「僕がデビューして7、8年目ぐらいだったかな。曲を依頼されることが多くなって、もしかしたら自分の立ち位置が固まりつつあるのかなと思っていた時に、デイヴィッド・フォスターの曲に出会い、すべてを根底から覆された。自分なんか赤子のようなものだと感じた。僕は、やりたいことは必ず口に出すタイプなんです。だから、彼にオファーしました。そしてこれが実現しました」

3月16日に神奈川県のぴあアリーナMM19日に兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールにて『ASKADAVID FOSTER PREMIUM CONCERT 2023』が開催された。同17日には、BLUE NOTE TOKYO公演も行われている。その文字通りプレミアムな共演の初日を飾る、神奈川公演。冒頭の言葉は、この日のステージで、敬愛してやまない世界最高峰の作曲家/音楽プロデューサーへの想いを、ASKAが語ったものだ。

しっかり埋まった会場からの熱い拍手に迎えられて、さりげなく登場し、「こんばんは」と深々と礼をしたASKA。そこで1曲目のイントロが流れ出すと、呆気にとられるような一瞬の沈黙の後に、歓声の渦が大きく広がりながら沸き上がっていった。意表を突くとは、このこと。いきなりの「SAY YES」である。

原曲のフィーリングはそのままに、壮大なアレンジで「SAY YES」を聴かせ、ロック色を全面に押し出した「共謀者」、対照的に叙情美に満ちた「はじまりはいつも雨」など、序盤から多彩なステージで魅了したASKAは、ここでデイヴィッド・フォスターを迎え入れる。

会場に歓迎の拍手と歓声が巻き起こる中、まず披露されたのが、ジョシュ・グローバンやケルティック・ウーマンのヴァージョンでお馴染みの「You Raise Me Up」。デイヴィッドの優しいタッチのピアノ演奏と、たおやかなストリングスの調べに乗せて、ASKAが情感豊かに歌い上げる。

そしてASKAはステージ袖に。ここからはデイヴィッド・フォスターが名曲の数々を披露。まずカルガリーオリンピック(1988年) 公式テーマ曲と映画『セント・エルモス・ファイアー』をミックスした「Winter Games into St. Elmo's Fire」。ケニー・Gがこの日のために収録した映像で会場のビジョンに登場し、ライブさながらにソプラノ・サックスを演奏。エンディングでは満面の笑顔でサムズ・アップを決めるという、粋なリモート共演だった。そこからデイヴィッド・フォスターが手がけた名曲を、観客の合唱を誘いながらメドレーで聴かせた後、笑いを誘う場面が。ピーター・セテラに提供した映画『The Karate Kid Part II』の挿入歌「Glory Of Love」がアカデミー歌曲賞を逃し、映画『トップガン』が獲得したことへの不満を爆発させたデイヴィッドが、『トップガン』の名シーンの映像をバックに「Glory of Love」を演奏したのだ。これがまた、見事なまでにハマり、まるで『トップガン』の挿入歌に思えたのだから恐れ入る。

ここで、今回のコンサートのバンド編成を押さえておくと、ツイン・ギター、ベース、ドラム、キーボードに、ヴァイオリン8人、ヴィオラ3人、チェロ2人からなるストリングス隊と、コーラスふたりという豪華な布陣。デイヴィッドが参加する楽曲は、本人がスコアを書き、演奏時にはピアノを弾きながら指揮も執った。

そして、セリーヌ・ディオンのヒット曲「To Love You More」では、ASKAの愛娘で国内外で幅広く活動しているゲスト・ヴォーカル、宮﨑薫が圧巻の歌唱力を披露。デイヴィッドも、その堂々たる歌いっぷりを称えていた。このステージで宮﨑薫はASKAと初共演となった。

