──今年7月5日に歌手デビュー20周年を迎える心境から聞かせてください。
「“アニソンを歌うこと”がずっと一番の夢のど真ん中でした。それが叶い続けた20周年です。しかも、20周年にまさか新曲をアニメタイアップ…アニソンでリリース! これまで出会ってくれた全ての人、応援してくれた人たちがこんなにもミラクルな未来に、夢の向こう側の新しい夢に、奇跡みたいに、どんどんと星座のように繋げてくれたんだって噛みしめている毎日です。無事に生きて、やめずにしぶとく!」
──あはははは。しぶとくってこともないと思いますよ。
「20周年が本当に嬉しくて。毎日、眠るときも起きるときも、“ああ、二十周年!”ってなっています(笑)。 それくらい幸せを感じています。そして、先日、『中川翔子 20th Anniversary Birthday Live』も2公演、無事やらせていただけた時に、正直、こんなに人生が変わるとは思っていませんでした」
──双子の男児を出産後、初の本格的なワンマンライブとなりました。
「産後復帰後、初めての2回まわしでドキドキしていたんですけど、本当に楽しかったです! やっぱり歌うこととライブとみんなに会えることが一番好きなんだということを全身で再確認できました。それまではかなりボロボロだったんです。長い期間、勢いと若さとノリでやってっきたんだということに気づいて。その全てが違ったんですよ」
──勢いとノリとを奪われてですか?
「気力から体力から全部が底上げするまでのやり方が、これまでとは全部変わりました。すごく大変でしたけど、本番で歌っている時に“うわぁ! 楽しい!”という感覚になれました。歌って宝石ですし、魔法ですし、最高です。歌い続けられた20周年にしてくれた全ての皆さまに本当に感謝です」

──しょこたんは様々なフィールドで活躍していますが、歌手としての20年はどんな日々でしたか? 特に印象に残ってることはありますか?
「歌手デビューした2006年当時は、倖田來未さんのようなバリバリのアーティストさんしかいないような感じだったんです。私は80年代のアイドルみたいにデビューしたいと思っていましたけど、そういうわけにもいかず…。だから、果てしない夢だと思っていたら、ブログ(2004年11月から始めた『しょこたん☆ブログ』が話題になって、“新・ブログの女王”と呼ばれるようになった)のおかげで好きなことを好きと言えるようになって、それからアニソンを歌うという夢が叶いました。当時はまだ自己肯定感という単語がなかったですけど、“引きこもっていたネガティブで自己肯定感の低い私が大丈夫かな?”と思っていたのが、ステージに立って歌い始めると、すごく楽しくて。それこそ、思い描いていたヒーローが変身するような感覚がありました。家にいる私と全然違うんですよ。“人が怖い”と思っていたのに、“歌のおかげでたくさんの人に会えることがこんなに幸せなんだ”とか、光っているペンライトのピンクの色の一つ一つに命があるからこその瞬間なんだと思って。ファーストライブの前日も号泣して、本番直前も泣いていたんですけど、全部が楽しくて。…というのが、もうついさっきみたいです、本当に」
──『中川翔子1stコンサート~貪欲☆まつり~』は2007年10月20日に渋谷C.C.Lemonホールで開催されて、チケットが25秒で即完したこともニュースになりました。
「その翌年に初めての全国ツアーがあって、初ツアーの前にアメリカの『Anime EXPO』でライブをして。全部が初めてすぎて、人生が毎日、毎瞬間、どんどん変わっていく感じでした。バキバキバキって進化していく感じがとても楽しかったです。その時はがむしゃらで若さもあって、“夢って叶うんだ!”という驚きの真っ只中にいる感じでした」

──アニソンを歌うという夢が叶って、その先にはどんな夢が広がっていきましたか?
