定刻を少し過ぎたころ、大勢の観客で賑わう会場の照明が落ち、一滴の水が落ちる音が会場に響きわたると同時に、淡いライトがステージを照らし出す。薄い幕越しに浮かび上がったのは、林のシルエット。沸き起こる歓声と共に、アルバムの1曲目を飾る「I」からライブはスタートした。ギター、ベース、ドラム、キーボードの生バンドに、3人のコーラスチームも加わった豪華なサウンドがライブへの期待感を高めていく。演奏の決めと同時に幕が落ちると再び歓声が上がり、サングラスに黒のジャケットとパンツでスマートに決めた林が姿を現した。明らかに温度の上がった会場へ、伸びやかな歌声を官能的に響かせ、早くも観客を虜にしていく。

続く「Show me what you got」「Nyte Flight」は夜の雰囲気漂うムーディな曲。2人の女性ダンサーが登場し、時折、林と絡みながら妖艶なダンスで曲の雰囲気を盛り立てる。さらに「One Day」「Lonely」では、コーラスと共に重厚感のある豊かなハーモニーを生み出し、観客を酔わせた。

「久々の曲を」という前振りから、DOBERMAN INFINITYの「LOVE U DOWN」、さらに「Citylights」をたっぷりと聴かせる。暖かみのあるオレンジ色のライトがいくつも灯るステージの上をゆっくりと歩き、観客一人ひとりに語り掛けるように歌う林。曲のクライマックスで込み上げるようなハイトーンボイスを披露すると、感謝の気持ちを表すように両手を広げて深々とお辞儀をし、一度ステージを後にした。

バンドメンバーとコーラス、ダンサーによるパフォーマンスを挟み、再び登場した林は、白を基調としたストリートファッションにスタイルチェンジ。装いを新たにして披露したのは、アルバムのリード曲「Wow」。まさに極上のR&Bを感じさせるこの曲では、観客とコール&レスポンスを試み、自身の音楽の世界へと深く誘い込む。また、楽曲の後半ではメンバー紹介が行われ、各々が披露する超絶技巧のソロプレイに林が「最高かよ」と思わず口にする場面も。林からメンバーへのリスペクトと愛が感じられた瞬間である。

ここでラッパーのMC TYSONをゲストとして迎え、共に披露したのはもちろんMC TYSONの「Shawty(feat. KAZUKI)」。クールなラップを歌いながらステージに現れたTYSONは、ステージ中央で林と拳を突き合わせる。林の包容力のある歌声との相性も抜群で、会場は甘いムードに包まれた。

その甘い雰囲気を最高潮まで盛り上げたのは、この後に行われたスペシャルプログラム。ファンクラブ会員から抽選で選ばれたファン1名がステージへ上がり、至近距離で林の歌を聴けるという夢のような企画が開催されたのだ。早速、林が手を引いてステージ上の椅子へ案内したのは、幸運な一人の女性。「日頃の感謝を込めて」という言葉を添えて「Baby」(DOBERMAN INFINITY)を届ける。ピンク色のライトに照らされながら、客席はもちろん、彼女とも何度も視線を合わせながら歌い上げる林。さらに、曲の終盤では彼女の前に跪き、一輪の薔薇を差し出す。まるで王子様のようなその姿に、悲鳴にも似た歓声があちこちから上がっていた。

さらに、もうひとつの特別なプログラムとして、林がコロナ禍に“歌ってみた動画”を撮影した際に選んだ曲の中から、Aimerの「カタオモイ」、そして中島みゆきの「糸」をアコースティックアレンジバージョンで披露。歌う前に「素敵な名曲を生み出したアーティストの方々へ、リスペクトの気持ちを込めて」と宣言した通り、丁寧に思いを込めて一つひとつのメロディを歌い上げていく。会場の雰囲気はよりリラックスしたものに変わっていった。

