──現在も上演中のミュージカル『レ・ミゼラブル』は、ご⾃⾝のアーティスト活動にとって、どんな経験になっていますか︖

「本当に歴史のある有名な作品なので、その舞台に⾃分がエポニーヌという役でもそうですし、アンサンブルでも出演させていただいていて…“やっぱりすごい作品だな”って、⾃分が舞台に⽴って⾝に沁みて感じています。とても⼤きな経験をさせていただいています。それと同時に、“今の時代に『レ・ミゼラブル』っていう作品を観たお客さんがどんなことを感じるのか︖”と、そういうふうなことを踏まえながら舞台に⽴てている⾃分が誇らしいなと思いますね。…うん、誇らしいです、⾃分が」

──夢が叶ったという実感や達成感はありましたか︖

「実はエポニーヌとしてステージに⽴っているという実感はやっている時はほとんどないんですよ。毎公演、お芝居が変わりますし、⽬の前のことに必死です。本番中も袖にはけたら、⼀⽣懸命に台本を⾒ながら時系列を整理して…。考えながら演じるタイプなんですけど、ステージに⽴った時は、“清⽔美依紗がエポニーヌを演じているんだ“とは思わずに、その世界の中のことだけに集中しています。”エポニーヌだったらどう動いて、どんな仕草をして、何を思うのか︖“…そういう部分をずっと考えながらやっているので、公演中は実感がないんですけど、カーテンコールでお辞儀をしたときに、”あ、今⽇、エポニーヌとして⽣きたな“ってなります」

──そんな中で新曲「Finale」がリリースされました。まず、2作連続でドラマの主題歌オープニングテーマってことに対しては清⽔さんはどんな感想を抱きましたか︖

「本当にありがたいです。いろんなご縁でタイアップが決まって。⾃分の楽曲がいろんな⼈に届くっていうのはすごくありがたいことですし、いつも⼤切に歌おうと思っています」

──前作「TipTap」はYou Tube再⽣回数360万回を突破しました。

「すごい︕ 記録を更新しましたね。たまたま⼊ったカフェでUSENで流れているのを⽿にしたこともあって。ドラマがすごく⾯⽩かったのもあって、たくさんの⼈に知ってもらえたんだなって思います。嬉しいです︕」

──ドラマ『全領域異常解決室』からきたドラマファンも多かったですね。

「すごく嬉しいことですよね。私も夢中で観ていました。思いがけない展開にびっくりしましたし、“映画をやらないかな︖”ってちょっと期待しちゃうような終わり⽅だったので、続きがあるといいなぁ…(笑)なんて思っています」

──そして、新曲「Finale」はドラマ『家政婦クロミは腐った家族を許さない』の主題歌です。原作や脚本などは読まれましたか︖

「原作の漫画を読ませていただいて、怖かった…とても怖かったです。クロミはきっと純粋なんだろうけど、彼⼥が抱える過去によって、すごく狂気的になってしまっていて。客観的に感じたことなんですけど…本当にかわいそうな⼦だなって感じました。「Finale」はクロミ⽬線で書いてもらったんですけど、すごく原作に寄り添った歌詞だと思いました。ダークという意味では「TipTap」と⼀緒ですけど、また全く違うような曲になっていて。すごくわくわくしたのを覚えていますし、クロミの気持ちに寄り添って歌おうと思っていました」

──おっしゃる通り、理想の家族を作る為なら⼿段を選ばない家政婦・クロミの⼼境に寄り添った、クロミ⽬線の曲になっていますね。

「すごくリスペクトを感じますし、歌詞も「TipTap」以上に攻めていますよね。歌い出しから<腐った果実は/移るからもう捨てましょう>ですから。クロミが⾔いそうだなって思いました。純粋さゆえの狂気的な歌詞が怖いですし、ドラマを⾒た⽅は“あ、わかる︕”って感じてもらえると思います」

──サウンド的には受け取ってどう感じましたか︖ 前作「TipTap」は初となるスインギンなジャズナンバーでしたが、「Finale」はミステリアスでスリリングなダークなR&B です。更なるチャレンジをどう捉えていますか︖

「すごく⼤変でした。正直なこと⾔うと、次は何が来るのか、いつどんな楽曲が来るのかが本当にわからないんです。今回もタイアップで、コンセプトもはっきりしていて。「TipTap」のときもそうでしたけど、コンセプトに合わせて楽曲を作っていただいて、そのコンセプトにそれずに歌で表現することを⼤事にしたくて。だから、毎回毎回、来る楽曲に⽴ち向かっている感じはすごくあります」

