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2021.04.30

ロンハーマン「名店、VMDの極意」

視覚表現を中心とした多様な演出で、消費者の購買を喚起するディスプレイによるマーケティング手法、それが「VMD(Visual Merchandising/ビジュアルマーチャンダイジング)(以下、VMD)」。ウインドーディスプレイやショーウインドーを使用した販促手段のひとつではあるが、VMDはその時代や世情を反映し、そしてアートを表現する場としても人々の目を楽しませてきた。 シリーズ「名店、VMDの極意」。第4回は、ロンハーマンVMD ディレクターの阿部隼也さんに聞いた。

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カリフォルニア発のスペシャリティストア「Ron Herman(ロンハーマン)」。

2009年に東京・千駄ヶ谷に国内1号店をオープンさせて以来、独自のセレクト路線で人気を博している。

そんな千駄ヶ谷店のVMDを手掛けているのが、 VMD ディレクターの阿部隼也さんだ。

「主役はあくまでも商品であり、お客様が買い物する為のアシスト。だから、前に出てアピールはせず、ロンハーマンの世界観に合うものを提案することですね」とVMDの基本方針について語る。

看板や注意書き、そして自動ドアのステッカーなど、すべてロンハーマン仕様に変更しているという。

「とにかく、いつ、どのお店に行っても楽しくて、刺激的で、自由で、居心地のいい空間であるべきで、その為に出来ることをやっています」と続ける。

阿部さんが店内を歩いていて気になる部分、例えば釘が残っていたり、ステッカーが剥がれていたり、誰もが気づいてはいるが見逃している部分を出来るだけ見逃さないと阿部さん。

「手抜きのポップやこだわりのないデザインでお客様に幻滅して欲しくないんですよ。そういう要素を削っていくのもVMDの仕事のひとつだと考えています」。

VMDとして特に季節によるテーマはないという。

「洋服のテーマに合わせることはありますが、あまり引っ張られず、ロンハーマンで大切にしている部分を常にやり続けることですね」。

ただ、クリスマスだけは一年の中で大々的に展開している。

「全店で共通のテーマを決めて、各店でテーマに合うようなアーティストを自由にフィーチャーしてアート展をやっています。あとは生のもみの木を入れて、オーナメントをオリジナルで作ってと、クリスマスは一番力を入れてますよ」。

ちなみに、昨年のテーマは「welcome to our happy place」だったという。

また、6~7年ほど前に彫刻家が作った3.5メートルほどある大きなサンタクロースの彫刻を、毎年ごとに店舗を巡回させているという。

ブランド全体としては、今季からサステイナブルをテーマにアート展示や店内BGMも追求しているとか。

「ただ、サステイナブルを意識しすぎてしまうとトゥマッチになってしまうので、あくまでも心地良いアートや音楽でロンハーマンの空間に合うというのが前提で、かつサステイナブルでありたい、という意識です」という。

4月からは会社として正式にサステイナブル専門の部も発足させたそうだ。

VMDとしても、ショッパーの素材変更や、ディスプレイも使い回せる物や空間を使った並べ方など、基本的にはシンプルな見せ方のイベントが多くなったとか。

店内のところどころには、「We’ll get through this together」という言葉が掲げられている。

「昨年4月の緊急事態宣言時、店舗のクローズ期間中にこの言葉をすべての窓に貼っていました」と阿部さん。

もともとは、ロサンゼルスがロックダウンした際に、本国のスタッフが店舗のウインドーにそれに近いことを書いたのが始まりだとか。

日本では、それに「みんなで乗り越えよう」という日本語を下につけて、全店に落とし込んだという。

店内BGMの選曲に関しては、「音楽が主張しすぎないように、あくまでお客様が楽しく買い物をするための引き立て役となるよう気を使っています。外部の選曲家にいくつかキー曲を出して、洋楽のみで歌詞も必ずチェックしてます」という。

VMD全体としては、「自由で楽しく」が根底にあり、基本的には見せたい物、伝えたいイメージがあるので、指示は出すが、それ以外は各店のVMD担当に任せている。「月に1~2回はVMDチームで集まってミーティングをして、意見を出し合って、それぞれのモチベーションを上げています」。

各店の担当者が自由にやれるので、それぞれがやりがいを持ってやっているという。

また、阿部さんは2019年10月、代官山にオープンした、「I’M OK(アイムオーケー)」というギフトショップのディレクションも手がけている。

ロサンゼルスに20年ほどある「OK(オーケー)」というギフトショップの日本版で、「オブジェや本、ジュエリー、おもちゃ、キッチン用品など、様々なカテゴリーがあって、ここに来れば変わった物、面白い物が見つかる、そういうお店です」と阿部さん。

