――まずは夏イベント「THE ALFEE 2022 Summer Genesis of New World 夏の天地創造」の話題から。ぴあアリーナMMは初めての会場ですよね?

高見沢俊彦「そうですね。初めての会場です」

坂崎幸之助「夏のイベント自体が3年ぶりだしね」

桜井 賢「そうだよね、夏イベも有観客では2年も空いちゃったからな」

――初モノということで、実際にステージに立ってみての感想はいかがでしょう?

高見沢「やりやすい会場だと思いました。もちろん僕らは実際の音を客席で聴くことはできないんですけど、まわりの人たちの感想だと音が良かった、見やすかったって聞きました」

桜井「うん、好印象でしたね。まあ、そういう良い反応が伝わってきましたんで、それはよかったなと思いました」

高見沢「僕らはステージにいるとそこまではわからないんですよね」

桜井「イヤモニをしちゃうからね」

坂崎「ライブ感っていう意味では意外と冷静にできる会場ですね。跳ね返りが少なかったです」

桜井「うん、かなりデッドな環境でした」

坂崎「たしかにデッドだったね。僕はステージの真ん中が定位置だから、いちばん音の回り込みとか気になる方ですけど、音響的にとてもやりやすかったですね。逆にいい音すぎちゃって」

桜井「スタンド席やサイドの奥の席の人までちゃんと聴こえてたそうです」

――すごくタイトで引き締まったサウンドというか、スクエアな印象を受けました。

坂崎「だからいわゆるライブハウスならではの、ドカーンっていう感じじゃないんだよね」

高見沢「最新のホールだからね。なんかそういう音響や客席空間などさまざまな課題を見越して設計されたらしいよ。新しいコンサートのかたちっていうかね、アーティストとオーディエンスのそういうニーズにあわせて考えられたんでしょうね」

――ぴあアリーナMMは、キャパ1万人を超える規模の会場なので、武道館や代々木体育館あたりと同等のスケール感ですが、残響感が全く違うように思えました。

桜井「うん、空間っていうかね、アリーナ席がすごく広く感じてその上に4階まで客席があるでしょ?だから空間が広いんだけども、ちゃんとお客さんも声が出せるようになると、武道館みたいな迫力が出るんだろうね」

――そうですね、4階層なので客席の構造は武道館と同じですが、あまり圧迫感はないのでは?

高見沢「そうですね。空間的に広いから圧迫感は感じなかったですね」

――で、花道があってのセンターステージも特別感がありました。

坂崎「デべソです。横浜アリーナとか夏イベでは、ほぼ毎回やってますよ」

桜井「横浜アリーナは花道の距離が長いから大変(笑)」

坂崎「うん、そう言われてみると確かにぴあアリーナMMは、客席全体が近く感じましたね。」

――2デイズ公演の2日目、中盤で披露していた「星空のディスタンス」は歌いだしがアカペラでした。

坂崎「すごく歌いやすかったね」

高見沢「やりやすかった。お客さんの反応もよく見えましたし」

――僕は2階席のセンターあたりで見ていたんですけど、音の分離がいいっていうか、ひとつひとつの音がくっきり聴こえていました。

坂崎「そうそう!スケールはアリーナなんだけど、サウンドはコンサートホールの感じですよね」

桜井「まあ、会場にあわせてPAのスタッフがやりやすい環境に仕上げてくれますから、僕らはいつものとおり音を出すだけですよ」

坂崎「そんなによかったんなら、客席で聴いてみたいですね」

高見沢「どんな感じだろうね……残念なことにこればっかりは自分たちでは決して聴くことはできないですからね。去年武道館で無観客ライブをやりましたけど、スピーカーを使わないとこんな感じになっちゃうんだっていう体験はしていますが、逆にこうやって最新の技術で音を出せて、オーディエンスに伝わるっていう快感をあらためて知りましたね。僕らがこういう音を出したいんだということを、スタッフが感じ取って増幅してくれるわけですから。そこは長年いっしょにコンサートをやっているスタッフとの信頼関係で成り立っているともいえますね」

――最新の技術、というのはすごく実感しました。会場が違うだけで、すごく没入感があったというか……

坂崎「ストレスがない?」

――はい。全くなかったです。ロビーも広くて導線も整理されていてすごく快適なコンサートでした。終演後、会場を出てみなとみらいの夜景が見えるのもいいものですね。

坂崎「なるほど、ホールもロケーションも近未来ってわけだ。まあいつまでもコロナだなんだって足踏みしていられないですから。こうやって新しい会場も次々とできているし、前を向いていかないとね」

