固定概念を打ち破る「ストリートゴルフ」

密を避けられ、自然の中で楽しめるスポーツとして改めて注目され、楽しむ人が増えたゴルフ。

コロナ禍の3年余りでアパレルブランドによる参入も相次いだ。

世界的に読者を持つ『ハイプビースト』がゴルフアカウント「ハイプゴルフ」を立ち上げたのは2021年。

ゴルフに軸足を置いたプラットフォームとして、新たなモノやコトを企画・開発・提案している。

そのベースにあるのはストリートテイスト。

ゴルフが培ってきた紳士のスポーツとしての伝統に敬意を払いながら、グラフィックや音楽などストリート発のカルチャーと融合させることで、「ゴルフのハイプな今」を発信している。

その日本でのパートナーがジュンだ。

1970年代からゴルフ場を運営し、2010年にはゴルフウェアブランド「JUN&ROPE(ジュンアンドロペ)」も展開、22年には「SATURDAYS NEW YORK CITY(サタデーズ ニューヨークシティ)」でもゴルフラインを立ち上げた。

ゴルフ分野の充実・強化を進める中で、固定概念を打ち破る新たなゴルフカルチャーを発信するハイプゴルフに着目。

ファッション、カルチャーの視点で「自分たちが着たいと思うウェアを作り、ゴルフ業界を盛り上げよう」とハイプビーストとコミュニケーションを重ね、ハイプビーストジャパンとの協業によるハイプゴルフの展開に至った。

長年にわたり多様なブランドで企画・生産背景を培ってきたジュン、海外のストリートブランドやゴルフインフルエンサーなどの情報に強いハイプビースト。

互いのリソースを掛け合わせるテーマとして「ストリートゴルフ」を設定し、MDはオリジナル商品を中心に、プレーはもとよりデイリーにも楽しめるウェアや雑貨、ゴルフ関連のアクセサリーで構成した。

販売はオンラインストアでスタートし、一定の認知を得て22年7月にフラッグシップとして出店したのが代官山店だ。

デンマーク大使館交差点の近く、アー・ペー・セーの店舗跡地に出店したハイプゴルフ代官山店

店舗は2層からなり、1階は世界的なバリスタである米国「sawada coffee」のオーナーバリスタ澤田洋史氏がプロデュースする「HYPEBEANS(ハイプビーンズ)」、2階はウェアや雑貨で構成している。

店舗デザインはインテリアデザイナーの関祐介氏が手掛け、シンプルでスタイリッシュな空間に仕上げた。

階段を上ると、2階には木の空間が広がり、大きな窓が切り取る代官山の街の風景が絵画のようにも感じられる。

1階のハイプビーンズは「SAWADA COFFEE USA」でもシグネチャーであるエスプレッソと抹茶をブレンドした「Forest Matcha Latte(フォレスト抹茶ラテ)」や日本やゴルフからインスピレーションを受けて作られた限定メニュー「BUNKER SHOT LATTE(バンカーショットラテ)」などゴルフにまつわる捻りの利いたドリンクメニューのほか、マスターズ・トーナメントの名物フード「ピメントチーズサンドイッチ」も提供する。

テイクアウトもイートインも可能。店内に設置された巨大なLEDビジョンの映像に目を留めて入店し、コーヒーショップの存在に気づく人も多く、コーヒーを味わいながらゴルフアイテムを見てゴルフに興味を持つケースもあるという。

  • 1階はコーヒースタンド「ハイプビーンズ」
  • ゴルフ関連のビジュアル情報を伝えるLEDビジョン
  • 大きな石のオブジェはテーブルや腰掛けとしても使える
  • 特徴的な階段
  • 最高峰とされるエスプレッソマシンでオリジナルメニューを提供
  • フォレスト抹茶ラテ
  • バンカーショットラテ
  • 木を組み合わせた2階はウェアや雑貨のショップ空間

ファッション性×「DO」を支える機能性

オープン以来、好評なのが、背にハイプゴルフのロゴとドットのグラフィックをあしらったプルオーバーやポロシャツ、モックネックなど。

シンプルなデザインだが、通気性や撥水性はもとより、クラブを振りやすいよう切り替えを配したり、プレー時の衣擦れの音が気にならない軽量ストレッチ素材を使うなど、「DO」を支える機能をしっかり備える。

