──神崎零さんと日女白りこさんが加入されてから約5ヵ月、まもなく半年といった感じですけども。
神崎零「アイドルって夏にフェスがあったりして、イベントがいっぱい詰まっていたので、まだ5ヵ月か!という感じがしてます」
日女白りこ「自分も、入ってわりとすぐに馴染めたというか、“ずっと前からいたっぽい”と言っていただけることも多くて、まだ5ヶ月かという感じがします。でも、その5ヵ月の間で、ものすごく貴重な経験というか、人生で一番濃い時間を過ごさせてもらったので、体感は1年ぐらいの感じがしますね(笑)」
──お2人が入ったことで、いまのキングサリはどんな状態になっていると感じていますか?
ネ兎ねう「前はグループ全体として刺々しいイメージがあったかなぁって思うんですけど、いまは結構丸くなったというか。前は個々、個人みたいな感じが強かったけど、いまはグループとしての強みを出せているかなっていう気はしますね。2人が入ってくれたことによって、よりまとまりができたかなと思います」
あやさ「元々いる4人とはまた違うキャラクターで、パフォーマンスも誰ともかぶっていなくて、本当に新しい風が吹いたなって。いい意味でパワーアップしたなって思います」
──キャラクターもパフォーマンスもかぶっていないとのことでしたが、零さんはどんな方なんです?
あやさ「勢いづけみたいなものって、頑張ってやるようなものではなく、内側から出てくるパワーみたいなものが大事だったりしますけど、そういうのがこのネ兎、あやさ、栗原、村咲は、ちょっと苦手だったりするんですよ。でも、零ちゃんが来てから、ブーストがかかったように、ライブでの熱量や迫力が増していて。キングサリの“動”のポジションというか、より熱くなるための人材だと思いますね。でも、ライブはそんな感じなんですけど、普段の性格はぽわぽわしていて、めちゃめちゃかわいいです」
ネ兎ねう「ギャップキングだからね」
──では、りこさんはどんな方ですか?
栗原えみる「最初は緊張していたのかもしれないけど、すごく静かで、おとなしい感じなのかなと思っていたら、しゃべったら意外とはっきりと物事を言ってくれるタイプで。すごく周りを見ているし、そこはライブにもすごく活かされてると思いますね。MCもめちゃくちゃ上手いし、キングサリの全体的なバランスを保ってくれていて。メンバーみんなそれぞれ端っこにいるタイプなんですよ。零は煽りだったり、あやさは元気でアクティヴな感じで、ねうちゃんはお姉さんで、ちいはアンニュイだから(笑)、その真ん中にいてくれる感じがして。最初はまだ分からないところもあったけど、最近はすごくいいなって思います。いろいろ気付くことも多いですね」
日女白りこ「自分も最初はどうしたらいいか分からなかったんですよ(笑)。みんな何でもできる人たちだから、正直自分がいなくても成り立っているなってずっと感じていて。でも、入ったからには意味をなさないといけないなって、自分の役割を考えるようになって。いなくても変わらないけど、いたらもっとよくなる人であれたらいいなと思っていたので、嬉しい言葉をいただきました(笑)」
栗原えみる「めちゃくちゃ褒めた気分(笑)」
──りこさんはキングサリにどんなイメージを持っていましたか?
日女白りこ「元々キングサリが好きで、憧れて入った身なんですけど、初めて観たときにめちゃくちゃ衝撃を受けたんです。全員歌がうまいし、アイドルなのにこんなカッコいいことできるんだ!みたいな。それは煽りとかもそうだし、目つきとか、世界観とか。でも、常に変化して行っているグループだなと思って。初めて観たライブから少し経つと、新しいジャンルの新曲ができていて、このグループってこんなこともできちゃうんだって。だから、まだ未完成というか。キングサリといえばこれです!というのが決まっていなくて、常に変化を追い求めているグループだなっていうところに惹かれました」
──自分の憧れていたグループに入れたというのもすごいことですね。
日女白りこ「たまたまオーディションが開催されたので、このタイミングは運命だなって思うんですけど、自分でもなんでオーディションに受かったのかわからないです(笑)」
──いや、そこはりこさんがよかったから受かったんだと思いますよ。零さんはキングサリの印象というと?
