「デビューから今日まで、多くの曲を作ってきました。“喜んでくれる曲があるのだったら歌っていこう。だって歌わないともったいないもん”と思っています」とのASKAMCに盛大な拍手が起こった。その発言どおり、観客を狂喜乱舞させる曲が立て続けに歌われて、感動がさらなる感動をもたらす熱き夜となった。『ASKA CONCERT TOUR 2024≫2025 Who is ASKA !?』のファイナル公演となる214日と15日の日本武道館。今回のツアーは20249月にスタートし、31公演が行われ、超満員の武道館2DAYSで鮮やかに幕を閉じたのだ。

開演前のステージは白い幕で覆われていた。その白い幕と両サイドに設置されたスクリーンに、ASKAが室内で「草原にソファを置いて」をキーボードで弾き語りをするオープニング映像が映し出された。サビを歌い終わった瞬間に幕が落ち、印象的なブラスの音色のイントロが鳴り響きわたり、コンサートがカラフルに開幕。オープニングナンバーは「GUYS」だ。ASKA90年代のツアーで使用していた自身のモデルのバイオリンギターを弾きながら歌っている。上下左右、さまざまな角度からの大量の立体的な光線の中で、ASKAとバンドのメンバーが演奏している。まるで1990年代のCHAGE and ASKAのコンサートに空間ごとタイムスリップしたかのようなド派手かつビビッドな始まり方だ。完成度の高さと自由度の高さを両立しているバンドの演奏も見事。ツアーの中で積み上げてきた成果が結実していた。

バンドのメンバーは、バンマスでアレンジも担当している澤近泰輔(Piano)、江口信夫(Drums)、荻原基文(Bass)、鈴川真樹(Guitar)、クラッシャー木村(Violin)というASKAが絶大の信頼を寄せるメンバーに加えて、設楽博臣(Guitar)、David NegreteSax)、高橋あず美(Backing vocal)、結城安浩(Backing vocal)という4人が新たに参加している。David、高橋、結城の3人とは20246月に行われたデイヴィッド・フォスターの『HITMAN David Foster & Friends』公演で初めて同じステージに立った経緯がある。つまりASKAとデイヴィッド・フォスターとの縁が、今回のツアーにも繋がっているのだ。設楽とは20年ほど前にレコーディングスタジオで出会い、「いつかあのギタリストと一緒にやりたい」とのASKAの思いが今回実現した。このメンバーとの一体感あふれる演奏もこのツアーの大きな聴きどころ&見どころだ。

「待たせたね~!」という挨拶に続いての「Love Affair」ではASKAの手足の動きに合わせて、メンバーが同じ動きをするパフォーマンスを披露。コーラスをたっぷりフィーチャーした「HANG UP THE PHONE」ではコーラスの2人がソロを取る場面もあった。結城が客席を指で指しながら、「You You YouYou!」というソウルフルなシャウトをすると、大きなどよめきが起こった。高橋のパワフルなフェイクをすると、またしても大きなどよめき。そして、ASKAと高橋と結城がアカペラでコーラスし、電話の受話器を置くポーズでフィニッシュすると、拍手喝采。歌と演奏そのものがサプライズの連続。つまりエンターテインメントの醍醐味とスリルがたっぶり詰まったステージが展開されたのだ。

「ファイナルです。だからと言って、特別なことはしませんが、気持ちは違います」とのASKAの言葉に続いては「LOVE SONG」。フェイク混じりの歌声とグルーヴィーな演奏が気持ちいい。「BROTHER」では、コーラス隊以外のメンバーもコーラスに参加。ヒューマンな歌と演奏からは、ASKAとバンドの結束力の強さも見えてきた。設楽のガットギターの演奏から始まった「Girl」は情熱を内に秘めた歌声が染みてきた。

「今回のコンサートはASKA中級編です。世の中がひと回りして、“Who is ASKA !?”と感じる若い世代も増えてきました。それっておもしろいなと思い、このタイトルを付けました」とのこと。中級編とは、1990年代のCHAGE and ASKAのツアーの持っていたエンターテインメント性の高さやスケールの大きさを今の時代に蘇られるものでもあるだろう。ASKAの音楽を長く聴いてきた人は、懐かしいと感じる瞬間もたくさんあったに違いない。ただし、これは過去の再現ツアーではない。原曲のテイストを活かしながらも、ASKAとメンバーが今の息吹を吹き込んで、今のリアルな歌として成立させていたからだ。つまり新たな創造、新たな挑戦がたくさん行われているステージでもあるのだ。これまでASKAの音楽にあまりふれていなかった層にとっては、90年代のナンバーを新鮮に感じたのではないだろうか。中級編と言いつつも、さまざまな層に対して広く開かれている。楽曲を知っている、知らないに関わらず、純粋に音楽の楽しさが凝縮されていたからだ。

