リヴァーサイドのレーベル・イメージを代表するミュージシャンは、セロニアス・モンクとビル・エヴァンスだろう。そのせいか、このレーベルには優れたピアノ・アルバムが多い。3大ジャズ・レーベルのトップ、ブルーノートがあまりピアノ・トリオ作品を録音していないのに比べ、対照的だ。
しかしリヴァーサイドの特徴はそれだけではない。ジャズ評論家でもある名プロデューサー、オリン・キープニュースは、ギターの大物ウェス・モンゴメリーを紹介したり、ファンキー・ジャズに路線変更したキャノンボール・アダレイを録音したりと、時代の動きを的確にフォローしている
また、比較的地味なミュージシャンの優れた作品も多く、冒頭の『ブルース・ムーズ』など、ブルー・ミッチェルの最高傑作といってよい。名曲《アイル・クローズ・マイ・アイズ》で始まるこのアルバムは、ワンホーン、トランペット作品の名盤に必ず数え上げられる。
リヴァーサイドの見識を示すのがジョージ・ラッセルの『エズ・セティック』だ。難解な理論家のイメージが強いが、このアルバムを聴けば彼のアレンジの素晴らしさに驚くことだろう。とりわけエリック・ドルフィーのソロが圧倒的で、ドルフィー・ファンは必聴のアルバムだ。
セロニアス・モンクは40年代からブルーノートに録音を残しているが、ジャズファンの間で広く知られるようになったのは、50年代になってからのリヴァーサイド作品がきっかけだった。優れたアルバムに事欠かないが、ジョニー・グリフィンを従えた「ファイブ・スポット」でのライヴは、このカルテットの充実振りを示した定評のある演奏。
そしてウェス・モンゴメリーのギタリストとしての実力を存分に堪能させてくれるのが、『インクレディブル・ジャズ・ギター・オブ・ウェス・モンゴメリー』だ。オクターブの二つの音を同時に弾いてメロディー・ラインを演奏するオクターブ奏法、コードでフレーズを聴かせるコード奏法など、彼の超絶テクニックが惜しげもなく披露され、ギターファンなら絶対に持っていたいアルバムだ。
キャノンボール・アダレイがマイルス・グループから独立した第一作が『ザ・キャノンボール・アダレイ・クインテット・イン・サンフランシスコ』で、それまでとは打って変わったファンキー路線を突き進む。同じフレーズを執拗に繰り返して黒っぽい雰囲気を醸しだすファンキー・ジャズは日本でも大ヒットした。
同じソニー・ロリンズのアルバムでも、リヴァーサイド作品は一味違った上品な味付けになっている。あまり有名ではないが、『ザ・サウンド・オブ・ソニー』はロリンズ・ファンの隠れた愛聴盤になっていたりする。確かに日常的にゆったりとロリンズの世界に浸るに、この何気なさは貴重だ。
そして最後は極めつけ、ビル・エヴァンスの「リヴァーサイド四部作」である。これはエヴァンスがリヴァーサイドに吹き込んだ、名ベーシスト、スコット・ラファロと共演した4枚の作品のことを言う。そのうちの1枚『エクスプロレーションズ』は、有名な『ワルツ・フォー・デビー』の影に隠れがちだが、アナログ時代のB面に収録された名曲《ナルディス》を賞賛するファンは多い。
文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)
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