――改めて結成の経緯をお聞きしたいんですが、大学が一緒だったんですよね。
豊田賢一郎「そうですね。大学が一緒で、みんな音楽の団体に所属してて。僕とナオキ、ねたろが同じサークルでした」
フカツ「僕だけ違うところにはいたんですけど、3つある団体が一緒にライブするイベントとか学祭とかで結構一緒だったりしたので、みんな仲良くしてたし、一緒にコピーバンドやったりもあったんで顔は知ってたんですけど、先にこの3人が動いてて」
豊田「結成しようか……みたいな感じで」
フカツ「そこにちょうど僕が前のバンドが解散したタイミングに豊田からお誘いをいただいたという流れですね」
――4人のそれぞれの音楽的背景は結構違っていて、豊田さんはYogee New Wavesやnever young beachが好きとか?
豊田「そうですね。あとはシティポップとかもすごい聴きますね」
――対極にいる人といえば?
ナオキ「僕ですかね(笑)。ハードコアとか全然聴いてるんで」
ねたろ「でもナオキはオールジャンルだよね」
ナオキ「オールジャンルですけど……」
フカツ「いろいろ聴くけども一番のルーツがX JAPANとか、そっち?」
ナオキ「そうですね。ビジュアル系も好きですし」
ねたろ「音楽で対立しているイメージは豊田とフカツ(笑)」
フカツ「音楽的対立(笑)」
豊田「確かに俺が「Goodbye」っていう曲を作曲したとき、その曲は途中でテンポが変わるんですね。で、メンバーみんなとに聴かせたんですけど、その時フカツが“これは何だ?”みたいな感じで」
フカツ「あんまりテンポがコロコロ変わる曲とかに触れてこなかったこともあって、“これは曲なの?なんだこれは?”ってなって(笑)、結成1ヵ月目にして豊田と衝突(笑)」
――好きな音楽云々じゃなくどういうところで繋がったですか?
ねたろ「まあでもそれこそサークルというか、そもそも友達だったし」
ナオキ「みんな優しいんでほかのジャンルも受け入れようとするところがある感じがしますね」
――じゃあ一緒にいてバンドできるなっていう実感の方が強かった?
ねたろ「それで駆け抜けてきたところがありますね」
フカツ「一応僕だけ後から入った感じなんですけど、誘われた段階で曲はあったんです。で、曲聴いて、“あ、すげえな!いい曲だ”って思ってスタジオに一緒に入ってみたら“めっちゃ楽しいじゃん!”ってなって僕は入るのを決めたって感じだったんで。もうその段階で3人の関係性は結構出来上がってた気はしますね」
――豊田さんとねたろさんという二人のソングライターがいることは強みですよね。
豊田「強みだと思います。最初僕はちょっと悔しいという部分もあったんです。ねたろから上がってくる曲っていうのは僕とは全く別物というか、歌詞の捉え方だったり音の表現の仕方だったりが全然違うので、そういうのはお客さんからしてもバンドメンバーからしても新鮮で、特にライブでのパーカーズの幅に影響を与えてくれてるなって思います」
ねたろ「曲作る人が二人いることによってお互いに勉強しあえるというか。豊田の言葉の作り方とか歌詞が立体的に見えて、それを自分も取り入れられてきたなと最近は思いますね」
――作曲だけでなく作詞もじゃないですか。その辺は別にすり合せしなくてもパーカーズの曲として作ってる?
