──今、忙し過ぎないですか?

「あははははは。“確かに!”って感じなんですけど、この忙しさを楽しんでいます。ここまで忙しくさせてもらうことはなかなかないので、本当にありがたく思いながらお仕事をさせてもらっています」

──トピックがたくさんあるのですが、まず、今年2月に映画『ウィキッド ふたりの魔女』のジャパンプレミアで来日したアリアナ・グランデとの初対面がありましたね。

「当日、“今日、アリアナに会えるんだ!”っていう実感があまり湧かなくて…。本当に会う直前まで、“日本にいるのかな? 現実に存在してるのかな?”という感じだったんです。でも、実際にお会いできました。私の憧れの人であり、私の尊敬する人であり、私のロールモデルみたい人なので、まず最初に涙が溢れました」

──ご本人を目の前にして?

「はい。“あなたの大ファンなんです”って言葉もなかなか出てこなくて(笑)。とにかく“好き”っていうことだけは伝わったと思います」

──憧れであり、尊敬する人なんですね。

「ちょっとひと言で言い表すには難しいぐらい大きい存在なんです。歌手を目指す上で、自分が目標としてきた歌手像がアリアナでした。歌手を目指しだした頃から、“アリアナみたいなライブをしたい”という想像をしてきました。“アリアナみたいな歌手になりたい“って言うよりは、本当に”アリアナのように強いパワーを持っているアーティストとして確立した存在になりたい”とずって思っていましたから」

──涙の後、どんな会話を交わしましたか?

「いろんな話をしました。やっと落ち着いてきて、“とにかく好きなんです!”っていうことを伝えて。でも、アリアナも8年ぶりの来日だったので、すごくエキサイトしていました。“日本にまた来れて嬉しいし、今日、本当に楽しみにしていたんだ”ってことをすごく伝えてくれたんです。久々にアリアナのファンの皆さん…“アリアネーターに逢えたことがとても嬉しいわ“っていうふうに何度も何度もおっしゃっていて。私もいちファンとして、”お帰りなさい!“っていう気持ちがあったので、実際に”Welcome Back!“って言いました。あと、”またツアーをしてほしいです“ってことも伝えたかったんですけど、伝え忘れて…」

──アリアナは『ウィキッド』をやるために音楽活動を休止していますからね。

「そうなんですよ。でも、昨年リリースした最新アルバム『エターナル・サンシャイン』を“毎日聴いている“っていうのは伝えました」

──憧れの人と同じ役を日本語吹き替えで演じたってことは、ご自身にとってはどんな経験になりましたか?

「“夢が叶った!”っていう感じです。高校生のときに『アリアナ・グランデ全国オーディション”#Ariガール”を探せ〜』を受けていて…」

──2016年5月ですよね。アリアナ・グランデの来日に合わせたオーディションに名古屋地区代表として出場して審査員特別賞に選ばれて。当時、「三重のアリアナ・グランデ」と呼ばれていましたね。

「そのオーディションが終わった後に、アリアナの公式ツイッター(当時)に、<アリアナと共演するのが夢です>ってツイートをしていたんです。先日、アリアナと会った日にそのツイートを見つけて。そのときももちろん本気だったんですけど、“こうやって実際に現実になっている“って実感したというか…。こうやってツイートをしていたんだっていうのを見ると、やっぱり頑張ってきて良かったと思いました。しかも、アリアナ自身も『ウィキッド』が大好きで、”グンリダという役を演じたい”っていう夢を叶えた作品でもあるんですよ。アリアナも自分も夢を叶えたという共通点から、すごく大きなことだなって感じました」

──アリアナが音楽活動を休止してまで熱望して挑んだ役に声を当てたわけですよね。

「それは、やっぱり大変でしたね。ミュージカルをやっていたとはいえ、そこまでアフレコの経験はないですし、まだ数作品しか出ていなかったので。お芝居も学んでいましたけど、プロとしての経験値は圧倒的に少ないので、“しっかりとお芝居をする“っていう不安感はもちろんありました。しかも、顔も体も見えない状態で、声だけでのお芝居というのはまた別の技術がいるので。そこはすごいプレッシャーでしたし、怖かったですし、実際に決まったときは、”嬉しい!“っていう気持ちより、”決まった。よし、ここからだ!“という覚悟のようなものがありました。大変でしたけど、本当にいい経験になりました」

──歌唱パートはそんなに大変じゃなかったですか?

