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──神はサイコロを振らない、初のコラボレーションシングル「初恋」のリリースが発表されて、すでに話題になっていますが、今回このコラボレーションシングルを制作された経緯を教えてください。
柳田周作「僕らは今年で7年目になるんですけど、それまでずっと4人で楽曲を作って世に出してきた中で、外部からの刺激がほしくなって。神サイはジャンル分けをするとどこに入るのか自分たちでもわかってないようなバンドで、年々作っている音楽が変わってきているんですよ。いい意味で、どこに向かっているのかわからない船というか、行く先々でいろんなものを吸収して、それをアウトプットしてきたバンドなんですね。そこからさらに、もっと新しいところに舵を切りたいという思いがあって、じゃあコラボをしたいよねっていう話になったんです。誰かに作ってもらうんじゃなくて、誰かと一緒に作りたいというところから、ヨルシカのn-bunaさんにお願いしたいってなって。ギターの吉田がn-bunaさんと知り合いだったので連絡してもらいました」
吉田喜一「今思い返してみれば、かなりイカれてますよね(笑)」
柳田「身の程をわきまえろと(笑)」
吉田「すごい格上の人に、いきなり曲を作りましょうって連絡して。そしたら意外と好反応で」
柳田「n-bunaさんもすごいバンドが好きな人で。ヨルシカはn-bunaさんとsuisさんの2人体制ですけど、ライブでは固定のメンバーとバンド形式でやってる方なので、僕らが"バンドで一緒にやりたいです"って声を掛けたのが意外だったらしくて。n-bunaさんもノリノリで"一緒にやりましょう"って言ってくださって、そこから始まりました」
黒川亮介「よぴ(吉田)がn-bunaさんと友達って、最初はあんまり信用してなかったんですけど(笑)。みんなでn-bunaさんとやりたいねって話してたことが、どんどん現実になっていってるのがすごく楽しくて。これ、絶対いいものができるやんって作る前からずっと思ってたんですよね」
吉田「なんで信用してなかったん?」
黒川「n-bunaさんって雲の上の人だと思ってたから(笑)。そのn-bunaさんとよぴが繋がってるって、まず、そんなよぴがすごい。さらにこの話を繋げたよぴがすごいなっていう話ですよ」
吉田「なんかうまく言いくるめられた気がする(笑)」
桐木岳貢「今思い出したんですけど、バンド結成当初の福岡で、まだ誰にも知られてなかったのに、ツアーか何かの企画で格上のバンドの方に急に連絡して"出てください"って言ってたんですよ。そういうことを昔からやってたなということを思い出しました(笑)。この先も奇想天外な人に声を掛けるのもありなんじゃないかなって。調子に乗ってるわけじゃないんですけど、それが実現したら面白いし、実現できる程の力をもっとつけていきたいですね」
──n-bunaさんとのコラボが決まってから、どんなふうに進めていかれたのですか?何かテーマを出したりされたんですか?
柳田「いや、テーマはまったく決めずに、ヨルシカの「花に亡霊」とか「春泥棒」みたいな温かみのあるバラードを一緒に作りたいとしか伝えてなかったんです。本当はn-buna節があるので、できれば作詞作曲の両方をn-bunaさんに頼みたかったんですけど、それだと共作にならないので、n-bunaさんには曲と編曲とプロデュースをお願いして、僕が作詞をするということをZoom打ち合わせで決めて。それからしばらくして、今回の「初恋」のワンコーラスのオケとシンセのメロディが送られてきたんです。シンセメロってやっぱり機械的なので、どうしてもイメージが湧きづらかったんですけど、そこに仮歌として柳田節の歌詞と歌い回しを入れていって、少しずつ全貌が見えてきたっていう感じでした。だから、レコーディングを迎えるまで、完成形が見えていた感じではなかったんです」
──レコーディングでは、それぞれこの「初恋」に対してどのようなアプローチをされたんですか?
