──今回は「My Recent Heavy Rotation Tracks」というテーマで「OTORAKU -音・楽-」のプレイリストを作っていただきました。プレイリストを考えるのは大変でしたか。

「今回は、自分が実際にヘビロテした楽曲を選曲しました。“自分が好きでたくさん聴いている曲だからみんなにも聴いてほしいな”という気持ちで。だから割とノリノリでした(笑)。53曲入っていますが、もっと入れたいくらいでした」

──J-POPと洋楽が交互に並んでいたり、ジャンルの異なる楽曲を続けていたりと、並び順もこだわりを感じました。

「聴いていて飽きないようにというのは意識しました。洋楽邦楽問わずに選曲しましたし、ジャンルもなるべくバラバラになるようにしました。でも本当に自分の好きな曲ばかり。特に2024年にたくさん聴いた曲が入っています」

──新進気鋭のアーティストも多いですが、そういう音楽はどのように発掘しているのでしょうか。

「知り合いに聞いたり、Spotifyのレコメンド機能を利用したり。InstagramやTikTokから流れてきて聴くこともあります。ここ1年くらいのスパンで出会ったアーティストは、luvis、ku-ten、GeTO、相田MontBlanc、烏兎 -uto-かな。luvisさんは最初SNSかサブスクかで聴いて。僕自身、こういうインディーロック系の音楽は好きで結構聴くのですが、それを現代のポップスに昇華していてものすごくカッコいいなと思いました。ku-tenさんはインスタのリールが流れてきて。ご本人がキーボードを演奏していて、その姿を捉えているカメラが振り子みたいに動くという動画だったのですが、それが面白くて。音楽も80年代の雰囲気に生楽器が入った感じで、すごく良いなと思いました。それでいて、確か僕より2?3歳年下。びっくりしました。相田MontBlancさんはTikTokだったかな。コンポーザーと歌い手の2人組なんですが、コンポーザーの方はずっとボカロPのような活動をされていて。でもいわゆるボカロっぽい音楽ではないんですよ。そこが面白いなと思いました。この方達はMVなどのクリエイティブも全部自分たちでやられていて。音楽とクリエイティブに統一感があってすごくカッコいいなと思っています」

──ふだんから熱心に音楽を掘っているんですね。

「そうですね。特に同世代だと、どんなアーティストかということまで気になっちゃって。あとは、同世代は特にですが、もともとのルーツが今の音楽性に出ていない人もいたりして面白いんですよ。muqueは、ドラムの子が楽曲を作っているんですが、彼はもともとラウドバンド畑出身らしくて。今やっている音楽性とは全然違うんです。そういうのも面白くて、どんどん掘っちゃうんですよね」

──それでいて、プレイリストには杏里さんやEarth, Wind&Fireといった、リアルタイムでは聴いていなかったであろうアーティストの楽曲も入っていますね。

「はい。両親がシティポップ好きだったこともあって、車の中でよく流れていたんです。それに、自分がシティポップを作ることがあるので、そういうときに改めて聞き直しているうちに、自然と好きになってよく聴くようになりました」

──ちなみに、このプレイリスト、imaseさんだったらどういうタイミングで聴きますか。

「そうですね。年代もごちゃまぜですし、ジャンルレスですし……いつどのシーンでも聴けると思うので、本当にいつでもいいですね(笑)。曲順通りに聴かなくても飽きないような作りになっているので、気になる曲から聴き始めて、あとは流しておくとか? あっ!それこそいろいろな年代の曲があるので、家族と聴いたら“この曲、自分が若い頃に聴いていたな”“この曲は最近流行っているんだよ”みたいな会話が生まれるかも。そういうシチュエーションで聴いてもらうのも良いですね」

──その聴き方、すごく素敵ですね。imaseさんは街中や商業施設のBGMから新しい音楽と出会うことはありますか。

「結構ありますね。カフェとかで流れてきていいなと思ったら、検索アプリですぐ調べます。“このフレーズいいな”と思ったら、その場で調べて、家に帰ってからゆっくり聴き直して、自分の曲に取り入れたり。フレーズが気になった場合は、曲自体は自分がふだんあまり聞かないようなジャンルでも、その曲丸ごと好きになったりすることもありますね」