──「Finale」は独り⾔のようなウィスパーっぽい部分と、狂気的な強さを感じる部分が1曲の中で共存している、とてもダイナミックな歌唱になっていますね。

「そうですね。メリハリをはっきりつけたかったんです。全部同じ声ではなくて、メリハリをはっきりつけることで、フィナーレ感が出るかな︖って思って。だから、「Finale」では“繊細さ”と“⼒強さ”をはっきり分けた歌い⽅をしています。クロミの純粋な部分と、クロミを他⼈から⾒たときの部分。クロミはとてもどす⿊いものを持っているから、その⿊さを⼒強さに変えています。AメロBメロとサビとの違いを出すのが難しかったです。レコーディングのときも、本当にニュアンスが難しくて…。その純粋っていうものをどう声で表現するのか︖ ただ透明感をつけて歌うだけもちょっと違いますし、⾊っぽくなっても違う…本当にいろいろ試しました。何度も歌詞を繰り返して、いろんなニュアンスを試して、作曲をしてくださったMitsu.Jさんと話し合いながらレコーディングしました」

──いろいろ試した中で、何か⾒つかったものってありましたか︖ パブリックイメージとしては、ディズニープリンセスの「Starting Now 〜新しい私へ」も歌っているので、明るくハッピーな⽅なのかなと思うんですが…。

「でも、明るい楽曲を歌っているときより、こういうダークな曲を歌っているときの⽅が、意外と⾃分の声のアイデアがいっぱい出るんだ︕︖って気づきました」

──何かイメージしたことってありますか︖

「⾃分のとても暗い部分です。誰しも⼆⾯性があって、ピュアな⼈でも、それとは逆の感情を持っていることもある。そういう感情にすごく素直になって、⾃分の暗い部分だったり、この楽曲に関しては正義感っていうものを重ねて歌ったりしました」

──そんな部分もあるんですよね。

「ありますあります︕ プライベートで⼈と話すときは、むしろ話せないっていうか…緊張してしまうんです。暗いというよりかは、恥ずかしがり屋なんですかね︖ こうやって取材でたくさん話している⾃分もいるのに、プライベートで話せない⾃分もいたりして。“どれが本当の私なんだろう︖“って感じることがあります。でも、それは誰しもきっとあると思うんですよ。話す相⼿によって、微妙に⾃分の性格が変わるとか。その全部が⾃分だなって思います」

──「Finale」では⾃分の暗い部分と結びつけながら、いろんなアイディアを出していたのでしょうか︖

「そうですね。なので、楽しかったです。こういう職業だからこそ、表現として出していけるのですごく⾯⽩かったです。楽しかったです」

──さらに、例えば、エポニーヌとして感じたことも経験として刻まれていくわけですよね。

「役や楽曲から、⾃分の声や感情の発⾒はすごくたくさんあります。公演が終わったあとは、感情をすごく敏感に受け取ったり、エネルギーを出したりしているから本当にどっと疲れるんです。しかも、毎回、いろんな感情になっていて。エポニーヌっていうキャラクターでも嬉しいとか、恥ずかしいとか、そういう感情もあっていいんだって。そういう⼆⾯性を感じるので、役からもそうですけど、こういう楽曲からもいろんな発⾒や気づきがあります」

──クロミからもありましたか︖

「クロミはあるかな〜(笑)。キャラクターとして、ちょっと突き抜け過ぎてますからね。⾒ていて、気持ちいいっていう⽅が強いかな︖ 正義感を満たされるというか、“間違っているよ”っていうものをはっきりバッサリいくのでカッコいいと思います」

──「Finale」から始まるドラマはご覧になりましたか︖

「⾒ました︕ やっぱり嬉しかったです。これはもう、毎回ですけど、“本当に歌⼿をやっていてよかった︕“って感じる瞬間でした。いつ流れるんだろう︖って楽しみにしながら、初回の放送を⾒て。実際に”流れた︕“って瞬間が本当に嬉しくて。楽曲はその作品の世界観を作る1つだと思いますし、作品の⼀部になれて嬉しいです」