ここでNATO a.k.a. Fresh Loc feat. KAZUKI (DOBERMAN INFINITY) &KJIとしてリリースした「HOOD LOVE」を投下。これまでにないハードなパンチラインが織り込まれたこの曲で、ライブの雰囲気をガラリと変える。途中、「この曲は俺一人で終われません。マイクを持ってステージに上がるという俺の夢を叶えてくれた一人でもあるアーティストが地元から駆けつけてくれました」という紹介から、林と同郷のKJIがステージに登場し、倍増したパワーをリリックに込めるよう、息の合ったパフォーマンスを披露。ラストは向かい合ってしっかりと視線を合わせながら2人で全身全霊の歌を届け、感動的な光景を生み出した。

残り僅か数曲というところで、スロウなバラードソング「そうじゃないの」を披露。美しいメロディに女性目線の切ない歌詞を乗せて届ける。そして、林が初めて一曲を通して作詞作曲を手がけたというDOBERMAN INFINITYの「Sorry」を聴かせた後は、1stシングル曲「東京」へ。歌う前に、「生まれ育った岐阜を離れてから14年の月日が流れ、憧れていたはずのこの街の景色も当たり前になって、あんなに自信たっぷりに故郷を飛び出した自分も居なくなってしまいました。時代や環境が変わった今も、一緒に過ごした時間や隣で眺めた景色は胸の奥で輝き続けています。そんな思い出は、この先も僕の背中を押してくれるはずです」と曲に込めた思いを語る。過去や故郷を恋しく思いながらも今の自分を肯定して生きていく、という繊細な感情を切なく歌い上げた。

この日のラストは、アルバムの最後に収録されている「Sea Talk」。イントロの波の音が流れると同時にオレンジの優しい光が会場を照らし出し、夕日の沈む海辺の美しい情景を想起させる。一日の終わりの寂しさを漂わせながらも、優しく繊細な歌声で観客の心をそっと包み込んだ。

「ソロツアー4公演、本当に幸せでした。同じツアーはもう二度とないけど、終わりじゃなくて始まりだと思っています。これから生きていく中でいろいろな壁にぶつかることもあると思うけど、自分はどんなときでも皆さんの心に寄り添えるような音楽を必ず作り続けていきます。4公演じゃ足りない。まだまだ歌いたいし、グループでもソロでももっともっと上を目指したい。必ず武道館に行きたいです。ここで約束します。それまでたくさん音楽作り続けていくので、これからも一緒に生きていきましょう」

全てのセットリストを終え、最後の最後に伝えた林の心からのメッセージと未来に繋がる宣言は、多くの観客の心を動かしたのだろう。盛大な拍手がしばらく鳴りやまなかった。

時間にすれば1時間半とコンパクトながらも、練り上げられた極上の音楽と、エンタテインメント性に富んだプログラムで、濃密かつ満足度の高いライブを届けてくれた、林 和希の初ワンマンツアー。また、ライブでは今年10周年を迎えるDOBERMAN INFINITYが、これまでの名曲を歴史と共にたどるリバイバルライブ「DOBERMAN INFINITY LIVE 2024 ThanX “THE REVIVAL”」の開催もサプライズ発表された。宣言通り、DOBERMAN INFINITY、林 和希のソロ共に、今後さらなる飛躍を遂げることは間違いないだろう。彼らの未来へ大いに期待を寄せたい。

(おわり)

DOBERMAN INFINITY LIVE 2024 ThanX "THE REVIVAL"LIVE INFO

6月17日(月)大宮ソニックシティ 大ホール
6月23日(日)よこすか芸術劇場(神奈川)
6月26日(水)ロームシアター京都
7月22日(月)名古屋国際会議場 センチュリーホール
7月31日(水)昭和女子大学 人見記念講堂(東京)
8月16日(金)大阪国際会議場グランキューブ大阪メインホール


We are D.I

林 和希「東京」DISC INFO

2024年2月21日(水)発売
初回生産限定盤(CD+DVD)/XNLD-10200/B/2,750円(税込)
LDH Records

林 和希「東京」

2024年2月21日(水)発売
通常盤(CD)/XNLD-102001/1,320円(税込)
LDH Records

林 和希「東京」

2024年2月21日(水)発売
D6盤(CD+フォトブック)/XNLD-102002/5,500円(税込)
LDH Records

LDH

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