神崎零「りこの後に大変申し上げにくいのですが、私はスカウトで入っていまして……。元々知らなかったので、スカウトされてからYouTubeで観ました。自分は地下というか、地底アイドルみたいなところで、シャウトしたり、ヘドバンしたりするようなロックのアイドルをやってきたので、キングサリはロックアイドルというとキラキラしているようにも見えるし、でも王道アイドルというとロックにも見えるしっていう、どっちのライブに出ても戦えるグループだなと思って。だから、ロックだけをやってきた自分が入ったら、どう汚れるんだろうか……みたいな(笑)」
──汚れる?(笑)
神崎零「こんなキラキラしていて、みんな見た目も声もかわいいのに、自分は、しゃべるときはこんな感じハイトーンめの声なんですけど、歌うときとか煽るときはすごく低くなっちゃうんです。それがこのグループにどう新しい風を吹かせられて、いい意味でちょっと汚せるんだろうみたいなワクワクを抱きながら、YouTubeを観てました」
──ねうさんとしては、“汚れる”というお話がありましたが(笑)、そこはどう感じています?グループにとってスパイスになっているというか。
ネ兎ねう「そうですね。“キレイにやりすぎてる”というのは、プロデューサーからよく言われていたことではあるんですよ。他のメンバーは分からないけど、私はなんでもまっすぐ考えてしまうというか。フォーメーションがあったらそれを崩しちゃいけないとか、間違えちゃいけないとか、ライブを完璧なパッケージで届けないといけないと思ってしまいがちで。でも、そうするとライブの良さがあまりないなというのを感じつつも、ずっとそこを崩せずにいたんですけど。そこを、零ちゃんが毎回のライブに変化をつけてくれているので、すごく助かってます。それが汚されているのかは分からないですけどね(笑)。完璧なパッケージっていうものに対して、それを汚すと言うのかは分からないけど、ライブをよくしてくれているなってすごく思います」
──今回リリースされる『UTOPIA』も、ライブで威力を発揮する曲達が詰まっていますね。
ネ兎ねう「“UTOPIA=理想郷”ということで、キングサリもそうだし、ファンのみんなも、理想郷を追い求めて行けたらいいよね、みたいな。明るいほうを向いて歩いていくような、今までとはまた違う曲も入っていて。キングサリのいろんな面が見れる、いい1枚になったなと思います。
──確かに今までとは違うタイプの曲もあるし、曲の表情もそれぞれありますけど、キングサリらしさみたいな軸はあるのがおもしろいなと思いました。
ネ兎ねう「確かに。ぽくない曲もぽくなっているっていうのは、所属しながら、キングサリってすごいなって(笑)、改めて思いましたね。全部を自分たちの色に変えられるというのはすごいことですよね」
村咲ちい「これまでも私たちのかっこよさとか、可愛さとか、いろんな面を出した曲があって。今回はミニアルバムなので6曲なんですけど、6曲だけでも幅広く魅力を伝えられるのがすごいなと思って。この1枚を聴けばちゃんと自分たちのことを届けられるんじゃないかなっていう、素敵な1枚になっているなと思います」
栗原えみる「いつも作曲家さんが歌詞の意味を送ってくださるんですけど、キングサリのストーリーとか、キングサリっぽい言葉をめちゃくちゃ入れてくれていたりして。そういうところから、楽曲は今までなかった系統なんだけど、キングサリっぽさが出ているのかなと思って。ジャンルは違うけど、キングサリの物語がギュっと詰まっていて、いい1枚になったなぁって思います」
──そういう歌詞だと、歌っていて気持ちも入りますよね。
栗原えみる「そうですね。「Pain Wall」は、壁を壊せとか、今までのイメージを覆して、新体制で突き進んでいくぞ!みたいな意味だったりとか、「BLOODY BLOODY」は、まだキングサリの魅力に気付いてないでしょ?みたいな意味が込められていて。そうやっていろんなキングサリを見せられるし、すごく楽しいです」
──あやささんはどんな1枚になったと思います?
あやさ「やっぱり今までのキングサリと同じじゃ意味がないと思っていて。新体制になってどう変わったのかというのが、このCDに詰まっているなと思いますね。今までは強気な曲が多めだったんですけど、それこそ歌の表情が全然違うメンバーが入ってきてくれたことで、音楽的にもしっとりした曲から激しめな曲まで入っているし、その技術力が試されたんじゃないかなとも思っているんです。なので、曲数は少ないかもしれないですけど、1曲1曲がとても深いですし、私たち1人ひとりの個性やこれまでの歴史を、ファンの人や、これから先応援してくれる予定の人たちが聴いたときに感動するように、大切に歌い上げました。いまはいろんなアイドルグループさんがいますけど、胸を張って“キングサリが一番だ!”って言える作品になっていると思います」
──零さんとりこさんは、キングサリとして初のCD制作になったわけですが、挑戦してみていかがでしたか?
