――今回2ヶ月連続で「林檎の花」と「FATE」が配信リリースされました。まずは、2ヶ月連続リリースする楽曲として、この2曲を選んだ理由をお聞かせください。
「これまでミニアルバム『GALAXY』、フルアルバム『KINGDOM』、ミニアルバム『FIVESTAR』とアーティストとしていろいろな曲をリリースしてきて、その中で自分らしい曲だったり、逆に自分ではあまり歌わないような挑戦的な曲をやってきました。その“自分らしさ+チャレンジ”というものを改めて考えたとき、それはロックな曲だなと思いました。なので、今回の2曲は両方ともロック調の曲なのですが、どちらも違うテイストに仕上がっています。積み重ねて来たからこそ、自分らしさと出会えて歌えた曲になっているので、聴いてくださるみなさんにロックな世界を楽しんでいただけたらと思います」
――確かにタイプは違いますが、どちらもとてもカッコイイです。
「「林檎の花」に関しては、最初に聴いたとき、 “ギターとピアノの音がすごくカッコイイし、最高にライブで盛り上がるんじゃないかな?”と思いました。それに、自分では思い浮かばない歌詞の内容やワードも魅力的で歌っていてとても楽しかったです。」
――「林檎の花」は、思い通りにいかない恋に翻弄されている人物が主人公。でも、この主人公はどこかでそれを楽しんでいるような印象を受けました。
「私は歌を歌う時、その楽曲のキャラクターになりきって歌うことが多くて。この曲は、なかなか想いが実らない片想いをしているキャラクター。でも、決して諦めないポジティブな片想いだなって思ったんです。今までにも恋愛の曲はありましたが、恋のもどかしさを楽しんでいる曲はなかったので、そういう何事もポジティブに変えることができる人物像に私自身も惹かれました」
――ボーカルも、とてもシャープに感じました。それもこのキャラクターの想いの強さや諦めない気持ちを声で表現しようと思ったからなんでしょうか?
「はい。このキャラクターは強い精神を持っているタイプの人だと思いました。だから、その辺りを歌い方や声で表現できたらなと。歌詞だけ見ると、ちょっと辛い気持ちの時があると思うのですが、曲自体には爽やかさがあるので、声にもすがすがしさみたいなものを織り交ぜて歌いました」
――まさに「林檎の花」の主人公はメンタル強めのキャラクターで、歌詞の中にも<茨の道さえ>も<なんだかんだ難題>も<嫌いじゃない>というフレーズがありますよね。七海さんご自身は、そういう壁や難問を歓迎するタイプですか?
「それは事柄によりますね。例えば声優や舞台の役で今までにやったことのない、“これは壁が高いな!”という役に出会ったときは、“頑張ろう!”って思いますし、難しくても挑戦します。その挑戦の先にきっと自分が成長できるという気持ちが生まれますから。でも、それ以外は、平和に生きたいと思いますね(笑)。私は平和主義なので、のんびりゆっくりタイプなんです。だから、事件が起こったりすると焦っちゃう。単純なことで言うと、電車に乗るときに何かアクシデントが起こって間に合わないみたいなことは避けたいんです(笑)」
――なるほど(笑)。日常生活は、できるだけ平穏に過ごしたい。
「そうですね。芸事には立ち向かっていきたいと思っています。舞台などで、自分のやりたいことと周りの考えがうまく合わないことがあると、みんなでディスカッションすることもあります。意見を出し合ったほうがいいものができると思うので、そういうことに関しては茨の道も嫌いじゃないです」
――一方の「FATE」のほうは、ミステリアスでスリリングな楽曲です。
「すごく物語性のある曲ですよね。それに曲が進んでいくにつれてとても変化をするので、その変化を表現したいなと思いました」
――それぞれの楽曲に関して、作家さんにリクエストしたことなどはありましたか?
