13枚目にしてACIDMANの音楽と思想の粋を極めたアルバム 『光学』の世界を堪能する、究極の体験。6月27日、 幕張メッセ国際展示場 展示ホール9・10で、「ACIDMAN LIVE TOUR “光学”」ファイナルが開催された。 ACIDMANの幕張メッセ公演は、なんと18年振りだ。 直前まで心配された台風の影響は、最小限で済んだ。万難を排し、 全国各地から駆け付けたファンでフロアは埋まった。 バンドの歴史に残るライブになる準備は、すべて整った。
「光学(introduction)」に合わせ、 暗闇に一つずつ光がともり、音が高鳴り、 スクリーンに光の粒が舞う。映画のタイトルバックのように、 ツアータイトルが浮かび上がる。 ドラマチックなオープニングに続く、1曲目は「アストロサイト」 だ。官能的と言っていいほどしなやかなグルーヴと、 様々なイメージを掻き立てるカラフルな映像。 あれは天体かそれとも細胞か? メタリックなリフが炸裂する「go away」へ、会場内の興奮と熱が一気に高まる。 広大な空間に光と爆音が交錯し、 今ここにしかない非日常感を掻き立てる。
「ようこそお越しくださいました。(会場を見渡して)いやー、 台風の中、こんなにいっぱい来てくれて嬉しいです。ありがとう」
何よりもみなさんの命・安全が大事ですからーー。開口一番、 ファンへの感謝、悪天候のため会場へ来られなかった人へのケア、 物販の混雑への謝罪から始まった、大木伸夫(Vo&G) の言葉は偽りない本音だろう。その上で、 ただ楽しいだけじゃなく、 自分の中に問いが生まれるようなライブにしたいーー。 大木の言葉に温かい拍手が湧く。会場内に、 この場を共にする数千人の連帯感が生まれたのがわかる。
ここから3曲、過去のアルバムから『光学』 の世界観に沿ってセレクトされた「アイソトープ」「 Rebirth」「プラタナス」は、オーディエンスが主役だ。 客席を捉えるライブカメラが映し出す、 フロアいっぱいに突き上がる拳と大歓声が壮観だ。 この日を特別な日にしようという思いは、みな同じだ。そして「 白と黒」では、タブゾンビ(SOIL&"PIMP" SESSIONS)がステージに登場。 高らかにトランペットを吹き鳴らし、 クライマックスでは大木のギターとスリリングな掛け合いで盛り上 げる。音色の美しさはもちろん、 吹き終えてすぐにステージを去る、後ろ姿までかっこいい。
「次に歌うのは、愛を感じようという歌です。 デビュー当時の僕は、愛を歌うことを斜めから見ていて、 そんなことを歌うとは思っていませんでした。 でもこの歳になって、 やはり一番大事なものは愛だと気づくようになりました」
「物質の最小単位は、光のエネルギーだと言われています。 僕もあなたも、このマイクもギターも、争い合う人も、武器も、 全て元は一緒です。僕はそれを考えるたびに、 争い合っている場合じゃない、 あっという間に死んでいってしまう生命をもっと感じて、 光を感じて、愛を感じよう、と思います。 すべての物事は愛で作られている。最期の瞬間に“ 愛に溢れたいい人生だった”と思えるように、 一人一人の心が豊かになって、想像力で、 世界が一つになればいいと思っています」
「feel every love」を歌う前の大木の言葉は、『光学』 の核心に触れるメッセージだ。浦山一悟(Dr) が叩く電子ドラム、手拍子のリズム、コーラスのオリヴィア・ バレル、Tokyo Embassy Choir、四家ストリングスを加えた、 豊かな包容力と躍動感に満ちたサウンドが、それを美しく彩る。 会場内に祈りの歌が満ちる。それは間違いなく、 今の時代に最も必要なメッセージだ。
「1/f(interlude)」を経て、ライブはいよいよ『 光学』の最深部へと進んでゆく。青い光が広いホールを満たし、 ミニマルなギターリフが激しいシューゲイズサウンドへ帰結する「 青い風」。龍が舞い上がっていくような映像が印象的な、 強烈なディストーションとリヴァーヴにまみれた音の桃源郷「龍」 。凄まじい熱量に満ちた一悟のドラミングを先頭に、 渦巻く轟音の中を猛スピードで突き進む「蛍光」。 そして再び四家ストリングスと共に、 光の粒がスクリーンからあふれ出し、 静と動が交錯する劇的ロックバラードの最新到達点「光の夜」。 ライブで体験する『光学』の曲は、映像作品として独立しつつ、 全体で一つの壮大なシンフォニーを作り上げている。 全ての瞬間が劇的だ。
「次に歌う曲には、語源に“小さな歌”という意味があります。 宇宙の視点から見ると、小さな地球の、小さな島国の、 小さなロックバンドが、 全てのものは繋がっていると歌い続けています。 バタフライエフェクトと言って、地球の反対側の蝶のはばたきが、 こちら側では台風になるかもしれない。こんなタイミングなこと、 ありますか? これは偶然じゃなくて、 本当にそういうことなのかもしれないと思っています」
