4月並みの暖かさとなった3月16日、ワンマンとしては約8年ぶりに日比谷野外大音楽堂のステージに立った家入レオ。

彼女が国内で単独ライブを行うのは、昨年、自身7枚目のアルバム『NAKED』のリリースツアーで全国を回った「家入レオ TOUR 2023 ~NAKED~」以来。「家入レオ YAON ~SPRING TREE~」と冠した本公演だが、16日のDAY 1は家入のワンマン、翌17日のDAY 2は彼女の地元福岡での中学高校時代の同級生であり、声優として活躍する麻倉ももとのツーマンで行われた。この記事ではDAY 1の様子をレポートする。

会場に入り、まず目に飛び込んで来たのは、たくさんの植物で装飾されたステージ。ステージの背後には、今回の公演ロゴであるカラフルなパステルカラーで描かれた木のバックドロップ。都心にありながら周辺を木々に囲まれた野音が、こうしたステージセットによってさらに自然の温かみを感じる空間となっており、家入が今回のSPRING TREEというライブタイトルに込めた「大きな木のように、私の音楽でみんなの心を守れたらいいな」という想いそのままの、親密な空気感が開演前から会場を満たしていた。

開演時間の17時。客席から自然発生した手拍子に誘われるように、バンドメンバーに続いて家入がステージに姿を見せる。パステルカラーのトップスで揃えたメンバーに対し、家入はフォークロア調のジャケットとオーガンジーのチュニックをレイヤードしたトップスに、デニムのボトムスという出立ち。明るめの色あいの髪を揺らしながら軽やかな足どりで登場した家入は、「最後まで楽しんで行ってねー!」と短く挨拶をして、「春風」からステージをスタートさせた。

ちなみに、この日のバンドメンバーはギター、ベース、ドラム、キーボードに、コーラス2名とバイオリンを加えた総勢7人編成。また、セットリストは「久しぶりの曲も、定番の曲も持ってまいりました」という家入の言葉通り、アルバムのリリースツアーとは趣きを異にしたラインナップとなっており、まさにスペシャルな一夜だったことを先に明言しておきたい。

序盤から止むことのない手拍子、2曲目の「僕たちの未来」でのコール&レスポンスで一体感を増していく野音。3曲目を歌い終えた後のMCでは、彼女自身「まだ3曲しか歌ってないのに、すごくグッと来ちゃって」と、感慨深い様子。

さらに、ここではSPRING TREEというタイトルに込めた想いについても吐露。「春は気持ち的にソワソワしちゃうことも多い季節。今日は都会のオアシスじゃないけど、SPRING TREEという大きな木の下で、雨宿りするような気持ちだったり、そっと木の幹に背中を預けるような気持ちだったりで、ライブを楽しんでもらえたらと思います」と話すと、「だってネコだから」「恋のはじまり」などミディアムなポップナンバーを披露。

ライブもまだ前半戦のうちに、「春風」や「だってネコだから」など、これまであまり披露されてこなかった楽曲に加え、「僕たちの未来」といった定番曲も、この日のスペシャル編成によって新鮮な輝きをもって胸に響いてくる。

ここから先は一体どんな展開が待っているのだろうと楽しみになったところで、中盤に用意していたのはアコースティックコーナー。しかも、楽曲ごとに異なる編成となっているのが見どころだ。

最初に披露されたのは、TikTokやYouTubeでのハモリカラオケ動画が人気を集めている「るーとも」こと、るーかとおかのやともかによるコーラスと、ベースのイガラシが弾くウッドベースによる「Relax」。続いて、そこにバイオリンの大島理紗子とピアノの宗本康兵、ドラムの山本まきがカホンで加わり「かわいい人」を。さらに「本当に久しぶりに歌います」と言って披露された「ありきたりですが」を挟み、コーラスとバイオリン、そしてギターの仲道 良を加えて「空と青」を披露。

ほどよく肩の力が抜けたサウンドもさることながら、家入が各メンバーとの出会いのエピソードも温かさに満ちあふれており、会場の親密度はますます増していった。

そして、アコースティックコーナーの最後にバンドメンバー全員で披露したのは「Hello To The World」。「アコースティックに対する固定概念を覆しちゃいます!」という言葉どおり、バンドとの一体感、グルーヴ感を全面に押し出したアレンジで会場を沸かせる。

場内が盛り上がる中、再びバンドサウンドに戻って「Party Girl」へ。ライブは終盤戦に突入。家入も「声出す準備できてる?楽しむ準備できてる?」と観客を煽り、そのギアを上げる。ステージを右へ左へと走り回りながら歌う家入に呼応するように、観客の手拍子も大きくなっていった。その勢いのまま「BINKAN」へ。そして「シューティングスター」では全員でタオルを振り回し、ボルテージは最高潮に到達。歌い終えた家入が、思わず「マジで最高の時間すぎる!帰りたくなーーーーーい!」と絶叫。