──imaseさんが音楽を聴くシチュエーションだったり、向き合い方ってどんな感じでしょうか。

「曲を作るときがいちばん多いですね。プライベートでは……あまり聴かないかも(笑)。地元の友達と遊ぶときは、友達がそれぞれ好きな曲をかけていますね」

──そういうとき、友達がどういう音楽を聴いているかチェックしますか。

「しますね。東京の友達は音楽関係の方が多いですが、地元の友達は音楽を全くやっていないので、そういう人がどういう曲を聴いているのかは気になります。僕の地元は岐阜なんですが、やっぱり東京と岐阜で人気の曲って違うんですよ。友達は人気ランキングを順に聴いていたり、あとは昔から好きで馴染みのある曲をずっと聴いていたり。クルマ文化なので、クルマの中で歌いやすいとか、そういうこともあるのかなとか。自分が曲を作るときにも、“運転中に合うか?”みたいなことがヒントの一つになることもあります」

──ここからはもう少しimaseさんの音楽遍歴を遡って聞かせてください。先ほどご両親の影響で、昔からシティポップをよく聴いていたとおっしゃっていましたが、ご自身から音楽を聴くようになるなど、音楽にのめり込むきっかけはなんだったのでしょうか。

「音楽をちゃんと聴くようになったのは、音楽活動を始めてからで。それまでは本当に、そのとき流行っている曲を聴く、という感じでした。高校生のときはEDMが流行っていたので、少しだけ洋楽にのめり込みましたが……でもいわゆるルーツみたいなことでいうと、やはり楽曲制作を始めたタイミングで聴いていたR&Bやソウル、インディーポップやローファイHIP HOPかなと思います。初期の楽曲はそのあたりの影響がすごく出ていると思います」

──imaseさんは、音楽を聴くよりも、作るほうが先だったという感じですよね。特定の音楽に影響を受けて始めたわけではなく、逆にまっさらなところから曲を作り始めるという、少し特異な入り方というか……

「そうなんですよね。“これ、やばい!”みたいな衝動で作り始めたタイプではないので。たぶん変ですよね(笑)」

──その時々でハマっている音楽を自分の楽曲に反映させてきている印象があります。そういう視点での音楽遍歴というと?

「自分のなかでの流行の周期は2、3ヵ月――いわゆる1クールですね―――で変わっていきます。最初のほうは、R&BやローファイHIP HOP。そのあと、シティポップの制作依頼が増えたこともあってシティポップを聴くようになって、UKガラージやツーステップの波が来て。今はオーガニックなもの、アコースティックな楽曲にハマっています。それこそ新曲「Soyokaze」もそうですし、今年リリースが決まっている曲はオーガニックな曲が多くなりそうです」

──ちなみに最初にR&Bにハマったのはどうして?

「何でだったかな……たまたま聴いていいなと思ったんですよね。それこそ、衝動に近いものだったのかもしれません。SIRUPさんやVivaOlaさんを聴いてかっこいいなと思い作り始めましたが、“あそこまでカッコいいR&Bにはならないなあ”と思って。当時、ジェレミー・ザッカも好きだったので、R&Bにジェレミー・ザッカのローファイ感を入れたりして、自分なりのものができたらと模索して作り始めたような気がします」

──そして、現在はアコースティックブームが来ていると。それはどこからやってきたのでしょう?

「オーガニックブームは今年に入ってから。それこそ、このプレイリストにも入っている渡會将士さんの「Mambo#6」に出会ったことがきっかけですね。あのアコギの感じがすごく好きで……というか、この曲がすごく好きでめっちゃ聴いていたんです。あとは冨田ラボさんの「眠りの森 feat. ハナレグミ」とか、烏兎 -uto-「旅する人へ」なども聴いていて、少しずつオーガニックな曲っていいなと思い、自然と自分でも作るようになっていきました」

──そして「Soyokaze」が完成しました。この曲はどのようなところから生まれた楽曲なのでしょうか。

「この曲は、カンロ「ピュレグミ」のCMソングのお話をいただいて作り始めました。そのCMの概要が、“友達と一緒に春の風を感じながら電車に乗って出かける”というストーリーで。そのストーリーに合うように、あまり大きな起伏がなくて、さらっと聴けるような楽曲にしたいなと思いました。この曲を作るときに、スタッフさんに教えてもらったのが「Mambo#6」だったんです」

──そうやっていろいろな音楽に出会っていっているんですね。「Soyokaze」はサウンド感もさることながら、「会いに行く」と「愛你」をかけているなど、imaseさん節も詰まっていますが、お気に入りのフレーズを挙げるなら?

