7月31日、横浜はみなとみらい地区、ぴあアリーナMMを埋め尽くしたファンの熱気が暑い夏をさらに暑くさせる……心ざわつく真夏の夜。銀河をモチーフに、ドットイメージを絡めたスペーシーな照明が煌めき、高らかなファンファーレが響き渡る。スモークに包まれるセンターステージに桜井 賢、坂崎幸之助、高見沢俊彦が姿を見せる。大きな拍手の中、ゆっくりとメインステージへと歩みだす3人。
オープニングナンバーは、アルバムのタイトル曲にしてイベントタイトルでもある「天地創造」。歌いだしの第一声を聴いて、スクエアで輪郭のはっきりしたボーカルに驚く。もちろん、歌詞の聴き取りやすさが桜井ボーカルの特徴ではあるのだが、アコギのウェットな響きや、シンセの余韻もいつも以上にリアルに感じられるのはなぜだろう?
客席に揺れるグッズのマラカスライト「ミカエルの剣」の光を眺めながら、THE ALFEEにとって、ぴあアリーナMMでの公演はこの「夏の天地創造」が初めてだということに思い当たった。THE ALFEEのツアーでいえば、近しいスケールの会場は日本武道館になるわけだが、やはり音楽専用アリーナとして設えられただけあって、ぴあアリーナは音響設計も優れているのだろう。ステージとの距離感や4階層からなる客席の構造は武道館に似ているのだが、それよりもソリッドですっきりとしたサウンド――音作りの面で、THE ALFEEの3人やバンドメンバー、コンサートスタッフがその点を配慮していないわけがない――がとても新鮮だった。
そんな想像を巡らせていると「メリーアン」のイントロが耳に飛び込んでくる。2曲目に「メリーアン」とは!大胆なセットリストに驚嘆しつつも、桜井の艶やかな歌声、コーラスの美しいリバーブ、間奏のドラマチックなアコギ、エレキのアンサンブルを堪能する。
これぞスイッチボーカルの醍醐味と快哉をあげたくなる「Orionからの招待状」に続けて坂崎が「48年目の夏!そして3年ぶりの横浜でのフェス!みんなはまだ声が出せないので、拍手、手拍子だけが頼り」と客席を煽る。
坂崎のファルセットと咽び泣くギターが呼応する「悲しき墓標」、続いて高見沢ボーカルの「二人のSEASON」。曲中の<好きだぜ>というセリフに客席からは声にならない悲鳴が漏れる。花道をゆっくりと歩いてメインステージへと戻ってゆく高見沢の王子然とした背中が神々しい。さらにドライブ感あふれる「夢よ急げ」と繋げたセットは序盤のハイライトだろう。「夢よ急げ」のポジティブな歌詞を反芻しながら、いつぞやの「気分が暗くなる曲はTHE ALFEEではない」という高見沢の言葉を思い出し、わが意を得たりとひとりうなずいてしまう。
そして恒例(?)のメンバー紹介へ。「ちょい悪オヤジ風の出で立ちでミュージシャンか芸人かギリギリの線」の桜井、「毎回アクリル板に指をぶつける青の貴公子」高見沢、「いちご泥棒プリントの細身のスーツで大きい男の雰囲気を醸そうとした」坂崎。と、センターステージをランウェイに見立てたコミカルなMCに客席が大いに沸く。
坂崎が「ちょっと懐かしい香りがする曲」と告げて「My Life Goes On」へ。センチメンタルなニュアンスの内に力強く人生を歩んでいこうとする意志が秘められたナンバーは、『天地創造』というアルバムに奥行きを与える重要な曲でもある。
一音一音が気高く響き渡った「あなたに贈る愛の歌」でとびきり甘く切ない雰囲気でぴあアリーナを満たしたかと思えば、「星空のディスタンス」では、ドラマチックなピアノイントロからの歌いだしをマイクレスのアカペラで披露してオーディエンスのため息を誘う。奇しくも季節は夏、同じ横浜で行われた――会場は横浜アリーナだったけれど、あのときもやはりセンターステージだった!――2017年の夏フェスタを彷彿させるが、「ミカエルの剣」が放つ無数の青い光がシンクロナイズする様は、よりいっそうオーディエンスとの一体感を生み出していたと言えよう。
曲終わりのMCでは、高見沢が「この曲をやらなかったコンサートがないくらい。1984年のシングルということは38年前の曲だけど、歌い続けているから色褪せないんじゃないかな。そんなTHE ALFEE、10月5日にシングルを出します!バンドの矜持というのはね、少しでも長くやることだと思います」と告げると、それに応えるかのように客席から万雷の拍手が起こる。
