「五感」を目覚めさせる空間
「変わってく。けど、変わらない。」――今春夏のキャンペーンテーマは、ビルケンシュトックの歩みそのものだろう。
1925年、解剖学に基づいた独自のインソール「ブルーフットベッド」を開発。
改良を重ね、1963年に発表したサンダルのファーストモデル「Madrid(マドリッド)」で、今ではコンフォートサンダルの代名詞でもあるフットベッドを使用した。
以来、商品は多様化と進化を続け、しかし製法は変えることなく、世界にファンを作ってきた。
今回のポップアップショップは、ブランドの歩みを俯瞰(ふかん)し、今、伝えたい価値を「URBAN PREMIUM(アーバンプレミアム)」「STREET(ストリート)」「NATURE(ネイチャー)」「HOLIDAY(ホリデイ)」の4テーマのもとに凝縮する。
オープニングは都会的なプレミアムを演出する「アーバンプレミアム」。
民家だった頃から残る石門を抜け室内に入ると、円形にかたどったモノトーンの敷材、その中央は砂のイメージか、上には空中散歩しているようなサンダルがインスタレーションとして表現されている。
「一歩を踏み出そう」とあるので足を置く。
一歩一歩進むと砂や芝、水などを踏む音が耳に届き、「何だろう」と想像を巡らせてしまうアンビエントな音も。
デザイン・制作はデザイナーのROKKAN(ロッカン)、サウンドはDJ・マルチアーティストの鶴田さくらが担当した。
ゆっくりと歩くからこそ感じ取れる音は、普段はあまり意識しない足裏の感覚や正しい歩行の大切さに気づかせてくれる。
気持ちが整うからか、木の香りも感じられる。
これはビルケンシュトックの製品に不可欠なコルクを使い、この空間のために作った「森の香り」。
インスタレーションは、めまぐるしい毎日の中で忘れてしまいがちな「五感」を目覚めさせる体験装置なのだ。
また柱に貼られたQRコードをスマホで読み取るとAR(拡張現実)が現れ、ビルケンシュトックの物作りを体感しながら探検気分で会場を巡ることができる。
テーマごとに絞り込んだ商品を魅せる
商品は、アーバンプレミアムを体現するハイエンドなシリーズから絞り込んだ。
「KYOTO(キョウト)」はその名の通り、多様な伝統文化を持つ京都から着装したシリーズ。
スウェードとヌバックをきものの襟のように重ね合わせたアッパーのデザインが特徴だ。
アイコンモデルの「ARIZONA(アリゾナ)」は、シカゴの老舗革メーカーでNFLの公式ボールのレザーを生産するホーウィン社とのコラボ商品をセレクトした。
他にも「BEND(ベンド)」、「GIZEH(ギゼ)」、「FRANCA(フランカ)」など、洗練されたプロダクトをラインナップしている。
トピックは、エレガントで遊び心溢れる装飾が特徴のシューズブランド「MANOLO BLAHNIK(マノロ ブラニク)」とのコラボレーションコレクション「MANOLO BLAHNIK for BIRKENSTOCK(マノロ ブラニク フォー ビルケンシュトック)」。
人気モデルのアリゾナとボストンを生かし、上質なベルベットやスムースレザーのアッパーに大きめのクリスタルバックルを施し、マノロの美学とビルケンシュトックの日常的な快適さが融合した逸品に仕上げた。
「1+1は3にならなければならない」という、ビルケンシュトックのコラボへの基本姿勢が実感される。
- 長年のビルケンシュトック愛用者というマノロ・ブラニクとの出会いから生まれた「マノロブラニク フォー ビルケンシュトック」の第1弾。ベルベットタイプのアリゾナが102,300円、ボストンが93,500円、レザータイプのアリゾナが93,500円、ボストンが84,700円
今後、4月後半からの「ストリート」ではカラフル&ポップを基調に原宿ならではのストリートカルチャーを表現し、アーティストによるライブペインティングなどのイベントも実施。
6月の「ネイチャー」では自然を楽しむライフスタイルの観点からトレッキングサンダルなど、7月の「ホリデイ」では海や夏を謳歌するビーチサンダルなどを展開する予定。
期間中には、ポップアップショップならではの特典も得られる。
ビルケンシュトックの会員「My BIRKENSTOCK(マイ・ビルケンシュトック)」登録者はスタンプラリーに参加でき、スタンプを5枚以上集めると、ビルケンシュトックのサンダルを履いて楽しむ京都の旅やグランピング旅行などが当たるキャンペーンに応募できる。
会場へ行くまでも、また会場の空間を巡っても体験がいっぱいなポップアップショップだ。
写真/遠藤純、ビルケンシュトックジャパン提供
モデル/美濃屋春風(USEN)
取材・文/久保雅裕(encoremodeコントリビューティングエディター)
BIRKENSTOCK SPRING&SUMMER POP-UP SHOP
会期:2022年3月24日(木)~7月30日(土)11:00-19:00(会期中無休)
URBAN PREMIUM 3月24日(木)~4月21日(木)
STREET 4月22日(金)~5月31日(火)
NATURE 6月1日(水)~6月30日(木)
HOLIDAY 7月1日(金)~7月30日(土)
会場:UNKNOWN HARAJUKU 渋谷区神宮前6-5-10
- 「フットベッド」は4層構造。その要となるコルクはコルク樫の皮を剥いで原材料とするが、剥した部分はまた皮が育つため、木を伐採することはないという
- 1978年にベルリンで購入された「アリゾナ」。愛用してきた顧客の好意で展示が実現した。
- オープニングでは感性を刺激する「食」のケータリングも。西欧と日本の食文化を融合した注目のレストラン「kabi(カビ)」(目黒)が軽食とドリンクを提供。来場者にはビーガン焼き菓子専門店「HOMECOMING vegan baked goods(ホームカミング・ビーガン・ベイクド・グッズ)」のクッキーやブラウニーを進呈
- きものの襟合わせから着想した「キョウト」。異素材をミックスしたアッパーの面ファスナーにより好みのフィッティングに調整しやすい。25,300円
- ミニマルなデザイン、輝きを放つコーティングを施したレザーのアッパー、大きなバックルで、足元をエレガントに演出する「ギゼ ビッグ バックル」。22,000円(税込)
- 米国の老舗タンナー、ホーウィン社とのクラフトマン同士のタッグで開発された「アリゾナ」。24,200円。アメフトなどのボールに使われるレザーは個性的かつコーディネートしやすい
- ハイシャインのアッパー、細めのクロスストラップがフェミニンな「フランカ」。馬の蹄をかたどったバックルがアクセント。31,900円
久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremodeコントリビューティングエディター
ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。