「ずっとアリアナの歌声を聴いてきていたから、あまりニュアンスの部分で苦労した感じはなかったです。セリフ収録の方が先に進んでいたので、セリフをやってから歌の収録に迎えたことも良かったと思います。芝居と歌を繋げられることができましたし、歌はすごく楽しかったです。とにかく、このグリンダという役自体がすごく難しい役なんです。悪気は無いけど、思ったことをポンポンと言う。言葉選びが難しいので、勘違いはして欲しくないんですけど、文字だけで読むと、ちょっと善意の押し付けに近い印象を受ける人がいるかもしれないので。でも、グリンダには、可愛らしさやユニークさという、持ち前のキャラクターがあって。グリンダの人間力の高さに魅力を感じましたし、それを見事に演じているアリアナからも感銘を受けました。でも、そんなグリンダを演じるとなると、やっぱり難しさがあって…。全てをわかっている上でグリンダのような言葉を発すると、やっぱり皮肉になっちゃうんですよ。下手するとただの性格が悪い女の子になっちゃう。でも、彼女は本当に相手を思ってその言葉を言っています。そういう部分を表現するのが難しかったです」

──ピュアで優しい子なんですよね。

「かなりピュアですね。ネタバレというか、作品を見た方は多分わかると思うんですけど、自分の弱さを受け入れる強さがあるんです。本当の優しさを知らない状態の彼女がエルファバと出会うことで、自分の弱さと強さを見つけていくというのが詳細に描かれています」

──同じく2月にはミュージカル『レ・ミゼラブル』が帝劇で千穐楽を迎えました。建て替え前の最後のミュージカル公演でしたが、これもすごい瞬間に立ち合っていますよね。

「ね! すごいことが起きているんですよ。“どうしてその瞬間で実感できてないんだろう?“っていうようなことが本当に起きていて。帝劇ラスト作品の『レ・ミゼラブル』の公演が終わった後に、”あっ、帝劇もクローズしちゃうんだ!“みたいな気持ちになりました。帝国劇場ってミュージカルを目指す人たちからすると、憧れの舞台で、みんなが憧れるし、みんなが立ちたいと思う聖地ですよね。特に、『レ・ミゼラブル』を目指す人は多いですし…」

──以前もお話しましたが、三重の高校生だった2017年に『歌唱王 2017』でエポニーヌのソロ歌唱曲「On My Own」を披露しているので、かつて描いた夢をここにきて回収していると感じています。

「そうですよね。自分も憧れていた舞台に立てることが出来たことはすごく誇りに思っていました。でも、それも後からなんですよ。立っているときは必死でしたから、終わった後にそんなようなことを感じました。この作品は歴史が長いですし、帝国劇場も長い歴史を持っていて。何度も出ていらっしゃる方は“劇場に育てられた”、“作品に育てられた”って言ってらっしゃる方もいました。私はまだ2作品しか帝国劇場に立ててないので、育てられたと言うよりは、“挑戦の場”だったんですけど、たくさんの挑戦をさせてもらいました。毎公演、やっぱり違うものになるんです。みんなの芝居が変わればリアクションも変わりますし、そういう部分でたくさんの挑戦をさせてもらった場だったので、これまたいい経験になりました」

──そして、多忙な中ではありますが、前作「Finale」から3ヶ月というタームで新曲「花占い」がリリースされます。ドラマ『霧尾ファンクラブ』のオープニングですが、原作コミックを読んでどう感じましたか?

「まず、“お話が面白い!“って思いました。”身近な推し活じゃん!“って。主人公の二人、三好藍美と染谷波が面白いんですよ。例えば”霧尾くんがオナラしてたらどうする?“とか話していて。”そこ? でも、わかる!“っていう場面がたくさんありました。かなりコメディで、ちょっとおかしいですけど、純粋に”誰かが好き“っていうのはすごく素敵なことだと思いますし、2人とも同じ人(霧尾くん)が好きなのに、好きな人のことについてこれだけ盛り上がっている。変な観点から見て面白がれるのって最高ですよね。”素敵な推し活だな“って思いました。「花占い」という曲はいつもお世話になっているMitsu JさんとSHOWさにお願いしたんですけど、逆に、学校感がないんですよ」

──そうなんですよ。高校を舞台にした青春ラブコメのオープニングだと思って聴いたら、想像とは違っていて驚きました。

「私もびっくりしました(笑)。“こういう感じで来た!?”って。なんだか儚くて、いい意味で、“面白いな”って思いました。確かにあの2人は花占いしそうですし、歌詞は大人びている感じなんですけど、あれくらいの年の子は子供のようで大人びているし、大人びているようで子供っぽいですし。それに、霧尾くんのことが好きで、霧尾くんのことで盛り上がっている時間って、後から思い返すと、絶対に青春ですし、“儚いな”っていう気持ちになりますから。だから、“面白い正解を見つけたな”って思いました。歌うのはとても難しかったんですけど…」

──美依紗さんは“青春”と聞くといつの時代が思い浮かびますか?

「やっぱり高校時代かな。三重に住んでいたんですけど、高校は名古屋の高校で三重県からちょっと都会に出て。いろんなタイプの子と出会って、帰りにプリクラを撮ったりしていて。中学生までは門限がとても厳しくて、学校帰りにどこか寄ることがなかったんです。高校生になって、行動範囲が広がったことで、そういうことも出来るようになって…。それは私にとって、“青春だな”って思います。楽しかったな〜」

──遠い目をしていますね(笑)。今は推し活、していますか?

