――メジャー1stアルバム『A GREAT FOOL』は、どんなことを提示していきたいと思いながら制作されたのでしょうか?

1stアルバムだからこそ、“今後、3年、5年経った時にしっかりと意味があった1枚にしたいな”と思い制作しました。客演、プロデューサー陣含め、いまこのタイミングでやることに意味があり、後々必ず、この経験が大切な財産になると確信した方にオファーさせていただいたんです」

――なかでも、確信となった客演の方はどなただったのでしょうか。

「このタイミングでSKY-HIさんと再度ご一緒させていただいたことは大きかったですね。以前、メジャーデビュー前に「Doze Off」という楽曲で一緒にやらせていただいたんですが、当時は先輩後輩の関係値だったんです。でも、今回は同じレーベルに入り、恐怖や不安も一緒に抱える仲間という感覚が芽生えた後だったので、意味のあるコラボになったと思います。BMSGというレーベルがもう少し大きくなった時に、ふたりが発足当初にこういった曲を作ったということに特別な意味を見出せる曲になるだろうなと実感できる曲になりました」

――BMSGに入ったからこそ、芽生えた想いはどんなものですか?

「社長である日高さんには、言葉では言い表せないようなシンパシーを感じているんです。それに、日高さんのライブや社長業をしている姿を近くで見ることにより、根本的な意識の高さ、自分達がどうありたいかということを、レーベルの僕を含め、メンバーやスタッフさんたちに共有していく真摯で真っ直ぐな姿を見て、すごく刺激を受けています」

――その刺激を受けることで、あらたに大事にしたい芯も確立されてきたのではないでしょうか?

「そうですね。日高さんの近くにいるからこそ、“個”が強くなったように感じています。それは音楽的なことはもちろん、人間として、アーティストとして、視座をしっかりとここに持っておかなくちゃいけないとか、そういったスタンスはブラさないようにしていきたいという想いが強くなったんです」

――そうすると、リリックも変化してきますよね。

「はい。一番分かりやすいのが、一人称が変わったことですね。今までは、一人称が“俺”などの、自分が主体だったんです。でも、いまは仲間やチームをすごく意識するようになったんですよね。スタッフさんもそうですし、レーベルメイト、ファンダムも含めて、全部がワンチームだという認識が強くなったんです。そんな変化が大きかった1年間だったと思います」

――収録されている「PERIOD」にも、その想いが描かれていますよね。

「この曲でスタッフさんたちの名前をシャウトしているんですが、全然言いきれていなくて。でも、それくらい仲間と思える人が近くにいるということに気付いてハッとしたんです。数年前は、信頼できる人たちが本当にいなかったんですよ。もちろん、協力的な人たちも沢山いてくださったんたんですけど、まだ僕が信じ切れていなくて、孤独だったんです。SKY-HIさんに出会う前は、生きていることすら辛かったですからね。でも、今はそうじゃなくて、ちゃんと信頼ができるんです。そのチームと一緒にやってこれているのはすごく大きなことだなと思いました」

――そのタイミングで出来上がったアルバムだからこそ、すごく大きな変化を感じることができる作品になったのかもしれないですね。

「そう思います。さらに、今回ご一緒したSG(ソギョン)君は、まだ直接お会いしたことがないんですよ。TikTokでカバー動画を観たときに、すごく声が素敵だなとおもったんですよね。そこからInstagramで相互フォローとなり、メッセージをやり取りし、曲が出来上がったんです」

――今の時代だからこそ出来たことですよね。

「はい。たとえ会っていなくても、音楽に対する愛情がちゃんとあって、お互いにリスペクトがあれば、いい作品が作れるんだということは驚きでもあり、喜びでもあったんです。SG(ソギョン)君は、世代が近いですし、プロデューサーのYackleは同い年なんです。だからこそ、いい意味で遊び感覚で作ることができたんですよ」