「年代に応じて、その時々の喜怒哀楽を歌っていけばいいと思っています。映画やドラマがきっかけになることもあります。荒廃した未来を舞台にした映画(『ブレードランナー 2049』)に出てきた植物を大事にするシーンがヒントになり、未来の人に向かって作った曲があります」との言葉に続いて演奏されたのはソロ曲「未来の人よ」だった。語りから始まる曲で、過去の空から未来の空までもが描かれた壮大なナンバーだ。ステージの背後には青空と白い雲の映像。詩的かつ哲学的な歌詞が聴き手の想像力を刺激していく。

今回のツアー、90年代のCHAGE and ASKAの曲が軸となった構成だが、実はASKAのソロ曲の素晴らしさを再発見するステージにもなっていた。「めぐり逢い」や「You are free」などのCHAGE and ASKAの名曲の間に2022年発表のソロ曲「プラネタリウム」が挟まれる構成になっていたのだが、90年代のラブソングと同様に、2022年のラブソングも魅力的だ。MCで楽曲提供について語る場面があった。「さっき(リハーサル)、ギターで弾いた曲、覚えてる? みんな、勘でいこう」というASKAの言葉に続いて、中山美穂への提供曲、「Midnight Taxi」の1コーラス部分が初披露されて、映画の1シーンのような光景が鮮やかに浮かび上がった。なお前日もASKAからの突然のリクエストで、中森明菜への提供曲「予感」が披露された。瞬時に反応して演奏するメンバーにも、大きな拍手が起こった。

薬師丸ひろ子への提供曲「止まった時計」は、鈴川と設楽のアコースティックギターの演奏のもとでせつない歌声に、こちらの胸までもが苦しくなるほどだった。「はじまりはいつも雨」では、印象的なブルーの照明も相まって、<水のトンネル>の中に一緒に入っていったようだった。「PRIDE」はライブを重ねる中で成長してきた曲だろう。ASKAの歩いてきた道筋が、そのまま曲の説得力に繋がっている。満員の観客に囲まれて歌われたこの日の「PRIDE」も特別な輝きを放っていた。観客までも浄化・開放するパワーを備えていると感じたからだ。この「PRIDE」までが前半パート。

後半の始まりを告げる曲はソロ曲の「誰の空」だった。<生きることのすべてを歌う>という、揺るぎない意志の詰まった歌声がダイレクトに届いてくる。ASKAだけでなく、バンドのメンバー全員が心をひとつにして音を奏でているからこそ、ズシッと強く響いてくるのだろう。「HEART」が始まると、会場内の空気が一変して高揚感に包まれた。ASKAがマイクスタンドを回しながら歌っている。90年代当時よりも曲がパワーアップしていると感じたのは、エモーショナルかつパワフルなコーラス隊によるところも大きいだろう。ASKAとバンドと観客とが一体となって高みへと上り詰めていく。興奮の冷めやらぬ中、ASKAがステージの下手(ステージに向かって左側)へと歩き、アカペラで「太陽と埃の中で」の一節を歌い始めると、あちこちから喜びと驚きの声が起こった。そしてASKAが両手を挙げるのと同時に、バンドの演奏が始まり、館内が真っ赤な照明に染まった。まるで武道館の中に太陽が昇ったかのようだ。ASKAの大らかな歌声が観客の胸の中を温かく照らしていく。観客の熱いシンガロングに対して、「サンキュー!」とASKA

大団円と言いたくなる展開だが、まだまだ終わりではない。「僕はこの瞳で嘘をつく」、そして「YAH YAH YAH」が演奏されたのだ。クライマックスにつぐクライマックス。「僕はこの瞳で嘘をつく」はステージ背後のスクリーンに女性12人のストリングスチームの演奏風景が映し出される演出もあった。歓声はほとんど絶叫に変わっている。「YAH YAH YAH」でのステージ上も客席もこぶしをあげる光景は圧巻だった。ひとりひとりの胸の中に炎を灯していくような歌と演奏だ。


