デッドストックと新進ブランドの個性が生む混沌

東急東横線の渋谷駅から三つ目、隣りは中目黒で三駅先には自由が丘。

その立地からトレンドなイメージを重ねてしまうが、祐天寺駅の改札を抜けると良い意味で裏切られる。

新旧の小さな店が連なる昭和レトロな商店街を通り、これまた昭和な住宅と瀟洒なお屋敷が混在する路地へ。

「こっちで良かったかな」と思い始めたあたりで、コンクリート造りの多面体の建物が現れた。

ガラス張りの扉に「studiolab404.com(以下404)」の表記。

前に置かれた看板には「oops ERROR 404 Go Enter」とある。

迎えてくれたディレクターのMONET(モネ)さんに「404」とはと尋ねると、「エラーコードです」と。

語意をあえて肯定的に捉え、ともすると弾かれてしまうかもしれないぐらい、既成の概念や価値観に流されない個性の意味を込めた。

1階、2階はセレクトショップ。3階は、ショールームをはじめ、今秋よりレンタル可能な展示会スペースとオフィスが併設する。

軸となる商品はデッドストックやニューオールドストックと言われる新品のまま未使用の状態で眠っていたアイテム。

ニューヨーク(NY)のウェアハウスを回り、何らかの理由でマーケットから弾かれてしまった流通在庫から、404のフィルターを通して今の感性を備えたものをクオリティー重視でセレクトしている。

ボウリングシャツや開襟のメディカルシャツ、無地コットンのジャンプスーツなど、懐かしくも新しく、個性的なデザインが揃う。

その背景には、モネさん自身がNYで7年間に渡りファッションビジネスに携わった経験がある。

インターンシップでNYに渡り、ファッションの仕事を経験したことが転機となった。

N YのショールームでMDやバイイングの経験を積み、さらに当時、世界的に注目を集めつつあったショップ「フロントジェネラルストア(FGS)」に加わり、ビンテージの服やジュエリーのバイイング力を身につけた。

その後、独立。フリーランスのバイヤーとしてFGSの買い付けを継続する一方、7年間居たNYでの経験と人脈を生かして立ち上げたのが404だ。

1階ではデッドストックからセレクトした商品をメインに提案

ベーシックなデザイン×機能が魅力のオリジナル

同店の大きな魅力は、質の高いデッドストックに新品をミックスした「混沌」とした世界観。

その混沌の中から、日本ではまだ知られていない海外の新進ブランドが個性を覗かせる。

2022年春夏の上海コレクションでデビューしたファッションブランド「RUOHAN(ローハン)」、ラグジュアリーブランドの残布を使ったアップサイクルレザーによるバッグブランド「NAEITA(ナイータ)」、ゴールドを中心としたNYのジュエリーブランド「NEFERTITI(ネフェルティティ)」、自然の経年変化をテーマとするジュエリー・ファッションブランド「YEON(イェオン)」……。

モネさんがNY時代に親交を深めた若手デザイナーたちが実力と評価を得始め、ネフェルティティは404がブランドの命名も担うなど、互いの得意分野を生かし合う関係を継続している。

残糸や残布をアップサイクルする日本のブランド「RYE TENDAR(ライテンダー)」のアイテムも展開し、今後は別注にも取り組む予定だ。

これらブランドのショールームを店舗の3階で展開するほか、商品企画やプロモーションもサポートしている。

今秋には事務所がある3階を拡張し、展示会などに活用できるスペースにする考え。

  • アートや旅、カルチャーからインスピレーションを得た「ローハン」のコレクション
  • アップサイクルレザーを使った「ナイータ」のバッグ。イタリアの熟練職人が仕上げた
  • 14kのソリッドゴールドによるジュエリーブランド「ネフェルティティ」
  • 洗練されたデザインが魅力の「イェオン」のジュエリー。ウェアも展開している

オリジナル商品の開発にも取り組み、「MONET NEWYORK」として提案している。

ベーシックなデザインに、「あったらいいな」と思う機能がプラスされているのが特徴だ。

「最初に作ったのはアンダーウェアっぽい洋服」とモネさん。

この裏地付きで一枚で着られるワンショルダートップの好評を受け、一つひとつ新たな商品を増やしている。

キュプラシャツは滑らかな肌触りと清涼感、適度な保湿性を備え、サイドポケットがあるロングサイズはシャツジャケットとしても着こなせる。

人気なのはクロスボディバッグ。

ラグジュアリーブランドと同じリサイクルナイロンを使い、丈夫で軽量、PCが入る綿入りポケットも付けた。

同素材のリバーシブルのエコバッグもシンプルながら機能的だ。

ウェアはウィメンズ中心だが、小物・雑貨は男性客にも好評を呼んでいる。

  • メイド・イン・ジャパンによる裏地付きのワンショルダートップ
  • キュプラ100%のシャツ。ロングバージョンはポケット付きなのもうれしい
  • リサイクルナイロンを使ったクロスボディバッグ
  • おしゃれで収納もばっちりのエコバッグ
  • エチオピアンパロサントなど自然の原料で作ったオリジナルアロマスプレー

今年6月には「404 FLEA MARKET」を開催した。

モデルやインフルエンサーなど普段は異なる場で活動する人たちとコラボし、それぞれがセレクトしたアイテムを出品するフリーマーケット形式のイベント。

200種類のビンテージパッチでシャツをカスタマイズするワークショップも併催し、盛況となった。

今後のコト発信も楽しみなショップだ。

写真/遠藤 純、studiolab404.com提供
取材・文/久保雅裕

  • 服好きが集結したフリーマーケット

studiolab404.com(スタジオラボ404ドットコム)

東京都目黒区祐天寺1-31-12
店舗営業日:月・金・土曜日。その他はアポイントメント制
showroom@studiolab404.com

久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremodeコントリビューティングエディター

ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

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