オーケーは、オーナーのラリーが年中世界中を旅しており、ヨーロッパや北欧、アメリカ、日本、アジア、南米など、世界中の面白い物を集めたお店だそうだ。

アイムオーケーは現在、代官山と二子玉川の2店舗を展開している。

阿部さんは元々アートギャラリーのオープンを目指して動いていたが、今まで行った中で一番面白いお店をやろうということになり、それがロサンゼルスのオーケーだったという。

「僕の中ではそれが300円のキーホルダーでも、30万円の標本でも、全てのものをアート作品と同じように扱っています。有名なアートだったら、何百万円、何千万円もしたりして手が届かないけど、ここなら少しのお金で買えるし、そういうお店ってあまり日本にはなかったんですよね。生活の中に少しでも良いデザインやアートを取り込んでもらえるきっかけを作りたい」という。

アイムオーケーでは、棚にひとつの物を置くなど、物にフォーカスしたディスプレイにしているという。

「それこそアートギャラリーのように、一つ一つのものが美しく見えるように置きたいと思っています。そこはロンハーマンとは異なる見せ方なのですが」とのこと。

「ただ、お店を運営するという点では新しい挑戦をしていて。ただものが良く見えれば良いということではなく、そこには多くの人やお金も関わってくるので、VMDにおいてもより深く、様々な視点で考えて動くようになりましたよね。だから、人としては正しい方向に向かっているのかな(笑)」と、オープンしてまだ1年半ほどなので、少しずつファンを増やして良いお店にしていきたいとのこと。

ロンハーマン千駄ヶ谷とアイムオーケー。まったく異なるVMDを見比べてみるのも面白いかもしれない。



「お店は楽しくて、刺激的で、自由で、居心地のいい空間であるべき」とVMDの基本方針を話す阿部さん。


「『自由で楽しく』が根底にあって、基本的な見せたい物、伝えたいイメージの指示は出しますが、それ以外は各店のVMD担当に任せます」

このコロナ禍におけるメッセージ「We’ll get through this together」という言葉は、店内の各所に掲げられている。


店内には、オリジナルの額装を施したシーズンビジュアルも。

阿部さんが手がけたコンピレーションアルバム『One Love from California selected by Ron Herman』の第2弾と第3弾。第1弾はすでに完売し、取材日段階では、店舗にあるのみだそう。


2009年に上陸1号店としてオープンしたロンハーマン 千駄ヶ谷店。

クリスマスシーズンは毎年、生のもみの木にオリジナルのオーナメントで装飾を施すという。@yumi saito


毎年ごとに店舗を巡回させているという、巨大なサンタクロースの彫刻。

2020年のテーマは「welcome to our happy place」。@yumi saito


アイムオーケー代官山店。ロサンゼルスにあるギフトショップ、「オーケー」の日本版。

ここにしかない物があるという店内は、物にフォーカスしたディスプレイとなっている。



阿部隼也(あべ・じゅんや)

ロンハーマン VMD ディレクター
2011年、ロンハーマンのスタッフとしてサザビーリーグ入社。千駄ヶ谷店での販売スタッフを経て、2012年にロンハーマンVMDに就任。以来VMDだけではなく、アート展やBGMのキュレーションも行う。2019年にはLAのOK the Storeの日本版として「I’M OK」をスタート。代官山・二子玉川の2店舗の他に、オンラインストアも展開中。

詳細はこちら『I’M OK オンラインストア』

ロンハーマン 千駄ヶ谷店

住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷2-11-1
営業時間:11:00-19:30
TEL. 03-3402-6839

アイムオーケー 代官山店

住所: 東京都渋谷区猿楽町10-8 1F
営業時間:11:00-19:00
TEL:03-6427-0001

(おわり)

写真/遠藤純
取材/久保雅裕
取材・文/カネコヒデシ





久保雅裕(くぼ まさひろ)
(encoremodeコントリビューティングエディター)

久保雅裕(くぼ まさひろ) encoremodeコントリビューティングエディター・ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

カネコヒデシ
カネコヒデシ メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。そのほか、紙&ネットをふくめるさまざまな媒体での編集やライター、音楽を中心とするイベント企画、アパレルブランドのコンサルタント&アドバイザー、モノづくり、ラジオ番組製作&司会、イベントなどの司会、選曲、クラブやバー、カフェなどでのDJなどなど、活動は多岐にわたる。さまざまなメディアを使用した楽しいモノゴトを提案中。バーチャルとリアル、あらゆるメディアを縦横無尽に掛けめぐる仕掛人。







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