一転して動から静へ。弱音も本音もすべてさらけだすような、ASKAの生身の歌声に揺さぶられたのは「消えても忘れられても」だ。<君は誰かひとりでも幸せにすることができたかい>というフレーズは個人的な問いかけであると同時に、人間の普遍的かつ根源的な問いかけのようにも響いてきた。「歌になりたい」では、武道館全体が宇宙空間になったかのようだった。ASKAが歌い始めると、あちこちでスマホのライトが点灯されて、まるで星々のきらめきのように見えたからだ。今回のツアー、90年代の人気曲で観客を魅了する一方で、「未来の人よ」「誰の空」「歌になりたい」など、ASKAのソロ曲が共鳴しあいながら大きな流れを作り、深い感動をもたらしていた。「同じ時代を」もそうした流れの1つだ。<同じ時代を歩いて行く僕たちさ>というフレーズのなんとかけがえのないことか。スクリーンには車窓からの映像が映し出されて、最後に海に出てのエンディング。深い余韻の残る歌と演奏と演出だ。

CHAGE and ASKAの曲をソロのステージで歌う際どさ危うさは知っているつもりです。ただ、時間はどんどん過ぎていくからね。やがてとかいつかとか待っていられません。いつまで歌えるの?と自分に問うと、おのずと答えが見えてきます」との言葉に続いて、冒頭で紹介した「喜んでくれる曲があるんだったら歌う」との発言に繋がっている。最後の曲は「On Your Mark」だった。観客全員を鼓舞する温かさと力強さを兼ね備えた歌と演奏だ。ASKAが人さし指で示していたその先には<夢の斜面>が広がっているに違いない。“Who is ASKA !?”という問いかけのついたツアー、実際のステージを観ることで、それぞれの中で答えを見いだしたのではないだろうか。ASKAは空を見上げて、困難を乗り越えるべく歩き続けている。そしてその頭上には大きな空が広がっている。とてつもなくラッキーなのは、その空が同じ時代を生きているすべての人の頭上にも等しく広がっていることだ。ASKAと同じ時代を生きている幸せを噛みしめるファイナルの夜となった。

「僕の頭の中はもう次のコンサートのことです。今回よりも大きなツアーになると思います。また会いましょう」とASKAの最後の挨拶。ツアーファイナルの武道館公演に続いて、アジア公演が行われ、430日にはアジアツアーのファイナルとなる『ASKA ASIA CONCERT TOUR 2025 -Who is ASKA !?- 海外公演 ファイナル』の東京国際フォーラム公演も控えている。夏には延期となっていた韓国公演も予定されている。さらに、次なるツアーのブッキングも進行中だ。90年代を現代に蘇らせるツアーは、未来への種を蒔くツアーでもあった。その種が芽吹き、花を咲かせるのはまだこれからだ。

取材・文/音楽ライター 長谷川 誠
写真/photographer 河本悠貴

SET LIST

01. GUYS
02. Love Affair
03. HANG UP THE PHONE
04. LOVE SONG 
05. BROTHER
06. Girl
07. 未来の人よ
08. めぐり逢い
09. プラネタリウム
10. You are free
11. 止まった時計
12. はじまりはいつも雨
13. PRIDE
14. 誰の空
15. HEART
16. 太陽と埃の中で
17. 僕はこの瞳で嘘をつく
18. YAH YAH YAH
19. 消えても忘れられても
20. 歌になりたい
21. 同じ時代を
22. On Your Mark