──このインタビュー時はまだ1話の放送後ですが、ドラマの感想も聞かせてください。

「本当に原作漫画の通りに進んでいっていて。漫画もかなり⾯⽩い展開なんですけど、まだ完結していないんです。ドラマはどうなるんだろう︖…30分しかないので、“もっと⾒たい︕”っていうもどかしさで終わっちゃいました。でも、漫画を読んでいるので、これからどうなっていくのかって知っている状態で。2話の予告を⾒て、“先⽣が絶対に悪だな”ってわかるような悪そうな顔をしていましたね。あと、クロミ役の関⽔さんって、別の作品を⾒たときはすごくピュアなプリンセスの役をやっていたんです。すごく純粋そうな⽅がクロミのような役をやっていらっしゃるのってすごく怖いなって思いました。こういう役もできるのが素晴らしいですし、キャスティングも⾯⽩くて、続きが楽しみです」

──ドラマとは別に「Finale」のMV も制作されていますか︖

「撮りました︕ MV もなかなか怖かったです。マネキンを使ったミュージックビデオを撮りました。撮影をしている時は、“マネキンに向かって歌っているのが⾯⽩いな“って感じだったんですけど、映像で⾒るとかなり怖くて。もう本当にクロミ⽬線です。⾃分がクロミだっていうふうには思わなかったですけど、クロミを代弁しています。⾃分で”こういう表情をするんだ︖“とか、”こういう動きができるんだ︕“とか、いろいろ新しい発⾒もあって、すごく満⾜しています。表情や絵の雰囲気でダークさを前⾯に出していますし、「TipTap」とも違うミュージックビデオになっているので、楽しんでいただきたいです」

──あと、ドラマは“理想の家族”がテーマになっていますが、清⽔さんにとっては理想の家族像はどんなものですか︖

「親が共働きだったので、すごく仲良かったんですけど、どっちも仕事で、夜ご飯を⼀緒に⾷べれないことが多くて。私、双⼦なので、双⼦のお兄ちゃんとおばあちゃんと3⼈でご飯を⾷べることが多かったんです。だから、⾃分に家族ができたときは、みんなで⾷事をしたいです。全然なかったわけではないんですけどね。料理が好きなので、⾃分が料理をして、家族みんなが“美味しい︕”って⾷べてくれるのが理想です」

──⼩さい頃は寂しさも感じていたんですか︖

「そうですね。でも、20歳を過ぎて、ニューヨークで1⼈暮らしたときに、いろいろ気づくことがありました。⼤きくなるにつれて、いろんな寂しさの中にも愛を発⾒するなって感じました。お⽗さんはもう亡くなっちゃったので、(空に向かって)“ありがとう︕”って気持ちですし、お⺟さんにも感謝を伝えるようにしています。ここ数年で、いつも“ありがとう”って伝えていますし、ほぼ毎⽇、電話もしています」

──今は家族はどんな存在になっていますか︖

「⽀えてもらっていたけど、今はもう⽀えていかなきゃいけないなっていう存在になりました。⾃分の夢を追いかけていたとき、お⽗さんは“⾃分のやりたいことをやりな”って背中を押してくれたんですけど、お⺟さんはとても厳しかったので、こういう業界を⽬指したいって⾔ったときはなかなか許してもらえなかったんです。でも、すごく⽀えてもらったので、今度は⾃分が⽀えたいって思います」

──ちなみにご⾃⾝ではどんな料理を︖

「私、結構いろんな料理を作るんですよ。この間は、お⺟さんに教わって、アドボっていうお酢を使ったフィリピン料理を作りました。フィリピンはお酢を使った料理が多いんですよ。あとは、スパイスカレーとか、ダイエットのときはシチュー⾵の野菜スープみたいな⾖乳クリームスープとか。クッキーやベーグル、ブラウニー、タルトとか、お菓⼦もつくります。バナナケーキを作ったこともありますけど、最近は忙しくて全然作れていないです」

──なんだかあったかい気持ちになりました︕ 『全決』も『クロミ』も2作連続でどんどん⼈の命が奪われていくミステリードラマでもあるので…。

「本当ですよね。舞台では『レ・ミゼラブル』で毎回、短い⽣涯を閉じていますし。でも、⽣と死を感じるのは、⼈間味があっていいです。だからこそ、そういう作品に出会うと、“⽣きてるっていいな”って思いますし、⽣きていたら何が起きても何とかなるだろうっていう気持ちになります。今やっている役(エポニーヌ)もそうですし、クロミもそうですし。実際にクロミのような⼈がいたら怖いですけど、⾃分が正義だって思っていて、仮に⾃分がこういう⼈を罰したいと思っていたとしたら、その作品の中で罰してくれるからすっきりするじゃないですか。だから、フィクションってすごく⽇常に⼤事なものだって感じます」

