――少し前になってしまいますが、まず、2021年に「勿忘」がUSEN年間ランキングJ-POP部門第1位を受賞した感想からお伺いできますか?
atagi「本当に光栄でした。「勿忘」という楽曲が皆さんにこんなに愛されたんだな、という事を実感させてくれる出来事でした」
PORIN「老若男女を問わず聴いていただけて、私自身もずっと身近にあったUSENで、私たちの楽曲を選んでいただけてとても光栄でした。皆さんの生活のそばに「勿忘」がいつもあったと思うと感動します」
モリシー「1位を取ることは人生で一度もなかったので、とても嬉しく、ちょっと恥ずかしくもありました。でも時間が経つと嬉しさが増えていきますね。ありがとうございます」
――同年末には、NHK紅白歌合戦に初出場し、レコード大賞の優秀作品賞も受賞しました。
atagi「音楽を作り演奏する上で大きな目標でもあったので、とても嬉しかったです」
PORIN「これまでの軌跡が全て報われたようで、とても嬉しかったです。そして、何より、これまでずっと支えてくれた家族やファンの方々にようやく恩返しができたことが嬉しかったです」
モリシー「小さい頃には紅白とレコ大に出るなんて思ってもみなかったので、自分のことなのにどこか自分のことじゃないような感覚がありました。とても嬉しく思っています」
――今年で結成10年目を迎えるみなさんにとって、2021年はどんな年になりましたか?
atagi「音楽を初めて以来の、見たことのない景色をたくさん見させてもらえた一年でした。この年に起きた事たちは、一生忘れないと思います」
PORIN「夢のような一年でした。想像もしていなかった舞台に自分が立っていることや、毎日に笑顔が増えたこと、振り返ればとても幸せでした」
モリシー「体感5秒くらいで過ぎていった1年でした(笑)。人生で一番忙しかったですが、同時に忙しくなったときにどう仕事をうまくやっていくかのスキルが身に付いたので、良いトレーニングになった感じです」
――また、「勿忘」がロングヒットしている最中に「またたき」「color」「夏の午後はコバルト」と配信シングルをリリースし、2021年11月から2022年2月にかけては7作連続で配信シングルをリリースしました。”売れたな~”と成功に浸る間もなく、新曲をハイペースでリリースしたのはどうでしてですか?
atagi「周囲の反響がとても後押しになり、どんどん曲が作れていくような感覚でしたね。モチベーション高く作曲できる時を逃さずリリースしていきたいと思いました」
モリシー「ありがたいことにタイアップや曲を作る機会をいただけ続けてたという感じです。しかも全てが作りたい物だったので幸運だったと思います。ミュージシャンは常に作っていた方が精神衛生上良いですからね」
PORIN「2021年を生きながら感じることはたくさんあったし、それをアウトプットし続けることはとても自然なことでした。歩みを止めず、もっともっと私たちのことを知っていただきたいという思いもありました」
――通算4枚目となるニューアルバム『Get Set』に収録された全10曲中、「ランブル」を除く9曲が先に配信リリースされてます。そこにはどんな意図がありますか?
atagi「そうですね。今、楽曲の聴かれ方として、アーティスト単位ではなく、楽曲単位で聴かれる事が主流になっている事がその理由ですね」
モリシー「海外とかだと最近そういう方法が主流になってきてるし、アルバムとして聞くひとも少なくなってきましたからね。僕たちもアルバムを作るというよりは、一曲一曲丁寧に力強い物を作っていったという感じだったので、作ったらバンバン出すようにしたかったから」
PORIN「その時に届けたい楽曲をタイムラグなく聴いてほしかったからですね。そして、シングルとして都度リリースしていくことで、一曲に対する向き合い方の強度を上げていきたかったからです」
――お茶の間にまでAwesome City Clubの名前と音楽が認知された後の制作になりますが。
PORIN「そこはあまり意識しすぎず、私たちらしさを表現することに集中しました」
モリシー「そこまで深くは考えませんでしたが、強い曲たちをもっと作りたいという感覚はありましたね」
――「勿忘」が大ヒットしたことに対するプレッシャーはありましたか?