ここからは再びASKAがステージに戻り、「Man and Woman」「next door」、そしてシカゴの「素直になれなくて」をミックスした「PRIDE」をデイヴィッドと共演。曲間には、ふたりでアドリブで曲を作って歌うというサプライズもあり、まさにPREMIUM CONCERTならではの瞬間を享受したところで、デイヴィッドは大喝采を浴びながら舞台を降りた。

終盤はASKAが、「リハーサル」、「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」、「YAH YAH YAH」、「Be Free」など選りすぐりのナンバーを熱唱し、フロアが総立ちに。マスク着用ながらも声出しOKとなったアリーナで、「YAH YAH YAH」を観衆があのポーズでシング・アロングする光景は、実に壮観だった。最後は、再びステージに戻ったデイヴィッドとの「僕のwonderful world」で優雅なフィナーレ。ハートフルな余韻が残る会場には、マスク越しでもそれとわかる笑顔があふれていた。

取材・文/鈴木宏和
写真/今井俊彦・西澤祐介

TRAVEL&Lush Music presentsASKA&DAVID FOSTER PREMIUM CONCERT 2023

SET LIST
M-1 SAY YES

M-2 憲兵も王様も居ない城
M-3 共謀者
M-4 迷宮のReplicant
M-5 はじまりはいつも雨
M-6 MY Mr.LONELY HEART
M-7 You Raise Me Up
M-8 Winter Games into St. Elmo’s Fire
M-9 DAVID FOSTER Medley with Glory of Love
M-10 To Love You More
M-11 Man and Woman
M-12 next door
M-13 PRIDE - Hard To Say I'm Sorry
M-14 RED HILL
M-15 けれど空は青 〜close friend〜
M-16 リハーサル
M-17 晴天を誉めるなら夕暮れを待て
M-18 YAH YAH YAH
M-19 Be Free
M-20 僕の wonderful world

ASKA(ヴォーカル&ギター)/DAVID FOSTER(ピアノ)/宮﨑薫(ヴォーカル)/ASKAバンド&Get The Classics Strings
┗2023年3月16日(木)@神奈川・ぴあアリーナMM

ASKA&DAVID FOSTER PREMIUM CONCERT 2023 インタビュー
DAVID FOSTERとの競演が遂に実現!

DAVID FOSTERとの競演が決定したことで得た”4分の法則”。その影響を公言するステージへの期待、そして、4月からスタートする自身のツアーについて、ASKAに聞いた。
インタビューはこちら >>>
(2023年2月24日記事掲載)

LIVE INFORMATION

ASKA Premium Concert Tour -Wonderful World- 2023

出演:ASKAASKAバンド
日程
4月1日(土) 広島 広島文化学園HBGホール
4月2日(日) 兵庫 アクリエひめじ 大ホール
4月15日(土) 愛知 愛知県芸術劇場 大ホール
4月22日(土) 大阪 オリックス劇場
4月23日(日) 大阪 オリックス劇場
4月30日(日) 群馬 けんしん郡山文化センター 大ホール
5月7日(日) 千葉 森のホール21(松戸)
5月14日(日) 熊本 熊本城ホール メインホール
5月20日(土) 宮城 トークネットホール仙台 大ホール
5月25日(木) 東京 東京国際フォーラム ホールA(追加公演)
7月1日(土) 沖縄 那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場
7月7日(金) 兵庫 神戸国際会館 こくさいホール(追加公演)
7月9日(日) 奈良 なら100年会館 大ホール
7月21日(金) 北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
7月28日(金) 福岡 福岡サンパレスホテル&ホール

ASKA Premium Concert Tour -Wonderful World- 2023

RELEASE INFORMATION

ASKA 『Wonderful world』

2022年1125日(金)発売
DDLB-0021/4,400円(税込)
DADA label

『ASKA premium concert tour -higher ground-アンコール公演2022』Blu-ray+Live CD

2022年105日(水)発売
Blu-ray+Live CD(2枚)/DDLB-002011,000円(税込)
DADA label

関連リンク

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