「あなたの涙は、蒸発して、雲になり、遠い国に降る雨になって、 いつか綺麗な花を咲かせる。悲しい涙を流している人も、 こう思ってほしい。あなたの涙には意味があります。 僕たちは一人一人がスペシャルな存在で、ただ生きているだけで、 僕らは宇宙の一部になっている。それを僕は奇跡と呼びます」
「sonet」を歌う前、大木の解説には特に熱がこもる。 ライブでカオス理論、 バタフライエフェクトを熱く語るミュージシャンは大木以外に見た ことがない。そして、それを音楽に昇華させるバンドも、 ACIDMAN以外に聴いたことがない。 四家ストリングスが奏でるメロディが、 蝶のはばたきのように美しく華麗に、 バンドサウンドと一つに溶け合う。その壮麗な音楽を通して、『 光学』の持つメッセージの深みが、じかに届いてくる。
ここからいよいよクライマックスへ、 ステージ上とフロアが一体となった疾走を止めるものは何もない。 「MEMORIES」もまた、 小さな生命と美しい光を慈しむ歌だ。そしてイントロで佐藤雅俊( B)がスポットを浴びる「造花が笑う」が始まれば、 幕張メッセはもはやライブハウスだ。 フロアの隅々に熱気が行き渡り、強烈な光と爆音が満ち満ちる。 さらに続けて「飛光」から「輝けるもの」へ、 新旧キラーチューンを繋げるセットリストは圧巻だ。 キャリアの長いバンドの代表曲は、過去に偏ることが多い。 しかしACIDMANは違う。ライブを見ればわかる。「 輝けるもの」の、 過去のどの曲にも負けない高揚感を受け止めればわかる。 フロアから一斉に突き上がる、 無数の両手に込めたファンの熱い思いを感じればわかる。
「今回のツアーはやるたびに良くなって、 ファイナルは最高になるだろうなと思っていました。 今日は来てくれて本当にありがとう。それに尽きます」(浦山)
「今回のツアーは、みなさんの“聴くぞ” というエネルギーが凄くて、こちらも力を出し切りました。 今日もいいライブができていると思います。」(佐藤)
アンコールはやらないと宣言して、ついに最後の曲。「 あらゆるもの」について語る、大木の言葉こそ『光学』の核心だ。 たった一瞬の命を大切に。世界が平和になりますように。 みなさんの心が少しでも豊かになりますようにーー。「 その一役を担いたい」と大木は言った。 こんなことを真正面から語って、 さまになるバンドが他にいくつあるだろう。 それがACIDMANだ。
「この世の全ては、光でできています。それがたまたま僕であり、 あなたである。このたった一度の命を大切に生きていってほしい。 この先苦しいことがあったら、この話を思い出してください。 生きてるだけで誰もが宇宙の一部です」
ACIDMAN自身によるオマージュのような「あらゆるもの」 は、ACIDMANの究極の1曲かもしれない。人、動物、植物、 無機物に至る「あらゆるもの」がスクリーンに映し出される。 歌詞に織り込まれた、 アルバム収録曲のタイトルが次々に現われる。 過去のミュージックビデオで見た、懐かしい景色が通り過ぎる。 ラストは再びタブゾンビと四家ストリングスが登場、 フィナーレに花を添える。そして、 アウトロに乗せたスタッフクレジットのエンドロール。 最後に残った大木のギターの爪弾きと共に、 メンバーが一人ずつステージを去る。小さな灯りが点滅し、 やがて消える。全ては光に還ってゆく。一瞬の後、 夢から覚めたように湧き上がる歓声と拍手の温かさ。それは『 光学』のコンセプトを見事に表現しきった、 ACIDMANのライブ史に残る美しいラストシーン。
ある意味で『光学』は、 ACIDMANの目指すものを表現しきった作品だ。 最小単位を突き詰めればその先はない。しかし心配はいらない。 すでに次のライブ、10月30日、KT Zepp Yokohamaで「This is ACIDMAN 2026」が決定している。そして来年、 2027年には結成30年、 デビュー25年のアニバーサリーが待っている。 究極のその先へバンドは進む。 代わりのいない存在として未来を目指す。 ACIDMANと見たい景色はまだまだある。
ACIDMAN LIVE TOUR “光学”
2026年6月27日(⼟)千葉・幕張メッセ国際展⽰場 展⽰ホール9・10
Setlist
01.光学(introduction)
02.アストロサイト
03.go away
04.アイソトープ
07.feel every love https://www.youtube.com/watch? v=VSXmgI0naSY
08.1/f (interlude)
09.青い風
10.龍
11.蛍光
12.光の夜
14.MEMORIES
18.あらゆるもの
photo 西槇 太一 Instagram:@nishimaki_tkmi
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