1952年に結成され、初期の一時期を除き不動のメンバーで以後1974年に至るまで、第一線で活躍したM.J.Q.は、オーソドックスでありながらとてもユニークなグループです。ピアノのジョン・ルイスが実質的なリーダーで、彼とヴァイヴのミルト・ジャクソンの織り成す見事なコラボレーションの魅力はたとえようもありません。

最初にご紹介するのは、1952年に録音されたM.J.Q.最初の録音です。曲目もスタンダード・ナンバー「オール・ザ・シングス・ユー・アー」。このときのドラマーはモダン・ドラミングの開祖ケニー・クラークで、M.J.Q.のスタート地点を知るかっこうの音源です。そして、ジョン・ルイスが有名なギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトに捧げた名曲「ジャンゴ」が収録された同名のアルバムで、M.J.Q.の名前は日本のファンにも広く知られるようになりました。

「朝日のように爽やかに」が収録されたアルバム「コンコルド」(Prestige)のドラマーはコニー・ケイで、このときからメンバーは変わっていません。良く知られたスタンダードが、ピアノとヴァイヴの見事なコラボレーションで活き活きと輝いています。このように、アレンジされた部分と各自のソロが緊密に結び付いた演奏スタイルがハード・バップで、1955年の時点で完全に完成されたスタイルを誇っているのはさすがです。

M.J.Q.はプレスティッジからアトランティック・レーベルへと移籍し、より彼らの持ち味が活かされたアルバムが次々とアトランティックから出されます。「フォンテッサ」はその代表とも言うべき名盤で、ジョン・ルイスのクラシック趣味が見事なジャズに昇華された名演です。

彼らの魅力は、ルイスのピアノとミルトのヴァイヴがごく自然に一つの音楽に融合しているところ。面白いのは、同じヴァイヴ・サウンドでも、ミルトのリーダー作とM.J.Q.における演奏ではまったく雰囲気が違うのですね。それにもかかわら、ずミルトの個性はしっかりと活かされているのです。これはルイスのリーダー・シップが極めて優れていたからでしょう。

興味深いのは、ルイスの単独リーダー作のテイストもまた、M.J.Q.のチーム・プレイとは微妙に異なっているところです。そういう意味では、M.J.Q.は実にユニークなグループと言えるでしょう。完全にグループの音楽としての個性が確立されているのです。

さて、M.J.Q.がフリー・ジャズの大物、オーネット・コールマンの名曲「ロンリー・ウーマン」を取り上げています。意表を突くようですが、実は西海岸でデビューしたオーネットをジャズの中心地、ニューヨークのジャズ・シーンに紹介したのは他でもないジョン・ルイスだったのです。一見オーソドックスなタイプに見えるルイスの先見性はたいしたもの。

アトランティックのアルバムはどれも良いのですが、たとえば「ピラミッド」に収録されている「ヴァンドーム」など、プレスティッジ時代にも録音した曲の再演ですが、明らかに洗練の度が高くなっています。興味がおありでしたら聴き比べてみてください。聴き比べといえば、74年のM.J.Q.解散コンサートでも「朝日のように爽やかに」を演奏しており、こちらはライヴでということもありますが、自分達の過去を懐かしく振り返るような熱演となっています。

一度は解散したM.J.Q.ですが、1981年に活動を再開します。最後に収録した「ジス・ワンズ・フォー・ベイシー」(Pablo)は1985年に録音された再結成後のアルバムで、このとき初演の「トプシー」など、このグループの底知れない可能性を感じさせる名演です。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

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