本イベントは、コロナ渦の約3年間、「音楽フェス」などの大規模イベントや海外アーティストの来日ライブ、国内の音楽ファンによる海外でのライブ参加などの困難な状況がつづくなか、ホテルという身近な場所での音楽イベントを通じて、リアルイベントの魅力を訴求し、コロナ禍における音楽やホテルでの新たな楽しみ方を提案する。
テーマの「平成レトロ」と2000年頃を指す「Y2K(=Year 2000の略)」は、平成時代をリアルに体感した40~50代だけでなく、25歳以下のZ世代には新たなカルチャーとして、洋楽を体感して欲しいという思いからきているそう。
ユニバーサル ミュージックの担当者によれば、現状、日本における音楽の販売状況は邦楽が約8割、洋楽が2割弱。さらに、海外アーティストも来日できず、若い世代の音楽ファンと洋楽とのタッチポイントが非常に少ない状況がつづき、直接的に啓蒙できる場所がなくなってきている状況だと話す。
また、マリオット・インターナショナルが運営する「アロフト東京銀座」は、Z世代の若者や海外から来る人に向けて作ったホテル。しかし、このコロナ禍での集客は厳しく、ホテル業界全体がダメージを受けている状況だという。
そこで、新規のリスナーとのタッチポイントを作る場として、「アロフト東京銀座」の空間を活用し、ユニバーサル ミュージックが音楽の企画を提供する、現状、お互いの不足点となっている部分を「エンターテインメントで補填する」というのが、本音楽イベントを立ち上げたきっかけだ。本イベント開催により、国内の洋楽シーンもさらに盛り上げていきたいという思いがあるそう。
そういった背景もあり、立ち上がるべくしてスタートした「Hei-Sei!Retro Music Night」。
イベント初回となる今回は、長きに渡って世界のDJシーンで活躍する日本を代表するパーティーDJ、DJ KAORIと、音楽ユニット「ROYALcomfort」のボーカルで、現在、自身のTikTok配信でのパフォーマンスが爆発的人気を誇っているKAY-Iをフィーチャー。
会場となった「アロフト東京銀座」1階にあるアーバンなバーフロアー「W XYZ Bar」には、ミュージックラバーたちが今か今かとオープン待ちをしていた。
イベントスタートの20:00ちょうどにDJブースにDJ KAORIが登場し、彼女のMCとともにイベントがスタート。Mary J bligeの1992年のデビューアルバムから「Real Love」、そして、歌詞の意味を強く強調しながら会場の若い女性へと向けた1994年のヒット曲、Des'reeの「You Gotta Be」へとミックスし、まずはゆったりとした90年代R&Bグルーヴが「W XYZ Bar」を漂う。
オープンして間も無く、続々とミュージックラバーたちが集まりはじめ、気がつくと会場のテーブル席はすべて埋まり、グラスを片手に立ちながらゆらゆら踊っている若い世代の姿も。
DJ KAORIのファーストセットは、90年代に渋谷をはじめとするクラブで頻繁に流れていたR&Bサウンドが中心だった。
その後、DJ KAORIの呼び込みより、本日のライブアクトであるKAY-Iが歓声とともに登場。洋楽に日本語歌詞を入れてカバーするジャパミックスなるパフォーマンスを自身のTIKTOKアカウントから配信し、人気急上昇中のヴォーカリストだ。今回のライブでは、洋楽のカバー曲のみのパフォーマンスを披露する。
まずは、Jamiroquaiの1996年のヒット曲「Virtual Insanity」からスタート。声量のある美しいヴォーカルが会場に響く。そして、Ne-Yoが2007年にリリースした「because of you」へと2曲つづけた。
MCでは、英語で挨拶とみせかけて地元の大阪弁でトークし、会場をどっと沸かせる一面も。
つづいて1970年のThe Beatlesの「Let It Be」、Aviciiの2014年の曲「Waiting for Love」。最後は、会場に来たお客さんの思い出になってもらえたらと、Maroon5の「Memories」をカバー。
そこでパフォーマンスは終了する予定だったが、ファンからの止まらない熱いアンコール。DJ KAORIからの後押しもあり、急遽、Michael Jacksonの「Heal The World」をアンコールで披露した。これが生ライブの醍醐味ともいえよう。
さて、イベントは後半戦がスタート。Joeの「Still Not A Player」からDJプレイをスタートさせたDJ KAORI。さらに、JoeがAshantiをフィーチャーした「What's Luv?」。90年代ヒップホップセットから、後半は上げ目のダンスグルーヴのDJプレイへ。
煽りのMCパフォーマンスとともに人で埋め尽くされたフロアーをジャックした、DJ KAORIによる2ndセット。
客層的には20代前半から50代オーバーまで幅広く、踊る人、座って聴く人、それぞれがそれぞれでイベントを楽しみ、終始盛り上がりをみせる良い雰囲気。幸先良い初回イベントとなった。
本イベントを「シリーズ化していきたい」とユニバーサル ミュージックの担当者。平成時代は洋楽が流行っていた時代ということもあり、その頃の音楽を中心のイベントにすることで、40〜50代にとっては懐かしく、20〜30代にとっては新しい音楽に触れられる機会を作っていきたいと、今後の方針について語る。
「Hei-Sei!Retro Music Night」は、2022年5月20日にDJ MASTERKEYをフィーチャーして、「moxy(モクシー)大阪新梅田」にて開催予定だ。
取材・文/カネコヒデシ
DJ KAORI Event photo/アロフト東京銀座
DJ KAORI
単身NYへ渡り、マーク・ロンソンらと共に当時のNYCクラブシーンで活躍。週5本のレギュラーを抱え、マイク・タイソンやマイケル・ジョーダン等スーパーセレブのパーティーDJのオファーを受けるまでになる。NYのNO.1 HIP HOP DJ 集団Big Dawg Pitbullsに唯一女性DJとして迎え入れられ、日本人初めて、HOT97、BET, FOX等の番組でDJプレイする。現在は東京に活動の拠点を移し、精力的にMIX CDをリリース。トータル売り上げ枚数は460万枚を突破。言わずと知れた日本を代表するパーティーDJ!TOKYO-FMでラジオ番組715も絶賛放送中!
KAY-I
男性3人組音楽ユニット「ROYALcomfort」のボーカル担当。
コロナ禍の影響で活動が制限された2020年から歌ってみた動画をTikTokにアップし続けたところ、1年半あまりで総再生2億回、30万フォロワーに到達。自身のルーツでもある洋楽をカバーし、日々多くのリスナーに歌声を届けるウタウタイ。TikTok のフォロワー41万人。
カネコヒデシ
メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。そのほか、紙&ネットをふくめるさまざまな媒体での編集やライター、音楽を中心とするイベント企画、アパレルブランドのコンサルタント&アドバイザー、モノづくり、ラジオ番組製作&司会、イベントなどの司会、選曲、クラブやバー、カフェなどでのDJなどなど、活動は多岐にわたる。さまざまなメディアを使用した楽しいモノゴトを提案中。バーチャルとリアル、あらゆるメディアを縦横無尽に掛けめぐる仕掛人。
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