「「林檎の花」は、最初にいただいたとき、曲の最後のサビに向けて転調する箇所があって。それも素敵だったんですけど、私としては転調せずにそのままのキーで思いを強くして歌っていったほうが、この曲で描かれている恋心が伝わるんじゃないかなと思ったんです。だから、そのあたりを作家さんと相談させていただきました。「FATE」は、歌詞の中に<FATE>や<BREAK>、<CHAIN>などのワードが入っているんですけど、最初は順番が違っていました。でも、自分で全体の流れを感じながら歌詞を読んだとき、“FATE”っていう言葉を一番最初に歌うほうが気持ちが入りやすいなと思い、相談して今の歌詞に決まりました。」
――“FATE”という言葉を一番強調したかったということですね。
「そうですね。“FATE”は運命という意味なのですが、明るいほうの運命が“DESTINY”で“FATE”は、どちらかというネガティブな意味での運命なんです。でも、ネガティブな運命からの脱出っていうほうが物語性があるんじゃないか。そう思ったので“FATE”をサビの歌詞の最初に持ってきましたし、タイトルにもしました。最初に決められた運命が、自分が強くなっていくにつれて変わっていく。そういうことをこの楽曲で表現出来たらなと思いました。」
――まさに自分の運命を自分で切り開いていく覚悟をボーカルからも感じました。それだけにAメロは抑えめなんですけど、そこから徐々に情熱的になっていく。そういう緩急あるボーカルが、とても素敵です。
「ありがとうございます。1曲の中で変化していくことにこだわってレコーディングしました。先ほども言ったように“FATE”という言葉は、この曲の一番根底にあるものなんですけど、それ以外でも“BREAK”っていう言葉には、“FATEを壊す”っていう意味もあって、歌詞の中でも<FATE>の次に出て来るんです。そういう強い言葉なので、この言葉に一番変化をつけていきたいという気持ちがあって。それで声の出し方にちょっとがなりを入れてみたり、歌い方を他の言葉とは変えてみたりしました」
――確かに<BREAK>の歌い方には、とてもインパクトがありました。
「それと途中で<切り抜き並び替えた>から始まる部分があり、そこは曲調的には明るいんですが、自分の中では、まだ運命の暗いところにいる段階で歌っているようなイメージがあったので、最初はそういう気持ちで歌ってみたんです。けれど、曲全体を考えた時になにか違うなと感じ、作家さんと相談して歌い方や声の響きを明るい方に持っていくイメージに切り替えました。 そこは一緒に作る中で変化した部分です」
――レコーディングしていく中で発見があったんですね。結果的に切り替えた歌い方のほうが、この曲にふさわしいと思いましたか?
「思いました。私、考えすぎると気持ちを重い方向に持っていってしまう傾向があるんです(笑)。だから、一緒に相談しながら作れる環境はとてもありがたいです。自分だけだと気づかないことや分析が追い付かない部分が、どうしてもあるんです。周りの人の意見を聞くことで生まれるものがあるので、そういうふうに作っていくほうが自分は好きです」
――先ほど“その曲のキャラクターになって歌った”とおっしゃっていましたが、基本的にそういう歌い方をすることが多いですか?
「今回の2曲に関しては特にそうですね。物語だったりキャラクターだったりをイメージしながら歌っていきました。楽曲によっては、私自身からみなさんへのメッセージというものもあります。だから、そこは楽曲によるという感じです」
――「林檎の花」の主人公は恋愛に対して、「FATE」の主人公は人生に対してという違いはありますが、どちらも能動的に進んでいっているキャラクター。タイプは異なるものの、強いタイプですよね。それだけに聴いていて勇気づけられるのを感じました。
「ありがとうございます。私もそこにメッセージ性があると思っています。ここ数年は、暗い状況が続いていたじゃないですか。だから、自分で切り開いていくポジティブさや諦めない気持ちを持っている曲を歌いたかったんです。音楽を聴いて心が浮上するような感覚になっていただけたらということは思いました」
――「FATE」の主人公が自分で運命を切り開いていくように、七海さんご自身も俳優としてはもちろんですが、アーティストや声優など、いろいろなジャンルに挑戦して、まさにご自分の道を切り開いていっているところだと思います。それはご自身の生き方としての信念なのでしょうか?
