Bass Day Special Month チョパレボ & Bass Friends Vol,2:INTERVEW

――まずは、去年の振り返りをお願いします。

IKUO「10周年の1年前という微妙なタイミングで(笑)、チョパレボが初めてビルボードライブ東京でやらせてもらったわけですけど、ベーシストのお祭りとして完璧だったと思います。これ以上ないくらいのメンツでした。あらゆるジャンルのトップ・ベーシストが、一堂に会したという。ロック・バンド界隈からKenKenみたいなスターが来てくれたこともそうだし、レジェンド枠もアイドル枠もしっかりあって。終わった瞬間に、来年やるとなったらどうするんだって思いました(笑)」

――音楽ジャンルもそうですし、活動フィールドが幅広い人たちが集結しましたからね。

IKUO「そうなんです。僕らは偏見とかないけど、たとえばロック・ファンはユーチューバーを受け入れられないかもしれないとか、R&Bの人はタッピングを好まないかもしれないとか、あるじゃないですか。そういう中でなんの縛りもなく、個性をばんばん出してもらって同じ音を鳴らすのが面白いんです。でも何が一番面白いかって、楽屋でみんな仲がいいんですよ(笑)。全員が全員、認め合っていて、さすがだなと思いましたね。僕はベーシストを紹介しただけでしたけど、調整して話をまとめてくれた村田君は大変だったと思います」

村田「いえいえ(笑)。IKUOさんが、想いのすべてを語ってくれました。まったく同感です。違う側面から付け足すなら、チョパレボで10年やってきましたけど、コンセプトはベース・バトルじゃなくて、アンサンブルとエンターテインメントなんですよね」

――そこですよね。

村田「まさに、ベース・イベントには持ってこいのグループじゃないかと思っていました。コロナで気分が盛り下がっている中、ベースで盛り上げられないかということで、ビルボードライブさんと一緒にコンセプトを考えることができたのが、ありがたかったです。アンサンブルという意味では、10年分のオリジナル曲があって、ナルチョ(鳴瀬喜博)さん、IKUOさん、僕という、ジャンルの違う3人がいるのが強いなと。いろいろなジャンルのゲストのみなさんに合わせられるから、ステージの幅が広くなるというか。僕みたいなフュージョン/ファンク担当もいれば、IKUOさんという、誰もが追いかけるベース・テクニックのナンバー・ワンがいて、ナルチョさんという歴史的ベーシストと言っていい方がいてくれる。僕も、来年どうするんだって心配になりました(笑)。でも今のところ、2回目らしい充実したイベントになると感じています」

――2回目らしい?

村田「前回はビルボードライブさんのアイデアとして、いろんなジャンルのイケイケの人たちを集めるというのがあったので、それをコンセプトにしたんですね」

IKUO「よりエンタメ色が強い感じだよね」

村田「そうなんです。今年はもうちょっとベーシストの数を絞って、その分、チョパレボと濃く絡むようにしようと」

――ブッキングは、どのように進めていったのですか?

IKUO「最初は、去年と重ならないようにしようというところからですね」

村田「そこから、去年のメンツで前夜祭みたいなものを横浜でやって、新しいメンツで東京でやるという、死にそうなアイデアも出て(笑)。その後で、自然な流れでフワフワっと清水興さんに声をかけていたんです。なんとなく東のナルチョ、西の興みたいなイメージがあったんですね。流れと勢いで電話してみたら、”70年代のコテコテのファンクがほしいんでしたら、いつでも言うてください”って、パンチのあるお返事をいただいて(笑)」

一同「(爆笑)」

IKUO「興さんが決まった時点で、レジェンド総出演にしようかという案も出ました」

村田「でもそれは、ビルボードライブさんから”チョパレボと今イケイケな人たち、というところは引き継いでほしい”と言ってもらったので、間を取った感じで落ち着きました。思ったんですけど、ビルボードライブさんって、本部が大阪じゃないですか。ごった煮が好きなんだなと」

一同「(笑)」

村田「お好み焼き王国だし。それを東京の六本木でやるっていうのが、またいいんですよね。今回は、興さんにはナルチョさんとの再会を楽しんでもらって、歴史的なステージをファンに目の当たりにしてもらいたいです。さらに、KenKenさんという現代のベース・ヒーローと、むう(フクダヒロム)君という、これからを担うであろうベース・ヒーローも登場するという」

――なるほど、いいバランスですね。

IKUO「あと今回は、ツイン・ドラムが大前提でした。そうするとベーシストが減ってくるわけで、セッションが増えて濃い演奏ができる。より一人一人にフォーカスが当たって、去年とは違う良さが出ると思います。去年のお祭り感覚で集めました自慢みたいなところから、より音楽的に深めていきたいというのはありますね。ツイン・ドラムと僕と、むう君、Tetsuya君で演奏する曲もあるし」

――Tetsuyaさんとは親交があったのですか?

