サザンオールスターズが5月29日(金)に東京ドームで6年ぶりの全国ツアー“LIVE TOUR2025「THANK YOU SO MUCH!!」”のファイナルを迎えた。
今年の1月11日(土)〜12日(日)の石川公演を皮切りに全国13箇所26公演に及ぶ、アリーナ&5大ドームツアーは自身最多となる60万人を動員。最終公演は47都道府県272館589スクリーンで計15万人が観覧したライブビューイングも実施された。
ドーム公演からは3月19日(水)にリリースされた10年ぶり通算16枚目のオリジナル・アルバム『THANK YOU SO MUCH』に収録されていた「暮れゆく街のふたり」がセットリストに加わり、さらに東京ドーム公演ではアンコールに「東京VICTORY」が追加された。全28曲中、ニューアルバムからは2023年にリリースされた「盆ギリ恋歌」「歌えニッポンの空」を除く12曲、既発曲が16曲(本編に限ると11曲:13曲)という構成になっていた。
冒頭は、ドームだからといってド派手な演出は用意されていなかった。開演時間になると、ホーン隊、ギター、キーボード、コーラスのサポートミュージシャンらに続いて、サザンのメンバーが5万人の観客に向けて手を振りながら、自然体でステージに上がった。少し遅れて桑田がゆっくりと歩きながら姿を見せた。ここがライブハウスであるかのような立ち振る舞いで、メンバーはそれぞれの位置につく。国民的になりすぎて忘れがちだが、彼らはやっぱりバンドマンなのだと再確認させられた思いがした。1曲目はピアノと歌から始まる「逢いたさ見たさ 病める My Mind」。当時のサポートメンバーであるキーボードの国本佳宏が全編に渡りサポートした5枚目のアルバム『NUDE MAN』のアルバム曲。サウンド面においては、現サポートメンバーの片山敦夫が制作に深く関わったニューアルバムとの親和性も高い。バンドのその日の腕鳴らし的な意味合いもあるのだろう。もしくは、R&Bとクラシカルなオルガンとハーモニーを融合したプログレッシヴロックを感じたので、ロンドンからパリへという流れもあるかもしれない。ともかく、プロローグ的な意味合いを持つ曲を歌い終えた桑田が右手を挙げて「THANK YOU SO MUCH!!」とタイトルをコールし、本編はいよいよ幕開けとなった。



野沢のカウベルとエレキギターのカッティングに合わせてスクリーンの幕が開くと、銀テープが放たれるとともに光り輝く「SOUTHERN ALL STARS」の文字が現れた。ライブでバンドの生音を浴びると、アメリカの60'Sロックに敬意を表したダンス・ナンバーのようにも聴こえる。ボトルネック奏法を繰り出す桑田が<熱いステージが始まるよ>とまさにライブのオープニングにぴったりのフレーズを届けると、「東京ドームに帰ってきました! 嬉しいような、寂しいような、複雑な気持ちですが、千秋楽です」と挨拶。「それでは参りましょう。火薬田ドン」となぜかビートたけしの往年のキャラクターを口にして観客を和ませ、「せつない胸に風が吹いてた」「愛する女性(ひと)のすれ違い」と忘れられない恋と青春の思い出を想起させる楽曲を続けた。前者は小林武史が編曲に参加した1992年リリースの11枚目のアルバム『世に万葉の花が咲くなり』、後者はテクノロジーを駆使した1985年リリースの8枚目のアルバム『KAMAKURA』から。「ジャンル・ダルクによろしく」の<七つの海>と「せつない風が吹いてた」の<七色の未来>というフレーズの繋がりも感じたが、最初のブロックはもう戻れない日々に思いを馳せる追憶の日々が描かれていた。
波の音から始まり、スクリーンに江ノ島の風景が映し出された「海」からは、タイトル通りに“夏の海”の情景を引き連れてくるブロックとなっていた。ここで、サザン=夏というイメージを決定づけたのは5thアルバム『NUDE MAN』だったことを思い出す。ブルースハープをフィーチャーした「ラチエン通りのシスター」から、指笛や三線が鳴り響き、琉球衣装のダンサーが踊る「神の島遥か国」という流れで、茅ヶ崎から沖縄へとひとっ飛び。そして、<あーいーやー>から<エンヤーコーラ>に。能楽囃子によって沖縄からトーチが灯る由比ヶ浜へと戻り、「愛の言霊(ことだま)〜Spiritual Message〜」での桑田のスポークンワードとミュージシャンたちのテンションをグッと引き上げる演奏と濃密なバンドアンサンブルによって場内の熱気は一気に高まっていった。