「<未来はそよ風 静かに過ぎ去るの>は個人的にすごく好きです。CM映像の中に、懐かしい友達と“あの頃良かったよね”みたいな会話をする場面があって。それを見たときに、気づかないうちに過ぎていく日常を大切にしたいなと思ったんです。気づかないうちに、風のように未来は今になって、今は過去になってしまうから、日々のときめきを大事にしてほしいなという思いで、この歌詞を書きました」

──ボーカルもすごく柔らかいですよね。

「歌う上では、力を入れ過ぎないということを意識しました。ゆるく淡々と歌おうと。シンセのベースもそうですし、アコギもミュートギターで淡々としたサウンドなので、ボーカルも感情を入れ過ぎないようにと」

──それこそ風っぽくというか?

「はい。流れてしまう時間って、ちょっと無慈悲じゃないですか。不可抗力で。勝手に流れていくし、勝手にいろいろなことが変わっていく。物事をフラットな目線で見るように、サウンド感や歌い方もフラットにできたらというイメージでした。この曲、サビはピアノで作ったのですが、Aメロは初めてギターで作ったんです。だからAメロがずっとワンコードで。ピアノで作るとワンコードで進むことってあんまりないので、ギターじゃないと作れなかったAメロなのかなと。そこは新しいimaseっぽさかなと思うので、意識して聴いてみてほしいです」

──ギターで曲を作ったのは初めて?

「メロディをギターで作ったのは初めてですね。それこそオーガニックな曲を作りたいなと思っていたので、だったらアコギでちょっと弾いてみるかと思って。春は新しいことに挑戦する季節なので、自分も新しいことに挑戦した楽曲になりました。……って、この曲を作ったのは春より前なんですけど(笑)。でもちょうど、自分でも新しいことに挑戦できた曲になったなと思います」

──そして今月からは「imase Hall Tour 2025 “Remake”」がスタートします。どのようなツアーになりそうですか?

「ホールツアーのタイトルは「Remake」。それこそ今日お話しした通り、自分はいろいろな年代の楽曲からインスピレーションを受けて楽曲を作ることが多いので、そういう面がライブでも出せたら面白そうだなと思い、これまでの楽曲をちょっとリメイクしようと思っています。演出も含めて、前回のツアーよりも音楽にフォーカスしたライブになる予定です。リメイクもありつつ、まだ披露していない新曲もたくさんやろうと思っているので、いろいろな楽曲を楽しみに来ていただけたらと思います」

──このプレイリストを開演前のBGMにするとimaseさんの音楽遍歴や嗜好が伝わるかもしれませんね。

「確かに! いいですね。ちょっと考えておきます」

──7月には初の武道館公演「imase LIVE “Have a nice day” in NIPPON BUDOKAN」が控えていますね。

「武道館にライブを観に行ったこともありますが、武道館はやはり独特な空気感が漂っている場所。それに武道館公演って、アーティストの皆さんにとって何かの節目や記念のタイミングじゃないですか。だから観に行かれるファンの方も“ついに武道館か”みたいな気持ちでいらっしゃる印象で。そういう雰囲気の場所だとわかっているだけに、ちょっと緊張しています」

──どのようなライブになりそうですか。

「ホールツアーとはがらっと違う内容になる予定です。初めてimaseのライブに来る方も、いつも来てくださる方も楽しめるものを……ということを第一に考えて、これまでリリースした楽曲を万遍なく聴いていただきたいなと思っています。同時に、自分が音楽を始めた4年前からこれまでの歴史を振り返るような内容にしたいと思っています。まだ内容が固まりきっているわけではないですが、管楽器や弦楽器も入れられたらいいな……と妄想しています」