IKUO「会ったことはなかったんです。でも、ラスヴェガス(Fear, and Loathing in Las Vegas)とはイナズマフェス(「INAZUMA ROCK FES.」で何回か一緒になっていました。今年もラスヴェガスが初日に出演していて、僕はその日オフだったので、観に行ったんですよ。そこでヴォーカルのSo君と話している時に、”ウチのベースがIKUOさんの大ファンなんですよ”って紹介してもらいまして。そしたら”ガチで教則本を持っています”って。”え〜っ!?”みたいな(笑)。動画も観たことがあるんですけど、うまいんですよ。めちゃくちゃテクニカルで。あんなビッグ・ネームのバンドのベーシストが今回参加してくれるのは、ありがたいです」

村田「去年のイベントも、観にきてくれていたらしいですよ。”まさか自分が出られるなんて”って言っていました。嬉しいですよね」

――女性ベーシストの芹田珠奈さんも参加されますね。

村田「彼女、実はずっとチョパレボと因縁があるんです。チョパレボがやったベースコンテストの企画に応募してくれたり、コロナ期間中にコラボ動画をアップしてくれたり。ドラムの川口千里さんともThe Jazz Avengersで一緒にリズム隊をやっているので、そういう繋がりもあって、今回お声掛けしました。あれくらいコテコテのファンクを特にしっかりやっている日本の女性ベーシストって、彼女じゃないかなと思います」

――ツイン・ドラムは、今回のイベントもですし、チョパレボの最新アルバムでも重要な目玉なんですよね。

IKUO「坂東慧君と、川口千里さん。菅沼孝三さんのDNAを受け継いだ素晴らしい二人のドラマーです」

村田「レコーディングでもえげつなかったんですけど、それをついに生で初披露できます。そもそもはビルボードライブさんのおかげで、ツイン・ドラムとトリプル・ベースのライブを2年前に大阪でできて、すごく盛り上がって、去年横浜で第2弾ができたので、その流れでアルバムにも収録することになったんです。今年のアルバム・リリース・ツアーはワン・ドラムだったし、窓ガラスを割るぐらいの勢いでやってもらおうと思っています(笑)」

――楽しみです(笑)。

村田「そういえば、昔、ラリー・グラハムさんのライブを観に行った時、僕のジンジャーエールがずっとカタカタ揺れていたんですよ。それをラリーさんに伝えたら、すごく嬉しそうで。なんでベーシストって、そこを嬉しいと思ってしまうんでしょう?(笑)」

IKUO「古いタイプだからですかね、ナルチョさんにしても、音のデカさと低音にやたらこだわるっていう。最近は動画投稿が多いから、こだわるところも違うじゃないですか、ラインの音をきれいにとか」

村田「IKUOさん、よく言ってくれていますもんね。チョパレボのライブで、ベース・アンプのスピーカーが揺れているところを見てほしいって」

IKUO「そうですよ。揺らさないと(笑)」

――プレイヤーにとってもお客さんにとっても、現場で空気を、低音を、肌で感じるって大事ですよね。

IKUO「今回、配信はしないんですよね?」

村田「そうなんです。IKUOさんがいつも言っておられる通りのことを僕も思っていて。あのビルボードライブ東京のキラキラした空間の中で、ベース・アンプがすごいことになっているのを、会場で体感してもらいたいんです。言葉の選び方が少し難しいんですけど、動画の音量と音質で音楽をジャッジしてもらいたくないんですよね。このイベントは、やっぱり生で体感してもらいたい。いつでも観られるものじゃないと思いますし」

――わかります。

村田「今年は出演組数が減ってはいるけど、トータル人数的には増えているし、逆に去年より賑やかになるかもしれないですね。ツイン・ドラムに、仮面女子さんチームも来てくれるので」

IKUO「振り幅がすごいことになっていますよね、仮面女子から清水興さんまでって(笑)。それに、ステージの上も凄いことになりそうですよね。ベース・アンプだけでも10台近くあるし、去年もよく乗ったよね…(笑)」

――(笑)。では最後に、改めて観どころをお願いします。

村田「はい。皆さんのおかげで、第2弾をやれることになりました。ビルボードライブさんという素敵な会場で、オリジナリティのある素敵なイベントを、チョパレボが中心に毎年やるっていう、僕のこれからの夢もできました。とにかく会場で、生の音をぜひ体感してもらいたいというのが、僕の思いです」

IKUO「チョパレボと出演してくれるベーシストの皆さん、ビルボードライブさんやお客さんにとっても、ウィン・ウィンになるイベントになるんじゃないかと思っています。あとは、コロナに感染しないように当日を迎えてもらえればと。もう2回ぐらいかかっているので、人のことは言えないけど(笑)。また、来年のことを悩むという贅沢をしたいですし、とにかく健康で無事に終われることを願っています」

(おわり)

