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2021.08.04

ボス「名店、VMDの極意」

視覚表現を中心とした多様な演出で、消費者の購買を喚起するディスプレイによるマーケティング手法、それが「VMD(Visual Merchandising/ビジュアルマーチャンダイジング)(以下、VMD)」。ウインドーディスプレイやショーウインドーを使用した販促手段のひとつではあるが、VMDはその時代や世情を反映し、そしてアートを表現する場としても人々の目を楽しませてきた。 シリーズ「名店、VMDの極意」。第5回は、プレミアムライフスタイル&ファッションブランドの「BOSS(ボス)」と「HUGO(ヒューゴ)」を運営する「HUGO BOSS JAPAN(ヒューゴ ボス ジャパン)」の VM チームリーダー、川澄陽一さんに聞いた。

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2021年6月にブランド初となる日本の旗艦店「ボス ストア 銀座」をオープンさせ、2フロア構成の日本最大店舗を展開するヒューゴ ボス。

今回、旗艦店オープン記念として、独自のグラフィック「HB-MOJI(エイチビーモジ)」のオリジナルロゴを配したカプセルコレクションを展開し、店内もこのエイチビーモジを中心としたビジュアルが中心となっている。



写真提供:ヒューゴ ボス ジャパン

写真提供:ヒューゴ ボス ジャパン



このボス ストア 銀座のVMDを担当しているのは、ヒューゴボス ジャパン VMチームの川澄陽一さんだ。ヒューゴ ボス ジャパンは、VMDを含めたビジュアル類の方針は、基本的にすべてドイツ本国の主導だという。「ドイツから来たものを日本のマーケットにどのようにベストな状態で落とし込めるかが、個々のVMやマーケットの担当者の力に掛かっています。そこがこの仕事の難しさであり、面白さですね」と川澄さん。

ビジュアルの流れが日本のマーケットに合わない場合もあるそうだ。「もちろんドイツからの指示を『どれだけその通りにやるか』という部分もありますが、あまりにも状況に合っていない場合は修正の交渉をします。だから、マーケットにとってベストに持っていく方法を日々考えています」。本国とのコミュニケーションがかなり重要となる。





今回、旗艦店では、ケータイで使われる絵文字のようなエイチビーモジを配したインスタレーションを展開。「エイチビーモジは、日本から企画を投げて本国の承認を取った独自のディレクションで、エイチビーモジの顔がマネキンに乗っているビジュアルはこの銀座店だけなんです」。ただ、当初は店内にあるすべてのマネキンに頭を乗せる予定だったが、状況がうまくいかなかった。「お客様が触る位置によっては倒れる可能性が生じたので、色々試した結果、最終的に入り口のウインドーコーナーに集約させた形にまとまりました」と、機転を利かせる事の大切さを語る。



写真提供:ヒューゴ ボス ジャパン

写真提供:ヒューゴ ボス ジャパン



資材についても、本国からジャパン社が買い付けているという。「什器やテーブルなどは決められた工場があって、印刷物やプリントアウトして何かを貼るなど以外、基本的に一からローカルで何かを作るという事はないですね。今、ここから目に見えている物で日本で手配したのは植物くらいで、あとは扉も床も全て輸入です。エイチビーモジの頭の部分も輸入なんです」と、すべてがドイツ発信。



写真提供:ヒューゴ ボス ジャパン

写真提供:ヒューゴ ボス ジャパン



届いてから驚く事もしばしば。「パーツが足りなくて組み立てられないとか、ネジの規格も違うのでネジだけ送ってもらったり、本当に届いてからでないと分からないんですよ。毎回、業者と格闘しながらやっています(笑)」と、少し楽しそうに苦労を語る。しかし、最初は戸惑ったらしい。「『言われた通りに出来るはず』と思っていた事が出来ないので、何が何だか分からずでしたね。何回かやってみて『こういうことが起こる』と分かりました(笑)。だから、『100%こういくべき』とは思わず、60くらいはそういう感じで、あとの40は困った場合の対応に割く。そういう風に余裕を持っておくことが大事ですね」。

エイチビーモジ以外での取り組みとしては、スーツのフルカスタマイズサービス「BOSS メイド・トゥ・メジャー」の部分だそう。「日本では六本木店に続く2ヶ所目なのですが、ディスプレイもすべて考え直し、黒をベースにした重厚なイメージの六本木よりも透明感を出してアップデートしています」。



写真提供:ヒューゴ ボス ジャパン

写真提供:ヒューゴ ボス ジャパン



この仕事についた当初は、他人からの評価ばかりを気にしていたという川澄さん。「でも、途中から自分の感性を信じるようにしました。色んな人の意見も『こういう考え方もある』と取り入れながら、自分の好みもしっかり入れて、もちろんドイツからの流れも踏襲し、コミュニケーションを取りながらベストな形で売れるお店を作る。それは難しいことではありますが、やはり楽しいですよ。現在、チームメンバーが3人いて、自分ひとりでやると独りよがりになりがちなので、他のメンバーと一緒に仕事をすることで、そこから良い部分を吸収したり、シェアし合ったりしながら、それが刺激になっています。毎日、自分も成長していかないといけないと思いながらやっています」と、VMDという仕事のやりがいについて話す。

本国主導という難しい部分の多いインターナショナルブランドのVMD。しかし、川澄さんはそこに楽しさを見い出している。施工や制作が中心と思いがちのVMDという仕事。だが、様々な人ときちんとコミュニケーションを取りながら、ベストな形に仕上げていくという事が重要なプロセスとなっている。



川澄陽一(かわすみ・よういち)

千葉大学大学院教育学研究科を卒業。 (株)ミキモトに入社し、ダイアモンドの買い付け等を経験。路面店スタッフを経て外資系アパレルを経験。アシスタントマネージャーから本社スタッフとなり、VMメインの業務へ。2018年より現職。現在VMチームリーダーとしてドイツ本社との折衝や路面店のVM、施工会社との折衝、そして店舗スタッフの教育等を担う。



ボス ストア 銀座

住所:東京都中央区銀座5-2-1
営業時間:11:00-21:00
TEL. 03-6630-7600



(おわり)

写真/野﨑慧嗣
取材/久保雅裕
取材・文/カネコヒデシ





久保雅裕(くぼ まさひろ)
(encoremodeコントリビューティングエディター)

久保雅裕(くぼ まさひろ) encoremodeコントリビューティングエディター・ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

カネコヒデシ
カネコヒデシ メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。そのほか、紙&ネットをふくめるさまざまな媒体での編集やライター、音楽を中心とするイベント企画、アパレルブランドのコンサルタント&アドバイザー、モノづくり、ラジオ番組製作&司会、イベントなどの司会、選曲、クラブやバー、カフェなどでのDJなどなど、活動は多岐にわたる。さまざまなメディアを使用した楽しいモノゴトを提案中。バーチャルとリアル、あらゆるメディアを縦横無尽に掛けめぐる仕掛人。







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