モリシー「僕個人はあまりありませんでした。でもatagiやporinは曲や詞を書くのであったのかもしれない」
PORIN「いえ、あまりなかったです」
atagi「僕は……ないといえば嘘になりますが、自分たちらしい音楽を貫こうという気持ちだけは持ちつづけて制作に挑みましたね」
――配信の順番とアルバムの曲順は違ってますよね。これも意味はありますか?
atagi「それぞれ単曲で配信した楽曲達の彩りを耳で感じて欲しいなというのが、まず一番にありました。その中で、アルバム後半になるにつれ、開けた場所から少しずつ人間の内面に視点が変わっていく様子を感じてもらえたら嬉しいです」
PORIN「全曲出来上がって聴いてみた時に、一番ドラマチックに聴こえる並びを試行錯誤しました。激動の2021年を生きながら作っていった作品なので、まるで人生のようなうねりを感じていただきたいです」
――個人的には8曲目の「楽園」までが二人の世界にいて、9曲目の新曲「ランブル」では一人で別れを思い出しているので、ラストナンバーで10曲目の「またたき」で新たな出会いに向いてるような物語性も感じました。
モリシー「とても素敵ですね。「またたき」を最後にしているのは、この曲は未来に向けた曲なのでこれからの未来どんなことが待っているだろうという意味も込めて最後に置いています」
――では、アルバム収録曲の中で、USEN放送から街に流れてきたらいいなと思う推し曲を教えてください。
atagi「僕はリード曲「On Your Mark」です。テーマはスポーツや競技など、勝負の世界が舞台になっていますが、聞いてくれる皆さんの背中を押せる楽曲になったと思っています」
PORIN「私は「Life still goes on」です。日常に寄り添いそっと背中を押してあげられるような楽曲になったと思うので、街でたくさんこの曲が鳴っている生活は幸せな光景だなと思います」
モリシー「僕も「Life Still Goes On」かな。人生応援歌的な曲だけれど、押し付けがましくない曲なので、仕事の休憩中に流れたりしたら元気になりそうですね。この曲は僕も元気なギターソロを弾いてるので、音源から応援します!」
――ありがとうございます。2/28には「雪どけ」が主題歌に使用されているWebドラマ「ワタシとワタシの過ごし方」が公開されました。メンバーの皆さんのパーソナリティも少し知りたいので、それぞれのリラックス時間の至福の過ごし方を教えてください。
atagi「自炊する事です。無心になれます」
PORIN「お風呂に浸かりながら、お気に入りの楽曲を流して漫画や小説を読んでいます」
モリシー「うちの作業部屋で、お酒を飲みながら妻と映画や海外ドラマを見ることです。大音量で。すごく忙しい時ほど2人でみて疲れを癒しています。ちなみに最近はアメリカの「フラーハウス」をいつもみてゲラゲラ笑っています」
――ありがとうございます。レコーディングではどんなことにこだわりましたか?
PORIN「作詞をする際、できるだけポジティブに落とし込むことを意識しました。窮屈な世の中だとしても、少しでも音楽のちからで生きやすくなったらいいなと」
atagi「歌入れの際には、色々とマイクを試し、質感にもこだわりました」
――何か印象的な出来事はありましたか?
atagi「全体的に中々ハードなスケジュールで進行したので、喉のケアにオリーブオイルをたくさん使用しました」
PORIN「ギターレックに一度も立ち会わなかったのは初めてでしたね。モリシーが自宅で完結できてしまう新しいやり方を見出したからなんですけど」
モリシー「ここ数年からそうなんですが、ギターは自宅で入れていて。6曲目「color」だけ、アレンジャーの田中隼人さんのスタジオだったんですけど、それ以外がは、録音に使う機材も自分でいい物を揃えて、研究しながらこの曲のギターは録っていきました。ただただ一人で黙々と録音できるのは、怖い時もありますが、とても楽しいですね」
――トラブルもなく?