ねたろ「そうですね。最初は自分が作りたい曲を作ってたんですけど、パーカーズをやっていくに連れて、豊田がこれだったら歌いやすいかな?とかを想像しながら作ってますね」
――これはちょっと俺の人格と違う、みたいなことはないんですか。
豊田「人格としては違う部分っていうのはあったりはするんですけど、ねたろの歌詞って本当にとても優しくて、歌っていると勉強になるなというか人間的な部分でとっても素敵な考え方だなと思いながら「うんうん」って受け止めながら歌えてるんで、僕はすごく楽しいですね。歌詞の良さっていうのもそれぞれにあって、ねたろは一つテーマを置いてそのテーマに沿って曲を作ることがすごい得意だなって感じるんですけど、そういう歌詞の遊び方とかも勉強になるなあって思いながら歌ってます」
――確かに「地獄ランデブー」とかね。
豊田「そうですそうです!」
――じゃんけんがネタになってる「あいこでしょ」とか、確かにテーマがあると言われればそうかも。
豊田「要素がしっかりその曲の中に含まれていて、歌詞を読んでも楽しめるなあっていうのを思いましたね」
――歌詞を絵コンテみたいに描けそうな感じありますね。
豊田「あー、描けそう!」
――そしてパーカーズはトリプルギターも特徴の一つで。バンドアレンジするときの考え方はどうですか?
ナオキ「トリプルギターは僕が本リードでピロピロする感じなんですけど、それに合わせてねたろがハモリをつけてきて賢ちゃんはバッキング伴奏して隙間を埋めるんで、割といい感じになってると思います。最初はちょっと音がバラバラで、音作りもちょっと下手くそだったんで、「大丈夫かな?」と思ってたんですけど、最近はまとまってきて、各々が自分がどの音を出すのかっていうのをちゃんとわかってきてると思うんで、そこら辺はよくなってきたのかなと思います」
豊田「ギターの音色の帯域を分けて一つにまとめることで、パーカーズの演奏って「大迫力だ」って言ってもらえたりするので、それも三本ギターの強みかなって思います」
――豊田さんのボーカリストとしての影響源にも興味があります。
豊田「もともとずっと音楽を聴くのが好きではあったんですけど、バンドを始めてから影響を受けることが結構多かったんです。例えばハルカミライの橋本学さんのライブのスタンスはすごいカッコいいなと思いながら見てるし、sumikaの片岡さんのみんなと一緒に楽しむ感じのボーカル像とかも参考にしてるし。あとはやっぱり対バンしてきたバンドさんのボーカリストの立ち振る舞いとかを見て、「俺もこんなことしたいな」とか思いながら、最近はライブをしてますね」
――今回のアルバムは代表曲がほとんど入っています。それはもちろんとして、どういう1stアルバムにしたいと思いました?
豊田「1stフルアルバムなので、パーカーズの大事にしている“POPS日本代表”っていうところであったり、ハッピーを大事にしているバンドなのでそのよさっていうのが曲の節々に現れればいいなって思って作った曲もたくさんありますし、14曲入ってるんですけれども、ジャンルの振り幅もすごい多いかなと今回思ってて、初めて挑戦した三拍子の曲だったりとか頭打ちの曲とか、「地獄ランデブー」だったら重めのフレーズとか、そういうところでポップを大事にするからこそいろんなポップに挑戦して行きたいなっていうところで出来た一枚だと思ってます」
――パーカーズにとってのポップスっていうのはどんなイメージ?