――そんな「夏の天地創造」時点ではまだタイトル未定とアナウンスされていた71枚目のシングルがいよいよリリースされます。

高見沢「今回はダブルAサイドシングルということで「星空のCeremony / Circle of Seasons」というタイトルになりましたけれども、最近のTHE ALFEEのシングルの傾向はバラードやミディアムテンポの楽曲が続いたので『天地創造』につながるようなハードな曲にしようと思ったんです。それで「星空のCeremony」を書いたんですが、THE ALFEEのよさってそれだけじゃないだろうとも思うんです。ハードな曲がある一方で、アコーティックギターの曲とかもね。最近、僕がアコギにハマっているので何かできないものかなと。それでいまになってあらためて坂崎にDチューニングのやり方をレクチャーしてもらいましたから(笑)。CSN&Y(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)とかガロがやっていたようないちばんオーソドックスなチューニングを教えてもらって。Dチューニング縛りで曲を書いたらおもしろいのかなと思って。最初から最後までずっとコーラスで行くって曲も僕らくらいしかできないと思うんですよね」

――そうやって「Circle of Seasons」が出来上がったんですね。

高見沢「ふたつ並べてどちらかということじゃなく、どちらもTHE ALFEEなので。じゃあダブルAサイドシングルにするのがいいのではないかと思いました。カップリングって言いかたも何かピンとこないし……そう言えば最近カップリングって言葉をあまり聞かないよね?」

――そうですね。配信とかデジタルリリースが多いので1曲単位でもリリースできますから。

高見沢「なるほどね。みんなパッケージで出さなくなってるんだね。まあ、今回のシングルに関していえば、対照的な楽曲ではありますが「星空のCeremony」も「Circle of Seasons」どちらもTHE ALFEEを象徴する楽曲になっていると思います。なんかふたつのバンドみたいじゃないですか?それが僕らの特徴でもあるわけですが」

――確かにどちらか選ぶのは難しいですね。ではハードロックな「星空のCeremony」からブレイクダウンしてみようと思います。ハードロックなサウンドですが、シリアスな恋愛の心象風景が描かれています。これはある程度の年齢を重ねた男女のストーリーでしょうか?

高見沢「登場人物の年齢までは考えてなかったけど。そうだな……具体的な年齢はわからないけどシチュエーション的には「星空のディスタンス」と共通するものがありますね。「星空のディスタンス」も遠距離恋愛がモチーフになってますけど、時代が進んで遠距離恋愛のかたちも変わりましたよね。いまはスマホがあってネットもあるし、Zoomで会えますから。逆に遠距離くらいじゃ燃えあがらないのかもね」

桜井「レジスタンスにならないよね(笑)」

坂崎「「ディスタンス」の頃は10円玉を山ほど持ってって電話してたもんな」

高見沢「いまは会えないからこそ会いたくなるってことがあまりないんだろうね。それでも画面越しに会うのと面と向かって会うことの大切さとかそこから受ける刺激は違うと思いますけどね。タイトルも「星空の」って付けましたから、「星空のディスタンス」は多少意識してます」

――古参のALFEEファンなら、このタイトルと遠距離恋愛のストーリー、出だしの<カシオペアを探して>のワンフレーズでぐっときちゃいますね。ただ、聴き手の生きている時代が80年代なのか、いまなのかでかなり印象が変わるんでしょうね。

高見沢「身の回りのツールが全く違うからね。「星空のディスタンス」発売当時の84年は携帯なんてなかったし。テレホンカードくらいかな。だから遠距離恋愛っていうものの重みがいまとは全く違うでしょうね。まあ、恋愛のかたちってそれぞれですから。満天の星空の下で、いまや別れるか別れないかというその瀬戸際にいる主人公たちがどちらを選ぶのか?それは聴き手の皆さんの解釈に委ねています」

――<愛が深すぎるから><愛が残ってるから><まだ愛しているから>というフレーズがなかなか情念深いですね。

高見沢「このふたりが未来に向かってどういう決断を下すのか?愛が深くても別れがやってくることもありますし、別れることがバッドエンドとは限らないですから」

――一方、フォーク・ロックな「Circle of Seasons」ですが、歌詞を読み込んでいくと、「ROCKDOM -風に吹かれて-」、「風の時代」、「OVER DRIVE ~ 夢よ急げ」、「友よ人生を語る前に」……ALFEE作品へのオマージュと思わせるワードが散りばめられていますが、これは意図したものでしょうか?