――活躍している同世代がいると、刺激になりますよね。

「すごく、なりますね。この世代が大きくなり、輝いていくことで次の世代に繋がっていくと思いますし、実際に自分たちの前の世代の先輩方が道を作ってくれているおかげで、いま、僕たちが音楽に対してモチベーションの高い状態のままやれているんです。それをサイクルとして作り、後輩たちに繋いでいかなくちゃいけないという責任感があるんです」

――今作を聴かせていただいているときに、リリックから確実に自己肯定感が上がっていることを感じたんですよね。これまでは悔しさや苦しさが目立っていましたけど、それを糧にして前に進むメッセージを感じたんです。

「そうですね。もちろん、鬱屈とした感情が無くなったわけではないですが、分かち合える人たちができたので、自分自身がすごく強くなったんです。昔は自分の中で完結していましたし、先ほど話したように人を信じることが出来なかったので、相談もできなかったんです。この間、久しぶりに先輩と会った時に、“昔のコアは甘え下手だったよな”って言われて(笑)」

――尖っていたんでしょうね。

「そうだと思います。自分から壁を作って生きてきたんですよね。その壁がなくなって、自分に対しても人に対しても素直に生きることが増えた分、周りの人も壁を作らなくなってくれたし、信頼関係ができてきたんです。そのおかげで、鬱屈とした感情を抱いている自分自体も好きになれることが増えたんですよ。こういう感情を抱いているからこそ、逆にいい音楽が生まれているのかなと捉えられるようになってきたんです。いまも、自分の中の黒い部分が糧となって生まれるリリックの方が多いんです。極端な言い方をすると、満足することは、たぶん一生ないんですよ。慢心とは無縁なんです。きっと、今後も満たされることはないだろうし、心の底からこれが幸せだと言い切れるものを見つけるまで、時間がかかると思うんですが、幸せのようなものを追いかけているときに感じていた苦しみは、少しずつ減っているのかなと思っています」

――今回のアルバムで、“今だからこそ書けたリリック”はどんな言葉でしたか?

「いっぱいあるんですが、このアルバムを象徴するひと言としては、「A GREAT FOOL」の<どうしても賢くなれない>というフレーズですね。この言葉が出たときに、すごくしっくりきたんですよ。もちろん、上手に生きたいって部分もあるけど、お利口に生きたくない部分もあるし、これは白か黒か、1か100でもなくて。そんな、本当に抽象的な感情をどう表すかというときに、この言葉が出てきて、すごく腑に落ちたんです」

――賢くなれないからこそ、生まれるものはたくさんありますよね。だからこそ、<不完全な問題児/社会人になっても反抗期?>というのは、揶揄ではなくて、大事にしているところなんでしょうね。

「まさに、そうですね。そこが消えたら僕ではなくなってしまうんです。すべての音楽も仕事も、人との向き合い方も、音楽を始めた時の変わらない、ピュアで愚直のままでいたいんです。だからこそ、いま、数字や現実的なものが目に見えてきて、余計なことを考える自分に対しての反骨心がこの言葉にも表れているのかもしれません」

――トラックで革新的だった曲も教えてください。

「UTA
さんとの「THANKS, ALL MY TEARS」はすごく刺激的でしたね。「天気雨」という曲でもご一緒させていただいていたんですが、僕が表現したい感情の断片を音楽的に表現してくださる方なんです。セッション中とかも音楽的な話やコードの話よりも、日常的な会話をすることが多いんですよ。そこから僕の感情を音で表現してくださるんです。このトラックに、このメロディラインが乗った時に、明確に感情が表現できるように感じたんです。同じトラックでも、歌い方やメロディーが一つ買わるだけで、曲ってガラッと変わるんですよ。それくらい大事なものだということをあらためて教えてもらいました」

――そういった刺激に触れることで、次はどんなものを作ってみたいと思いましたか?

