これはかなり、プレミアム度の高いツアーと言えるだろう。GLAYのファンクラブ「HAPPY SWING」の発足25周年を記念した、「GLAY LIVE TOUR 2022 ~We♡Happy Swing~ Vol.3」。本来であれば昨年、会員限定で行われるはずだったが、コロナ禍の影響で今年に延期されていた。そして開催にあたり、より多くの人にGLAYのエンターテインメントを届けるために、会員以外も参加可能となったのだ。大阪、仙台に続く幕張での7月30日の初日公演には、よりコアなファンが大集結した。会場の幕張メッセといえば「GLAY EXPO '99 SURVIVAL」で20万人を動員した記念すべき場所。メンバーもファンも感慨深かったに違いない。

観客が取り囲む回転式のセンターステージで、まずはマーチングバンドのYOKOHAMA ROBINSが、GLAYメドレーを勇壮にパフォーマンス。祝祭感が高まったところで、GLAYの4人とサポートのTOSHI(Dr)、ハジメタル(Key)が登場。「a Boy~ずっと忘れない~」で2年越しの「We♡Happy Swing」が開幕。ちなみに31日のツアーファイナルのオープナーは「都忘れ」で、他にもセットリストに手が加えられており、熱心なファンに対するGLAYの配慮が感じられる。


▼Photo by 岡田裕介

1曲目からいきなり耳を奪われたのが、TERUのヴォーカルだった。声量はもちろん、艶、張り、押し引き、どれもが完璧だ。トレーニングなりコンディション管理なりが行き届いているのだろうが、まさにプロフェッショナル。しかも、ここからアンコールのラストまで、まったく変わらぬパフォーマンスを披露してくれた。まさに百戦錬磨の兵といった存在感だ。

穏やかに幕を開けたライヴだが、季節感たっぷりの「summer FM」に続く「YOU MAY DREAM」で、吹き上げるスモークとTERUの「オーケー、幕張来い!」という煽りを合図にヒートアップする。傑作ホラー映画『シャイニング』の名場面である、“レッドラム!”を連呼する映像からの「BLACK EYES SHE HAD」では、骨太でヘヴィなサウンドを轟かせ、ロックバンドとしての真価を知らしめた。インディーズ時代のアンセミックなナンバー「GONE WITH THE WIND」曲間の「R席!L席!幕張!」コールには、観客が全身でレスポンス。そう、たとえ声を出せなくても、ライヴは熱く盛り上がるのだ。


▼Photo by 田辺佳子

TAKUROがアコースティックギター、ハジメタルがアコーディオンを手にしての「月の夜に」、重低音が効いたダビーな演奏に乗せて、TERUが慈しむように歌った「HOWEVER」など、ポップでメロウな楽曲群で魅了して前半を折り返すと、「My Private "Jealousy"」からの後半は一転して攻撃的モード。パワーポップ風の「ROSY」、プログレを思わせる劇的な展開の新曲「クロムノワール」、TAKUROのラップ風ヴォーカルも映える「百花繚乱」、観客全員に「どっち派」かを問いかけるコーナー――お題は「今のままの無歓声ライヴがいいか?/隣の音痴の人が大声で歌っていても(笑)歓声ありがいいか?」と「JIROを預からないといけないとしたら5人のJIROか?/5歳のJIROか?」――を挟んで和ませた「SHINING MAN」など、ライヴならではの熱量とダイナミズムに満ちたナンバーで会場を一体にする。そして、アメリカン・ハードロック直系のドライヴィンなナンバー「ACID HEAD」で本編が終了。

「GROBAL COMMUNICATION」からのアンコールでは、メンバー全員が順にMC。「延期にはなったけど入場制限もなく、なんて幸せなんだと」とJIRO、「25年ですか?長いお付き合いをありがとう」とHISASHI、「この難局をみんなで乗り越えて、また会いましょう」とTAKURO、そしてTERUが「歌でしか返せないけど、言葉でも、心からありがとうございますと言いたい」とそれぞれに感謝の気持ちを伝えていた。キラキラと紙吹雪が舞う中、ファンクラブにその名を冠した「HAPPY SWING」でメンバーはもちろん、マスク越しでもわかるファンの笑顔でフィナーレを迎えた。実に多幸感あふれる2時間半だった。

(おわり)

取材・文/鈴木宏和
写真/岡田裕介、田辺佳子

DISC INFOGLAY「Only One,Only You」

CD+Blu-ray/PCCN-00049/2,750円(税込)
CD+DVD/PCCN-00050/2,750円(税込)
CD/PCCN-00051/1,650円(税込)
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