開演時刻を迎え、流れ出したのはいつも「最後の国」……ではなく、映画の予告映像だった。中身はもちろん、シングル「輝けるもの」が主題歌となっている映画『ゴールデンカムイ』のもの。映像が終わるとあらためてオープニングSEが流れ、観客たちがリズムを刻むクラップの中をメンバー3人が登場し、定位置につく。

Photo by AZUSA TAKADA

1曲目はなんとこの日の主役であり、これまでライブで披露されることのなかった新曲「輝けるもの」だった。いきなり訪れた最初のピークにどよめく場内を、乱れ飛ぶ無数のレーザーと猛然と疾駆するサウンドが席捲。マッシヴなドラムと鋭く歪んだギター、寡黙ながら抑揚を司るベースとで静と動を織りなす3ピースサウンドの極地というべきサウンドと、<生きとし生けるものたち>の<またたきの命の光>を高らかに歌うリリックは、25年以上にわたって一つの命題に向き合い続けてきたACIDMANが、いま我々に明示するアンサーだ。

「こんばんは、ACIDMANです。TOKYO DOME CITY HALL へようこそ、最高の1日にしましょう!」

この日のライブは、キャリアのあらゆるタイミングを行き来しながら、不変のテーマとバンドの進化の双方を浮き彫りにしていくようなセットリストとなっていた。ポストロックやダンスミュージックを思わせる端正なリズムにフロアが波打ったのは「ストロマトライト」。強烈な逆光を背負いながら三位一体のストップ&ゴーでバンドのダイナミズムを知らしめた「波、白く」では大木が気迫のこもった歌声を響かせ、曲間で浦山一悟(Dr)も吠える。映画と同じく最後の最後まで見逃せないライブを作りたい、と意気込みを語った後の「Rebirth」「FREE STAR」「アルケミスト」というブロックでは、大木の穏やかな歌声やメロディアスな曲調に寄り添う佐藤雅俊のベースなど、ACIDMANのポップサイドの魅力をたっぷり堪能することができた。

Photo by Taka"nekoze photo"



「リピート」は、それまでアブストラクトなモチーフが映し出されていた背後のスクリーンに、木々や陽光といった実写映像を流しながらプレイ。あたたかでメロウな音像を、終盤にかけて迸るエモーションの渦が呑み込んでいくクライマックスを経て、続く「2145年」はMVとともに披露された。人類や生命がいなくなったと思しきディストピアな世界で一体のロボットとその視点を描く、ACIDMAN史上でも屈指の切ないストーリー性を帯びた映像である。この2024年の始まりに、生命の尊さや人間愛だけでなくその裏側にある業の部分にも目を向けてきた彼らが、映像付きでこの曲を演奏した意味に想いを馳せずにいられない。そこから音を止めずに続けたバラードソング「愛を両手に」、さらにMCを挟んで「世界が終わる夜」へと至る流れは、この日のハイライトの一つであった。

「ここからもう一歩盛り上がって、もっと上を目指していくぞ!!」

後半にかけては「輝けるもの」と通底する、<輝いて><その命で生き抜くんだ>というラインが登場する「夜のために」、ACIDMANのマスターピースであり続けている「ある証明」、初期の荒削りで剥き出しな曲調と成熟したいまの演奏が融合する「造花が笑う」を怒涛の連打。138億年にも及ぶ宇宙の歴史、壮大なスケールの中で「あなたはあなたでしかない」というメッセージを添えた「ALMA」を経て、ラストは「Your Song」の力強く明快なロックサウンドで会場一体となって本編を終えた。

Photo by Victor Nomoto - Metacraft



アンコールで、大木「今日は「輝けるもの」の発売ライブでもあるけど、『ゴールデンカムイ』の主題歌じゃないですか? 『ゴールデンカムイ』に僕の20年来の友だちが出てるんですよ。なんと…今日、来てくれました」との紹介から呼び込まれたのは、陸軍最強と謳われる第七師団の鶴見篤四郎役中尉役の俳優、玉木宏!

玉木宏が登場すると、会場からは割れんばかりの拍手を受け大木は「やっぱりすごい人気だね!絶対俺の歓声の10倍くらい大きい(笑)。玉ちゃんとは20年前以上前のデビュー当時……玉ちゃんって呼んでるんだけど」と旧知の仲が伺えるトークを展開。大木は「(鶴見中尉の)目つきと体の動きと……あれはどう練習するの?」玉木「原作が好きだったし、まさか自分が鶴見中尉をやらせてもらえるとは思わなかった。やりたい一心だったのもあって、自然と沸き出てきた」大木「今は玉ちゃんの目だけど、鶴見の目はマジで怖い!俺の知ってる玉ちゃんじゃなかった。憑依してるというか、素晴らしかったです」と最後まで会場は笑いと熱気に包まれた。
他にも若かりし頃の、玉木のお酒の飲み方を大木が暴露したり等、気の置けない関係性が垣間見えるトークをしばし堪能することに。

Photo by Taka"nekoze photo"

そしてラストは、この日のライブのために映画『ゴールデンカムイ』の久保茂昭監督が制作したという特別映像を流しながら、もう一度「輝けるもの」を演奏。映画の印象的なシーンと、作中でもキーとなる“金”を用いたグラフィック、そして雪原や星空といった雄大な自然を背負いながら、それぞれの命を輝かせ生き抜く全ての人たちアンセムとしてひときわ輝かしく響き渡る光景は、ACIDMANの新たな代表曲誕生を告げていた。

なお、このライブ模様は、WOWOWで2月27日(火)に独占放送・配信予定。バックヤードにもカメラが潜入し、ドキュメンタリーを交えてライブをお届けする。放送に合わせて、『劇場公開記念!ゴールデンカムイSP』特集も編成!

映画『ゴールデンカムイ』は、1月19日より全国公開され、1月19日から21日までの週末動員ランキング(興行通信社調べ)では、堂々のNo.1を獲得。そして2月4日(日)までの公開17日間で、観客動員数 111万人、興行収入16.3億円を突破!鑑賞した観客のSNSでは「原作ファンが求めてる実写化の正解がこれだと思う!」「キャスティングが完璧すぎる!など絶賛の嵐が巻き起こっている。

映画『ゴールデンカムイ』とともに、ACIDMANのこれからの活躍にも注目したい。

(おわり)

取材・文/風間大洋

New Single Release Live「輝けるもの」LIVE INFO

2024年2月6日(火)TOKYO DOME CITY HALL


Photo by 操上和美

ACIDMAN オフィシャルサイト

ACIDMAN「輝けるもの」DISC INFO

初回限定盤(CD+DVD)/TYCT-39220/4,950円(税込)
通常盤(CD)/TYCT-30143/1,320円(税込)
ユニバーサル ミュージック

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