──先日、FIFAワールドカップの日本対オランダ戦を、後輩たちと共に観戦する姿をSNSにアップされていらっしゃいましたね。

「はい。会社で見ていました。撮影もしたかったので、それも込みで“パブリックビューイング的なことをやりますよ!”とアナウンスして集まってくれたのが彼らでした。あまり絡んだことがない子たちばかりだったので、朝から集まってもらって申し訳なかったですけど(笑)」

──大半がNEO EXILEのメンバーで、意外な組み合わせだと感じたので経緯を伺って納得しました。仲良くなれましたか?

「もう少しゆっくり話せたら良かったと思うんですけど…集まってすぐ試合が始まって、試合だけ見てすぐ解散だったので。申し訳なかったです。今度菓子折りを持って会いにいこうと思っています(笑)」

──これからの交流に期待ですね。

──少し遡りまして、日本公演も含むアジアツアー『Takanori Iwata ASIA TOUR 2025-2026 "SPACE COWBOY"』を昨年11月から今年の3月まで開催されましたが、完走された心境をお聞かせください。

「本当に新しく経験する刺激的なことばかりで、やるべきこと、今後やっていくべき活動が明確化された感じがしました」

──“ツアーを経て別人のようになった感覚だ”ということもおっしゃっていました。どのような経験がそう感じさせたのでしょうか?

「ライブはすごく盛り上がりましたし、楽しく終われそうだったんです。だけどツアー期間中に海外のアーティストと会ったり、海外のメディアに出たりしたことで気づきがありました。今まではライブがゴールだと思っていたんです。曲を作って、アルバムをリリースして、ツアーをして、来ていただいたファンの皆さんに僕のパフォーマンスを届けるのがゴールだと。でもそこだけがゴールではないということに気づいて。そしたら“もっと音楽を聴いてほしい”と思ったんです」

──岩田さんのゴールが変わったんですね。

「はい。だからそのためにも音楽性をもっと追求して、迷いを無くしたいと思いました。だから今回からアーティスト名も変えたんです」

──GAN (岩田剛典)に。

「“GANさんです”、“どうもGANです”というやりとりが少し恥ずかしいので、日本では“岩田剛典”として活動しますが、海外では“GAN”になります。と言うのも、まず海外では“岩田剛典”にしろ“Takanori Iwata”にしろ長くて覚えづらいようで…だから短いアーティスト名にしたくて。ダンサーネームでもあって馴染みのある“ガン”にしました。“GAN (岩田剛典)”と英語表記を前にしたのは、僕の覚悟の表れです。でも日本を捨てたわけではもちろんないということは伝えておきたいです」

──なるほど。

──ちなみに“ライブがゴールではない”、“音楽が広まってほしい”と思うようになったのは、海外でのどのような経験からだったのでしょうか?

「それは韓国での出来事です。知り合いも含めた芸能関係の集まりがあって、食事に行ったあと、その中の1人の家で飲み直すことになりました。僕以外は全員韓国人で、韓国語が飛び交う中、仲間が僕を“ジャニーズスーパースター”と紹介してくれたんです。そこから“歌ってくれよ”という流れになって…“マイクもあるからYouTubeで好きな曲を入れて!”と。そこで、ものすごく悩んだんです。ファンの前ではなく、僕の前情報もない韓国の業界人の前で、しかも有名な俳優さんやトラックメーカーもいる場で歌うことを。つまり“ジャッジされる”と感じました」

──お話を聞いているだけでも緊張します。

「そうですよね。“この一瞬でジャッジされる”と思ったら、ライブよりも怖かったです。そこで“どの曲を歌うか?”と絞り出したのが、僕のソロ「MVP」のMVでした。そしたら盛り上がってくれて、“ダンスもカッコいいね”と言ってもらえて、一安心でした。これは僕の中ですごく大きな経験で…百聞は一見にしかず、というか。日本で16年走り続けてきましたけど、海外に行けば何者でもないんだと改めて突きつけられた感覚でした。本当に大きな出来事でした」