──さっそくライブ三昧ですが、どんな1年になりそうですか。

「ありがたいことに今年もリリースが多くなりそうで。どの曲も力を入れて作ったので、たくさん聴いていただけたらうれしいです。それから、ツアーや武道館のほかにも、いろいろなフェスやイベントの出演も決まっています。リリースでもライブでもたくさんの方に楽しんでいただける1年にしたいなと思っています」

(おわり)

取材・文/小林千絵
写真/野﨑慧嗣
ヘアメイク/向井大輔

LIVE INFO

■ imase Hall Tour 2025(チケットぴあe+ローソンチケット
2025年4月19日(土)市川市文化会館
4月27日(日)福岡市民ホール 大ホール
5月15日(木)愛知県芸術劇場大ホール
5月18日(日)フェスティバルホール(大阪)
5月21日(水)LINE CUBE SHIBUYA(東京)
6月8日(日)トークネットホール仙台(仙台市民会館) 大ホール
6月19日(木)カナモトホール(札幌市民ホール)
6月28日(土)土岐市文化プラザ サンホール

■ imase LIVE “Have a nice day” in NIPPON BUDOKAN
2025年7月25日(金)日本武道館


「My Recent Heavy Rotation Tracks」by imase「OTORAKU -音・楽- 」PLAY LIST


最近僕自身がよく聞いている楽曲をセレクト。洋楽から邦楽まで様々なジャンルの楽曲があるので、貴方も好きな曲に出会えるかもしれません。ぜひ聴いてみてください!

1. JAMES BLAKE「I Never Learnt To Share」
2. 杏里「Remember Summer Days」
3. 冨田ラボ「眠りの森 (feat.ハナレグミ)」
4. Porter Robinson「Goodbye To A World」
5. Anomalie「Velours」
6. The Spinners「It's A Shame」
7. Khalid「Talk (feat.Disclosure)」
8. グソクムズ「ヘイヘイ」
9. ZICO「Any Song」
10. 渡會将士「Mambo#6」
11. EARTH,WIND & FIRE「September」
12. 崎山蒼志「Heaven」
13. 吉澤嘉代子「サービスエリア」
14. FKJ「Last Hour (Just Piano Version)」
15. Dijon「The Dress」
16. Michael Kaneko「SANDIE feat. さかいゆう」
17. Charlie Puth「Light Switch」
18. Bialystocks「差し色」
19. Cafun?「Tek It」
20. CODY JON「dirty dancing」
21. Mura Masa,Erika de Casier「e-motions」
22. PinkPantheress & Ice Spice「Boy's a liar Pt. 2」
23. PUNPEE「タイムマシーンにのって/家族の風景」
24. cero「Fuha [e o]」
25. Disclosure「Higher Than Ever Before」
26. TOMOO「Grapefruit Moon」
27. IVE「Baddie」
28. KNOWER「Ride That Dolphin」
29. Jack Harlow「Lovin On Me」
30. First Love is Never Returned「Unlucky!!」
31. mabanua「On Everything feat. Otomodatchi」
32. Jacob Collier「Bridge Over Troubled Water」
33. 藤井 風「満ちてゆく」
34. muque「Bite you」
35. 烏兎 -uto-「旅する人へ」
36. SUSHIBOYS「おにぎり」
37. Kendrick Lamar「Not Like Us」
38. Joey Valence & Brae「OK」
39. Billie Eilish「チヒロ」
40. NewJeans「How Sweet」
41. RM「Nuts」
42. SATOH「Monkeys」
43. Tommy Richman「MILLION DOLLAR BABY」
44. keshi「Say」
45. Police「Every Breath You Take [Remastered 2023]」
46. BIM「DNA (feat. Kohjiya&PUNPEE)」
47. jo0ji「Nukui」
48. luvis「Higher」
49. なとり「糸電話」
50. 相田MontBlanc「天動説」
51. ku-ten「バーチャル団地 (feat. 有坂朋恵)」
52. GeTO「鬼TAIZI」
53. Tyler, The Creator「St. Chroma (feat.Daniel Caesar)」

OTORAKU キュレータープレイリスト

imase「Soyokaze」 DISC INFO

2025年3月28日(金)配信
ユニバーサル ミュージック

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