黒川「n-bunaさんとコラボするにあたって、やっぱりn-bunaさん節を大事にしたいなというのがあって。ヨルシカをいろいろと聴いて、自分が思うn-bunaさんのいいところって、自然な感じ、ナチュラルなところだなと思っていたので、そんなに加工しないドラムサウンドで生っぽさを大事にしました。今回のドラムは優しい柔らかいイメージで作りたかったので、優しい音が出るペダルを使ったり、ドラムセット選びからいろいろと探って、どうやったら楽曲がよくなるか、楽曲が呼んでるサウンドになるかなっていうのを研究しました」
桐木「自分は5弦ベースしか持ってなくて、だけどこの曲は100パーセント、5弦ベースの音じゃないってなったので、友達から4弦ベースを3本ぐらい借りてきて(笑)。アンプも自分の持っているものでは合わなそうだなと思って、アンプも借りたんです。そうしたら自分が想像していた音が出て、n-bunaさんにも"いいですね"って言ってもらえたので、こだわってよかったなと思いました」
吉田「ギターは神サイで使っているセットをそのまんま使ったんです。バッキングはテレキャスでコード感を出したり、リードはキラッとしたところを多く出すように音作りをしました。その音作りもn-bunaさんと2人で、"この音好き"とか"このフレーズはどうやったの?"とか、その場で話し合いながら、密にコミュニケーションをとって作っていった感じですね」
──歌詞の風景を映すようなサウンドだなという印象があったのと、音のバランスと言いますか、途中まで歌に寄り添うように後ろに流れていたと思ったら、途中から前面に出て歌を盛り立てるようになったり、その強弱や奥行きがすごく絶妙だなと思いました。
柳田「それはもう、エンジニアさんの神業です(笑)」
吉田「特にアコギとかすごいよかったよね」
柳田「生音で録った楽器が段違いでよかったんですよ。ドラムとかピアノ、アコギや歌が。n-bunaさんがよく使っているスタジオだったんですけど、聴いていると今までとクオリティが違っていて。生音がよくて、なおかつミックスのエンジニアさんもすごいよくて。すべてのいいところを凝縮したような曲になりました」
──素晴らしいと思いました。そしてコラボボーカリストとしてアユニ・Dさんに声を掛けたのはどうしてですか?
柳田「さっき言ったように、最初のリファレンスとしてn-bunaさんに「花に亡霊」とか「春泥棒」みたいな曲を出したということは、すごく優しくてあったかいイメージを持っていたということなんですけど、それならば女性ボーカリストもきっと優しくてあったかい歌声の人を選ぶのが普通だと思いますよね。だけどアユニさんはBiSHでもPEDROでも、結構力強くて個性のある歌声の方で。だからこそ、そんなアユニさんに今までとまったく違うものを歌ってもらったら面白いだろうなと思ったんです。アユニさん自身も"今まで力強い感じでしか歌ってこなかったです"ってレコーディングの時に言ってましたけど、実際にやってみて、本当にアユニさんにお願いしてよかったなと思いました」
──力強い感じでしか歌ってこなかったアユニさんに対して、どういうことを要望されましたか?
柳田「レコーディングの時にn-bunaさんと一緒に色々提案させてもらったんです。たとえばマイクに向かって歌を歌うっていう意識じゃなくて、マイクからちょっと遠いところから、マイクに向かって語りかけるようなテンション感で歌ってみてください、とか。アユニさんの今までの歌に対する概念を少し僕が誘導させてもらって。そこから生まれたのが今回のテイクなんですけど、アユニさんのことをよく知っている方達も、聴いた時に新鮮な感じがする、初々しいテイクが取れたんじゃないかなと思います」
──柳田さんとアユニさんの声の相性もとてもいいですね。「初恋」という歌詞のテーマとタイトルは、n-bunaさんの曲を聴いて湧いてきたイメージを言葉にされた感じですか?
柳田「湧いたというよりも、どちらかというと絞り出すというか。インスピレーションとして、夏とか海というワードは浮かんだんですけど、そこからこのストーリーを作り出すのはゼロから生み出す作業だったので、それはめっちゃ苦戦しました。ましてや自分が作ったメロディじゃなくて、n-bunaさんが作ったメロディラインに詞をつけていくのって、本当に大変な作業だなと」
──この初恋は成就しなくて、それぞれが大人になって別の場所でお互いを思っているような、そういうストーリーをイメージしました。
柳田「僕はですね、小学校一年生の時に本当の意味で初恋をしまして、そこから9年間その子に片想いをしていたんですよ。小1から中3まで。で、合計で6回ぐらい同じクラスになったんですけど、俺、一回もしゃべったことがないんですよ」
──ええっ!それは想像以上にピュアなお話でした(笑)。
柳田「ピュアすぎて(笑)。シャイなんですよ。本当に好きだから話しかけられないっていう。で、成人式で会ったんですけど、やっぱり無理だったんですよ。それぐらい初恋の人の存在って偉大で、それをそのままストーリーに落とし込んだ感じになります」
──みなさんはこの7月でメジャーリリースから丸1年を迎えます。コロナ禍ということもあって、大変なことも多かったと思いますが、マイナスだけではなかったのではないかと思うのですが、振り返ってみてどんな一年でしたか?