「私は水木一郎さんにとても可愛がっていただいていて、アニソンは海外でも日本語でそのまま歌っても、世代や国境に関係なく、みんなで“楽しい!”って心からなれるんですよ。“それってアニソンだけなんだよね”ってアニキも仰っていました。本当にそうだと実感しました。自分で作ったヌンチャクで壁に穴を開けた中野の狭い部屋の引きこもりから、アニソンのおかげでいろんな国に行けて、いろんな人に会えて…。やっぱりリリースイベントがとても印象的です。アメリカでは、全ての指に太いキンブレを 2本ずつ持ったお兄さんが信じられない跳躍力でジャンプしていたんですよ。“彼は元気かな?”って思い出したりしますし、見られないはずの景色をたくさんアニソンのおかげで見させていただきました」
──TVアニメ『天元突破グレンラガン』のオープニングテーマ「空色デイズ」をはじめ、様々なアニソンを歌ってきました。
「私の場合は歌手一本ではなくて、バラエティやSNS、絵を描いたり、声のお仕事をしたり、毎日やることが違うくらい、いろんなことで駆け抜けた 20代だったと思うと、アニソンを歌わせてもらえることが当たり前ではなくて。“アニソンシンガーになりたい”と思って、そのアニソンを歌う夢が叶っているのに、“次はもうないかも…”ってビクビクしていました。だから、毎回、“これが最後かも”と思いながらやっていて。だから、夢が叶って嬉しいですし、ファンの皆さんとの一体感もすごく楽しいですけど、自己肯定感が低いままの 20代でした。29歳くらいでTVアニメ『ポケットモンスター XY』のエンディングテーマ「ドリドリ」を歌って、私の鉄板曲になってくれたんですけど、30代になってから少し間が開いちゃって…」
──シングルとしては、TVアニメ『ゾイドワイルド』のエンディングテーマ「blue moon」まで3年も空いています。その間もゲームや映画主題歌などを歌っていますが。
「久しぶりだから“誰も来なかったらどうしよう?”って落ち込んでいたんですけど、みんなが“待ってたよ!”ってリリースイベントに会いに来てくれました。やっぱり歌ってみんなに会える約束の場所なんだということを感じましたし、ポケモンのお姉さん(ポケモンの情報番組『ポケモン☆サンデー』にレギュラー出演)をやっていたこともあって、ライブに来られないような子供たちもたくさん来てくれるようになりました。子供たちが体育座りで待機してくれているんですけど、「タイプ:ワイルド」をリリースした頃は、ステージが始まる前に会場で流れている「ドリドリ」に合わせて、子供たちが我慢できずに歌い始めちゃって。それぞれ全然違うところから来た子供たちの合唱になって、“アニメの力ってすごい!”と実感したり、あと、アニソンではないですけど、松本隆さんから頂いた“歌は30年経っても 40年経っても残る宝石だからね”という言葉がどんどん染みてきて…」
──2008年10月にリリースした7thシングル「綺麗ア・ラ・モード」は作詞・松本隆、作曲・筒美京平という、80年代歌謡曲のゴールデンコンビでした。
「本当に宝物です。歌があったから、こんなに長くお仕事を続けられたんだと思いますし、子供たちの合唱を見たのも34歳くらいかな? 30代になってから、歌のおかげで“生きててよかった”というのが心の口癖になっていました。それってすごいことだと思うんです。だからこそ毎回、“もうこれで最後かも”と思いながらやっているんですけど、特に映画『機動戦士ガンダム:銀灰の幻影』の主題歌「ACOROSS THE WAORLD」(2024年11月)が叶った時は、“本当に悔いなくやりきるぞ! きっと最後かも”と思っていました」
──今、お話に出てきた『ポケモン』や『ガンダム』以外でも、『ドラゴンボール』、『セーラームーン』、『聖闘士星矢』、『墓場鬼太郎』…と、ずっと大好きで、影響を受けたと公言してきた様々な作品に歌手や声優として関わるようになりました。夢が叶い続けた20年でもありますね。
「いや、もう信じられないです。何なんでしょうね? 言霊ってやっぱりあるのかもしれないです。本当に想像も出来なかったことばかりで。だから、不思議なんですけど、それは歌ってきたアニソンたちにすごくポジティブな魔法が詰まっていたのかもしれないです。歌うたびに、そういう魔法が言霊として蓄積してくれていたのかもしれないです。というわりにシングルには、死別の曲や別れの曲も多いですけど。でも、最近は初めて会った方に“小さい頃、聴いていました”と言っていただく声が増えて驚いています。だから、出会ってくれた、会いに来てくれた、歌を聴いてくれた一人一人の想いがちゃんと次につながって、“これが最後”にしないでくれました。みんなが次の夢に連れてきてくれたんだと思います。今回なんて、本当に天変地異のミラクルだと思っていますから!」
──7月5日のデビュー記念日に先行配信される新曲「Twilight Magic」はTVアニメ『黒猫と魔女の教室』第2クールのエンディングテーマになっています。最初に決まった時はどんな感想を抱きましたか?
「まず、真っ先に思ったのが、 20年前の7月5日、デビュー曲「Brilliant Dream」のMV撮影をしていた時に不忍池で黒猫を拾ったことでした」
──ファンにはお馴染みのルナちゃんですね。
「すごく長生きして頑張ってくれたんですけど、その時、少しでも時間がずれていたら出会っていませんでした。不忍池に差し掛かった時に、たくさん人がいる中で、真っ先に私に走ってきて、胸まで登ってきて、離れなくなって。誰かの飼い猫かな?と思ったら、カラスに襲われて逃げてきていたんです。私はまだペーペーでデビューしてすぐだったんですけど、マネージャーさんに“タクシー代を払うから、この子をうちに連れてってください”と頼みました」
──MVの撮影中にですか?