神崎零「「Pain Wall」とか「さまサマ☆SUMMER PARTY」は得意とするジャンルで、「BLOODY BLOODY」も歌いやすかったんですけど、汚しに来た人材としては(笑)、「チッタカタッタ」がキレイ過ぎて、いかに汚さずに歌うかにすごく苦戦しました。衣装も真っ白で、なんていうか、女神みたいな。理想郷を追い求めてやってきた人たちを導く天使達みたいな感じに見えたし、「チッタカタッタ」が理想郷を表していて、讃美歌みたいな感じで聴いた人の気持ちに溶け込む曲になるんだろうなと思ったので、ちょっとこれは不向きかもしれない……って(笑)。高い音も得意ではないので、自分は低いハモリに徹したいなと思って、“主旋律は諦めてもいいですか?”って最初に言いました(笑)。“全ハモリで行かせてほしい”と言って録ったんですけど、MVが公開されて、音源がそこに重なって流れたときに、これが正解だったなと思いました」
──実際に、下のハモリが効いていてすごくよかったです。
神崎零「透き通ったキレイな曲だけど、音に厚みが出るのはやっぱり低いハモリが入るからだと思うので。この曲はライブでも生でハモるので、大事に歌いたいです」
日女白りこ「私はいまの話の逆というか(笑)。“透き通った声だね”と言っていただける機会が多かったので、「チッタカタッタ」は自分の声に合っているというか、自分が新たに入ったからこそ出せるキングサリを見せられる曲だなと感じていたのに対して、「Pain Wall」みたいなカッコいい曲は、自分の殻を破っていかなきゃいけないなって。汚しに来たのとは逆で、なんていうか……」
あやさ「浄化しにきた?(笑)」
日女白りこ「(笑)。でも、もっと暴れていかなきゃなと思って、歌い方を変えてみたりしました。さっき曲調が違ってもキングサリらしさは残っているとおっしゃっていましたけど、なんていうか、私はキングサリという集団というか、海賊団みたいなのがいて、いまは船に乗って旅をしている途中だと解釈していて。自分が入る前のキングサリは、まだいなかったから多くを語れるわけではないんですけど、生死の境目を彷徨ったり、荒波を乗り越えたりしながら、いまは理想郷みたいな、朝日がキレイに見える……崖?」
ネ兎ねう「危ない(笑)」
栗原えみる「結構ギリギリなところにいるね(笑)」
日女白りこ「(笑)。雲の上でもどこでもいいんですけど、そこに新たな仲間が加わって、また舵を切って、みたいな。RPGみたいに新しいステージに進んではいるんだけど、キングサリという船は変わっていないから、また新しい世界を届けられているのかなと思っていて。この先、どう進んでいくのかは分からないですけど、この先もきっとキングサリという軸は残りつつも、降り立った地に合った世界観を届けられるんじゃないかなっていう、未来が楽しみな1枚になりました」
──ちいさんは振付を担当されることもありますけど、今回の曲に関しては?
村咲ちい「今回は「BLOODY BLOODY」と「さまサマ☆SUMMER PARTY」と、あとは「Dance with me」の振付をしました。「さまサマ☆SUMMER PARTY」と「Dance with me」は、お客さんと一緒に盛り上がれるように簡単な振付にしていたんですけど、「BLOODY BLOODY」は魅せることをイメージしたので、そこが難しくて。今まで簡単な振付をしてきたし、もちろん先生のほうが技術もあっていいと思うし、そこでわたくしに託してもらって、みんなの“大丈夫かなぁ……”っていう心配みたいなものもあったと思うので、今までで一番考えたんですけど、自分的にはとてもよいものができたと思います!」
ネ兎ねう「よいです。今まで心配したことないよ」
村咲ちい「ホントに!?」
栗原えみる「うん。一回もない」
あやさ「むしろちいちゃんの振付は毎回楽しいし、ファンからも“この曲の振りがよくて”、“それちいちゃんが考えた”っていうやりとりも多いし」
ネ兎ねう「「BLOODY BLOODY」は絶対に合う振付を作ってくれるなって最初から思ってた。ちいちゃんっぽいなって思った」
栗原えみる「ね? 本気出してきたって思った(笑)」
村咲ちい「これまで簡単な振りしか作ってこなかったから、それしか作れない人みたいな……」
村咲ちい以外「はははは!」
ネ兎ねう「思ってないよ!(笑)」
栗原えみる「すっごいネガティブ(笑)」
村咲ちい「お客さんにもそう思われてるかなと思ってて(笑)。でも、本当はこういう振付がやりたかったから嬉しかったし、こういう表現も作れるんだなっていうのを伝えられたかなと思います」
──10月8日には、Spotify O-EASTにてバンドセットのワンマンライブ「Resonance」が開催されます。1月の初バンドセット・ワンマンがシンプルにめちゃくちゃカッコよくて。バンドの出音が大きいのに、1人ひとりの声がまったく負けていないし、パフォーマンスもよくて、すごくいいライブでしたが、「Resonance」はどんなライブにしたいですか?