柳田「めちゃくちゃ楽しかったです。神サイは「泡沫花火」という曲で2020年の夏にメジャーデビューしてから、経験したことがないことをたくさん経験させていただきました。今までの僕らのステージはライブハウスで、そこをツアーで各所回ることが当たり前で、これを続けていくことが当たり前だと思っていたんですけど、メジャーリリースのタイミングとコロナ禍が重なったことで、ライブハウス以外のところでも戦わなくちゃいけないことになって。この2020年から2021年にかけて、ラジオにもたくさん出させていただいたし、テレビでも何度も歌わせていただきました。あんなに動くカメラに撮られながら4人で演奏することなんてなかったので、そういう意味でたくさんの刺激をいただきました。で、その極め付けが今回ヨルシカのn-bunaさんとアユニさんとのコラボで。神サイにとっても、あと僕らと一緒に戦ってきたバンドにとっても、希望を与えられるんじゃないかなって思えるような動きができた一年じゃないかなと思います。もちろんライブバンドではありますし、ライブも大好きなんですけど、音楽ってそもそもそこだけじゃないよねっていうことを改めて提示できた1年だったと思います」
黒川「僕は音楽を仕事にするっていうことをよく考えた一年でした。ちょうど一年前までバイトをしてたんですけど、メジャーにいって音楽だけで生活するようになると、自分がどれだけ足りてないかっていうことが見えてきた。音楽的な知識もドラマーとしてのスキルもそうですし、全然まだまだこんなんじゃだめだなと思って、もっと勉強しないと、と思って。でも勉強するだけでいいドラマーになれるかっていったらそうじゃないと思うし、自分をどんどん磨いていかないといけないなと思いましたね。あと、自分に伴う責任とか、周りの人たちがいるからこそ、いろんなことができているんだということもよく考えるようになりました」
桐木「この一年間、ラジオとかテレビとかインタビューとか、今回のコラボとかもそうですけど、初めてのことだらけで。コロナ禍になってライブができなくなった時に、YouTubeやラジオやインタビュー記事なんかを読んで、他のメンバーはこんなことを考えているのかとか、"こいつ、こんな長所があったんだ"とか、そういうことに気付けた年でした。当時バンドを組んだ時に、このメンバーだったらいけるぜって思った感覚がより一層濃くなったというか。バンドと向き合う時間が嫌でも増えたし、それぞれが何を考えてるかわかったし、これからもっともっといけるんじゃないかなっていう感じがしました」
吉田「確かに、バンドと向き合う時間が増えたというのもあったし、自分とも向き合う時間が増えました。何に対してどうするのかっていうことの伝達を、自分の中でもっと色濃くしていく作業を、このコロナ禍で一番やっていたことかもしれない。でもそれ以上に、制作をしたり、メディアに出していただいたりといったことがたくさんあったので、インプットがすごく多くて、自分の中で実りのある一年だったなと思います」
──そして今年5月、6月にツアーを開催されました。そこで今度はライブという場所や、ファンの方達と向き合われて、いかがでしたか?
柳田「3月に「エーテルの正体」というシングルを出して、そのタイトルをツアーのタイトルにもしたんですけど、「エーテルの正体」の"エーテル"は、光が伝わっていくための媒質を指す言葉で、光を音楽に例えた時に、僕らが作った音楽が伝わっていくためには、そこに必ず人がいないと成立しない。それは僕らのファンであったり、ラジオのリスナーであったり、テレビの視聴者だったりするわけなんです。結局音楽というものは人がいないと、ただ作るだけじゃ成立しないということに改めて気付いたんです。僕らはそれまで、ライブや物販という場所でお客さんとコミュニケーションを取ったりして、ファンと距離が近いバンドだったんですけど、それがコロナ禍で引き離されて、曲を作ってもSNSでしか反応をもらえなくなった。だけど、生で伝えられない分、すごく考えて長文を送ってくれる人がいたりして、届けられるメッセージがより色濃くなっていったんです。そんな中でメジャーリリースも決まって、"今までついてきて本当によかったです"とか"これからも応援してます"っていうメッセージだったり、"明日を生きるためにどう前向きになったらいいかわからなかったけど、神サイの音楽を聴いてなんとか明日も生きていこうと思います"みたいなことを言ってもらった時に、こういう人たちのために自分は音楽を作って、この4人で音を慣らしているんだっていうことを、コロナ禍になって初めて気付けたんです。それまではただガムシャラに走り続けてきて、誰のために何のために音楽をやっているのかがあんまりわかってなかったんですけど、やっと"エーテルの正体"が何なのか気付けました。この一年は自分たちにとって必要な一年だったと、改めて気付かされました」
(おわり)
取材・文/大窪由香
写真/いのうえようへい
- 神はサイコロを振らない×アユニ・D(BiSH/PEDRO)×n-buna from ヨルシカ「初恋」
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2021年7月16日(水)配信
Virgin Music