ツアー開催日程

Travel TV presents 『ASKA CONCERT TOUR 2024≫2025 -Who is ASKA !?-』

2024年
9⽉21⽇(⼟)東京 J:COMホール⼋王⼦
9⽉25⽇(⽔)⼤阪 オリックス劇場
9⽉26⽇(⽊)⼤阪 オリックス劇場
10⽉3⽇(⽊)福岡 福岡サンパレスホテル&ホール
10⽉4⽇(⾦)熊本 熊本城ホール メインホール
10⽉6⽇(⽇)⿅児島 川商ホール(⿅児島市⺠⽂化ホール)第⼀
10⽉19⽇(⼟)神奈川 神奈川県⺠ホール 大ホール
10⽉24⽇(⽊)岩⼿ 盛岡市⺠⽂化ホール ⼤ホール
10⽉26⽇(⼟)⼭形 やまぎん県⺠ホール(⼭形県総合⽂化芸術館)
11⽉4⽇(⽉祝)北海道 札幌⽂化芸術劇場hitaru
11⽉8⽇(⾦)岡⼭ 倉敷市⺠会館
11⽉10⽇(⽇)広島 広島⽂化学園HBGホール
11⽉15⽇(⾦)兵庫 神⼾国際会館こくさいホール
11⽉16⽇(⼟)京都 ロームシアター京都メインホール
11⽉23⽇(⼟)島根 島根県芸術⽂化センター 「グラントワ」⼤ホール
11⽉24⽇(⽇)⼭⼝ 周南市⽂化会館
11⽉29⽇(⾦)新潟 新潟県⺠会館 ⼤ホール
12⽉1⽇(⽇)⽯川 本多の森 北電ホール
12⽉8⽇(⽇)静岡 静岡市⺠⽂化会館 ⼤ホール
12⽉13⽇(⾦)⻘森 リンクステーションホール⻘森(⻘森市⽂化会館)
12⽉15⽇(⽇)宮城 仙台サンプラザホール
12⽉20⽇(⾦)兵庫 アクリエひめじ ⼤ホール
12⽉21⽇(⼟)⼤阪 箕⾯市⽴⽂化芸能劇場⼤ホール
2025年
1⽉11⽇(⼟)愛知 愛知県芸術劇場 ⼤ホール
1⽉12⽇(⽇)愛知 愛知県芸術劇場 ⼤ホール
1⽉17⽇(⾦)沖縄 那覇⽂化芸術劇場なはーと ⼤劇場
1⽉18⽇(⼟)沖縄 那覇⽂化芸術劇場なはーと ⼤劇場
1⽉25⽇(⼟)⾹川 サンポートホール⾼松 ⼤ホール
1⽉27⽇(⽉)⼤阪 フェスティバルホール
2⽉14⽇(⾦)東京 ⽇本武道館
2⽉15⽇(⼟)東京 ⽇本武道館

ツアー特設ページ

出演

ASKA
ASKAバンド
Piano:澤近泰輔
Drums:江口信夫
Bass:荻原基文
Guitar:鈴川真樹
Guitar:設楽博臣
Violin:クラッシャー木村
Sax:David Negrete
Backing vocal:高橋あず美
Backing vocal:結城安浩

CS 日テレプラスで3ヶ月連続ASKA特集放送決定!

3月23日(日)17:30〜
『ASKA 10 DAYS SPECIAL グッバイ&サンキュー東京厚生年金会館 -ここにあなたの足跡を -』放送!
4月『ASKA Premium Concert Tour -Wonderful World- 2023』放送!
5月 Travel TV presents『ASKA CONCERT TOUR 2024≫2025 -Who is ASKA !?-』日本武道館1日目公演を放送!
https://www.nitteleplus.com/program/aska_10days_special/

今後のスケジュール

『ASKA ASIA CONCERT TOUR 2025 WHO is ASKA !? in TAIPEI』
3月1日(土)OPEN18:30  START19:30
台北國際會議中心 (Taipei International Convention Center)

『FIRST SAIL  ”COMTEC PORTBASE OPENING CEREMONY” 〜ASKA Live Docking〜』
4月16日(水)OPEN18:00  START19:00
名古屋 COMTEC PORTBASE

『ASKA ASIA CONCERT TOUR 2025 -Who is ASKA !?- 海外公演 ファイナル』
4月30日(水)OPEN17:30  START18:30
東京国際フォーラム ホールA

『ASKA ASIA CONCERT TOUR 2025 -Who is ASKA !?- in SEOUL』
8月23日(土)OPEN 17:00  START18: 00
高麗大学校化汀体育館 (KOREA UNIVERSITY TIGER DOME)

ASKA ファンクラブイベント 『ASKA × Fellowas 〜感謝祭〜』
8月29日(金)福岡
8月31日(日)愛知
9月3日(水)4日(木)東京
9月14日(日)札幌
9月19日(金)大阪
9月23日(祝火)宮城

『ASKA CONCERT TOUR 2024≫2025 -Who is ASKA !?-』
ASKAインタビュー >>>

9月に伝説的なコンサートを記録したライブ映像作品を完全限定⽣産でリリース。そして、『ASKA CONCERT TOUR 2024≫2025 -Who is ASKA !?-』がスタートするASKAに“何故、今?”、“Who is ASKA !?”を、じっくりと話を聞いた。
インタビューはこちら >>>
(2024年7月16日 掲載)

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