フカツ「ポップスって言ってるけど、たぶん全体的にまとめられるポップスとは若干違うのかなと思ってますね。自分たちがやってるいろんな音楽が僕たちなりのポップスだよっていうことが全員あって。だから今回の『POP STAR』の曲たちもフレーズとかは結構バラバラだし、ロックチューンもあればハネる感じのリズムのもあったりするんですけど、それも全部僕たちなりのポップスっていうところを考えて作ってるんで。そういう意味の“ポップス日本代表”っていうのはすごい大事にしてますね」
――どれぐらいのものまでインクルードしようとしてますか。
フカツ「そこはお客さんとか絡んでくるのかな。お客さんをハッピーにできたり、しんどい時に聴いてもらえたり幸せになってもらえるとか、もろもろ音楽全体がポップスっていう枠組みになるのかなっていうことで言えば、僕たちはジャンルとしてポップスっていうものをとらえてないというか」
ねたろ「自分たちだけじゃなくて、お客さんとか聴いてくれてる人もポップスターにしたいなという思いを込めて曲を書くのを意識してますね」
――その感じすごいありますよね。全然気負わずにいられるし、かつ自分ごと感があるし。
豊田「それはよかったです(笑)」
――若い人にとってはまず安堵感があると思うんですよ。しっかりしてる人が多い印象もあるけど、不安もめちゃくちゃ大きいと思うので。
フカツ「歌詞とかあんまり押し付けてる音楽じゃない。考えを押し付けるみたいな感じの歌詞はないからかな?」
豊田「そうですね。僕は歌詞を書く上で結構気をつけてるというか、押し付ける歌詞を書くのがちょっと苦手というか、そんなおこがましいことできないなって思ってて、パーカーズの曲を聴いて自分の物語、自分の生活に上手く落とし込んでもらえたらいいのかなって思っていて。聴いてくれてる人たちの中には生活で辛いこととかうまくいかないこととかたくさんあると思うんですけど、それぞれの生活にうまくパーカーズの曲を落とし込んでもらって活力にしてほしいなあっていうところで書いてるので。押し付けるっていうよりかは自分で受け取ってもらって前に進んで貰いたいなって思って書いてますね」
――ではアルバムの中で一番聴いてほしい曲や、曲のここを聴いてほしいというポイントをそれぞれ教えてもらえますか。
ナオキ「僕は一番聴いてほしいのは「SMASH」なんですけど、まず最初のイントロのカッティングをめちゃめちゃ速くカッティングして、「これでもかっ?」て思うぐらいカッティングして、かと思ったらタッピングもしちゃってみたいな。割とギタリストにとってはロマンが詰まったような曲なんじゃないかなと思ってるんで、もちろん邦ロックとか好きな人にももちろん聴いてもらいたいんですけど、ギタリストにもちょっとギターに注目して聴いてもらえたらと思いますね。“あ、俺も練習しようかな”とか思ったりしてくれたりしたらうれしいです」
フカツ「僕は「ナンバーワン」ですね。今回新曲たちの中で「ナンバーワン」と「SMASH」がドラムから入る曲なんですけど、個人的には「ナンバーワン」のイントロのドラムソロがすごい好きで。あれを叩いた瞬間にねたろ君にレコーディングの時、“フカツ、今まででいちばんかっこいいよ!”って言われたのをすごい覚えてて」
ねたろ「ははは!」
フカツ「今までカッコよくなかったのか考えちゃう……」
ねたろ「そんなことない(笑)。今まででいちばんって意味」
フカツ「いちばんかっこいいって言われて、“あ、じゃあいいフレーズなんや”と思って(笑)。あとは単純に「ナンバーワン」の歌詞がすごい好きで。すごい優しいなあと思ったんですね。ナンバーワンって一等賞とか順番とか順位を決めることでもあって、それはちょっと優しくないなという感じするんですけど、この「ナンバーワン」はすごい優しいなあって思える曲なんで、ぜひ聴いてほしいなあと思います」
――自分がナンバーワンだと思っているものをナンバーワンにしてあげるよって言ってる歌詞だなと。
フカツ「そうそう!そうですね」
――でもそこでオンリーワンって言わずにやっぱりナンバーワンっていうところがねたろさんの言葉のセンスかなと。
ねたろ「ああ、そうですね。バンドを始めた時にナンバーワンってやっぱ目指すというか、誰でも目指すと思うんですけど、「ナンバーワンってどうやったらなれるんだろう?」って真剣に考えた時に、ただナンバーワンになるってすごい漠然とした目標というか、ひとりひとりからナンバーワンもらうことってすごい難しいことだと思って。この曲はまずは自分からナンバーワンをあげることをフィーチャーしてる曲ですね」
――ナンバーワンっていうのは相対的な話だし。
ねたろ「そうですね」
――そうじゃなくて自分のナンバーワンをみんなそれぞれ持ってるだろうっていう?
ねたろ「そうです。それをあげたりもらったりすることが、そのナンバーワンになるための道なのかなっていう」
――ああ、なるほど。ねたろさんと豊田さんの推し曲は?