進行/近藤隆久(元ベース・マガジン編集長&プロデューサー。本イベントの総合司会も務める)
LIVE PHOTO/Masanori Naruse

10th Anniversary 3rd Album Release Tour 2022:LIVE REPORT

日本を代表するフュージョン・バンド、カシオペア(現在の名義はCASIOPEA-P4)のメンバーでもある鳴瀬喜博、ヴィジュアル系/アニソン系を中心に引っ張りだこのIKUO、数多くのアーティストとの共演で知られる村田隆行。現在72歳の鳴瀬と、明らかに世代格差があるであろうIKUOと村田という3人の超絶ベーシストが、ジャンルの壁を超えて結成したThe Choppers Revolution。“チョパレボ”の愛称で根強い人気を誇る彼らが、東名阪を回る「チョパレボ10th Anniversary 3rd Album Relesase Tour 2022」を開催した。

ツアー・ファイナルを飾る東京公演の会場は、ジャズの聖地とも呼ばれるBlue Note TOKYOだ。しっかり埋まったフロアからの万雷の拍手に迎えられ、鳴瀬がやんちゃっぽい笑顔で、IKUOがスタイリッシュ&クールに、村田がおどけてペコペコ頭を下げながらと、三者三様の個性全開で登場し、ライヴがスタートした。そう、このユニットは、それぞれのキャラクターが際立っているところも魅力。曲間のMCでは、時にブラックな3人の掛け合いに何度も爆笑が巻き起こっていた。

ツアー・タイトルが示す通り、今回のツアーは、活動10周年を記念してリリースされたニュー・アルバム『FAN×K(ファンク)』を引っさげてのもので、オープニングはアルバムの1曲目でもある「Pop Up Da Funk」。音源を聴いて、誰がどのフレーズを弾いているのか気になっていたのだが、この曲では村田がメロディ・ラインを弾き、鳴瀬とIKUOがパーカッシヴなチョッパー(スラップ)奏法で、ビート感とグルーヴ感を加えていくというスタイルだった。続く「チョパレボ・ショッピング Part3」では3人が1小節ごとに代わる代わるメロディを弾いていたり、3曲目の「Funk On」では鳴瀬がヴォーカル/ラップを乗せたりと、楽曲ごとにそれぞれが役割をチェンジするのを見るのも楽しい。サポートの河野啓三(Key)と坂東慧(Dr)との息もピッタリで、ライヴの醍醐味を味わわせてくれる。

“メロディ”と書いたが、彼らの音楽は、極めてテクニカルなベース・プレイの応酬をしながらも、技術をひけらかすようなものではない。同時にベースで歌うように、美しく、またキャッチーな旋律を奏でるというスタイルで、親しみやすいポップネスにあふれている。だからこそ、幅広い層に受け入れられているのだろう。

ライヴ中盤の「So Bad」「Cat's Power」では、IKUOとドラムの坂東が渾身のソロ・プレイで魅了。アーム付きベースを持った鳴瀬は、エレキギターのようにギュイ〜ンとロックなフレーズを鳴らし、最後は水戸黄門のテーマ曲のフレーズでオチをつけてみせた。

「ここからはうるさいです。ごめんなさい(笑)」(村田)を合図に突入した終盤は、ヴォーカリストのNoBとEYEが参加して、「Chop-Chop」をソウルフルな歌声でたっぷりと聴かせる。そして、1980年代に鳴瀬が結成してシーンを席巻した、うるさくてゴメンねBAND(現URUGOME)のセルフ・カヴァー「Unfinished Bussines」では、なんと鳴瀬がステージから観客のテーブルに飛び移り、激しくプレイ。曲終わりには村田が「ブルーノートさん、本当に申し訳ありません。幸せでした。今後また別のグループで機会がありましたら、よろしくお願いします」と、必死にフォロー(!?)していた。

アンコールでは一変、王道ど真ん中のムード歌謡曲「追いかけて関東」で、村田&IKUOのデュオが絶妙なハーモニーを聴かせて(鳴瀬の伴奏に徹したチョッパー・ベース・プレイも絶品)、いったいなんのライヴだったかわからなくなるような、可笑しな余韻を残して終了。度肝を抜かれまくりながらも笑って脱力できる、とても楽しい一夜だった。

(おわり)

取材・文/鈴木宏和
LIVE PHOTO/Tsuneo Koga
写真提供/BLUE NOTE TOKYO

The Choppers Revolution -10th Anniversary 3rd Album Release Tour 2022-

SET LIST
M1.Pop Up Da Funk
M2.チョパレボ・ショッピング Part3
M3.Funk On
M4.Trifold in G
M5.So Bad
M6.Cat’s Power Pileup Effect
M7.Chop-Chop
M8.Unfinished Business
M9.Pink Punk Funk
EC.追いかけて関東


┗2022年8月31日(水)@BLUE NOTE TOKYO

RELEASE INFORMATIONThe Choppers Revolution『FAN×K』

2022年8月12日(金)発売
MZJZ-00004/3,300円(税込)
Mzes Recordz

関連リンク

一覧へ戻る