高見沢「意図して作りました。特に「OVER DRIVE ~ 夢よ急げ」などはいまでもライブで歌っていますし」

――こういうマッシュアップというか、過去作の引用というアイデアは以前から温めていたんですか?

高見沢「うーん……どうだったかな?(笑)」

坂崎「おーい!忘れちゃったのかよ!」

桜井「締め切りに追われて出てきたんだよな?」

高見沢「そうとも言えるけど……なんて言うのかな、僕らのなかで、コロナ禍の閉そく感を打ち破ろうっていう気持ちはずっと持っていて。“早く日常を取り戻したい”とか“くよくよしたってしょうがない”っていうのもあるし。誰もが思うことだけど、それを歌にしようとしたときに、自分たちがいままで歌ってきた言葉が浮かんできたんですよね」

坂崎「だから解放感のあるDチューニングなんですよ。オープンコードでサウンドがバーンと広がっていく感じ」

高見沢「Dチューニングなんていまどきやってるのは僕らくらいのもんですから」

――視界がぱっと開ける感じ。ライブ映えしそうですよね。

坂崎「今回は高見沢もレコーディングで久しぶりにアコギを弾いているので、CDの音をライブで再現できるんじゃないかな。そのためにまた新しいアコギを買ったんですよ」

高見沢「あーあ……またギターが増えちゃった(笑)」

坂崎「僕は、自分の曲の歌詞を別の曲に引用するっていうのはジョン・レノンの「グラス・オニオン」で初めて聴いたんだよね。「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」とか「フール・オン・ザ・ヒル」の歌詞が入っていて、面白い手法だなと思っていました。こういう曲があるとファンとしてはその元歌も聴いてみたくなるじゃない?だから「Circle of Seasons」があがってきたとき“高見沢、やるなあ!”と」

――そしてこの曲はメインボーカルがいない。と、いうかトリプルボーカル曲ですね。

坂崎「そう、アタマから最後までずっと三声。THE ALFEEではこの曲を含めて7曲しかないんですよ。オール三声ハモ曲って。「幻夜祭」とか「進化論B」とかプログレ曲と、あとはフォーク時代のレパートリーだから」

高見沢「こういうギターが弾けるのは今や坂崎ぐらいかもね。Dチューニングの奥義を知らないと弾けない」

坂崎「アコギを入れてるバンドって結構いますけど、ストロークが鳴ってるなくらいの感じでしょ。そうじゃなくてギターの木そのものが鳴ってる、箱鳴りしてるっていう音はなかなか録れないですから」

――ふだんメインボーカルを執ることが多い桜井さん的に終始三声ハモはどうでしたか?

桜井「いわれたとおりに自分のパートを歌うことに集中します。それにコロナ禍のレコーディングでボーカル録りもひとりずつ行うのでいつもと変わらないかな。むしろあとで知ったから。“ああ、こんな風に仕上がるんだ!”って(笑)。いや、でもレコーディングの前に、“メジャーコードで全部網羅してるから”って言われて、“えっ!そんなことできるの?”って思いました」

坂崎「できちゃったんだよね。CからCまで全部使ってる。演奏はめんどくさいけどね。CからC#に変化したり」

桜井「俺もそう思ったの。とんでもなくめんどくさそうだなって。でもメロディがスムーズに流れる曲だから、やってみたら“えっ、これでそんなにコードが変わってるの?”って感じだったね」

坂崎「この曲はもちろん秋のツアーでやると思うけど、まだリハもやってないんだよね。どうなることやら……」

――「Circle of Seasons」は北大路欣也さん主演のテレビ東京系ドラマ「記憶捜査 3~新宿東署事件ファイル~」の主題歌です。

高見沢「光栄なことにシーズン2の「Joker -眠らない街-」に引き続き、主題歌に起用していただきました。本当にありがたいことです」

――「Joker -眠らない街-」もコロナ禍以降の作品ですが、2021年7月リリースの「The 2nd Life -第二の選択- 」、『天地創造』のリリースもあったので、1年におおよそ2作のペースで作品をリリースしていることになります。

高見沢「そうですね。逆にコロナ禍になってからのほうが創作のペースが上がってますね」

――高見沢さんが言い続けている「新曲こそが希望である」というモチベーションがさらに加速しているように感じます。

高見沢「そうですね。それはもうバンドとしては次のライブに繋がりますから。実際、「星空のCeremony」もライブを想定して作っていますので、ステージ映えする楽曲だと思います。ファンの方々の新曲を聴きたいという声が多い。その期待応えたいという気持ちが新曲というかたちになって表れているということです」