ねたろ「そしたら「あいこでしょ」。結構自分は曲作る時にテーマに沿って歌詞とか音、構成を作ったりするんですけど、「あいこでしょ」はそれがちらほらあったり、音もあったり、歌詞でじゃんけんを表現したりするので、そういうところも聴いてほしいなあという意味で「あいこでしょ」は聴いてほしいです」
――これはじゃんけんをネタに生活が描かれてる感じがするんですけど、状況としては曲の中の彼女に完全に敗北してるんですか?
ねたろ「敗北はしてないですよ(笑)。敗北というかなんだろうね……まあ相手に対して勝ちに行くというよりかは負けてあげるというか、そういう精神が結構大事だなと思うんですよ」
豊田「大人やなあ」
ねたろ「「負けるが勝つ」じゃないですけど、そういう余裕を持って日々生活した方が世界が彩って見えるなと思って書いた曲です」
――さて豊田さんは?
豊田「ちょっと新曲で行こうかな。新曲だったらやっぱリードになっている「地獄ランデブー」。この曲はねたろ君が作ってくれたんですけど、地獄っていうテーマでいろんな地獄の要素が入っていて、まず歌詞としてすごく面白いなあっていうところで、すっと入ってきたんですけれども、メロディも流れるような感じでテンポ感がいい曲ですごいなって思ったし。この歌詞はどういう感じで書いたの?(笑)」
ねたろ「地獄を連想できるような歌詞だけど、地獄さえも好きな人と一緒にいたらポップにできるような歌詞かな」
豊田「そういう意味でただ地獄の曲じゃないぞっていう、ちゃんと人と一緒に乗り越えていこうっていうところでいろんな人が自分をフィーチャーできる曲なんじゃないかなって思って、僕はこの曲がすごい好きです。あとやっぱ「運命の人」を聴いてほしいです。今のパーカーズを形成した曲ですし、ライブでも核の曲になってるので。イントロもフルアルバムの一番最初にトリプルギターのいいところがくるので聴いてほしいですね」
――パーカーズの音楽を聴いていると、カッコよさの一番の条件は優しさなのかなと。
豊田「度量のところですか?ああ、でもそれはあるかもしれないですね」
フカツ「優しい人カッコいいみたいな。確かに」
――それは「痛いの飛んでゆけ」の歌詞でもすごい感じるところで」
豊田「嬉しい。ありがとうございます。歌詞もすごい好きなんですよ。自分の中でめっちゃ上手に書けたなって思ったんで」
――しんどそうな人をほっとけない感じがめちゃくちゃ出てますね。そしてアルバムが出たらリリースツアーが始まりますが、どういうツアーにしますか?
豊田「僕らのライブはハッピーを大事にしてやってるんでたくさんのハッピーを届けられたらなっていうところで思ってます。新曲ももちろんやろうと思ってるんで、新曲の楽しみ方もみんなで考えつつお客さんにそれを分かりやすいように共有して一緒に体を動かして楽しめたらいいのかなと、考えてます」
フカツ「今回のツアーでは仙台、広島、福岡で初めてワンマンっていうのと、最後の渋谷CLUB QUATTROだったり、初めてのことだらけだからこそセトリとかも初めての試み、今までやってないアプローチの仕方のセトリとか組んでみたいなと思ってますね。あと照明とか視覚的にも、いろんな初めてのパーカーズを見せられたらなと思いますね」
(おわり)
取材・文/石角友香
写真/平野哲郎
POPS 日本代表 VICTORY TOURLIVE INFO
8月3日(土)仙台 enn 3rd
8月10日(土)広島 ALMIGHTY
8月11日(日)福岡 Queblick
8月15日(木)大阪 BRONZE
8月16日(金)名古屋 ell.FITS ALL
8月22日(木)渋谷 CLUB QUATTRO
パーカーズ『POP STAR』DISC INFO
2024年7月10日(水)発売
NOIS-009/3,000円(税込)
Noisy