──では、オープニングテーマと共にドラマを楽しみにしてる⽅達にメッセージをお願いします。

「クロミの⽣きざまを堪能してもらいたいです。彼⼥は本当にすごいので(笑)。掃除も料理もなんでもきちんと全部できるのに、“この⼈は駄⽬だ”と思ったらすぐに復讐に取りかかる素早さがあって。クロミもそうですけど、周りのキャラクターたちも⼈間味があってまた⾯⽩いんです。そういう⼈間っていう部分を、ぜひ堪能してもらいたいです」

──そして、先⽇、不朽のミュージカル『ウィキッド』を映画化した『ウィキッド ふたりの魔⼥』の⽇本語吹き替え版で、アリアナ・グランデ演じるグリンダを演じることが発表されました。アリアナちゃんは清⽔さんの憧れの⼈ですよね︖

「そうです︕ それに、この役はアリアナが熱望していた役でもあるんです。⾳楽活動もほとんどせずに取り組んだ、それぐらい思いがある役でもあったので、”絶対にやりたい︕”って思っていたんです。そしたら、オーディションに合格して、すごく驚きました」

──⽇本語歌唱もされいてますが、3⽉7⽇から全国公開されますね。アカデミー賞10 部⾨にノミネートされているので、かなり話題となりそうです。

「グリンダは私⾃⾝とは全然違うキャラクターなんです。天真爛漫だし、ちょっとお⾺⿅さんですし。思ったことをポンポンと悪気なく⾔っちゃうんですけど、相⼿をちょっと傷ついちゃうっていう、ちょっと天然な役。⾃分とは全然逆のキャラクターをやるっていうのはすごくやっぱり楽しいです」

──さらに、5⽉からミュージカル『ビートルジュース』の再演が決定が発表されました。今回は11 代⽬ピーター・パンを務めた⼭﨑玲奈さんとのダブルキャストですね。

「⽇本版初演でも私が演じたリディアっていう⼥の⼦は14歳とか15歳の役で、レナちゃんは今、18歳なので、実年齢に近い10代の⼥の⼦が演じることで、私もきっと刺激になりますし、全く違うリディアが⽣まれるんだって思うと、本当に今から楽しみです。主演のビートルジュースは変わらずにジェシーさんなので、今年もきっとかましてくれるはずです。毎回毎回全然違うことをしてくるのでずっと⾯⽩いんです︕」

──福⽥雄⼀さん演出ということはコメディ要素が多めですよね︖ 『レミゼ』からすごいギャップがありますね。

「でも、リディアも暗い役なんですよ(笑)。⼀番真⾯⽬なので、私がボケたりすることはないですし、アドリブを⼊れることもほとんどなかったです。ただ、ジェシーさんやアダム役の勝地涼さんのアドリブに反応するのが⼤変でした。今年はもっともっとパワーアップして、役作りの部分でもきっと発⾒が多いと思います」

──⼤変な忙しさになりそうですが、アーティストとしては、2025年をどんな1年にしたいですか︖

「とにかくいろんな楽曲に出会って、いろんな影響を受けて、⾃分も楽曲を書いて、それをリリースしたいです。本当にここ数年でたくさんのジャンルの楽曲を歌ってきたので、引き出しっていうものはきっと増えたと思うんです。だから、今度は⾃分の経験や感情を⾃分で書きたいです。役や作品ではなく、⾃分⾃⾝をどんどん出したいです︕」

──ご⾃⾝の⼼境を投影した曲を⾃分で作って出したい︖

「そうですね。⾃分で作詞作曲した曲は、また違う愛情が⽣まれますよね、きっと。⾃分が書いているから等⾝⼤ですし、⾃分が“今こう思ってるんだ”とか、“こういうふうに⽣きてるんだ”とか、⾃分の楽曲で改めて再認識することもあるでしょうし。⾃分でどんどん書いていきたいですし、実際、本当に書いているので、どこかでリリースできるように頑張ります︕」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/野﨑 慧嗣

RELEASE INFROMATION

清⽔美依紗「Finale」

2025年1⽉11⽇(⽔)配信

Streaming & DL

ミュージカル情報

ミュージカル『レ・ミゼラブル』︓エポニーヌ役として出演︕
帝劇公演︓2024年12⽉20⽇(⾦)本初⽇〜2025年2⽉7⽇(⾦)千穐楽
全国ツアー公演︓2025年3⽉〜6⽉ ⼤阪・福岡・⻑野・北海道・群⾺

ミュージカル『ビートルジュース』︓再演決定︕リディア役として出演︕
2025年5⽉ 東京 ⽇⽣劇場
2025年6⽉ ⼤阪 新歌舞伎座

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