──すごい経験ですね。と同時に、お話を伺って腑に落ちました。今回のシングルの表題曲が2曲とも強めのヒップホップチューンで、昨年末にリリースされたアルバム『SPACE COWBOY』にも「CROWN」が収録されていたりと、ソロ活動を始めた頃とは音楽性がかなり変わってきていて…岩田さんの中で、やりたい音楽性が確立してきたのかな?と感じていたので。

「そうなんです。5年前にソロデビューしたときは、振り返るとLDHの中でのソロ活動しか見えていなかったと思います。僕の前にソロ活動をしていたのは、EXILE ATSUSHIさん、EXILE TAKAHIROさんや、EXILE SHOKICHIさん、EXILE NESMITHさん、あとは三代目の登坂(ØMI)、今市、ELLY。皆さんは若い頃からたくさん歌って、歌のスキルを磨いて、オーディションを受けて合格にした方々ですよね。そういう方のソロ活動はやっぱりそういうルーツをベースにしたものになります。だから僕もソロデビューしたときに、自然とそこをなぞっていた気がするんです」

──なるほど。

「僕のアイデンティティは、俳優やシンガーの前にダンサーです。ボーカリストと同じ音楽性ではないのに…。だからプライベートで“お前、誰なの?”と言われたときに、自分で“俺、誰なの?”って自分で思う瞬間がやってきたんです。そのときに、“俺はもっともっと突き詰めないといけない”と思いました」

──音楽性を突き詰めることを決心して、聴く音楽は変わりましたか?

「いえ、聴く音楽はずっと変わっていないです。ダンサーの頃からヒップホップが好きで、ヒップホップしか聴いてきませんでした。ロックも通っていませんし、ヒップホップ一筋だったのに、ソロでは王道のJ-POPやキラキラした楽曲をやっていました。でも勘違いしてほしくないのは、それがそのときやりたいことだったということ。“面白い”と思って全力でやっていましたし、“やりたくないことをやらされていた”という瞬間は一度もありません。そういう意味では、“やりたいことが変わってきた”ということなんです、良くも悪くも。だからデビュー当時からついてくださっているファンの方は“どうしてこんなに変わるの?”と思っているかもしれないですが、受け入れてもらえると嬉しいです。そして間違いなく言えるのは“今、やっている僕の音楽はどこにでも出せる、どこにでも聴かせられるという自信があるものだ”ということです」

──変わったと言っても、それこそ「MVP」や「CROWN」があって、徐々に移り変わっていっている感じはしますよね?

「確かに」

──そんな中で両A面シングル「Who's Next / RISE NOW」がリリースされました。表題曲の一つ「Who's Next」はどういったところからできた曲なのでしょうか?

「リリースのことは考えず、信頼しているトラックメーカーと2人で“次の動き出しに使える曲を作りたいね”と言ってスタジオに入って作った曲です。そこで僕のルーツを掘り下げていきました。僕はミッシー・エリオットやファット・ジョー、チンギーなど2000年代初頭のヒップホップを聴いてきたので、その当時の音を2026年にやると、知っている人は“うわ!”となるだろうし、当時を知らない人には聴いたことのないテイストの曲になります。要は“玄人ウケするかな?”と思って、そのあたりの楽曲を目指しました。それと『KCON JAPAN 2026』の出演が決まっていたので、そこでかませる曲にしようとも考えていました。だから、どういうステージングにするか?ということを年明けくらいからずっと考えていました。なんなら去年の冬からかもしれません。とにかく“僕の思うカッコいいはこれだ!”と言えるような、すごくカッコいい曲を作りたかったんです」

──タイトルからも意気込みを感じますが、どのような想いで楽曲やステージを作っていったのでしょうか?

「『KCON』でパフォーマンスするという1つ目のゴールが決まっていたので、初めて見る人にも“こいつは何者だ!?”と思わせるパンチを出すことを考えていました。そのために衣装や演出、ダンサーの人数なども相当考え抜いたステージにしました。結果、演説台みたいなところからスタートして、初披露だから本来は顔を売った方がいいのに、サングラスをして帽子を被って。パフォーマンスと音楽で勝負しているということを見せたかったので、ニコパチもなしにしました。実は今までそういう葛藤もあったので」

──“顔で評価されたくない”という岩田さんなりの葛藤なのでしょうか?

