ふつうの音楽ファンがイメージするジャズは、だいたい1950年から60年代にかけての、いわゆる「モダンジャズ」のことだと言っていいと思います。マイルス・デイヴィスの『リラクシン』(Prestige)や、ソニー・ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』(Prestige)の世界ですね。

これら著名な名盤群に対し、相対的に新しい感覚でジャズが演奏され始めたのが、だいたい1970年代以降のことで、『一生モノのジャズ名盤』では、そうしたタイプのアルバムに「コンテンポラリー・ジャズ」というグループ名を付けました。

ドラマーのジャック・デジョネットは、バンド・リーダーとしても優れた才能を持ったミュージシャンで、1970年代に、アート・アンサンブル・オブ・シカゴのトランペッターレスター・ボウイ、斬新なギター・サウンドを引っさげて登場したジョン・アバークロンビー、そしてビル・エヴァンスのサイドマンとして知られたベーシスト、エディ・ゴメスらをサイドに従えたグループによるアルバム、『ニュー・ディレクション』をECMレーベルに吹き込みました。

クールな肌触りを持ったボウイのトランペットに、雲がたなびくようなアバークロンビーのギターが醸し出す新鮮な演奏は、まさにコンテンポラリー・ジャズ・サウンドと言って良いでしょう。そして、リーダー、デジョネットの色彩感溢れるドラミングは、やはり新世代のジャズ・ドラミングを象徴しています。

1960年代にフリー・ジャズの新人として登場したアルゼンチンのテナー奏者、ガトー・バルビエリは、70年代にエキゾチシズム溢れるアルバム『アンダー・ファイアー』(Flying Dutchman)で一躍一般的人気を得ました。ヒットの秘密は、ガトー自身が歌ったナンバーの、ちょっと演歌っぽい雰囲気が親しみを感じさせたのかもしれません。

現在第一線で活躍するドラマー、ジョーイ・バロンもリーダーとして優れたアルバムを何枚も残しています。『ダウン・ホーム』(Intuition)は、アルト・サックスのアーサー・ブライスとギターのビル・フリゼールをフィーチャーしたカルテットで、かつての少しばかり刺激的な音色だったブライスのアルト・サウンドがまろやかに変貌し、フリゼールのこれまたマイルドなギターと心地よいアンサンブルを醸し出しています。まさに現代ジャズの典型でしょう。

フランスの新人ギタリスト、シルヴァン・リュックは、アメリカ人ギター奏者とは一味違う味わいを持っています。短い曲ですが《ジョードゥ》が印象的です。大物ベーシスト、チャーリー・ヘイデンがギターのクリスチャン・エスクーデと組んだデュオ作品『ジタン』(All Life)は、深みのあるヘイデンのベース・サウンドが聴きどころです。オーディオ装置の低音チェックにも最適ですね。

60年代ビル・エヴァンス・トリオの名脇役として知られたポール・モチアンは、ニューヨーク・ジャズシーンの第一線で若手を育て上げました。『ガーデン・オブ・エデン』(ECM)では、チャールス・ミンガスの名曲《直立猿人》を現代に蘇らせました。

惜しくも亡くなってしまったフランスのピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニがヨーロッパで著名なオルガン奏者、エディ・ルイスと共演した『デュオ・イン・パリ』(Dreyfus)は、まさに名人同士が技の限りを尽くした名演で、ライヴならではのダイナミックな躍動感はえもいわれぬ興奮を聴き手にもたらします。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

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東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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