「今作は鬱屈とした感情がから生まれるネガティブの裏にあるポジティブのような部分にフォーカスを当てているんです。同調圧力や、常識がこうあるべきみたいな枠組みに捉えられている窮屈さから、俺たちはこうありたいということを表現するような曲が多かったので、次は、窮屈さをそもそも感じていないところに達したアルバムにしたいなと思っていて。プレッシャーを感じることなく2枚目を制作したいですね」

――そのコンセプトだからこそ、“恐れを知らない大馬鹿者であれ”という言葉が出てきたんですね。

「はい。実は、このタイミングで日高さんも「To the First」で<怖くても進め>って歌っていて、レーベルを通して同じことを感じていたことを知ったんです」

――それは共通認識だったわけではなく?

「いや、それぞれがそう思っていたんです。よく、BMSGは日高さんのイズムをメンバーが引き継いでいるように思われているんですが、でも、みんなもともと同じような理念や感覚を持っていた子が集まったレーベルなんですよ。だからこそ、必然的に集まったメンバーだった気がします。BE:FIRSTのメンバーも、俺も、同じ理念のもと集まっているんですよね。単純に有名になりたい、売れたい、ヒットしたいという思いとは別に、こうありたい、こう成功したいという想いが各々であるからこそ、集まったんです」

――すごくいい環境なんですね。

「最高ですね。実は、インディーズ時代はすごく窮屈に感じていたことが、メジャーデビュー以降は減ったんですよ」

――本来なら、逆ですよね。

「実は僕もそうだと思っていたんですよ。メジャーデビューとなると、周りのスタッフさんもふえるから、そのぶんの意見も出るし、権利などの問題もたくさん出るし、もっと窮屈になると思ったんです。でも、1年やっている中で思ったのは、メジャー、インディーズ関係なく、結局1人ひとりの人とどう接するかだってことで。結局どんなお仕事だって、人で成り立っているじゃないですか。僕は基本、みなさんと人間対人間として接しているので、めちゃくちゃラクになったんですよ。これからも、この気持ちで多くの人たちと心を交わしていきたいですね」

――今作を聴けば、本当にNovel Coreさんがどんな人間かがわかると思うのですが、よりパーソナリティを知るために、いま、したいことはどんなことでしょうか?

「バイトがしたいです(笑)。僕は高校1年生で学校を辞めちゃっているので、文化祭や体育祭などの思い出もあまりないんですよね。あと、飲食店でバイトをして嫌なお客さんにめっちゃ怒られる経験とかってすごく大事だと思うんですよ。僕は蕎麦屋でバイトを経験していたことがあったんですが、すごく楽しかったんですよね。その経験も今に活きているので、飲食店のバイトがしたいですね(笑)」

――2022年はどんなことをしたいですか?

「実はもう頭の中に、数年後までの計画がしっかりとあるんです。だからこそ、そこに向けてとにかく走り続けるしかないんですよね。なので、そのためにとにかくより良いものを作り、出していく中で、ファンダムを含め自分を取り巻く環境との信頼関係を強固にしたいですね」

――信じてもらえる人になりたい?

「まさに、そうですね。こいつは何かやり遂げると思わせる人間になりたいんです。ワクワクさせたいですね。あとは、橋本環奈さんに会いたい!」

――あはは。リリックにも書いてありましたね。

「そうなんですよ。いつかなにかのご褒美で会いたいですね~。そのためにはバラエティ進出しないとダメかな~(笑)。最近はファンのみなさんも僕が橋本さんが好きなのを知り過ぎて、出る雑誌の情報やメディア情報を送ってくれるんです。そういうところも含めて、ファンダム・OUTERのことを愛しています!(笑)

(おわり)

取材・文/吉田可奈
写真/野﨑 慧嗣

Novel Core『A GREAT FOOL』

2021年1215日(水)発売
CD+DVD/AVC1-96873B5,500円(税込)
CD/AVC1-968743,300円(税込)
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