「“見られたくない”というわけではないですが、“違う見せ方をしたい”という感じです。そういうことも含めて、自分の音楽を表現できたのが「Who's Next」です」

──この曲の振り付けはRIEHATAさんです。KCONのステージもRIEHATAさんと一緒に考えられたのでしょうか?

「はい。“RIEしかいない”と思いました。『HIP POP Princess』のプロデューサーを一緒にやっていて関係性もありますし、今年1発目にメディアに出ていくためのカッコいい曲ができたので、さらにパフォーマンスで良くしたいと思って話をさせてもらいました」

──前回の「CROWN」でのRIEHATAさんのコレオとは違って、今回はニュースクールっぽいヒップホップです。岩田さんからは何かオーダーをされたのでしょうか?

「「Who’s Next」にはオマリオンのいたB2Kっぽい、あの時代の楽曲のフレーバーがあるので、コレオもあの感じを出したいと思いました。やっていること自体はシンプルなんですけど、みんなで揃うとカッコいい、みたいな。ニュアンスよりもスキルフルに見せることをコンセプトに作ってもらいました。そしたらさすがのクオリティで! その分カッコよく踊るのには苦労しましたけど(笑)。デビュー当時くらいすごく練習しました」

──実際、『KCON』でのステージの手応えはいかがでしたか?

「自分のやりたいことを完全に出しきれました。後悔は全くないです。あとは、これが次に繋がれば良いと思っています」

──“ダンサーを何人入れるか?”というところも頭を悩ませたとおっしゃっていましたが、大所帯のステージでしたね。

「ほんとうに。僕の人生の中でも1番張るところだと思ったので。“プロモーションだと思って割り切りましょう!”という感じでした」

──それだけ岩田さんにとって意味のあるステージだったんですね。

LDHで『KCON』に出た人って1人もいないですから」

──もう一つの表題曲「RISE NOW」はレノボ・ジャパン合同会社によるFIFA World Cup 2026™に向けた日本独自キャンペーン「技術がゲームを変える。」の新TVCM「技術がゲームを変える。」篇のCMソングです。それこそ後輩たちとのサッカー観戦時にも流れたと思いますが、この曲は書き下ろしですか?

「完全にCMのために書き下ろしました。だからもちろん企業の要望もありましたけど、自分のエゴと企業が求めるもののバランスをうまく活かせたと思います。僕の中では、“サッカー=「FANTASISTA」”なんです。だけど僕のルーツにロックはないので、“じゃあ、自分のルーツにあるもので近しいものはないかな?”と思って、カニエ・ウェストの「Jesus Walks」や、カニエ・ウェストとTy Dolla $ignの「CARNIVAL (feat. Rich The Kid, Playboi Carti)」をイメージしました。アンセム感もありながらヒップホップの世界観もあるような曲にしました」

──ヒップホップ感もしっかり残っているのが岩田さんらしいところですね。

「そうですね。シャキーラの「Waka Waka」みたいなテンション感にすることもできたと思いますけど、そこは自分のエゴを入れました。でも、みんなで叫べるパートを入れたりして、これでもマイルドになっているんですよ(笑)。タイアップ曲って、自分自身が気に入っていなかったらライブでやらなくなってしまうこともあるんです。せっかくたくさんの人に聴いてもらえる曲なのに、そうなってしまったらもったいなくて。ちゃんと“生きた曲”にして、長く愛してもらいたいと思ったので、自分のエゴも入れた魅力的な楽曲に仕上がったと思います」

──「RISE NOW」は先行配信もされていますが、トイパッケージ風のジャケットアートワークが目を惹きました。

「アーティスト名を変えたタイミングで、ブランディングも全部変えようと思ったんです。最初はずっと自分で描いた絵をジャケットにしていました。でも、それだと真面目な感じになってしまうと思って、去年トライアル的に自分の肖像にしてみたんです。そうするとやっぱり“俳優”とか“三代目J SOUL BROTHERS”というキャリアの匂いが出てしまって。もう少し遊び心のあるものにしたいと思って、フィギュアのブリースターパッケージのようなデザインにしてみました。この先、シリーズ化していきたいと思っています。こんなことを言っちゃっていいかわからないけど(笑)」

──ストリートカルチャーの表現の一つでもあるのかな?と思いました。

「そうそう! 海外のラッパーのフィギュアとかよくあるじゃないですか。そういうイメージです」

──いつかジャケットに描かれている岩田さんのフィギュアの商品化も…?