ライブの中盤はニューアルバム『THANK YOU SO MUCH』の楽曲が並べられていた。バンドのグルーヴは強靭でタフであり、フルートやバスクラリネットなど、それぞれの楽器の音も粒だって耳に届く。キメの部分もダイナミックで、サポートメンバーを含めて、やはりサザンはタフなライブバンドであることを再認識するとともに、“歌のことば”もより伝わってくる思いがした。<誰か未来へ言葉/うまく伝えて欲しい>というメッセージを込めた「桜、ひらり」のサビで歌われる<桜、希望に萌えて>というフレーズがあった。宮田輝、尾崎紀世彦、坂本九、島倉千代子、弘田三枝子、伊東ゆかり、奥村チヨ、永六輔、中村八大、服部良一、植木等らの映像をバックにした「神様からの贈り物」では<希望の灯(ともしび)よ!!>と“先人”たちを回顧。「史上最恐のモンスター」では絶望を嘆きながらも<今…いずこへ希望(めぐみ)のRains and Shines>と地球と人類の未来を憂う。サザンがニューアルバムを通して伝えたいことは未来への“希望”の光で間違いないだろう。
続く「暮れゆく街のふたり」では桑田はギターを弾かず、スタンドマイクを前に<湿っぽい話は懲り懲りだ>と呟き、原が歌う「風のタイムマシンにのって」をアルバムと同じく、ライブ本編の中央に配置し、一気に場面を明るく爽やかに転換。<思いが叶わぬ時はここへ>の“ここへ”で、桑田が観客に向けてライブステージを指し示した後、ベースの関口もアコべにチェンジ。1978年リリースの1stアルバム『熱い胸さわぎ』からボサノバにアレンジした「別れ話は最後に」と、「ニッポンのヒール」はアコースティック編成でパフォーマンス。ダイレクトに届く生楽器にボーカルが捲し立てる様は惚れ惚れするほど格好良く、問題提起もふんだんに含んだシニカルな歌詞も観客の耳と心を鷲掴みにした。

そして、「プロになる前に作った曲」と紹介した「悲しみはブギの彼方に」では<米食えない>というフレーズが2025年現在のニュアンスで胸に響く。アルバムと同じ流れとなる「ミツコとカンジ」でプロレスに熱狂した少年時代へと引き戻すと、レーザーとスモークが交錯する「夢の宇宙旅行」で未来に夢しかなかった1970年と2025年の万博を繋ぎ、大谷翔平ばりのスイングでホームランをかっ飛ばす。お金とデジタルにまみれた「ごめんね母さん」や床置きのミラーボールが回る「恋のブギウギナイト」ではドームが巨大なディスコへと変貌。ここからはさらに派手な演出を加え、「LOVE AFFAIR〜秘密のデート〜」「マチルダBABY」「ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)」とライブでもお馴染みのヒット曲を連発して観客のヴォルテージをあげ、ライブはクライマックスへ。本編ラストはピンクのヘルメットに砲弾2個と大砲を乗せ、背中には翅を、胸には<ウスバカゲロウ>とマジックで書かれた名札をつけた桑田がセクシーなダンサーと淫らに踊る「マンピーのG★SPOT」。場内が狂乱の渦に巻き込まれる中でスクリーンには王冠を被った虎の映像が映し出され、何故かコーラスのTIGERの咆哮によって本編は締めくくられ、メンバーは“すたこらさっさ”という擬音が聞こえるようなポーズで小走りにステージを後にした。

アンコールは、ニューアルバムの最後を飾った「Relay〜杜の詩」から。場内が光で満ちていく中で、都会の森を消さないで欲しいという<意志を継ないで>という願いを観客一人一人の胸に真っ直ぐに届けると、「東京VICTORY」では拳を高々と挙げたシンガロングが巻き起こり、入場時に配られたライトが光った。会場を埋め尽くした真っ白い光。あれこそが、それぞれが自分の人生に持ち帰る“希望の光”だろう。MCでは今年の6月25日にデビュー47周年を迎えることに触れ、「50周年が大きな目標です」と未来に向けた決意を表明。イントロで歓声が上がった「希望の轍」ではデビュー45周年を迎えた2023年に行われた「茅ヶ崎ライブ2023」の映像に続き、メンバーの5カットが映し出された。これも50周年に“希望”を繋いでいくというバンドの意思の表れだろう。最後は野沢のサンバホイッスルとコンガから始まる1978年のデビュー曲「勝手にシンドバッド」。サンバダンサーやジャビットくん、シスタージャビットちゃん、トニー谷やプロレスラーのコスプレダンサーなど、総勢40名を超えるダンサーが踊り狂う中でコール&レスポンスを繰り広げ、ラララの大合唱も発生。最後はアントニオ猪木の「1、2、3、ダー!」のあと、「サザンオールスターズでした!!」とバンド名を叫び、<THANK YOU SO MUCH!!>という深い感謝と愛、そして、希望を共有したツアーを完走した。

(おわり)
取材・文/永堀アツオ
写真/西槇太一
==セットリスト==
1. 逢いたさ見たさ 病める My Mind
2. ジャンヌ・ダルクによろしく
3. せつない胸に風が吹いてた
4. 愛する女性(ひと)とのすれ違い
5. 海
6. ラチエン通りのシスター
7. 神の島遥か国
8. 愛の言霊(ことだま)〜Spiritual Message〜
9. 桜、ひらり
10. 神様からの贈り物
11. 史上最恐のモンスター
12. 暮れゆく街のふたり
13. 風のタイムマシンにのって
14. 別れ話は最後に
15. ニッポンのヒール
16. 悲しみはブギの彼方に
17. ミツコとカンジ
18. 夢の宇宙旅行
19. ごめんね母さん
20. 恋のブギウギナイト
21. LOVE AFFAIR~秘密のデート~
22. マチルダBABY
23. ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)
24. マンピーのG★SPOT
ENCORE
1. Relay〜杜の詩
2. 東京VICTORY
3. 希望の轍
4. 勝手にシンドバッド
ライブのセットリストがストリーミングサービスで聴ける公式のプレイリストを公開!!
サザンオールスターズ LIVE TOUR 2025 「THANK YOU SO MUCH!!」 5.29 at TOKYO DOME >>>
*配信中の楽曲のみで構成しております。

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アナログ盤(2LP)/VIJL-62400~1/5,500円(税込)
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https://southernallstars.jp/feature/thankyousomuch_sastimes
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