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SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」、第37回のゲストはルックホールディングスの多田和洋さん!



――本編でも語っておられましたが、ルックでは、多田さんのようにひとつの事業部門でキャリアを重ねて社長職に就かれるケースは稀だとか?

多田和洋「めずらしいですね。もしかしたらレナウンルック時代まで遡っても初めてのケースかもしれません。加えて、メインである百貨店事業の経験もなく、本流ではないブティック部門からの社長というのは初めてでしょう」





――その本流ではない事業部に在籍していた自分が社長職に抜擢された理由をご自身はどう分析していますか?

多田「おそらく、逆に本流の経験がなかったからではないでしょうか。これは直接告げられたわけではありませんが、あまりに経験が深すぎるとしがらみが生じて、後に事業の選択と集中という局面で迷いが生じたりするかもしれません。その点、自分は大胆な決断ができると判断されたんでしょう」

――実際にそういった厳しい局面がいくつもあったかと思いますが、振り返ってみていかがですか?

多田「そうですね、大事なのは、まず社内に向けてそのときどきの状況をきちっと説明することでしょうね。そのまま放置することでどういう状況を招くか、こうすれば会社の状況がもっとよくなるんだということを明らかにする。よくなるんだっていう方策を示して、かつ、よい結果が出ないと士気も上がらないわけですが、そういう意味では、いままではずっとよいかたちで結果もついてきたということなんでしょう」





――翻って、ブティック事業部時代には、たとえばルックを代表するブランドのひとつであるマリメッコにも携わっておられたわけですが、その間、マリメッコのイメージもだいぶ変化したように思います。

多田「この表参道の店舗は2006年にオープンしましたので、もう15年ですか……思えば長く続いているブランドになりました。我々が手掛ける以前のマリメッコって、日本では、皆さんご存知のウニッコ柄のイメージが強過ぎて。あとはテーブルウェアがあるかなという程度だったんですね。まあ、マリメッコというブランドの全体像がきちんと伝えられていなかった。フィンランドでは国民的ブランドとして本当にありとあらゆるアイテムが揃っていて、日本でもその世界観を見せてあげればファンが増えるだろうと思っていました。実際、ルックが手掛けるようになってきちっとショップ展開をすることでそのとおりになりました」

――マリメッコも然りですが、最近取り扱いをはじめた海外ブランドであるクラウス ポルトといった服飾以外の雑貨系の可能性をどう見ていますか?

多田「最近のファッション業界の流れを見ると、どちらかと言えば、そういった非アパレルのほうが伸びしろがあるように思います。特に昨今のリモートワークのような生活習慣が定着していくと、通勤に着るような服はそんなに数が必要なくなると思います。それよりは家のなかを居ごこちのいい空間にしたいという意識が働くでしょう。今後、ますますそういう傾向が強まるのかなという気がしますね。ルックの売上を見ても雑貨の割合が半分を超えていますから。これはもう、時代のニーズとともにさらに変化していくと思います」





――では海外ブランドとナショナルブランドの比率でいうと、軸足はどちらに?

多田「そうですね、どちらも大事ではありますが、やはり経営資源は限られていますから主力の海外ブランドに振り向けられがちにはなります。それこそ、私が入社した当時のレナウンルックは、ほぼ100パーセントがナショナルブランドだったわけです。これも消費者のニーズによるものなので、今後も変化し続けていくでしょうし、逆に言うと、それに適応していかないと会社も続かないでしょう。そういう意味ではすごく柔軟性のある会社だと思います。一切の聖域もないですから。ただひたすらにお客様に求められているものを提供する。だからと言って、何でもやるかというと、決してそうではない。我々はファッション屋としてのプライドがありますので、あくまでもファッション、ライフスタイル分野のなかで、という意味です」

久保雅裕「海外ブランドを輸入し、日本国内で展開するという点では、本国の意向や資本の変化など難しさもあろうかと思いますが、そのあたりはいかがですか」

多田「ルックも2019年、イタリアのイル ビゾンテを買収しましたが、やはりそういったクロスオーバーのM&Aということも考えなければいけない時期なんでしょう。いまは海外も厳しいですが、国内も同様です。先日のレナウンの件は驚きました。僕はレナウングループ時代の入社で、入社と同時にレナウングループの寮に入りましたから。2002年にレナウンルックからルックに商号を変え、独立独歩の道を歩むことになりましたが、当時の社長があのときその決断を下していなかったらいまごろどうなっていたのかと思います。会社の将来って経営者の判断ひとつで大きく変わるんだな、しっかりしなきゃいけないなと噛みしめています」





――さて、ここ数ヵ月のコロナ禍を経て、社内や販売の現場に目を向けて、社員や販売スタッフのマインドセットの変化をどう感じていますか?

多田「社内でいちばん大きく変わったのはリモートワークをはじめたことでしょうか。感染を防ぐということをまず第一に考えて実施しました。それまでは正直、あまり考えていなかったことではありますが、従業員も好意的に感じていると思います。もちろん、リモートワークができない部署もありますし、全部一律というわけにはいきませんが。販売スタッフさんへは、そんなに長く待たずにお店を再開できると信じて、臨時休業中も給与をしっかり全額支払うことで安心してくれたのではないでしょうか」

久保「こうして経営者がどっしりと構えていると販売員のかたのモチベーションも変わるでしょうね」

多田「こればっかりは会社さんによって置かれている状況が違いますから何とも言えませんが、我々は従業員の生活をしっかりと守っていきたいという思いがありました」





――ではそうしてこのコロナ禍を乗り越えた先に待っているファッション業界の未来をどう予測しますか?あるいはどんな未来を想い描いていますか?

多田「ブランドの淘汰が進んで、業界全体がもう一段シュリンクするというのはやむを得ないと思います。そうした選択と集中のうえで、残ったブランドは、より先鋭化していくのではないでしょうか。ルックは幸いにして、海外にもしっかりとしたマーケットを持っていますしワールドワイドな視点でやっていきたいと思っています。もちろん日本でもがんばっていきますし、まだまだチャンスがあると思っています」

(終わり)

取材協力/Marimekko 表参道、イル ビゾンテ表参道店
取材・文/高橋 豊(encore)
写真/柴田ひろあき



■多田和洋(ただ かずひろ)
1965年生まれ。1988年、株式会社レナウンルック(現株式会社ルックホールディングス)入社。同社取締役執行役員ブティック事業部長を経て、2015年、同社代表取締役社長。現在は株式会社アイディールック理事、ルック(H.K.)Ltd .董事、Bisonte Italia Holding S.r.l.代表取締役、Il Bisonte S.p.A.取締役を兼務。

■久保雅裕(くぼ まさひろ)
ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。



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