──encoreでのインタビューは、11作目のDigital Single「花占い」以来、約1年ぶりです。お元気でしたか?

「はい! とても元気です!」

──この1年で美依紗さんの環境が変わりましたね。

「そうですね。お仕事が大きくなるにつれて、プレッシャーを感じて、心が追いついていない部分もありましたけど、それを乗り越えて、一旦、心を落ち着ける時間を取らせてもらいました。そこで、夢を目指していた時期の自分というか…本来の明るい自分を取り戻せました」

──今日、お会いした瞬間にわかりました。

「“楽しいと思うことをやってみよう!”という気持ちになったんです。もちろん、楽しいだけでは難しいお仕事ですけど、それでもやっぱり、楽しくないと意味がないということに気づけました。と、同時に、これまでお世話になってきた方々への感謝の気持ちも生まれて。以前の事務所にいた時期にいただいていたお仕事のおかげで、新しい縁が繋がっていたりもしているので、これまで積み重ねてきた経験を踏まえて、じゃあ、これから、アーティストとして、俳優として、どういう清水美依紗を届けていくのか?…心機一転です」

──これからどんな清水美依紗を見せていきたいですか?

「やっぱり切羽詰まっていると、どうしても目の前のことでいっぱいいっぱいになってしまうんですけど、その中でも楽しめる要素はいくらでもあると感じました。もっと楽しんでお仕事できた部分もあったかな?とも思ったんです。だから、これからは“人生を面白がる”をテーマに楽しんでいきたいです」

──笑顔が増えてよかったです。

──そして、今年早くも2作目のDigital Singleです。ドラマ『時光代理人』の主題歌「Dive」に続く、通算13枚目のDigital Single「Reunion」はTVアニメ『天は赤い河のほとり』のエンディング主題歌です。

「今までもいろんなタイアップを担当させていただいてきましたけど、やっぱり慣れることはないですし、毎回すごく嬉しいです。作品と楽曲がどんな化学反応を起こすんだろう?という部分でも楽しみでしたし、3rd Digital SingleHome」以来、3年ぶりのバラードに挑戦できたことも嬉しかったです」

──原作のコミックを読んでどう感じましたか?

「今まであまり少女漫画を読んでこなかったので、キュンキュンしますし、ドキドキしました。普通の女子中学生のユーリが紀元前にタイムスリップして、そこで出会ったカイルと恋に落ちる物語で、ファンタジーな世界観も大好きですし、歴史の授業で習った地名がたくさん出てきて! ユーリが“あ、歴史で習ったところだ”と言ってるセリフに共感したり、ユーリの天真爛漫さや芯の強さも魅力的だと感じています。読めば読むほど、次が楽しみになって、どういうふうに結末を迎えるのかも気になっています」

──作詞、作曲、編曲はTaisei Todaさんです。前作「Dive」に引き続きのタッグですね。

「はい、仲良しです。私は普段、家族とは三重弁で喋るので、Taiseiさんとも自然と三重弁になります。そういう部分でグッと距離が近くなりました」

──Xでのやりとりを見ると、以前からの知り合いなんですね。

「私がニューヨークに留学していた時に、別の人を経由して、“コラボ動画を撮ってみない?”と誘っていただいて。Taiseiさんはアカペラもやられている方なので、MISIAさんの「つつみ込むように」をアカペラの動画でコラボしました。それが出会いで、ちょうどコロナ禍に帰国した時に、カバー動画で、ディズニーとか、いろんな曲をセッションさせてもらいました。そのカバー動画のコラボがきっかけとなって仲良くさせていただいていて、その時からTaiseiさんの才能を感じていました。コーラスを作るのも上手ですし、ボイパもできて、作詞作曲もできるし、ピアノもできる方です。“いつか一緒に楽曲作りたいね”という話を一昨年くらいからしていました。リリースされた曲でいうと、この間のドラマ主題歌「Dive」が初めてだったので、こうして2作連続でご一緒できることがとても嬉しいです」

──「Reunion」ではどんなリクエストやオーダーをしたのでしょうか?

「もう完全にお任せしました(笑)。今回はコンペだったんですけど、“こういうイメージで曲を書いてください”と言われたキーワードが“大きな河”だけだったんです」

──それだけだったんですか?

「そうなんです。“大きな河”というキーワードだけで、「Reunion」を書いたTaiseiさんってすごいです。それが見事に選ばれました。当時はまだ原作を読んでいなかったんですけど、この楽曲を初めて聴いた時に、すぐに“歌いたい!”と思って」

──最初に聴いた時にどう感じましたか?

「タイトルの意味も楽曲のテーマも“再会”ですけど、私は、亡くなった父を思い浮かべました。“会いたい”って。会いたい人を思い浮かべると同時に、小さい頃から大人になるまでのいろんな思い出が頭の中を巡ってきました。きっと初めて「Reunion」を聴く方はそういう気持ちになる方もいらっしゃると思います。人に限定するだけでなくて、ペットや物、場所だったりを思い浮かべてもらえると思いました。で、改めて原作を読むと、<愛の心(しるし)>とか<一ツ星>とか、歌詞の中に原作のキーワードとなる言葉が散りばめられていることもわかって。原作ファンが見たら間違いなく、“ああ〜”ってなるようなワードですし、アニメを見る方も原作ファンも、そして、この楽曲を聴く人も、いろんな受け取り方ができる曲だと思いました」

──お父さんとのどんな思い出が浮かんできましたか?

