──ベストアルバム『Who am I ?』がリリースされます。何故このタイミングでベストアルバムを制作し始めたのでしょうか?
「これまで、ソロとしてシングルを3枚、CDとしてリリースしましたが、この2年は時代の流れもあり、ストリーミングでのリリースが多かったんです。でも、僕のファンの皆さんは、CDをリリースしたときのリリースイベントで知っていただく機会が多かったので、今だからこそ、手元に残るフィジカル=CDでリリースをしたくて。そして、SNSで僕の名前を知ってもらった今なら、新曲をシングルとしてリリースするのではなく、ベストアルバムがいいと思いました。新曲「男の本音」は、より多くの人に知ってもらえる曲として自信がある曲なので、これまでの曲を含め、一気にまとめて知っていただけるチャンスと思って、ベストアルバムの制作を始めました」
──大規模なホールツアーを開催しながらも、改めてリリースイベントなどで身近に接することが出来るのも、ファンにとってはすごく嬉しい事ですよね。
「そうだと嬉しいです。まさに今、ベストアルバム『Who am I ?』発売記念リリースイベントを全国でしていますが、目に見えてお客さんが増えていることも感じますし、おなじみのファンの方がまた来てくださることも嬉しいです。なので、CDを発売することを決めた価値は既にあったと感じています」
──ファンのみなさんからはどんな反応が届いていますか?
「ライブ会場などの規模が大きくなっていくにつれて、この距離感で話せるイベントはもうないと思っていたらしいです。その不安をしっかり払拭できたのは良かったです」
──そして先ほど自信作とおっしゃっていた新曲「男の本音」は、かなり攻めた曲ですが、“熊本の彼氏”として名をとどろかせている杉本さんにとっては挑戦作だったのではないでしょうか?
「あはは。この1年半くらいかけて、“男の本音”シリーズがSNSの人気コンテンツへと育っていって…。実は、“熊本の彼氏”として、甘い言葉やメロい姿などをSNSで発信し始めた頃は、そこで僕を知ってくれた人が、僕の音楽に触れてくれたらいいなという感覚でした。でも、その“熊本の彼氏”というコンテンツと、僕のアーティスト性があまりにも乖離している気がしていて。そんなときに生まれたこの“男の本音”シリーズは、僕のアーティスト性と紐づけできた曲だと感じました。もともと甘くてメロメロなキャラで売っていくつもりはなかったですし、ファンに対してそういった発言があったとしても、自分の本当の芯と離れすぎるのはどうなのかな?と思って、この曲を作っていました。なので、“僕はこういうことも言うよ”ということも含めて、好きになってくれたら嬉しいです。それに、SNSで僕のことを知ってくれた人たちが、この「男の本音」を聴いたことで賛否を生みながらも、それでも気になってしまうことも大事だと思っていて。攻めないとこの時代は勝ち残れないという戦略も入っています」
──その戦略は、見事にSNSのコメントに表れていましたね。
「“しめしめ”、と思いながら見ています(笑)。自分の価値観をあえて入れることで、そこで議論になったり、アンチコメントが来るたびに、たくさんの人に届いていることを感じています」
──歌詞はとっても攻めていますが、曲としてはすごくキャッチーですね。
「そうなんですよ。歌詞の内容が頭に残ると思いますが、サビはかなりメロディアスに作っていますし、曲のクオリティももちろんこだわっているので、ただバズる曲というところでは収まらないように作っていきました」
──ベストアルバム『Who am I ?』には新曲がもう1曲、「劣等庫」が収録されています。「男の本音」とは全くタイプの異なる曲ですね。
「はい。「男の本音」は1曲目に収録していて、この「劣等庫」はラストに収録しています。「男の本音」は、すでにSNSをしている人なら聴いたことがあるくらい広まっているので、1曲目に収録しているんですが、その後はリリース順に収録していきました。そして、最後の曲を「劣等庫」にしたのは、本当の僕を書いているからです。僕にとっての誰もが知られたくない、弱い部分を描いたのが、この曲です」
──だとすると、この曲の言葉選びはかなり悩んだのではないでしょうか?
「そうですね。「男の本音」や「君とシャンプー」は、バズリに特化した言葉を使用しています。でも、僕が大事にしているのは、等身大の自分…その時に思ったことを書くことです。そうすることで、お客さんたちが明日を生きるエネルギーになると思っていて。もちろん、前向きな歌詞の方が背中を押される場合と、自分よりも辛い人たちを見ることで、“自分も頑張らなくちゃ”と思う人、どちらもいると思います。そういった人間らしさってすごく大事だと思っていて。なので、「劣等庫」では僕はあえて自分が救われない感情…“いろいろわかっているけど、僕は救われていないんだよ”ということをしっかりと書いて、さらに“頑張ろう”という言葉を一切言わないようにしました。ただ、僕の悩みをそのまま描いていたら、5分半を超えてしまって(笑)」
──今の時代、あまりここまで長尺な曲はないですよね。
「はい(笑)。なので、バズることは置いておいて、アーティストとして自分が持っているアイデンティティをしっかりと表現できた曲になりました。実はこのアルバム『Who am I ?』を引っ提げたツアーを7月末に完遂しているんですが、最後の最後まで「劣等庫」を歌うかどうかすごく悩みました。というのも、まだこの感情を自分でコントロールして歌う自信がなかったので、歌としてというよりも、言葉として届けてしまいそうだと思ってしまって…。でも、会場に足を運んでくださったお客さんにとにかく聴いてほしいと思って歌いました。なので、皆さんがどう受け止めてくれたのか、すごく興味深いです」
──そして、このベストアルバム『Who am I ?』には、これまでの代表曲がリアレンジされて多く収録されています。
「過去の曲ほど、リアレンジしたくなるんです。なので、“今だったらこう作るよな”と思いながら作っていきました。昔の曲って、改めて聴き直すとすごくスキルとしても年齢としても若くて。それはそれとして取っておいて、今の自分を表現することがこのアルバムの価値になると思いました。これは僕の持論ですが、過去の曲を聴いたときに、“この時に出会いたかった”と言って欲しいんです。でも、そう言ってくださる人も、5年後にファンになった人たちには羨ましがられる存在になっているってことですよね? それが応援の価値だと思っています。それはお金では買えない、その人の財産だと思うので、過去の曲であればあるほど、リアレンジした曲や原曲を聴いて、いろんなことを想ってもらいたいと思いました」
──そんな想いが詰まったベストアルバムのタイトル『Who am I ?』には、どのような気持ちが込められているのでしょうか?
「このタイトルは、考え始めて2分で出てきました(笑)。『Who am I ?』って、僕が大好きなミュージカル『レ・ミゼラブル』にある曲のタイトルでもあって。その曲は、主人公のジャン・バルジャンが囚人であることを受け入れられない中で、“自分はこう生きている”という、自分を再認識するときに歌う曲ですが、すごくこのアルバムに合っていると思ったんです。僕はSNSで活動しながら、俳優としてドラマや映画に出演させていただいたり、マルチに活動する中で、シンガーソングライターであることを自分に問うため、責任を持つためにこのタイトルにしました」
──杉本さんの想いがものすごく詰まった名刺代わりの1枚になりましたね。
「本当にそう思います。このアルバムをリリースした後も、リリースイベントは続けていきますし、これから始まるツアーでより成長した僕を見せたいと思っています。今年の下半期は、ファンクラブイベントや、男性限定ライブなども予定しているので、今から僕自身もすごくワクワクしています。ぜひ、気になってくれた方は、ライブ会場に来てもらえたら嬉しいです!」
(おわり)
取材・文/吉田可奈
写真/中田智章
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