あやさ「前回は、アイドルがやるバンドセットなので、ファンのみなさんも“こんな感じかな”みたいな想像とか予想みたいなものがあったと思うんですけど、“いい意味で期待を裏切られた”という声が多くて。元々キングサリの曲はバンドサウンドなので、合うだろうなと思ってはいたけど、それがここまで感動が生まれるとはと言ってもらえたんですよね。前回は本番までみんなでたくさん練習したし、それを終えて、すごく自信になって、実際に評価もされて、今回新体制になってできるということで。4人は前回の経験や楽しかった思い出があるので、もう一度あの環境でファンを笑顔にすることができる喜びと、2人もそれを早く体感してほしいなっていうドキドキがありますね」
ネ兎ねう「元々バンドとかが好きなんですけど、バンドでやれるというのはなかなか貴重な経験だし、それをまたやらせてもらえるのはありがたいなと思いつつ、前回がすごくよかったし、ファンにもよかったと言ってもらえているので、それを超えないといけないなとも思ってますね。あと、前回よりももっとバンドさんと一緒になってやっていけたらなって。前回は初めてだったので、どれぐらいバンドさんに絡んでいいのか、一緒にやっている感を出すべきなのか、あんまりよく分からずやっていたところもあって。もっと“バンドもメンバーだよ”という気持ちで一緒にやれたら、会場の雰囲気ももっと一体感が出て、熱いライブができるんじゃないかなと思うので、“バンドもメンバー、メンバーもバンド”の気持ちでやれたらいいなと思ってます」
村咲ちい「前回は本当に楽しかった記憶しかないので、新体制になってすぐにバンドセットでまたやらせてもらえるのはすごく嬉しいですし、前回の反省点じゃないけど、そういうところも分かっているから、前回経験した4人はそこが強みにもなるし。そこにまた新しい2人が加わって、どういう感じになるのかというのは、自分もすごく楽しみです」
──反省点というと?
村咲ちい「前回のワンマンは、1曲目の「狂喜乱舞」の歌い出しを任されていて。その緊張で頭がいっぱいで、自分にちょっと余裕がなかったりとか、自分が楽しませるという気持ちもあったんですけど、ファンのみなさんに圧倒されてしまったというか、楽しませてもらっちゃっていたなっていうところがあったりして。なので、今回は緊張だけじゃなく、殻を破って、自分が楽しませるというか、一緒に楽しめたらなって思ってます」
栗原えみる「ねうちゃんも言ってたけど、自分がめちゃくちゃ人見知りなのもあって(笑)、バンドさんとリハであまりしゃべれなかったり、あまり知らない状態で出ちゃっていたなっていう気持ちがあって。だから、今回はバンドさんとひとつになって、一緒に楽しんでやりたいというのが、自分の中の目標としてありますね。あとは、新体制になったことで、絶対に前と一緒になることはないので、前回来ていた人は、また新しいキングサリが観れたなとか、前回を超えてきたなと思ってもらいたいですし、強くなったキングサリを見せられたらいいなと思います」
神崎零「バンドセットでライブをするのは、キングサリでは初めてで、人生ではこれで4度目になるんですけど。バンドさんがいることによって、楽曲もそうですけど、煽りもただ煽るだけじゃなくて、そこに音がついたり、かき回しがついたりとか、その場で息を合わせることも多いと思うので、リハーサルからバンドさんとコミュニケーションを取っていきたいです。あと、生の音が観ている人にも届くし、自分たちも背中にドシドシ感じるだろうから、普段は歌ったり踊ったりしてると、途中で失いかけるビートみたいなものも(笑)、バンドセットだと身体に響いて伝わってくるので、むしろ普段よりやりやすいと思うところもあって。だから、ステージにいる自分たち自身も、観ているファンの人も、身体中に響く音を感じながら、その日しか体感できないものを楽しんでもらえるように、バンドさんと一緒にエンジンかけてこうと思ってます」
日女白りこ「私は、バンドセットは人生でまったく経験がないので、打ち合わせの時点から知らない用語がいっぱい出てきて、“なんですかこれ……”みたいなところからのスタートなんですけど(笑)。でも、せっかく贅沢なライブをさせていただくからには、普段と一緒じゃ絶対にダメじゃないですか。バックの音が違うだけで、あとは一緒っていうものには絶対にしたくないし、この日、このメンバーで、このハコだったから聴けたっていうものにしたいとは思ってますね。ここからリハーサルをしていく中で、自分に何ができるかを見つけていきたいなと思います」
(おわり)
取材・文/山口哲生
写真/平野哲郎
キングサリ『UTOPIA』DISC INFO
2024年9月11日(水)発売
NSID-002/2,250円(税込)
Noisy