「双子の兄と父と3人で夜中の23時くらいに山の中に歩いていって、カブトムシを捕りに行ったり。そこにはいろんな虫がいて、私が“メスのカブトムシ捕った!”って言った虫が、めっちゃゴ○ブリで。父が“お前、それ、カブトムシちゃう!”って驚いたっていう。あとは、本当に身内ネタですけど、うちのダイニングで父が座る場所が決まっていて。父は私のおでこが大好きで、わざわざ遠回りして、私のおでこを触ってからトイレに行く、とか。この楽曲を聴いた時に、そういう些細な思い出をたくさん思い出しました。でも、歌詞や楽曲には…」

──直接的には関係はないですけど(笑)、家族の中での笑い話みたいな思い出が浮かんだんですね。

「はい。楽しい思い出ほど、絶対に消えないですよね。悲しい感情はずっとは覚えていないと私は思います。 父が亡くなった時の感情も、実際には“悲しい”というよりかは、“え? 信じられない”みたいな感じが大きかったです。それを越す楽しい思い出があるから」

──では、改めて、大切な人との再会をテーマにした至極のバラード「Reunion」のレコーディングにはどんなアプローチで臨みましたか?

「張り上げずになるべく余白を持って歌う。囁くようなイメージで歌わせていただきました。何より歌詞が素敵なので、歌詞が一番最初に聴こえるような歌い方を意識しました」

──エモーショナルに歌い上げることもできる曲ですが、消え入りそうなくらいの掠れ声で歌っているパートもありますね。今、“余白”とおっしゃいましたが、その“余白”があるおかげで、聴き手が自分の思い出を重ねられるような歌になっているように感じました。

「そう感じていただけて、とても嬉しいです。まさに今おっしゃってくださったように、歌い上げられる楽曲ほど、余白を残すことで、聴き取り手がいろんな想像をしやすくなると思いました。何より歌詞が本当に素敵なので、一つ一つ言葉を丁寧に置いて歌うことで、声の印象よりも歌詞の印象を先行させたかったんです。Taiseiさんが作ったものをリスペクトする意味でもそこが大事だと思って歌っています」

──歌詞で特に好きな部分はありますか?

「最後の<またここで会えたら 抱き寄せて 名前を呼んで>です。この言葉は素直でグッときました。名前を呼んで欲しいですもん、父に」

──ちなみに、美依紗さんはお父さんになんて呼ばれていたんですか?

「本当に意味がわからないあだ名をつけられていました。“エテポンテ”って言われていたんです(笑)。名前の由来は私のおでこを触る時の擬音語でした。私のおでこを“エテエテ”って言いながら触っていて。で、当時少しぽっちゃりしていたので、“ポンテ”とも言われていて、それが”エテポンテ”となったんです。あと、シンプルに“美依紗”って呼ばれたり。でも、あだ名で呼ばれていたことが多い分、名前で呼ばれたときのことが、今、思い出せるくらい貴重だったので、その瞬間を覚えています。だから、<名前を呼んで>というワードがすごく素直に、“確かに名前を呼んで欲しいな”ってなります」

──Taiseiさんからは歌に関して何かディレクションはあったのでしょうか?

「たくさんありました。“こういう風に歌ってほしい”ということを全く言わない方ですけど、音のアウトプットのニュアンスをこだわる方で。それを伝える時の表現の仕方がすごく独特な人なんです。そのリクエストに応えていくのがとても大変でしたけど、幅が広がったと思います。言われたニュアンスを受けて、自分がアウトプットしたものが、今までなかった歌い方だったりもしました」

──ニュアンスだから、言葉で言うのは難しいけど…。

「ビブラートのタイミングも、すごく細かかったです。Taiseiさんは作品をとても大切にされる方なので、“原作のユーリやカエルの気持ちに共感しながら歌ってほしい”というディレクションもありました。そのアプローチは少しミュージカル的にも感じました…すごく難しかったですけど」

──ユーリとして歌っているのですか?

「カイルの視点とユーリの視点、どちらも込められています。タイトルの「Reunion」にも、ユーリとカイルの再会を表していると思います。歌詞の<一ツ星に願う>や、<伝え足りない愛の心(しるし)>も、原作を読んでいる方ならきっとわかると思います。ユーリとカイルが離れ離れになった瞬間があって。当時はハートマークが"愛のしるし"として存在しない時代だから、“愛してる”をどうやって伝えるの?って。そこでユーリがカイルにハートマークを教えたんです。そのハートマークをのちに贈り物としてユーリに贈ったり。そういう二人の素敵なエピソードがたくさんあるんです。ユーリとカイルが再会を果たして、二人が名前を呼び合っていたシーンを思い出してグッときますし。だからこそ「Reunion」というタイトルもすごく原作に寄り添ったものになっていると思います。原作をご存じない方もアニメを見ない方もそれぞれのもう一度会いたい人や忘れられない誰かを思い浮かべながら聴いていただける楽曲とになっていると思います

──アニメの絵に着いたのはもう見ましたか?