「野音のステージに戻ってこられたのは、この会場にいるみんなのおかげです。本当にありがとうございます」と、ファンに向けて感謝の気持ちを伝えた家入。

そんな彼女が本編最後に選んだ楽曲は「ラブレター」。BLUE ENCOUNTの田邊駿一が手掛けたこの曲は、昨年のZeppツアー時に新曲として披露されたもの。彼氏目線で書かれたラブレター形式で、途中、彼女のわがままに振り回される愚痴がありながらも、最後には<ずっとそばにいてよ>と願う愛らしい歌詞が印象的だ。

家入は、この「ラブレター」を歌っていると「ファンのみんなを思い出す」という。それくらい、彼女にとってファンの存在は信頼に値するものであり、気心を許せる相手なのだろう。愛おしそうに客席を見渡しながら「いっぱい喧嘩して、いっぱいハグして、やっぱり手をつないで。これからも15周年、20周年、25周年……ずーっと先まで、どうぞどうぞ家入レオをよろしくお願いします!」と深く一礼。観客から温かい拍手が贈られる中で「ラブレター」をキュートに、そして優しく歌い上げ本編の幕を閉じた。

客席からのアンコールを望む声援を受け、再びステージに登場した家入。「アンコール、ありがとうございます!私、本当に野音、大好き!」と話す表情から、この日のライブの充実度が見て取れる。さらに「みんなの顔を見て歌いながら、また明日からも頑張れる!って、すごく思いました。みんなからたくさんのパワーをもらいました!」と言って破顔すると、続けて「新曲があるんですけど、みなさん聴いてもらえますか !?」とサプライズ。

「すごく傷ついたけど、この恋をしてよかったなと思ったことがあって。泣いたりもしたけど、結果的に前の自分より今の自分を好きになれたし、周りの人のことをもっと大事にできるようになったなって。それは恋だけじゃなく、人は旅立ちを迎えることがあったり、いつかさよならをしなくちゃいけなかったりする生き物だけど、その人からもらった温かさを心に持って生きていけるんじゃないかな――そんな想いで紡いだ曲です」と話し、新曲「ワルツ」を初披露した。「ワルツ」は4月21日スタートのABCテレビ・テレビ朝日系ドラマ「ミス・ターゲット」の主題歌であり、5月22日にシングルとしてリリースされることも伝えられ、さらに今秋には全国ツアーを開催することが発表されると、客席から大きな歓声と拍手が沸いた。

この日の公演を締め括るアンコールのラストは「Shine」。一人ひとりに届くように高らかに歌い上げ、「家入レオ YAON ~SPRING TREE~」 DAY 1は大盛況のうちに幕を閉じた。

なお、この日の模様は3月24日(日)までU-NEXTで見逃し配信される。バンド編成、セットリストともにスペシャルな内容となったライブをぜひ

(おわり)

取材・文/片貝久美子
写真/サイトウダイシ

家入レオ YAON ~SPRING TREE~(U-NEXT)MEDIA INFO

見逃し配信/2024年3月24日(日)23:59:59まで
配信の詳細視聴可能デバイス

家入レオ特集(U-NEXT)

LIVE INFO

■家入レオ TOUR 2024
10月12日(土)三郷市文化会館(埼玉)
10月17日(木)オリックス劇場(大阪)
10月19日(土)サンポートホール高松 大ホール
10月26日(土)静岡市民文化会館 中ホール
11月4日(月)愛知県芸術劇場 大ホール
11月7日(木)札幌市教育文化会館
11月15日(金)倉敷市芸文館
11月16日(土)シンフォニア岩国 コンサートホール(山口県民文化ホールいわくに)
11月24日(日)トックネットホール仙台(仙台市民会館)
12月1日(日)福岡サンパレス ホテル&ホール
12月12日(木)LINE CUBE SHIBUYA(東京)
12月13日(金)LINE CUBE SHIBUYA(東京)

■武部聡志プロデュース『ジブリをうたう』コンサート
2024年3月27日(水)東京国際フォーラム ホールA
LINEUP/家入レオ、大野雄大、花村想太(Da-iCE)、岸田繁(くるり)、木村カエラ、GLIM SPANKY、玉井詩織(ももいろクローバーZ)、手嶌葵、Little Glee Monster、Wakana

■COSMIC CIRCUS vol.2 PRESENTED BY SPACE SHOWER
2024年3月29日(金)Spotify O-EAST
LINEUP/BLUE ENCOUNT、家入レオ、ざきのすけ

『NAKED ~TOUR 2023~』DISC INFO

2024年3月13日(水)発売
Blu-ray/VIXL-448/6,050円(税込)
Colourful Records

『NAKED ~TOUR 2023~』

2024年3月13日(水)発売
DVD/VIBL-1127/5,500円(税込)
Colourful Records

『NAKED ~TOUR 2023~』

2024年3月13日(水)発売
CD/VICL-65933/3,400円(税込)
Colourful Records

家入レオ「ワルツ」

2024年5月22日(水)発売
完全生産限定盤(CD+DVD)/VIZL-2321/4,400円(税込)
初回限定盤(CD+DVD)/VIBL-2322/2,200円(税込)
通常盤(CD)/VICL-37738/1,400円(税込)
Colourful Records

関連リンク

一覧へ戻る