12月15日(月)、シンガーソングライター・Tani Yuukiが、自身初の日本武道館ワンマンライブ『Tani Yuuki Live Tour 2025 “Still love... this” FINAL〜はじまりのはじまり〜』を開催した。『はじまりのはじまり』とは、5年前の2020年12月22日、東京・代官山LOOPにて、Tani Yuukiが開催した初ワンマンライブのタイトル。音楽活動の始まりから現在までの5年間をつなぎ、武道館公演の成功をひとつの節目にして、ここからまた大きく歩いていこうとする意志が込められていた。
Tani Yuukiが今年リリースした3rdアルバム『航海士』は、人生で初めて作った曲である“Dear drops”や10代の頃に作った“自分革命”から最新曲までを収録した、Tani Yuukiの歴史を紡いだ作品である。武道館公演の前には「今までの人生の総集編のようなライブになると思う」「これまでの自分の変化を表現できるライブにしたい」と語っていたが、その言葉通り、Tani Yuukiの過去と現在、そして未来をつなぐ充実したライブ内容だった。
扉を開いて会場内に足を踏み入れると、ステージが中央に設置されていて、そこには月が浮かんでいた。開演時間になると、九段下から宇宙へと連れていかれるようなSEと映像が流れる。そして宇宙船が月に着陸する映像とともに、Tani Yuukiのシルエットが月面に映る。オーディエンスの気持ちが最高潮に高まったところで、月の中からTani Yuukiが登場。その瞬間、割れんばかりの歓声が上がった。
ライブの幕開けに選んだ曲は、《広い宇宙の暗闇の中で/星の瞬きほどの命を燃やす》という歌詞もある“万有引力”。日々をつないでいくこと、命をつないでいくことについて歌うこの曲が、「音楽を始めた日から今日まで、Tani Yuuki自身がつないできたもの」と「Tani Yuukiとリスナーのつながり」というこの日のコンセプトを表現する。「飛ばしていくよ!」という掛け声で初っ端からギアを入れて歌った“自分革命”は、10代の頃に自分を鼓舞するために作った曲が武道館の舞台に立つ夢を叶えた今の自分にバトンを託しているようだった。
3曲目は、会場中がピンク色に染まり、ステージを囲むいくつものミラーボールがキラキラと光を乱反射させる中で歌った、デビュー曲でありTani Yuukiが多くの人に知られる最初のきっかけとなった“Myra”。デビューする前にSNSに投稿した動画と、今ここで歌っている映像が並んで流れるという、過去と現在を結ぶ演出も施された。
「Taniくーん!」と親しみを込めて名前を呼ぶ男女の声に、「はーい、こんにちは、Taniです!」と元気よく返事。ステージを360度囲む客席をゆっくり見渡しながら手を振って、「俺たちの念願の武道館じゃないですか。俺たちがやってきたかっこいいところを見せないとな! 今までのライブで一番デカい声頼むぜ!」とファンと絆を結ぶように叫び、「日本武道館、始めます!」と開幕を宣言。
6人のダンサーとともに“Unreachable love song”を華やかに魅せたあとは、ピースサインを掲げながらコール&レスポンスを交わす“ワンダーランド”。キッズダンサーも登場し、カラフルなビッグバルーンが客席中を舞う。続いて、21人のキッズダンサーたちがステージに残ったまま、ドラえもんのエンディング曲“もしものがたり”。この2曲が届けられた時間は、今宇宙の中でもっともピースフルな場所はここなんじゃないかと思うくらい、会場中に老若男女の屈託のない笑顔が溢れていた。
Tani Yuukiが一度ステージを去ると、雨の降る音が聴こえる中、スポットライトがひとりの女性を照らす。筋書きのない「人生」という名の物語に彷徨う男女に、傘を差しながら登場したTani Yuukiが、“運命”で寄り添うようなドラマが描かれる。歌と演劇とコンテンポラリーダンスを交えた、シアトリカルな見せ方でオーディエンスの心を動かした。
その後センターステージでギター弾き語りを始めたのは、“吾輩は人である”。武道館という場所で丁寧に届けられたその歌は、人間の冷たさや人間関係の歯痒さを吐き出しながらも、最後の《でも、愛おしくて堪らない》という言葉が輝いて鳴り渡った。椅子に座りながらピアノと声だけで“記憶”を届けた数分間は、1万人が静かにTani Yuukiの歌力に聴き入った時間だった。
Tani Yuukiの音楽活動は、人々がマスクを着けて顔が見えない時代に始まったこと。最初のワンマンは100人のキャパシティで埋まりもしなかったこと。そこから5年で1万人が集まる武道館公演ができるようになったこと。「みんなの応援のおかげです」と、ひとりではたどり着けなかった道のりを振り返って感謝を伝えると温かい拍手が湧いた。そして「時間なんてあっという間に経っちゃうからさ、いつ何ができなくなるかわかんないからさ、やれるうちにやりたいことを、手を取り合ってもう一度、いや何度でも、一緒に叶えにいこうぜ」とファンに向けて語ってから、“もう一度”へ。
