花澤香菜の自身初となるZeppツアー、その国内最終公演が2024年10月19日にZepp DiverCity (TOKYO)にて行われた。今年4月にリリースされた最新アルバム「追憶と指先」を引っさげてのこのツアーは横浜・大阪・名古屋の前半3会場を“Memoirs”、福岡・札幌・東京の後半3会場を“Fingertips”と銘打っており、アルバム収録曲はもちろんのことデビュー初期に発表された懐かしい楽曲たちも織り交ぜながら、まさに花澤さんがここまで歩んできた道のりを“追憶”しながら振り返りつつ、ほんの“指先”ほどにあるような、近い未来へと思いをはせることができるような構成になっていた。
これまでホール規模の会場での開催を中心にライブ活動を行ってきた花澤にとって、Zeppツアーは新たな挑戦。とはいえ客席の1階フロアはオールスタンディングではなく座席が用意され、花澤さんの歌声やディスティネーションズの演奏に心地よく耳を傾けることができるという点では大きく変わらない。変化があるとすれば映像等を使った演出がなくなることくらいで、純粋に音楽を届けるという意味では花澤さん自身もしかしたら気負う部分があったのかもしれない。しかし、いざライブが始まってみればそんな不安はまったくの杞憂に終わり、ディスティネーションズに先導されて客席から巻き起こった大きなクラップの音に迎えられて登場した花澤さんはとても晴れ晴れとした表情。「It’s My Thing」「あしたの向こう」と「追憶と指先」収録曲を続けて歌ったオープニングから透き通った声を響かせて、1階後方や2階席といった遠くにいる人たちまで魅了した。
一息ついたところで「みんな盛り上がる準備できてますか?」と客席に呼びかけると大きな反応が返ってきて、すっかり準備はOKの様子。二つめのブロックはTVアニメ「それでも歩は寄せてくる」オープニングテーマにもなっていた人気曲「駆け引きはポーカーフェイス」から始まり「VENUS REVOLUTION」「ないものねだりのGreeDy」、そして「運命の扉」と盛り上がる楽曲たちが続いていく。このツアーでは映像等を使った演出がないと前述したが、「ないものねだりのGreeDy」ではかなり凝った照明の演出が見られた。また、オールスタンディングでなくとも客席のファンは決してじっとしているばかりではなく、「運命の扉」ではファンが曲に合わせてステップを踏むたびに会場全体が小刻みに揺れているように感じられるほどだった。
今回のツアーではMCで「花澤香菜のライブはここが良い!」というポイントを初めてライブに来てくれた人に教えるために、何度も足を運んでいるファンに聞くのが恒例となっていたようで、ここまでの5か所では「香菜ちゃんが転ぶところ」「パン情報をくれるところ」「ライブならではのアレンジが聴けるところ」「独特なダンスが見られるところ」「グッズ紹介でパンフレットの中身をチラ見せしているところ」など、さまざまな角度からの意見が上がっていたという。さすがにもう出尽くしたかと思いきや、とある女性ファンから「香菜ちゃんがどこにいても目が合うし、誰よりも楽しんでくれるところ」という、とても素晴らしい答えが返ってくる。これを受けて「みんな目が合わないと思ってるでしょ? 結構合ってるからね。めちゃくちゃ隈なく見てるから!」と言う花澤さん。こういったファンとの楽しいやりとりも、たしかに花澤香菜のライブの大きな魅力のひとつなのかもしれないと再認識させられる一幕だった。そんなちょっと長めのMCを終えた後はアコースティックパートとなり、ファンは座席に腰を下ろしたまま、ゆったりと音楽に身をゆだねる。ここでは「Merry Go Round」や「花びら」といった懐かしい楽曲たちを披露しつつ、これまでの人生を振り返る自作の文章を朗読する。そこから続けて歌うのは、アルバム「追憶と指先」にシークレットトラックとして収録された「追憶と指先」。じわりと心にしみこんでくるような歌声と演奏に、客席からは温かい拍手が送られた。
「タイムマシーンは突然に」からは雰囲気がガラリと変わって、客席は再び総立ちに。ファンも花澤さんもテンションを上げて中盤戦を迎えていく。前半を彩った全身ピンクのスーツからニットワンピースへと衣装チェンジして登場した「25 Hours a Day」は、コール&レスポンスの掛け合いからスタート。最初の「Oh! Yeah!」は順調な滑り出しだったが、途中の「シュビドゥビドゥビドゥビ……」辺りから花澤さん自身もあまり口が回っていなかったのはご愛敬。ここからしばらくは「Saturday Night Musical♪」「I LOVE NEW DAY!」「ブルーベリーナイト」「無邪気なキミと真夏のメロディ」「Young Oh! Oh!」と、懐かしい楽曲がしばらく続いていき、そこに「SHINOBI-NAI」「Circle」といった最近の曲たちが加わることで絶妙なバランスを生み出していく。本編最後のブロックは「いつ歌っても、未来にワクワクできる」という「恋する惑星」、TVアニメ「久保さんは僕を許さない」オープニングテーマ「ドラマチックじゃなくても」、そして「Love Me」で締めくくられた。
アンコールで歌われたのは「We Are So in Love」「星空☆ディスティネーション」という定番の2曲。ファンへ向けての挨拶のなかで「みんながこの空間を特別なものにしてくれているし、みんながいるから私は頑張れる」と花澤さんは感謝の思いを口にしていたが、その特別な空間をいつまでも続けてほしいというのは誰しもが願うことだろう。今回のツアーも国内はこの日でファイナルとなったが、11月には台湾とマレーシアでの公演があり、また12月7日には3回目のファンクラブイベント「ディスティネーション竜宮城☆」、来年3月には「P’s LIVE! 08 ~P’s GR∞VE~」への初参加など、ライブ・イベントへの出演予定は盛りだくさん。もしまだ花澤香菜のライブを体験したことがないという人がいたら、ぜひともどこかに足を運んでみてほしい。
ライブセットリスト
M-01 It’s My Thing
M-02 あしたの向こう
M-03 駆け引きはポーカーフェイス
M-04 VENUS REVOLUTION
M-05 ないものねだりのGreeDy
M-06 運命の扉
M-07 Merry Go Round
M-08 花びら
M-09 追憶と指先
M-10 タイムマシーンは突然に
M-11 25 Hours a Day
M-12 Saturday Night Musical♪
M-13 I LOVE NEW DAY !
M-14 ブルーベリーナイト
M-15 無邪気なキミと真夏のメロディ
M-16 SHINOBI-NAI
M-17 Young Oh! Oh!
M-18 Circle
M-19 恋する惑星
M-20 ドラマチックじゃなくても
M-21 Love Me
EN-1 We Are So in Love
EN-2 星空☆ディスティネーション