「はい。その日は朝の 4時くらいまで撮影がある予定だったんですけど、まだ午後 3時頃だったかな? 頼んで、そこからうちの子になったんですけど、“20年前に出会ったんだな、ルナと”というのを思い出しました。あと、主人公のスピカちゃんが黒猫になる呪いをかけられたクロード先生のお尻にキスをするっていう…」
──黒猫のお尻にキスをすると、呪いが解けて人間に戻るんですよね?
「私、マミタスをはじめ、いろんな猫のお尻にキスをするというか、猫のお尻を吸うのも普通にやってきたんです。うちの猫たちはみんな、お尻を顔に乗せてくる子たちが多くて。母も祖母もうちは代々、猫吸いは当たり前にやっていました。どうしてうちの一族はこれをやってたんだろう?と思っていたんですけど、“この儀式は呪いを解いていたんだ、魔法だったんだ”ということがやっと腑に落ちたというか。アメリカで取材された時に、“You are cat eating girl!”って言われたこともありました」
──あははは。しょこたんが大口を開けて猫をくわえる写真がありましたね。
「それが海外のサイトでバズってたらしくて、驚かれたことがありました。だから猫への感謝があります。ルナだったり、今まで出会ってきた猫たちが魔法を使って叶えてくれたんだと本気で思っています」
──楽曲を受け取ってどう感じましたか? TeddyLoidさんとは初めてですね。
「初めてです。でも、実はご縁があって。レコーディングで初めてお会いした時に、共通の知り合いの方が母のお店にTeddyさんを何度も連れてきてくれていたことがわかったんです。今をときめくAdoさんの曲(「踊」、「唱」)を始め、世の中のみんなが引きつけられる最新サウンド、しかも世界で引っ張りだこの方がよく書いてくださったと思ったんですけど、“昔からしょこたんにはこういうデジタルポップで可愛い曲が似合うってずっと思っていたんですよ”と言ってくださって、すっごく嬉しかったです。しかも、本当にキラキラの可愛い楽曲で、『Magic Time』(2009年)というアルバムをリリースしたことがあるくらい、夕暮れのあの時間がたまらなく大好きで。なので、皆さんにもぜひ、夕暮れの空がピンクやブルー、紫になる瞬間に「Twilight Magic」を思い出していただきたいです」
──「Twilight Magic」=夕暮れとはしょこたんにとってどんな時間ですか?
「少し切なくなるし、なぜか昔のことを思い出したり…自分の心と対話する時間のような気がするんです。夕暮れの時間が終わると夜になって、バタバタとやることに追われ出してしまいます。でも、少ししかない、あの瞬間に空に見とれて、風の匂いを嗅ぐ。季節によっても色のグラデーションが違いますし、瞬間瞬間で色が変わっていくので、いろんな自分と対話する時間だと思っています。街の灯りも特別にキラキラして、キュンキュンしている時だったら、もうそのことを考える時間ですよね!と思います」
──歌詞はどう捉えましたか? ご自身の心境とも重なる部分ありましたか?
「人生はまさに<螺旋階段>だと私も思います。しんどかったり、回り道かな?と思っても、必ず全部が意味を持って繋がってくるので。ちゃんと一歩ずつ近づいて、ちゃんと未来を開いています。<星座をなぞる>という歌詞もありますけど、歌や出来事が星座みたいに繋がってきたと思っていますし、この歌詞には真理が詰まっている気がします。あと、<くるり回って>や<街の灯りをすり抜けてく>には、すごく“猫み”を感じるんです。尻尾の長い猫が駆け抜けていく感じがします」
──“黒猫”、“星座”、“魔法”、しょこたんとぴったりのモチーフばかりですね。
「ブレずにコツコツずっと好きだった子たちがギュッと詰まっているので、本当に大好きしかないです。しかも、アニメのカヴン(クラス)の仲間たちが個性的で、変で、みんな憎めなくって。ぶっ飛んでいるけど、カッコよくて、可愛くて、ワクワクします。ギャグもあって、すごく見やすいので、どのテンションの時でもすっと入ってきてくれます。とても素敵で面白い作品のエンディングテーマです。最新のデジタルキラキラですけど、80年代のアニメのエンディング曲にあった、少し切ないような持ち味すらもあるような気がしています」
──アニメの絵についたのは見ましたか。
「仮の絵は見させていただきました。デフォルメキャラになっていて、エンディングの可愛さがあって! ピンクの髪のハーフツインのスピカちゃんがすごく可愛くて、ツボでしかないです。この可愛い曲が誰かの心の思い出になってくれたらいいな。いつかまた、夕暮れの宵の明星が光っている頃とかにふっと思い出したりしてもらえるような、そんな素敵な魔法のような思い出の曲になれるように歌っていきたいです」
──“アニソンを歌う”という夢がまた続いていますね。
「“また歌えたらいいな”と思っていましたけど、“本当に歌えるなんて!”というビックリが続いている中だったんですけど、Teddyさんが“昔から絶対にこういう曲似合うと思っていたんだ”と言ってくれたことが、私の中で、クロード先生がかけてくれた魔法みたいにしっくりきて。20代の頃の自信がなかった私は“歌手です”って言えなかったんですよ。だけど、今回はちゃんと“アニソンシンガーです!”って胸を張って、思いきり歌えます。20年かかりました。あはははは」
──20年前は“アニソンシンガー”という言葉もなかったですから。
「なかったですよね。黎明期は過ぎましたよね。アニキやレジェンドたちがテレビ漫画と言われた頃から開拓して、耕して、世界にも道を開いてくれて。私、芸能界に入るとは思っていなかったんです。それよりも“アニソンを歌う人になりたい”というのが最初からずっと夢としてありました。どうやったらなれるかがわからなかったですけど…うん、叶いました。あの日の自分と“叶ったんだよ。夢じゃないんだよ。でも、魔法みたいだね”って喋りたいです。本当に20年後も歌えていると思っていなかったです」

──デビュー 20周年の記念日に「Twilight Magic」が配信リリースされますが、ここから先はどう考えていますか?