モリシー「いや、ちょうど年明けに「On Your Mark」のギターを録音していたのですが、タイミング悪く作業部屋のエアコンが壊れてしまって。ガタガタ震えながら録音したのを覚えていますね」
――(笑)アルバムのオープニングを飾るリード曲「On Your Mark」とアルバムのタイトル『Get Set』は繋がってますよね。
PORIN「そうですね。「On Your Mark」ができたときに、このアルバムを引っ張っていってくれそうな楽曲ができた自信があったので、この言葉に紐付くアルバムタイトルにしたいというとこらからきました」
atagi「表題曲「On Your Mark」の延長線で“On your mark, Get set, Go”(いちについて、よーい、ドン)の一節から取っていて」
PORIN「”Go!”を取っておいてあるのは、このアルバムはみんなの元に届いて聴いてもらえてようやく完成すると思っているので、その時”一緒にGOしよう”という思いも込めています」
モリシー「porinがつけたのですが、このアルバムが解き放たれた時が”Go”であり、”Get Set”はまだ途中です。皆さんの耳に入ったり、ライブで聞いたりしたところで全てが完成する感じですね」
――ちなみに、2nd Full Album『Grow apart』、3rd Full Album『Grower』と頭文字“G”で始まる単語がついてますが。
atagi「『Grow apart』は別れ(それぞれに成長する)、『Grower』は栽培者(愛を与える側の存在)を意味する言葉です。この2つはストーリーになっていて、別れを知って愛を知る、愛を知って初めて愛を与える存在になれる。そんな人間の成長を描き綴ったタイトルになってたんですけど」
モリシー「今回は単純に偶然だったと思います(笑)。僕の記憶が正しかったらですが…意図してなかったと思います」
PORIN「そうですね。これは意図せず“G”になった次第です」
――改めて、4枚目のアルバムが完成した感想を聞かせてください。ご自身にとってはどんな1枚になりましたか?
atagi「まずは安堵感でいっぱいですね。今まで以上に振り幅のあるアルバムになったと思います」
PORIN「一年かけて丁寧に作っていった作品なので、その集大成と向き合えるのはとても嬉しいです。2021年の特別な思い出もたくさん蘇ってくる、アルバムのような作品になりました」
モリシー「今回、ギターもいろんな物を使って、機材もたくさん使って、ようやく自分の理想の音に近づいてきたなーと思ったアルバムです。好きなギターの音がたくさん詰まってる一枚になりましたし、アルバムを通して聞くと、とてもバラエティ豊かな1枚になってて。ACCらしさがきちんとある作品になったなと思います」
――エールソングあり、ラブソングあり、ダンスナンバーやバラードありと、まさに多彩な1枚となっていますが、リスナーにはどう届いて欲しいですか?
atagi「さまざまなシチュエーションに寄り添える楽曲が揃っていますので、生活の側に置いてもらえると幸せです」
PORIN「皆さんの様々な日常のワンシーンと共にある、曲たちとなっていってほしいです。日々に少しでも彩りを足すことができたら幸せです」
モリシー「どこかいく時でも、嬉しい時も、悲しい時も、ふとプレイヤーでこのアルバムをかけてみて欲しいと思います。これだけいろんなことを歌っているアルバムなので、何か心に響いてくれたら嬉しいです」
――そして、4月からはツアー『AWESOME TALKS ONE MAN SHOW 2022』もスタートします。どんなツアーになりそうですか?
atagi「アグレッシブなツアーになると思います。我々も2年ぶりのツアーと言う事で楽しみにしています」
モリシー「2年ぶりのツアーで、行けなかったところにも少しずつ行けるようになりました。「On Your Mark」を提げていきますので、皆さんと一緒にGo!できることを楽しみにしています!」
PORIN「やっと皆さんと再会できるので、その喜びを噛み締めながら、多幸感を共有できたらと思っています。GOしましょう!」
――最後に今後の目標を聞かせてください。
PORIN「変わることを恐れずに、良質な音楽を提示していきたいです。そして私たちに関わってくれた人たちや応援してくれる人たちと共に、もっともっと最高な景色を見にいきたいです」
モリシー「ただただ健康に気をつけて無理なく活動できたらと思います。ただそれだけです」
atagi「まだまだ作り足りないというか、もっとこんな曲が書きたい、あんな曲が書きたいというような野心があります。ひとつひとつ、丁寧に作って皆様にお届けしたいと思っています」
(おわり)
取材・文/永堀アツオ
Release InformationAwesome City Club『Get Set』
2022年3月9日(水)
CD+Blu-ray Disc(スマプラ対応)
CTCR-96063/B/8,250円(税込)
cutting edge
Release InformationAwesome City Club『Get Set』
2022年3月9日(水)
CD(スマプラ対応)
CTCR-96064/3,190円(税込)
cutting edge
Live InformationAWESOME TALKS ONE MAN SHOW 2022
4月2日(土) 愛知 Zepp Nagoya OPEN 17:00 START 18:00
4月3日(日) 大阪 Zepp Namba OPEN 17:00 START 18:00
4月10日(日) 東京 Zepp Diver City OPEN 17:00 START 18:00
4月15日(金) 北海道 Zepp Sapporo OPEN 18:00 START 19:00
4月17日(日) 宮城 仙台PIT OPEN 17:00 START 18:00
5月1日(日) 福岡 Zepp Fukuoka OPEN 17:00 START 18:00