さらに「まさかデビュー当時にTHE ALFEEと出会った人も、こんなに長く関わると思わなかったでしょ?でもね、大丈夫です。THE ALFEE銀行は破綻しません。たくさん利子を付けて返しますから。僕らの想いを、僕は曲にして返します。坂崎はコメントにしてラジオから返します。桜井は……お金で?(笑)。これからも僕らの音楽とともにみんなと元気に未来に生きていきたいなと思ってます。そう、真実はひとつ!ずっと音楽をやり続けることです」と、くすぐりを交えつつも真っすぐなステートメントを発し、その言葉を引き継ぐように「My Truth」へ。
ライブ本編終盤、アルバム『天地創造』において80年代テイストのTHE ALFEEを想起させる「Time Machine~恋のS.O.S~」、壮大な組曲形式にしてTHE ALFEE流プログレの新たなベンチマークになり得る「組曲:時の方舟」、そしてシリアスなトーンでライブを締めくくる「明日の鐘」という抑揚あふれるセットは、3人の思いの丈を饒舌に伝えていたと思うし、エンドSEの鐘の音、飛翔する三羽の鳥――桜井、坂崎、高見沢のメタファーに違いない――のドットイメージによる演出にも心をつかまれた。
ALFEEファンには言わずもがな、桜井営業部長のツアーグッズ紹介、はっぴいお祭り三兄弟コーナーといったお遊びの要素も抜群の安定感で笑いを誘っていたし、アンコールを盛り上げた16ビートのレパートリー「Funky Cat」やアンセミックな「SWEAT & TEARS」、高見沢をして「アコースティックとコーラスはTHE ALFEEの原点である」と言わしめた「明日なき暴走の果てに」など3時間を通して感動のシーンが間断なく押し寄せるライブもいよいよ最終盤。
ダブルアンコールのラストはボブ・ディラン「Blowin' in the Wind」から繋いだ「ROCKDOM -風に吹かれて-」。愛おしそうにギターを抱きしめて歌う高見沢の姿を見ながら、そうだ、この曲が歌っている未来に僕らは生きているんだ……そう思わずにはいられない夏の夜だった。
(おわり)
取材・文/高橋 豊(encore)
写真/上飯坂 一
LIVE INFO
THE ALFEE 2022 Autumn Tour Genesis of New World 秋の天地創造
10月6日(木)サンシティ越谷市民ホール
10月9日(日)宇都宮市文化会館
10月13日(木)よこすか芸術劇場
10月15日(土)東京国際フォーラム ホールA
10月23日(日)静岡市民文化会館
10月27日(木)枚方市総合文化芸術センター
10月28日(金)アクリエひめじ(姫路市文化コンベンションセンター)
11月3日(木)美喜仁桐生文化会館シルクホール(桐生市市民文化会館)
11月5日(土)須坂市文化会館メセナホール
11月8日(火)J:COMホール八王子
11月11日(金)仙台サンプラザホール
11月12日(土)あきた芸術劇場ミルハス
11月16日(水)神奈川県民ホール
11月19日(土)KDDI維新ホール メインホール(山口)
11月20日(日)広島文化学園HBGホール
11月25日(金)福岡サンパレスホテル&ホール
11月26日(土)福岡サンパレスホテル&ホール
11月30日(水)市川市文化会館
12月2日(金)本多の森ホール(石川)
12月10日(土)名古屋国際会議場センチュリーホール
12月11日(日)名古屋国際会議場センチュリーホール
THE ALFEE 2022 Winter Genesis of New World Final 冬の天地創造
12月23日(金)日本武道館
12月24日(土)日本武道館
12月29日(木)大阪城ホール
DISC INFOTHE ALFEE「TBA(タイトル未定)」
2022年10月5日(水)発売
初回限定盤A/TYCT-39183/1,100円(税込)
初回限定盤B/TYCT-39184/1,100円(税込)
初回限定盤C/TYCT-39185/1,100円(税込)
通常盤/TYCT-30133/1,100円(税込)
ユニバーサル ミュージック
THE ALFEE『天地創造』
2022年2月23日(水)発売
初回限定盤A(CD+DVD)/TYCT-69230/4,400円(税込)
THE ALFEE『天地創造』
2022年2月23日(水)発売
初回限定盤B(CD+DVD)/TYCT-69231/4,400円(税込)
THE ALFEE『天地創造』
2022年2月23日(水)発売
初回限定盤C(2CD)/TYCT-69232/3,850円(税込)
THE ALFEE『天地創造』
2022年2月23日(水)発売
通常盤(CD)/TYCT-60191/3,300円(税込)
ユニバーサルミュージック