「正直にいうと、双子が宿って、体が変わって、“もう歌えなかったらどうしよう”って考えてたんです。こんなことになるって聞いていなかったので知らなかったんですけど、双子だとお腹が大きくなりすぎて、横隔膜と肺が押し潰されて、声がしゃがれちゃったんです。カスカスでしばらく全然治らなくて…。体重も 30キロくらい増えてしまって。もう魔人ブウみたいな感じでした」
──あははは。女性アーティストの方は、10代の頃から歌うことで作ってきた腹筋や喉の筋肉が出産後にリセットされてゼロに戻るって言いますね。
「うわ! 先輩たちに話を聞きたいです。あと、マミーブレインという症状もあって。物忘れが多くなるというのは聞いたことがありました。人の名前が出てこないとかならまだわかるんですけど、バースデーライブの前に水戸でライブがあって。まだ産後そんなに時間も経っていないから“大丈夫かな?”と思いながら、相当、備えて行ったんです。無事にライブができて、声も出てよかったと思って。で、“最後の曲、聴いてください。「空色デイズ」”と言ったら、私の人生で一番繰り返し歌ってきた「空色デイズ」の音程が 1つもわからなくなってしまったんです。“え、なにこれ?”と思っていたら終わってしまったから、“もう一回歌わせてください”と言って。お客さんは“イエーイ!”って言ってくれたんですけど…」
──歌詞が飛ぶのではなくて?
「音程がわかんなくなりました。恐ろしいですよね。あと、体重がやっと 25キロくらい落ちてきたんですけど、それにしても、こんなに人間って膨らんだりしぼんだりできるんだなって。セルの自爆寸前みたいになったんですよ、本当に(笑)。だから、もうダメかと思いました。でも、そんなことなくて。“なんとかなるし、なんとかする”ということを思いますし、やっぱりライブです。これまで人生を共にしてきた皆さんと、これからも時を重ねていきたいですし、“絶対にやりたい”でも、それは当たり前のことではなくて。そのためにもライブを続けられる自分になりたいです。ちょうど昨日、南野陽子さんの40周年のライブに行ったんですよ」
──しょこたんの倍ですね。
「信じられないです。もうレジェンドすぎます。30周年の時に“20数年ぶりにライブをした”とおっしゃっていたんですけど、“それが楽しすぎて、40周年は 10本くらいライブをした”とおっしゃっていて。すごくかっこいいです。そして、やっぱり好きな曲が来ると、“うおー!”ってなる、あの感じ。ずっと綺麗で可愛くて、いろんな衣装を着てくれて。その中で親衛隊の方が“歌い続けてくれてありがとう!”と叫んでいました。その気持ち…私も誰かにそう思ってもらえるように歌い続けたいです。人生って本当に何が起きるかわからないですし、続けられることが奇跡ですけど、それでもその奇跡を願っています。そして、応援してくれるみんなが次の魔法をかけてくれたからここまで来れたと思っているので、これまでを抱きしめながら、まだ気が早いですけど、また次のアニソンに出会えるように頑張ります!」
(おわり)
取材・文/永堀アツオ
写真/中田智章
RELEASE INFROMATION
中川翔子「Twilight Magic」
2026年9月9日(水)発売
完全生産限定盤/SRCL-13707~13708/11,000円(税込)
通常盤/SRCL-13709/1,400円(税込)






