――竹内さんが音楽に興味を持つきっかけは何だったんですか?

「小さい頃からずっと音楽は好きで。子供の頃はドライブも好きだったので、親の車に乗って、そこで音楽を流してもらって、曲に合わせて歌ったりしてましたね。家の中でも、家族が集まるとテレビじゃなくて音楽を流して、みんなで踊って歌うみたいな感じでした」

――子供の頃から聴くのも、歌うのも好きだったんですね。

「そうですね。よく流れていたのは、バックストリート・ボーイズとエリオット・ヤミン。それこそエンドレスでした(笑)。3、4歳の頃からずっと聴いていたので、中学に入って英語の授業でバックストリート・ボーイズの曲が流れた時は、みんな知らない中で僕だけ知ってるって、ちょっとドヤってました(笑)」

――(笑)。もともと好きだった音楽を仕事にしようと思ったのはいつ頃、何がきっかけだったんですか?

「高校1年生の時の文化祭がきっかけでしたね。友達に誘われてバンドを組んで出たんですけど、担当がドラムで。でも、ステージで演奏してると、誰も僕のことを見てくれないんですよ。めちゃくちゃ必死に練習したのに、お客さんが見るのはやっぱりボーカルとかギターなんですよね。だったら、前に出たいなと思って。その前から父親には“唯人も音楽やれよ”って言われてたんですけど、僕自身はサッカーに夢中だったこともあって、気に留めてなかったのですが、18歳になったタイミングで、やろう!と思って始めました」

――竹内さんは現在22歳。18歳で“やろう!”と思ってから、わずか4年でここまで来るのはすごいですね。

「いや、最初はやっぱり、何をどうすればいいかまったくわからなくて。とりあえずギターを練習しようと思って始めたんですけど、Fマイナーコードがどうしても弾けなくて諦めて(苦笑)。じゃあ、パソコンで、DAWを使ってやってみようと思ったんですけど、これもまた複雑過ぎて挫折して(笑)。なので、まずはどういう風に音楽が作られているのかとか、メロディの作り方や歌詞の書き方を勉強しようと思って、一番最初は全部人にお任せするところから始めました。そこから少しずつ、少しずつ、もちろん今もですけど、勉強させていただきながら制作している感じです」

――手探りの状態から始めて、すでにリリースした楽曲はデジタルシングルだけでも15曲にのぼります。

「本当ありがたいことに、たくさん楽曲を出させていただいて。自分でも“こんなに出してたんだ”って、びっくりしちゃいます(笑)」

――そして、このたび配信リリースされる「Fly」から、ユニバーサル ミュージック ジャパンに移籍。現在の心境はいかがですか?

「もう、気合いバチバチです(笑)」

――気合いバチバチ(笑)。

「レーベルの移籍もそうですし、事務所の移籍もそうですし。デビューして以降、ずっとワンマンライブをやりたいって言ってたんですけど、なかなかできていない状況だったんです。でも、新しい事務所に移籍したら、すぐにライブをしよう!と言ってくれて。だって、移籍直後で、それまで僕がどういうことをしてきて、どんなライブをするのかわからないのに、“すぐライブをやったほうがいい”って言ってくれるなんて、“マジすか!?”って。でも、本当に会場決めから何からバーっと進んでいくと同時に、レーベル移籍のお話もどんどん…。しかも、ユニバーサルミュージックって。その後、ライブや移籍が正式に決まった時、実は友達にうざいくらい自慢したんですよ(笑)」

――それくらいうれしかったってことですね(笑)。

「めちゃくちゃうれしかったです。友人たちも、会うたびに自慢してたのに(笑)、心から応援してくれたのがうれしかったですね」

――移籍第一弾として選ばれたのは「Fly」。いくつか候補がある中からこの楽曲を選ばれたんですか?

「「Fly」を書いてくださったCarlos K.さんから、“こんなにたくさんいただけるんだ!?”ってくらいいただいたんですけど、割と序盤の段階で“「Fly」がいいです”って伝えました。実は、Carlos K.さんのデモを聴く前に、自分の中で「Fly」っぽいものをイメージしていたんですよ。パッと開けるというか、晴れ渡った青空みたいな楽曲がいいなと思っていたら、「Fly」があって“これだ!”って」

――サウンド感もほぼ変わらず?

「ほぼほぼこのままでした。キャッチーでありながら壮大で、幕開け感があって。「Fly」ってタイトル通り、飛びそうなトラック音だし。さすがCarlos K.さんだなって感じでしたね」

――Carlos K.さんはLittle Glee Monsterや西野カナさんなど、多くのアーティストに楽曲提供をされている方ですね。「Fly」では作詞を竹内さん自身が手掛けていますが、制作はどのように進めていったんですか?

「最初にデモをいただいた時点で仮歌詞が入っていたんですけど、それが全部日本語だったんです。でも、曲の雰囲気から英語バージョンも聴いてみたいなと思って作っていただいたら、それがすごくカッコよくて。ただ、聴いてくれる人の大半は日本人だろうってことを考えると、少し日本語を入れたほうがいいと思ったんですよね。それで、“日本語の部分は僕が書きます”って言ったんですけど、書き進めるうちに、日本語の量をどれくらいにしたらいいのか迷ってしまって…。何回も書き直して、時にはメロディラインも変えてと、ものすごい時間をかけて作っていきました」

――竹内さんが書いた日本語詞はCarlos K.さんから届いた英語バージョンの和訳というわけではないんですよね? ご自身としてどのような想いで歌詞を書いたのでしょうか。

「和訳ではないです。でも、「Fly」の場合は歌詞を優先的に聴いてほしいっていうタイプの楽曲ではなくて。どちらかというと、家を出てから目的地に着くまでの間で聴いて、なんとなく気持ちが上がってほしいなっていうニュアンスを込めました。ただ、音との相性という意味で、言葉を選ぶ時に語感がいいことにはこだわりました」

――確かに、聴いていると浮遊感が心地よくて、常に地面から3cmくらい浮いているような気分になりました(笑)。

「それはうれしいです!本当、「Fly」って感じですよね」

――まさしく。その感じを演出しているものの一つが、エフェクトが掛かった歌声とも思うのですが、エフェクトのあり/なしで歌いやすさは変わるものですか?