「アリアナ推しです。ファンクラブがないので、ファンクラブに入るとかはないんですけど、ひたすら歌を聴いて、アリアナがメイクしている動画を見たりとか。コスメブランドをやっているので、そのコスメをずっと見たりとか。今は『ウィキッド』祭りなので、ウィキッドとコラボしているコスメを見て、“これ、可愛いな〜”とか、ずっとやっています」

──「花占い」の話題に戻りますが、先ほど美依紗さんが言っていたように“放課後”や“教室”というワードは出てこないですし、“君”と“僕”という人称もないですね。どう捉えましたか?

「ちょっと言語化するのは難しいんですけど、私の解釈では、“今の等身大の私が歌ったら?”というアプローチで歌っています。自分の“懐かしいな、恋しいな”っていう思い出を思い浮かべながら歌いました」

──花びらがすでに散った後の状態を思い浮かべていますか?

「そうですね…過去って綺麗ですし、美しいじゃないですか。最近、よく思うんです。苦しい思い出も楽しい思い出も、全部ひっくるめて美しいなって。もちろん、私だけじゃなく、皆さんもたくさんの失敗をしてきたと思うんですね。そういう失敗を今日まで後悔していたけど、もう散っているもので、終わっているものというか…。すごく抽象的なことを言っていますけど、そういうのを思い浮かべながら歌っています」

──ラブソングと言っていいんですか?

「うーん…これは、ラブソングなのかな?」

──(笑)『ウイキッド』の話をした後だと、恋をしたことで、弱さと強さも知っていくような曲にも聴こえてきます。

「確かにそうですね。本当に捉え方次第ですよね。恋を歌っているんですけど、恋の対象で変わりますし」

──推し活の曲にも捉えられますし。

「はい。絶妙にひねくれてますから。だから、この曲は本当に“今の私”って感じです。等身大です(笑)。「TipTap」や「Finale」はテーマが明確ではっきりしていたんですけど、この曲はいろんな感情が入り混じっていますし、歌詞やテーマが抽象的でいろんな捉え方が出来るので。だから、難しんですけど、歌っていて楽しいんですよ」

──過去のどんな思い出を思い浮かべていましたか?

「自分自身ですね。自分の失敗だったり…。私、自分が他人にどう見られているのかがすごく気になっちゃうんです。で、不安になって。不安になると、縋っちゃうんですよ…何かに、誰かに」

──この曲だと、占いに縋っている?

「そうですね。花占いはしたことないんですけど、占いはとても好きで。タロットカードをよくやるんです。10デッキくらい持っているので、“これだ!”って思った、ピンときたカードを取ってタロット占いをしたりします。それくらい、実は何か縋るものがないと自分を保てないと言う一面があって。その対象が、恋愛だったときもあれば、歌だったときもあれば、人間関係だった時もあって。そういう、散っていった、ちゃんと手放しができた過去を思い浮かべながら歌いました。…そういうところがあるんですよね、私」

──(笑)じゃあ、<夢と希望抱えて/さあ 行きなさい>は過去の自分に言っているのかもしれないですね。

「まさにそうだと思います。日本語の綺麗さを感じる歌詞なのでじっくり読んでもらいたいですし、ドラマのオープニングとしては、いい意味でのギャップを楽しんでもらえると思います」

──ドラマは4月からオンエアがスタートしますが、美依紗さんはミュージカル『レ・ミゼラブル』の全国ツアーとミュージカル『ビートルジュース』の再演もあります。かなりお忙しいかと思いますが、大丈夫ですか? 体調。

「最近、1日に10人くらいから聞かれます(笑)。レミゼの大阪公演でも“大丈夫? 明日、東京に行くんでしょ?”」って聞かれたりして。喉は強いので大丈夫なんですけど、体力は急にガクンってなるときがあって…。去年は知恵熱みたいな発熱もあって、“あ、限界なんだな”っていうのを逆に知れたんです。自分でどこが限界なのかがわかってきたので、お仕事は100%でやりますけど、どこかで抜きながらやらないといけない…。そうじゃないと力を入れるところで、力が入らなくなったりするので、そこの調整ってすごく大事なんだと思いました。でも、最初に言ったように、これだけ忙しくさせてもらうことって、言い換えると、“充実した毎日を送れている“ってことでもあって。急に、”あれ? 私、何もしてない!?“って日が来るかもしれないじゃないですか。だから、今は、この時間を楽しもうと思っています。”ポジティブにやろう!“と決めているので、今年は最強に”ポジティブ美依紗“でやっていきます!」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/野﨑 慧嗣

RELEASE INFROMATION

清水美依紗「花占い」

2025年43日(木)配信

Streaming & DL

ミュージカル情報

ミュージカル『レ・ミゼラブル』:エポニーヌ役として出演!
全国ツアー公演:2025年4月~6月 福岡・長野・北海道・群馬

ミュージカル『ビートルジュース』:再演決定!リディア役として出演!
2025年5月 東京 日生劇場
2025年6月 大阪 新歌舞伎座

清水美依紗 関連リンク

一覧へ戻る