「これからゴルフを始めるお客様を含め、実際のプレーで着るアイテムを探して再来店する」ケースが多いという。

  • ブランドロゴとアイコンモチーフのドットをあしらったオリジナルアイテム

併せて好評なのが、まだ日本ではあまり紹介されていない、海外で活躍しているブランドやクリエイターとのコラボアイテム。

「HOOKED GOLF(フックドゴルフ)」は、スケートボードやスノーボードのカルチャーをベースに新たなゴルフスタイルを提案。

ブランドのキーグラフィックにもなっているスカルをメインにハイプゴルフのロゴを組み込んだスウェットポロやTシャツ、ネームタグなどを揃える。

ニューヨークにクリエイティブスタジオを構え、自身のブランドも持つ「CAVY(ケービー)」とのアイテムも注目。

スポーツ、アート、カルチャー、ノスタルジアから得たインスピレーションをグラフィックやロゴでポップに表現している。

プロスケートボーダーによるゴルフブランド「NO.33(ナンバーサーティースリー)」は、ゴルフティーをモチーフにしたフレーバー付きトゥーススティックで知られる。

ハイプゴルフ向けには、プレー中のビターな気分もリフレッシュできるチョコミントのフレーバーで表現した。

「Pacific GOLF CLUB(PGC/パシフィック ゴルフ クラブ)」は、トランジットジェネラルオフィスが運営するブランド。

架空のゴルフ場であるPGCのクラブハウスで売られているウェアやグッズを展開するブランドというユニークなアプローチだ。

台湾人の父と日本人の母を持つ、東京生まれのアーティストFACE(フェイス)とのアイテムを、ハイプゴルフとPGCで限定販売している。

  • スカルのグラフィックが特徴の「フックドゴルフ」(写真左)のスウェットポロと、「LOVE GOLF」のメッセージをロゴ化した「ケイビィ」のハーフジップスウェット
  • 「パシフィック ゴルフ クラブ」とアーティストのフェイスによるコラボアイテム
  • 「ナンバーサーティースリー」のトゥーススティック

オリジナルウェアは基本M~XLサイズでの展開。

ウェイメンズは「A.P.C.GOLF(アー・ぺー・セー ゴルフ)」や「NIKE(ナイキ)」などのセレクトブランドでスカートやワンピースを扱う。

自らゴルフを楽しむ女性スタッフがリアルの接客を通じてコーディネートを提案している。

オリジナルはメンズ中心だが、女性にも合うカジュアルなスタイルを提案

ウェアの品揃えもさることながら、シューズもファッション性と機能性が重視されている。

ゴルフ用に開発されたアディダスゴルフの「コードカオス22」、ゴルフ仕様にアップデートされた「ナイキ エアマックス」や「コンバース オールスター」など、人気ブランドのゴルフバージョンと出会える。

また、ゴルフ場のグリーンをイメージしたヘッドカバーは人気のアイテム。

人工芝と合成皮革による鮮やかなカラーと滑らかな感触が「新しい」と好評で、すでに再入荷したほど。

他にも、キャップやハット、ゴルフティー、ネームタグなどアクセサリーも充実。

ラグジュアリーブランドのビンテージゴルフグッズも興味深い。

  • ゴルフ仕様のシューズブランドを多様に集積
  • 人工芝製のオリジナルのキャディーバッグやクラブカバー、シューズケース ※クラブカバーとシューズケースは販売中、キャディーバッグは2月下旬頃に発売予定
  • 「アー・ペー・セー ゴルフ」のキャディーバッグも展開
  • ラグジュアリーブランドのビンテージゴルフアクセサリー

新たなゴルフカルチャーのコミュニティーへ

客層は30代後半~50代と幅広い。

現在はハイプビーストのサイト経由でハイプゴルフを知り来店する人が多く、「さらに認知を広げていくことが課題」とする。

その一手として、シューズやゴルフギアなどのブランドとの協業による店内でのポップアップストアがある。

アディダスゴルフのコードカオス22、PXG(パーソンズ・エクストリーム・ゴルフ)とニック・ジョナスのコラボコレクションなど、オープンして半年余りで多様なポップアップを誘致している。

「新たなゴルフカルチャーのコミュニティーが醸成され、増えていくことを目指している」と言う。

ゴルフを楽しむ場作りとしては、ハイプゴルフ・ジャパンが企画する招待制のトーナメント「ハイプゴルフ インビテーショナル イン ジャパン」を21年から開催している。

ファッション、アート、音楽、フード、体験型アクティビティーなどを融合したイベントで、今後も継続していく。

ゴルフを敷居の高いスポーツと思っていた人も、すでに楽しんでいる人も、「新しさ」を発見・体感するコミュニティー。

今後、どんなゴルフカルチャーが醸成されていくのか、注目される。

写真/遠藤純、ハイプゴルフ提供
取材・文/久保雅裕

久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremodeコントリビューティングエディター

ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。東京ファッションデザイナー協議会 代表理事・議長。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

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