「レコーディングする時にエフェクトを掛けて録る場合と、普通に録って後からエフェクトを掛ける場合の両方がありますが、いいスタジオで録れば、掛けて録ってもタイムラグなしで耳元に返って来るので特に問題はないですね。宅録だったり、機材がいいものじゃなかったりすると、ラグが生まれてわけわからなくなっちゃうので、そういう時はオフにします。でも、エフェクトを掛けてる曲は掛けたまま録ったほうが絶対にいいと思うので、今回は掛けて録りたいですって言いました」

――そうなんですね。ある音楽プロデューサーの方から聞いた話ですが、エフェクトを掛けて音程を外さずに録るのは難しく、高いスキルを必要とするのだとか。アーティストの中には掛け録りを嫌う人も少なくありません。

「そうなんですか !?全然気にしたことがなかったです。あ、でも、それで言うと、僕は逆に掛け録りに慣れ過ぎちゃって、掛けないでバラードを歌おうとすると、掛け録りの癖が出て苦労するってことはありますね(笑)」

――そのパターンもあるんですね(笑)。そして、この「Fly」ですが、ミュージックビデオを制作する予定はあるんですか?

「先日撮影してきました。見どころですか? そうですね…一言で言えば、たぶんこのミュージックビデオを観て、“あ、竹内唯人変わったかもしれない”と思ってくれる人が多いんじゃないかなって」

――これまでと趣向が違う?

「画の感じも、雰囲気も、全然違うと思います。僕自身が観て、すごくカッコ良くて好きだなと思ったので。移籍第一弾でもあるし、新しさを感じてもらえたらうれしいです」

――今回、この「Fly」を聴きつつ、過去にリリースされた楽曲も聴かせてもらったのですが、そこで感じたのが、竹内さんがどんな音楽から影響を受けているのかまったく想像がつかないな、と。

「確かに(笑)。今回の「Fly」は割と新しいタイプの楽曲だと思いますし」

――そうですよね。今作も含めていろいろなタイプの楽曲に挑戦してきた中で、竹内さん自身が“こういう方向性でいきたい”という明確なものは見えつつあるんですか?

「そうですね。もともとファンの子たちから「ニビイロ」だったり、J-POPっぽいバラード曲をもっとリリースしてほしいという声は多くて。でも、一時期そういった声を振り払って、自分が作りたい音楽を作ったこともあったんです。ただ、ワンマンライブをすることになった時に、やっぱり「ニビイロ」とか「Silence」とか、バラード曲を歌ってほしいというリクエストがめちゃくちゃ多かったんですよね。それで、自分に求められてる音楽というのもだし、自分に似合っている音楽を探さなくちゃいけないっていうので制作チームと話し合い、こういうのがいいんじゃないかって作ったのが「Fly」なんです。なので、今後も基本的にはこの路線で行こうと思ってます」

――そう言われると、来月配信リリースされる楽曲も気になるのですが、ちょっとヒントをもらえますか?

「来月リリースされる楽曲は、僕が今まで作ってきたものの中でダントツで好きな1曲なんです、実は。すでに完パケしてるんですけど、もう何回も何回も聴いてますね。今度の曲はきっと、僕じゃない誰かが歌っていたとしても繰り返し聴いてしまうと思う。それぐらい、その楽曲自体が好きなので、それを竹内唯人としてリリースできるのはめちゃくちゃうれしいです。自信作でもあるので楽しみにしていてほしいですね」

――「Fly」もそうですが、そうした自信作は早くライブで披露したいのでは?

「そうですね。「Fly」ともう1曲が完成した時、それぞれセットリストに入れるならこのへんだなっていうのが浮かんだんですよ。なので、すでにライブで披露できる準備はできてます(笑)」

――それは楽しみです! これから竹内さんの新章が始まるわけですが、将来的にこんなアーティストになりたいという目標はありますか?

「こういうアーティストになりたいって言うと、なんか遠すぎる目標のような気がしていて……。もちろんそれも大事なんですが、僕としてはその前に、近々の目標として何個か持っているものがあって。まずは、ゴールデンタイムの音楽番組に出て、おばあちゃんに僕が歌っている姿を見せてあげたい。僕、めちゃくちゃおばあちゃん子なんですよ。だから、ゴールデンタイムの音楽番組に出る以外にも、誰もが知るような有名な曲を生み出して、おばあちゃんに自慢させてあげたいなって。本当、元気なうちにいろいろやってあげたいですね。そのためにも、音楽だけじゃなくてマルチに活躍して、竹内唯人の知名度を上げて。ほぼ休みがない!っていうくらいに頑張っていきたいです」

(おわり)

取材・文/片貝久美子
写真/野﨑慧嗣

DISC INFO竹内唯人「Fly」

2023年3月20日(月)配信
ユニバーサル ミュージック

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