――「THE ALFEE 2022 Autumn Tour Genesis of New World 秋の天地創造」が10月6日から、12月の「THE ALFEE 2022 Winter Genesis of New World Final 冬の天地創造」は日本武道館の2デイズと大阪城ホール公演が決定しています。ようやく平常営業というか、ツアーのルーティーンを取り戻した感もあります。

高見沢「ありがたいね。でも大変だ」

坂崎「早く練習しなくちゃ」

桜井「毎回この繰り返し。受験勉強みたいなもんだから。まあ、今年は状況が落ち着いてきて、春のツアーがあっての夏イベントだったからそんなに大変に感じませんでした。去年の年末はいきなりの武道館公演だったから。あれはキツかったですね。そういう意味では俺たちの本来のやり方を取り戻しつつあるなと思うけど、いろいろとまだ気を付けなくちゃいけないこともありますから。ステージに立つメンバーも、スタッフも欠けることなくツアーやイベントができて、お客さんもちゃんとルールを守ってくれていることに感謝しなくちゃいけないですね」

――さて今年でデビューから48年。そろそろ50周年のターンが見えてきましたが、お三方ともに淡々としているというか、マラソンでいえば冷静にペースを刻んでいるようにお見受けします。

桜井「そりゃ、40周年も45周年も経験してますからね(笑)」

高見沢「ここにきてじたばたしたってしょうがない」

坂崎「まあ、でも50年ってでかいよな。大きな節目ではありますね」

高見沢「ハーフセンチュリー……半世紀だからな。50年もやると思ってなかっただろ?」

坂崎「20歳からずっとだもんな。70歳だぜ!あまりピンときていないけど(笑)」

高見沢「50年を越えたらまた違う風景が見えると思うし」

――最近の話題としては、お三方にとっての大先輩である加山雄三さん、吉田拓郎さんが第一線から身を引くというニュースもありました。

桜井「加山さんは今年85ですけど、これだけ音楽業界の層が厚いなかで長く現役を続けていたからこそ話題になるわけで、さびしい事ではあるけれど、逆に俺たちなんてまだまだじゃん!って思いますよね」

坂崎「加山さんも拓郎さんも先駆者ですよ。ツアーというフォーマットを日本に持ちこんだり、レコード会社を作ったりもしているわけですから」

高見沢「お二人の前にああいう音楽をやってる人はいなかったんだから。まさにパイオニアですね。俺たちがそういう精神を継承していかなくちゃいけないんだろうね」

――コロナももうすぐ振り切れそうですし、50周年を越えた先のTHE ALFEEが楽しみです。

高見沢「そろそろコンサート会場でみんなの笑い声が聞きたいよ」

坂崎「そう、早くマスク越しじゃない笑顔が見たい!」

桜井「みんなで大声でいっしょに歌える日が来るのもそう遠くないはずだから」

(おわり)

取材・文/高橋 豊(encore)

LIVE INFO

THE ALFEE 2022 Autumn Tour Genesis of New World 秋の天地創造
10月6日(木)サンシティ越谷市民ホール
10月9日(日)宇都宮市文化会館
10月13日(木)よこすか芸術劇場
10月15日(土)東京国際フォーラム ホールA
10月23日(日)静岡市民文化会館
10月27日(木)枚方市総合文化芸術センター
10月28日(金)アクリエひめじ(姫路市文化コンベンションセンター)
11月3日(木)美喜仁桐生文化会館シルクホール(桐生市市民文化会館)
11月5日(土)須坂市文化会館メセナホール
11月8日(火)J:COMホール八王子
11月11日(金)仙台サンプラザホール
11月12日(土)あきた芸術劇場ミルハス
11月16日(水)神奈川県民ホール
11月19日(土)KDDI維新ホール メインホール(山口)
11月20日(日)広島文化学園HBGホール
11月25日(金)福岡サンパレスホテル&ホール
11月26日(土)福岡サンパレスホテル&ホール
11月30日(水)市川市文化会館
12月2日(金)本多の森ホール(石川)
12月10日(土)名古屋国際会議場センチュリーホール
12月11日(日)名古屋国際会議場センチュリーホール

THE ALFEE 2022 Winter Genesis of New World Final 冬の天地創造
12月23日(金)日本武道館
12月24日(土)日本武道館
12月29日(木)大阪城ホール

THE ALFEEオフィシャルサイト

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