「ちらっとだけ見ました。個人的には放送が始まってからの楽しみに取っておきたくて。既に解禁されている PV 映像も薄目で見ました。なるべく放送されるまで楽しみを取っておきたいんです。あのモノクロの絵の世界観ですらもう素晴らしいメッセージを受け取っているんですけど、色がついて、キャラクターたちが動きだした瞬間にどんな広がりを見せてくれるのか? 放送がすごく楽しみですし、早く見たいです」

──最初に“化学反応が楽しみ”とおっしゃっていましたが、どんな化学反応が起きそうですか?

「化学反応とは少し違うんですけど、パズルのピースがピタッとハマるような感覚になると思いました。原作を読んでから、この「Reunion」を聴くと、ユーリやカイルの気持ちを全て代弁してくれているんだと感じられるんです。私たちが作品を通して抱いた想いや感情も、この楽曲やメロディーに詰まっているので、きっとお互いのピースがぴったりとハマって一つの作品として完成していく感じになりそうです

──ご自身のMV も制作中だとお伺いしました。

「撮影しました! MVも再会をテーマにしていて、いろんな登場人物が大切な人との再会を果たしていく、私のMV作品では初めてのストーリー仕立てになっています。私も役として出演しています。それぞれのキャラクターが異なるバックボーンや時代を生きていて。その人たちが大切な人と再会を果たす物語になっているので、ぜひ楽曲とあわせて楽しんでいただけたら嬉しいです!

──ドラマ仕立てのMVを楽しみに待っています。

──そして、「Reunion」のリリースと前後して、6月から8月にかけて、ミュージカル『ジョセフ・アンド・アメージング・テクニカラー・ドリームコート』に出演中です。

「東京で1公演やった後に仙台に行きます。それから名古屋と岡山と大阪行って、また東京に戻ってきます。まだ2公演しかやっていないのが不思議なくらい、今、とても余裕です」

──おお! 余裕なんですか?

「はい。不思議なんですけど、余裕を持って向き合えています今回はナレーター役で、文字通り、物語をお伝えしていく役なんですけど、この作品は歌で物語が進んでいくので、その説明のほとんども歌で届けているんです。そういう意味でも今までにない役どころだなと感じています。『レ・ミゼラブル』も歌で進んでいく作品ですけど、ナレーターとは違って演じる役にはしっかりとしたバックボーンやキャラクター設定がありました。今回はそういった特定のキャラクター設定がないので、私らしいナレーターというか、ナレーター・清水美依紗という感じで、語り部として、観てくださる子どもたちにも大人の方にも、”この物語を届けたい!”と思いながら演じています

──ライブっぽい感じなのでしょうか?

「いえ、しっかりミュージカルです。すごく面白いのが、ナレーターとして物語をお届けしながらも、登場人物たちと関わったり、その世界の中に入っていったり、一緒に踊ったりもするんです。俯瞰して語るだけではなくて、その場で起きている出来事に感情移入する瞬間もあります。いわゆるナレーターというより、物語全体を動かして、時にはかき回すような存在でもあるんです。全てを見守りながら物語を導いていく役なので、今まで演じたことがない役どころでとても楽しいです」

──そして、10月からはミュージカル『ミス・サイゴン』でキム役を務めることが決定しています。

はい! 私も信じられないです」

──『レ・ミゼラブル』のエポニーヌに続く大役ですね。まずは、おめでとうございます!

「ありがとうございます!」

──まだ稽古前ではありますが、キム役を務める心境を聞かせてください。

「キム役はずっと夢だったので、オーディションに受かった時はとても嬉しかったです。私はニューヨークにミュージカルを学ぶために留学したんですけど、ミュージカルの授業の課題曲として渡された曲がキムが歌う「命をあげよう」だったんです。その時に初めてこの楽曲とこの役に出会いました。「命をあげよう」を授業で歌った時に、“この役を演じたい”と思いました。そもそも"役を演じたい"いう気持ちをはじめて抱かせてくれたのもキムだったので、まだ信じられない気持ちですし、すごく嬉しいです。とても重い作品ですけど、今の世界情勢だからこそこの作品を上演する意味も絶対にあると思っているので、真摯に向き合いながら、大切にお届けしたいと思っています!

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/野﨑 慧嗣

RELEASE INFROMATION

清水美依紗「Reunion」

2026年77日(火)配信

清水美依紗「Reunion」

ミュージカル情報

ミュージカル『ジョセフ・アンド・ザ・アメージング・テクニカラー・ドリームコート』
:ナレーター役で出演!

ミュージカル『ミス・サイゴン』
:キム役で出演!

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