「表現することが自分にとって生きがいなんだということは、すごく感じています。私は今年で芸歴20周年になるのですが、人生の大半を何かを表現することで生きてきているんだなとあらためて思いました。例えば休みの日に何かを見たり、誰かと会ったりして、その時に感じた気持ちや発見なども、“またいつか何かを表現するときに活かせるようになる”って考えてしまうんです。そうやって自分で感じたことを表現してみなさんに伝える。それが生きがいだって感じています」
――エンターテイメントに携わっている方って、全ての経験がムダにならないですよね。
「本当に。日々生きて変化していくことというのが何かに繋がっていくのを感じます。さらに私はファンの方たちや作品を一緒に作ってくださっているスタッフのみなさん、自分を支えてくださっている方たちと進んで歩いていくのが私の道だなって思うんです。特にアーティスト活動を始めてからは、いろいろな紆余曲折があって今があるので、それをより感じています」
――今年は『合コンに行ったら女がいなかった話』でドラマ初主演もなさいましたが、やっぱりどんどん新たなチャレンジを続けていきたい気持ちですか?
「そうですね。そのほうが私自身にも新しいことに挑戦する楽しさがありますし、みなさんも、“今度は何を見せてくれるんだろう?”っていうワクワク感を持てると思いますから」
――ファンの方がハッピーになるようなエネルギーを与えたいんですね。
「はい。“それが自分が好きなことだな“ってすごく思います。自分が表現することで、みなさんがハッピーになる。そんな幸せなことはないっていつも思っています。だから、今までやってきた舞台はもちろん、アーティスト活動や声優活動でもその気持ちで続けていきたいです」
――コロナ禍になって、よりエンターテイメントの力の大切さを感じましたしね。
「ちょうどコロナが始まった頃、エンターテイメントが日常からなくなってしまうのではという状況になってしまい、本当にその頃はこの先どうなっていくのか、私自身わからなくなってしまって…。でも、その中でもできることを見つけ、一緒に乗り越えようという気持ちが、ファンの方たちとの絆をより強くしてくれたなと感じています。ファンのみなさんのように、こんなに情熱と年月をかけて応援するのって、なかなか難しいことだと思うんです。でも、応援してくださる方は、すごくみなさん心を込めて思い続けてくれる。それは本当にありがたいことだなって感じています。応援することにも気力が必要だと思うんです。ファンの皆さんの存在は、本当に私の支えになっています」
――そして、そうやって応援してくださっているファンの方が集まるライブが9月にあります。今回は、どんなツアーにしたいと思っていますか?
「今回のツアータイトルは『DAYLIGHT』で、 “夜明け”という意味です。コロナで色々なことが変わってしまい、ライブも楽しみきれない状況が続いていました。そんな状況から夜が明けていくといいなという願いを込めました。だから、これまでよりも解放感に溢れたというか、自分もそうですし、みんなの気持ちもより明るい方向に進んでいって、“解き放たれた!”というような感覚になれる。そういうライブにできたらと考えています」
――やっぱりファンの方と直接触れ合えるライブという場所は、七海さんにとっても大切な場所ですか?
「大切です。やっぱり舞台やライブって、一緒の空間の中だけでしか伝わらない空気みたいなものが絶対にあると思うんです。その感覚が私はとても好きなんです。だから、そういう空気感をみなさんと感じられる時間を楽しみにしています」
――もちろん今回の楽曲2曲も披露なさるっていうことですよね。
「ライブについては現在考え中ですが、新曲は披露したいですね。レコーディングは、こだわってレコーディングしていくので、それを一発本番のライブで披露するときにどうやって表現するかが課題で、今から頑張って練習しなきゃなって思っています(笑)」
(おわり)
取材・文/高橋栄理子
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION
2023年9月開催!
One-man LIVE773“DAYLIGHT”
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