バンドが鳴らす楽しげな⾳に誘われて、華やかなドレスに⾝を包んだ宮﨑薫が姿を現した瞬間、フロアは熱を帯び、⼀段と華やかに。そしてそのまま歌い始めたオープニングナンバー「For Christmas 〜Santa Please!〜」で、COTTON CLUBの端の端まで⼀気にクリスマスカラーに染め上げてしまった。続く「Karma」に込められた怒りの感情は歌い重ねることでしなやかさを増し、この⽇は強い祈りの曲として響いた。「ブンブンシナイデ」には振りが付いていて、やるせなさやら、楽しさやらがパワーアップ。僅か3曲で宮﨑薫の底知れぬ奥⾏きとライブの醍醐味を全⾝に浴びた気分だ。
ドラム・李令貴、ベース・千⽥⼤介、ギター・yas nakajima、ピアノ・下川和⼰、マニピレーター・タルタノリキ。
ライブ中、彼らの名前を何度聞いただろう。最初のメンバー紹介を挟んで演奏された「Loving You」、「Why」は、この顔ぶれだからこそのサウンドを堪能するパートでもあって。⿊いアコースティックギターを抱えた宮﨑薫も加わり、6⼈で奏でるアンサンブルは実に多彩。その流れで(しかも千⽥はヴッドベースに持ち替え、タルタの⼿にはスレイベル︕) クリスマスソング・セクションに突⼊すれば、当然、スウィートもハッピーもドラマチックも加速度を増していくわけで。「Feel Like Itʼs Christmas」で観客も声を合わせ、⼀緒に体を揺らしたら、「愛する⼈」では美しくも⼒強い丸の内イチのシンガロング︕ 前半はピアノと歌声だけで、後半はふくよかなバンドサウンドで届けられた「Very Merry Christmas」は、びっくりするくらいキュートだったな。さらにクリスマスのスタンダードナンバーをメドレーでプレゼント。中でもヴォーカルもプレイもメロウにアレンジされた「Last Christmas」は、本来この曲が内包する切なさをそのままの温度と湿度で⼿渡された感じがした。
2023年を「変化の⼤きい1年」と振り返り、その幕開けとも⾔える『ASKA featuring DAVID FOSTER
PREMIUM CONCERT』で歌ったこの曲なしには終われないと、セリーヌ・ディオンの「To Love You More」をカヴァー。⽗であるASKAのステージにゲスト出演し、満員御礼のぴあアリーナで、憧れのデイヴィッドと共演するというスペシャルな経験は、彼⼥をヴォーカリストとして、表現者として、ひと回り⼤きくしたようだ。そのあとに披露された曲はどれも、COTTON CLUBに収まりきらないスケール感と熱量と説得⼒を放っていた。コロナ禍を挟んで制作、リリースされたEPのタイトル曲なだけに、不安や葛藤が⼊り混じる「Beautiful」。しかし今の宮﨑薫ならフィンガースナップひとつで景⾊を変えられる。前作の収録曲である「The Light」も今の彼⼥が歌えば4年前の曲ではなく、未来を照らす曲として届けることができる。「Winter Dream」の<Wham!の歌が流れてる>が今⽇、⾒事に体現されたことにニンマリしつつ、ラストの<喜びに満ちた クリスマスの夜が いつまでも 続きますように>というフレーズを⼩さな声で⼝ずさみつつ、この曲は来年のクリスマスの約束でもあるのだと気づいた。イルミネーションが美しく街を彩る頃、またこんなふうに集まって、歌って、笑顔で1年を終わらせられたら、本当に最⾼だなって思った。
取材・文/⼭本祥⼦
KAORU MIYAZAKI Christmas Live 2023 Winter Dream-
SET LIST
[ 1st ]
1. For Christmas 〜Santa Please!〜
2. Karma
3. ブンブンシナイデ
4. Loving You
5. Why
6. Feel Like Itʼs Christmas
7. 愛する⼈
8. Very Merry Christmas
9. クリスマスメドレー
(The Christmas Song / Rocking Around / The Christmas Tree / Last Christmas)
10. To Love You More
11. Beautiful
12. The Light
13. Winter Dream
[ MEMBER ]
宮﨑薫(vo)
yas nakajima(g)/下川和⼰(p,key)/李令貴(ds)/千⽥⼤介(b)/タルタノリキ(mani)
┗2023年12⽉16⽇(⼟)@COTTON CLUB
宮﨑 薫「Winter Dream」
2023年12⽉2⽇(⼟)配信
各配信サイトにてリリース︕
宮崎薫『Beautiful』
2023年12⽉6⽇(⽔)発売
FRHR-0003/2,500円(税込)