Tani Yuukiと一人ひとりの絆をさらに強固にした“もう一度”を終えると、強い風が吹き荒れる音が聴こえ始めた。そこに、ひとりの女性が一歩ずつ地面を踏みしめるように登場。そこでTani Yuukiがフラッグを手に持った仲間たちと歌い始めたのは、“後悔史”だ。ミュージックビデオの世界観と同じく、ダンサー・青空が力を振り絞るようにダイナミックに踊り、Tani Yuukiを先頭で牽引しながら大海原を航海する。その後はステージを囲む火が盛大に吹く中で、会場の温度もオーディエンスのテンションもさらにアツくなった”夢喰“。「出し惜しみしないで全部出してください!」と始めた”Life is beautiful“が鳴り終わると、早くもラスト一曲だ。
「活動している内にどんどん仲間も聴いてくれる人も増えていって、気づいたらひとりじゃなくなっていました。俺が『あげよう』と思っていたのに、みんなの声に元気や勇気をたくさんもらって、気づいたらここまで歩いていました。本当にありがとうね」と感謝を述べたTani Yuukiの笑顔は、この5年間で一番の煌めきを放っていた。そして記念すべき初の日本武道館公演の締めくくりに選んだのは、「多くの人と出会わせてくれた大事な曲」だという“W/X/Y”。カラフルでキラキラとした大量の紙吹雪とともに、Tani Yuukiの《輝きが弛まないように歌うメロデイ》が舞い散った。
アンコールで再びステージに呼ばれたTani Yuukiは、クリスマス直前の時期に合わせて“メニークリスマス”をプレゼント。そして初期のサウンドを象徴するEDM×J-POP調の“We are free”で、余っているエネルギーを出し尽くすように飛び跳ねさせると、今度こそラストの一曲だ。「俺にとってライブはさらけ出せる場所で、自分らしくいられる場所で、余計なことを考えなくていい場所。あなたにとっても、そんな場所であってくれたらいいなと思っています。また遊びにきてください。また帰っておいでね。その時に俺は必ずこう言ってあげるからさ!」と言ってから、“おかえり”。武道館で一区切りと言う間もなく、次へとつなげるラストだった。その後、2026年春に初のFC限定ライブハウスツアー『谷勇輝アワー 歌っていいとも!ファンクラブツアー2026』、秋にホールツアーを開催すること、さらに2027年に関東・関西にてアリーナ公演が決定していることが告げられた。
この5年で変わらないのは、Tani Yuukiは綺麗事を歌わず、自分の感情や人間のことを生々しく歌うところだ。それなのにTani Yuukiというフィルターを通せばポップになるのが、彼のポップアーテイストとしての才能であり類まれな魅力。そしてこの5年で変わったのは、聴き手の想いを引き受ける強さだ。たったひとりで音楽を作ってSNSにアップしていた頃とは違って、今やTani Yuukiの音楽が大勢の人にとっての人生の一部になっていることを自覚し、それぞれの想いを背負って歌っていくことの覚悟と責任感を強く抱くようになった。そして弾き語りも、ロックサウンドに乗せて情熱を爆発させることも、子どもたちと和やかに歌うことも、演劇的に魅せることも、まるで友達に語りかけるように話す距離感の近いMCも含めて、Tani Yuukiは自身の音楽を「あなたの音楽」としてステージ上で届けるための表現方法をいくつも手に入れてきた。
これからもTani Yuukiは、自身の叶えたい夢ややりたいことを一つひとつつなげて未来を描いていくことだろう。そして『後悔史』という楽曲のコンセプト通り、後悔すらも原動力に変えていくはずだ。武道館にたどり着くまでに得た経験をすべて活かし、ここから自分の音楽や表現をさらに研ぎ澄ましていくのだという意志を感じさせるライブだった。Tani Yuukiはこの先も、J-POPの最前線で輝き続ける。
テキスト:矢島由佳子
写真:toya
● 公演情報
Tani Yuuki Live Tour 2025 ”Still love... this” FINAL〜はじまりのはじまり〜
2025年12月15日(月)東京・日本武道館
OPEN 17:30 / START 18:30
【セットリスト】
プレイリスト:https://kmu.lnk.to/Stilllovethis
M-1 万有引力
M-2 自分革命
M-3 Myra
M-4 Unreachable love song
M-5 ワンダーランド
M-6 もしものがたり
M-7 運命
M-8 吾輩は人である
M-9 記憶
M-10 もう一度
M-11 後悔史
M-12 夢喰
M-13 Life is beautiful
M-14 W/X/Y
EN-1 メニークリスマス
EN-2 We are free
EN-3 おかえり
● Tani Yuuki ライブ情報
<谷勇輝アワー 歌っていいとも!ファンクラブツアー2026>
4月18日(土)KYOTO MUSE
4月25日(土)広島・LIVE VANQUISH
4月26日(日)高松・DIME
5月4日(月祝)仙台・darwin
5月6日(水祝)旭川・CASINO DRIVE
5月15日(金)水戸LIGHT HOUSE
5月24日(日)熊本・B.9 V1
5月31日(日)金沢AZ
6月5日(金)LIVE ROXY SHIZUOKA
6月10日(水)大阪・BIGCAT
6月19日(金)恵比寿・LIQUIDROOM
詳細はこちら:https://taniyuuki.com/
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