「いずれやりたいですけど…単価がすごく上がりそう(笑)」

──シングルにはさらに「9999」、「All night」の2曲も収録されています。

「「9999」はギャンブルのワードを散りばめた楽曲ですが、ラブソングです。去年『HIP POP Princess』で共にプロデューサーを務めたラッパーのGaekoと一緒に作りました。コール&レスポンスもあって、ライブ映えしそうだと思っています。「All night」もラブソングで、トロピカルなチルいヒップホップです」

──表題曲が2曲ともアグレッシブなヒップホップなので、今の岩田さんはそういうモードなのかと思ったのですが、カップリングの2曲は違うタイプの楽曲ですね。

「はい。2曲ともゴリゴリからはかけ離れています。バランスを取りました(笑)」

──そんな4曲が入ったシングルが出来上がりましたが、現在の心境としてはいかがですか?

「本当に大満足ですし、嬉しいリリースです。ソロを始めてから5年間試行錯誤して、ようやく行き着いた音楽性を形にできた気がしています。遠回りしたとも思いますが、やっと本当に表現したいことを思いきって、自信を持ってできました。迷いがなくなった自分の音楽活動を、ここから楽しんでもらえたら嬉しいです」

──先ほど“アーティスト名を変えたタイミングでブランディングも変えようと思った”ともおっしゃっていましたが、今後はどのような音楽を作っていきたい、どんな“GAN (岩田剛典)”を見せていきたいと考えているのでしょうか?

「僕のルーツはやっぱりダンスなので、ダンスミュージックはやっていきたいです。ダンスミュージックといっても、テクノとかDJベースのものではなく、ヒップホップベースのもの。基本的に自分が好きだった2000年〜2010年代のヒップホップやR&Bという自分のルーツを忘れないアーティストを目指していきたいです。ジャケットとアー写ではニット帽を深く被っていますが、このビジュアルも初めてです。ギリギリ目は見せていますけど」

──確かにお顔が全面に出ている写真ではないですね。

「そうなんです。髪型もちゃんと作って、きれいにした方が売れる。そういう世界ではありますが、変えるなら今だと思って。最初はサングラスもかけようと思ったんです。だけど、さすがに誰かわからなくなってしまうので、サングラスはなしにしました。この見せ方にも納得いっています。今、打ち出しているものが全て噛み合っているんです。だからすごくパワーがあると思っています。自分の想いも乗っていますし、自信もあるので、アーティストとしてのエナジーが増しているんじゃないかな?」

──いいですね。

──最後にもう一つだけ教えてください。年始のブログで“まだまだ足りないものばかり”と書かれていたのが印象的でした。現在の岩田さんは、この先に何を見据えているのでしょうか?

「なんか…ビビらないようになりたくて」

──まだビビることがあるんですか?

「たくさんありますよ! それこそさっき話した韓国でのプライベートの件もそうですし、韓国のオーディション番組にプロデューサーとして出てみんなで曲を作ったこともそうです。つまり“ジャッジされる瞬間”が多くなっていて。基本的に、グループの中にいると個人をジャッジされる瞬間ってなかなかないじゃないですか。ファンの皆さんは優しいですし。ソロ活動でも、自分のライブだと、やっぱりファンの皆さんが優しくて。だから外に出てジャッジされるとか、冷たい扱いを受けることが自分の成長に直結すると思いました。今まで少なかったそういう機会を増やして、もっともっと成長したいです」

(おわり)

取材・文/小林千絵
写真/中田智章

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