかも”って言われたんですよ。確かにそんなに血と汗と涙みたいな曲ではない(笑)。これはどんどんライブでやることで曲が完成するのかなと。これから冬のフェスやZeppツアーがあるので、そこで曲やパフォーマンスの精度を高めていきたいなと思います」
──そして12月リリースの「朝靄に溶ける」は、シンガー・ソングライターのasmiさんとのコラボレーション。asmiさんと一緒にやりたくて作った曲だそうですね。
柳田「もうasmiさんのことだけを考えて作りました。asmiさんの表現力というか、入り込み方がすごくて、レコーディングはテイク2ぐらいで終わっちゃいましたけど。僕もボーカルディレクションに入ったんですけど、どこも突っ込むところがない。しかも、asmiさんは僕がワンコーラスのデモに歌詞を書いて送った時に、オクターブ上のasmiさんのパートを歌って送り返してくれれば良かったんですけど、二番の歌詞まで書いてきてくれて。俺らなんかのためにめっちゃ真摯に一緒に物作りをしてくれて、そういうところがめっちゃ好きだなと思いました」
──そういうやり取りがあったんですね。サビの二人のユニゾンも素晴らしいです。
柳田「Cメロとかも僕的には結構張り上げないと出ないところなんですけど、asmiさんのすごいところは、どのキーにいてもめちゃくちゃいいっていうか。女性的にはたぶん低いんでしょうけど、すごく深味があるというか、味があるっていうか。どういうキーで歌わせても全部いいっていうのがasmiちゃんの良さ。ピッチも全然ずれないし」
──二番のasmiさんパートになると、後ろのドラムも変化するんですが、あそこもいいですね。
黒川「そこは結構こだわったというか。トオミさんがアレンジしてくれたものから、フレーズとかを変えたりしたんです。結構こだわりが詰まってるんで、それはちょっと嬉しいですね」
──歌に寄り添うサウンドも心地がいいです。
吉田「そうですね。この曲はアコギを弾いてまして、すごく生々しさが残るようにプレイしたんですね、意識的には。アコギってどうしても弦がビビちゃったり、フレットに当たってうまくならなかったりすることもあるんですけど、その微妙なニュアンスをあえて残したりして、曲の中の感情とうまくリンクできたのかなって思います」
桐木「この曲は、編曲にトオミさんに入っていただいたんですけど、楽器をやっている人が一つ一つ音をバラして聴いてみたら、めっちゃ面白いんですよ。俺らには思いつかないような音が入ってたりするので。なので、作曲とかしてる人には特に面白いんじゃないかなって思いました」
──ひとつ気になるところがありまして。最後の<白息>のところ、音だけ聴いていると白雪なのかと思っていました。
柳田「これはちょっとエピソードがあって。本来は<白息(しらいき)>なんですけど、デモで俺がなぜか白雪って歌っちゃってて、そのまま進んでいっちゃったんですよ。asumiさんもそれに合わせて白雪って入れてくれているし、スタッフさんもみんな“柳田くんは白息って書いてあるけど、言葉遊びとして白雪って歌ってるのかな”って思っていたらしく。“え?白息ですよ?”って言ったら、“でも白雪って歌ってるよ”って(笑)。俺全然気付いてなくて、聴いたらめっちゃ白雪って歌ってました(笑)。でもそれが逆に面白いかもと思って。そういう偶然の産物だったんです」
──そういうことでしたか(笑)。では最後に2023年1月15日から始まるZeppツアーについて意気込みを聞かせてください。
柳田「ようやくZeppでツアーができるようになったか!という感じで。俺らがバンドを組んだ時は、“音楽で食っていこうぜ!”みたいな感じじゃなかったんですけど、気がついたらもう7年も一緒にいて2020年にはメジャーいって。で、いよいよZeppツアーという感じなんで、着実に階段を登っていってますよね。言ってしまえばこれが勝負の時で、Zeppツアーで半端なものは見せられないので、圧倒的なライブを、圧倒的なパフォーマンスを、圧倒的な曲を届けて、そこからまた次のステップに進んでいきたいなと思います」
黒川「今までのツアーも自分の中では100パーセントでやってたんですけど、それでもちょっと余力というか、開放できてない部分があって。それを全部取っ払ってやりたいなっていうのが、今回のツアーの個人的な目標です。ドラムがめっちゃ良かったら、それだけでお客さんはノレちゃうので、それを目指して頑張りたいと思います」
桐木「ライブって、弱いところも強いところも、その人自身がもってるものが出ると思っていて。なので最近は、毎日何を考えて生きてるかっていうことをすごく大事にし始めていて、あとはそれを出すだけっていう感じですね。ライブではもう何にも考えないようにしたいんですよ。そうするためには自分と向き合って、自分の感情とか性格をアップデートしていって、あとはそれを出すだけっていう感じにしたいと思ってます」
吉田「ライブ1本1本を大事にしたいですよね。いつも“あそこがああだった”とか“こうだった”みたいな後悔することが結構あるんですけど、いい後悔にしたいなって。チャレンジして失敗するなら……失敗するのはよくないですけど(笑)、どんどん自分のやりたいことに挑戦していきたいなって、Zeppツアーに関してそう感じています」
(おわり)
取材・文/大窪由香
LIVE INFO
Zepp Tour 2023「雪融けを願う飛行船」
1月15日(日)Zepp Fukuoka
1月21日(土)Zepp Nagoya
1月22日(日)Zepp Osaka Bayside
1月29日(日)Zepp Sapporo
2月5日(日) Zepp Haneda(TOKYO)
FUKUOKA MUSIC FES.2023
1月28日(土)福岡PayPayドーム
ツタロックフェス2023 supported by Tポイント
3月19日(日)幕張メッセ国際展示場 9・10・11ホール
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